味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女 作:人間として終わってる人
初めて会った日のこと。
私はネルを爆弾としか見てなかった。
その爆弾はめでたく今日爆発する。
それだけの話だった。
それで全部解決なのに。
私は足を止めた。
そして、ネルの元へ走った。
無数の槍が降り注ぐ。
その中を私は一心不乱に駆け抜けた。
まだ魔法は発動してない。
その前に伝えなきゃいけないことがあった。
私の命よりも大切な人。
誰よりも生きて欲しい人。
*
無数の槍が降り注ぐ中、私は防御魔法を展開した。
槍が降り注ぐ前に自爆魔法は展開できなかった。
でも、今なら発動させられる。
「ミラさん……」
轟音の中、私は小さくそう呟いた。
私を見つけてくれた人。
命よりも大切な人。
誰よりも生きていて欲しい人。
その人を守れるなら、それで良かった。
ここで死ねるなら、私は本望だった。
「ふふっ、ネル。来ちゃった」
すると、背後から声が聞こえてくる。
ミラさんが立ってた。
頭が真っ白になる。
肩で息をするミラさんを見て、困惑する。
「ど、どうして来たんですか!? 馬鹿なんですか!?」
私はただ混乱して、とにかく怒鳴った。
しかし、ミラさんは悪びれる様子もなく私の所へ近づいて来た。
「私も一緒に死ぬよ」
ミラさんはそう言って、いつもみたいに私の手を取った。
温かい体温が伝わり、涙腺が緩む。
「死ぬって……私だけでいいのに……」
私は笑顔のままのミラさんを直視できなかった。
俯いたまま、ただそう呟いた。
「私、やっと見つけたんだ……命より大切なもの」
ミラさんはそう言って、私の頬を撫でた。
私も同じだった。
やっと見つけた命より大切なもの。
私が顔を上げると、ミラさんは優しく微笑んだ。
「一緒に行こ。私もついて行くから」
「…………」
その言葉に胸が苦しくなる。
どうしようもなく辛くて苦しくて。
そして、嬉しかった。
周りの轟音をかき消すように、私たちの周りに光が灯る。
「ミラさんは嘘つきです……」
「うん……ごめん」
そんな嘘つきなミラさんが、どうしようもなく好きだった。
謝るミラさんを見て、不意に笑みが零れる。
綺麗な星空の下、私とミラさんは手を繋いで見つめ合った。
「好きだよ。ネル」
「私も好きです。ミラさん……」
お互いの顔を見合って、少し笑ってしまう。
体がボロボロで顔もグチャグチャで、それでも幸せだった。
この人と死ねるのなら、どれだけ幸せな結末だろう。
私は自爆魔法を発動させた。
光が視界を埋めつくす。
それでもミラさんの顔は最後まで見えた。
好きな人の顔がずっと脳に焼き付いた。
温かい体温の中、私は意識を失った。
最後に見たのは、命より大切な人の笑顔。
あまりに幸せな自爆だった。
でも心残りはあった。
できるなら、もうちょっとだけ一緒にいたかったな……。
最後に夢を見た。
あの日のこと。
ミラさんに最初に会った日のこと。
落ちこぼれだった私を見つけてくれた人のことを。
初めて魔法を敵に撃てた日のこと。
それを褒めてくれたミラさんのこと。
嫉妬してキツく当たっても受け止めてくれたミラさんのことも。
私を庇って腕を失ったミラさんのことも。
全部が私の大切な記憶だった。
*
ゲートの中を光が包み込んだ。
光は遥か空の星に届き、星空を包み込んだ。
やがて星々は消滅し、厄災が消えていく。
魔法使いネルの自爆により、最後の厄災は討伐された。
王都は歓喜の声に埋め尽くされた。