味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女 作:人間として終わってる人
光に飲み込まれていくネル。
温かいネルの手の感触は次第に消えていく。
ここで死ねたなら、どれだけ幸せだったのだろう。
ネルと一緒に私も死にたかった。
でも、私の能力がそれを拒む。
1回だけ残った呪いが私をこの世界に繋ぎ止める。
今までラッキーとしか思っていなかった能力が、今は憎くて苦しかった。
きっと私は生き返ってしまう。
何のために生き返るのか。
その理由が今の私には無かった。
目が覚める。
右手の温かい温度は既に消えていて、冷たく虚空を切った。
手を握っても、感じるのは自分の手の感触だけ。
苦しくて目を開けたくなかった。
「…………………」
目を開くと、そこは知らない天井だった。
灰色の世界。
色もなく、ただ時間だけが過ぎていく世界が目の前にあった。
私はゆっくりと起き上がる。
動き辛かったはずが、左腕が元に戻ったせいで動きやすかった。
ネルを守った左腕は、私の能力で簡単に再生していた。
「…………こんな力……」
私は呪いを込めて小さく呟いた。
こんな力が無ければ、私はネルと一緒に……。
そのことを考えると涙が溢れる。
灰色の世界で一人、私は俯いたまま嗚咽を漏らした。
*
もうこの世界にネルはいない。
ネルの遺体は教会が聖遺物として回収したらしい。
もうネルの顔を見ることもできなかった。
最後に残ったのは、胸にぽっかり空いた感情だけ。
家に帰ると、ネルの匂いがした。
そのせいでまた涙が溢れる。
私のせいでネルは死んだ。
私があの日、ネルを誘わなければ良かった。
ネルを自爆させるなんて、そんな馬鹿な計画を立てなければよかった。
「…………死のう」
私は家のベッドに腰を下ろし、ゆっくりと腰の剣を手に取った。
まだネルの体温が残っているうちに、死のう。
死ねばきっと楽になれる。
私は剣を自分の首元にまで持って行く。
ガタガタと手が震えて、剣が首元に触れる。
血が流れて、痛みが走る。
でも、何故か嬉しかった。
この傷はもう治らない。
もう死んだらおしまいだから。
ネルと同じ体だから。
「…………」
それでも手が震えて、剣が上手く使えない。
私は数時間葛藤した後、剣を床に置いた。
じっと部屋を見つめてみる。
まだネルの匂いが残っていて、少し嬉しかった。
あそこでネルにメモが見られて、色々揉めたりした。
初めてネルと一緒に寝て……。
ベッドに寝転び、匂いを嗅いでみる。
消えかけたネルの匂いがした。
「……やらなきゃ」
私は再び剣を手に取った。
そして、首元に剣を当てた。
もう手の震えはなかった。
私は思いっきり剣を引き抜いた。
飛び散る鮮血が見えて、私の意識が途切れた。
「───ミラさん!!」
最後に声が聞こえてきた。
エイラの声だった。
*
温かい感触が手を包んでいた。
目を開くと、目の前にはエイラの顔があった。
「……エイラ」
私はエイラの顔を見て、少し落ち込んだ。
エイラがいるってことは、また死ねなかったんだ。
致命傷ではなかったみたい。
「何してるんですか? 本当に……ミラさんは悪い人です……」
エイラは私を見つめながら、涙をポタポタと零した。
雫が顔に当たり、くすぐったい。
「あなたのせいです。ネルさんが死んだのはミラさんのせいですよ……」
エイラは声を震わせながらそう言った。
その言葉に胸が締め付けられる。
そうだ。私のせいだ。
私のせいでネルは自爆した。
私と関わらなければ、死ぬことはなかった。
だから、私も死ねばそれで……。
「あなたのせいネルさんは死んだんです……だから……それを背負って生きていかないと……」
エイラはそう言って、私の顔を無理矢理起こした。
そして、一発強烈なビンタを私の頬に叩き込んだ。
「逃げないでください。どれだけ苦しくても……逃げたらダメです……」
エイラはしゃくり上げるように嗚咽を漏らしながら、そう言葉を絞り出した。
頬がヒリヒリと痛くて、頭がぐるぐると掻き回される。
生きてかなきゃダメなの?
死ねば……ネルと同じになれるのに?
「……もう私が生きてる意味はないよ」
私はそんなエイラに反論した。
絞り出した言葉は、あまりに情けない言葉。
それでも、それが私の全てだった。
「そうです。あなたはクズでカスなゴミ人間です。死んだ方がマシです」
エイラは涙を袖で拭い、私を睨みつけた。
侮蔑の視線が私の目に向けられた。
「だから、せめてネルさんのために生きてください。何の為にネルさんは死んだんですか? ミラさんを守るためですよね」
エイラは私の肩をグッと掴み、揺さぶる。
私を守るために死んだネルに、顔向けできない。
それはそうかもしれない。
でも、もうどうせ会うことはできない。
「…………分かった。少しだけ生きてみる。それから考える……」
私は納得することを諦めて、エイラにそう告げた。
すると、エイラは少しだけ頬を綻ばせた。
「では、行きましょうか」
そして、エイラは私の手を掴み、強引に引っ張った。
「ち、ちょっと……エイラ……?」
「死ぬことなんて考えられないくらい苦しくさせてあげます。覚悟してくださいね」
エイラはそう言って、苦しそうに微笑んだ。