味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女   作:人間として終わってる人

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33話 生きる

 光に飲み込まれていくネル。

 温かいネルの手の感触は次第に消えていく。

 

 ここで死ねたなら、どれだけ幸せだったのだろう。

 ネルと一緒に私も死にたかった。

 

 でも、私の能力がそれを拒む。

 1回だけ残った呪いが私をこの世界に繋ぎ止める。

 

 今までラッキーとしか思っていなかった能力が、今は憎くて苦しかった。

 きっと私は生き返ってしまう。

 

 何のために生き返るのか。

 

 その理由が今の私には無かった。

 

 

 目が覚める。

 

 右手の温かい温度は既に消えていて、冷たく虚空を切った。

 手を握っても、感じるのは自分の手の感触だけ。

 

 苦しくて目を開けたくなかった。

 

「…………………」

 

 目を開くと、そこは知らない天井だった。

 灰色の世界。

 色もなく、ただ時間だけが過ぎていく世界が目の前にあった。

 

 私はゆっくりと起き上がる。

 動き辛かったはずが、左腕が元に戻ったせいで動きやすかった。

 

 ネルを守った左腕は、私の能力で簡単に再生していた。

 

「…………こんな力……」

 

 私は呪いを込めて小さく呟いた。

 

 こんな力が無ければ、私はネルと一緒に……。

 そのことを考えると涙が溢れる。

 

 灰色の世界で一人、私は俯いたまま嗚咽を漏らした。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 もうこの世界にネルはいない。

 ネルの遺体は教会が聖遺物として回収したらしい。

 

 もうネルの顔を見ることもできなかった。

 

 最後に残ったのは、胸にぽっかり空いた感情だけ。

 

 

 家に帰ると、ネルの匂いがした。

 そのせいでまた涙が溢れる。

 

 私のせいでネルは死んだ。

 私があの日、ネルを誘わなければ良かった。

 ネルを自爆させるなんて、そんな馬鹿な計画を立てなければよかった。

 

 

「…………死のう」

 

 私は家のベッドに腰を下ろし、ゆっくりと腰の剣を手に取った。

 

 まだネルの体温が残っているうちに、死のう。

 死ねばきっと楽になれる。

 

 私は剣を自分の首元にまで持って行く。

 ガタガタと手が震えて、剣が首元に触れる。

 

 血が流れて、痛みが走る。

 

 でも、何故か嬉しかった。

 

 この傷はもう治らない。

 もう死んだらおしまいだから。

 

 ネルと同じ体だから。

 

 

「…………」

 

 それでも手が震えて、剣が上手く使えない。

 私は数時間葛藤した後、剣を床に置いた。

 

 じっと部屋を見つめてみる。

 まだネルの匂いが残っていて、少し嬉しかった。

 

 あそこでネルにメモが見られて、色々揉めたりした。

 初めてネルと一緒に寝て……。

 

 ベッドに寝転び、匂いを嗅いでみる。

 

 消えかけたネルの匂いがした。

 

 

「……やらなきゃ」

 

 

 私は再び剣を手に取った。

 

 そして、首元に剣を当てた。

 

 もう手の震えはなかった。

 私は思いっきり剣を引き抜いた。

 

 飛び散る鮮血が見えて、私の意識が途切れた。

 

 

「───ミラさん!!」

 

 最後に声が聞こえてきた。

 エイラの声だった。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 温かい感触が手を包んでいた。

 目を開くと、目の前にはエイラの顔があった。

 

「……エイラ」

 

 私はエイラの顔を見て、少し落ち込んだ。

 エイラがいるってことは、また死ねなかったんだ。

 致命傷ではなかったみたい。

 

「何してるんですか? 本当に……ミラさんは悪い人です……」

 

 エイラは私を見つめながら、涙をポタポタと零した。

 雫が顔に当たり、くすぐったい。

 

「あなたのせいです。ネルさんが死んだのはミラさんのせいですよ……」

 

 エイラは声を震わせながらそう言った。

 その言葉に胸が締め付けられる。

 

 そうだ。私のせいだ。

 私のせいでネルは自爆した。

 私と関わらなければ、死ぬことはなかった。

 

 だから、私も死ねばそれで……。

 

「あなたのせいネルさんは死んだんです……だから……それを背負って生きていかないと……」

 

 エイラはそう言って、私の顔を無理矢理起こした。

 そして、一発強烈なビンタを私の頬に叩き込んだ。

 

「逃げないでください。どれだけ苦しくても……逃げたらダメです……」

 

 エイラはしゃくり上げるように嗚咽を漏らしながら、そう言葉を絞り出した。

 頬がヒリヒリと痛くて、頭がぐるぐると掻き回される。

 

 生きてかなきゃダメなの?

 死ねば……ネルと同じになれるのに?

 

「……もう私が生きてる意味はないよ」

 

 私はそんなエイラに反論した。

 絞り出した言葉は、あまりに情けない言葉。

 それでも、それが私の全てだった。

 

「そうです。あなたはクズでカスなゴミ人間です。死んだ方がマシです」

 

 エイラは涙を袖で拭い、私を睨みつけた。

 侮蔑の視線が私の目に向けられた。

 

「だから、せめてネルさんのために生きてください。何の為にネルさんは死んだんですか? ミラさんを守るためですよね」

 

 エイラは私の肩をグッと掴み、揺さぶる。

 

 私を守るために死んだネルに、顔向けできない。

 それはそうかもしれない。

 でも、もうどうせ会うことはできない。

 

「…………分かった。少しだけ生きてみる。それから考える……」

 

 私は納得することを諦めて、エイラにそう告げた。

 すると、エイラは少しだけ頬を綻ばせた。

 

「では、行きましょうか」

 

 そして、エイラは私の手を掴み、強引に引っ張った。

 

「ち、ちょっと……エイラ……?」

 

「死ぬことなんて考えられないくらい苦しくさせてあげます。覚悟してくださいね」

 

 エイラはそう言って、苦しそうに微笑んだ。

 

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