味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女 作:人間として終わってる人
あの時の光を、私は見ていた。
綺麗な光だった。
あのゲートの中の真ん中で、二人がその光に包まれていく。
ああ……勝てないな……。
そう思った。
きっと私はネルさんには勝てない。
きっとミラさんにとってネルさんは私より大切でかけがえのないもの。
ちょっとだけ悲しくて涙が出た。
でも、まだ私はやらなくちゃいけないことがあった。
ミラさんが苦しい時、支えてあげなくちゃ。
それが最後に私ができる唯一のことだから。
「ミラさん。ここですよね……」
私はミラさんを練習場まで連れてきた。
ここはネルさんがいつも話していた場所。
二人にとって大切な場所。
そこに私はいないけど、もう吹っ切れた。
私はどうにでもなれとミラさんをこの場所に連れてきた。
「…………うん」
ミラさんは練習場に着くと、一人で歩き出してしまった。
フラフラとした足取りでも、確かに一歩ずつ歩き出した。
その背中を見て、私は少し安心した。
きっと、この人はまた歩き始める。
私がいなくても、この人は……強い人だから。
「ここで……色んなことが……」
ミラさんは嗚咽を漏らしながらそう呟いた。
私はそんなミラさんをただ眺めていた。
「……ミラさん。もう分かってますよね」
私は意を決してミラさんにそう言った。
ミラさんは涙で顔を歪めながらも私の方を見た。
「苦しくても歩き続けてください。ネルさんのために」
私の為じゃない、ただ私じゃない誰かの為に。
胸が苦しくて酷く痛む。
それでも、それがミラさんの歩むべき未来。
上を見上げると、いつもと変わらない星空が広がっていた。
「……うん」
ミラさんはそう言って、小さく微笑んだ。
*
私は最後にミラさんを教会に連れて行った。
この教会の地下室には…ネルさんが眠っている。
「来ましたね。ミラ様」
地下室まで行くと、大司祭様の姿が見えた。
少し驚いたようなミラさんの手を引く。
そして、ネルさんの場所まで連れて行った。
「……ネル」
ミラさんはネルさんの遺体の前でそう呟いた。
教会が全力を注いで修復した遺体。
この遺体だけは守らなくてはいけなかった。
それが教会の総意だった。
英雄ネル……そして、いずれ世界を救う人のために。
「ミラ様。私達でもネル様を救うことはできませんでした」
大司祭様は申し訳なさそうに目を伏せる。
そんな大司祭様を横目に、ミラさんはネルさんに手を伸ばした。
もう冷たくなっているけれど、愛おしそうにミラさんは遺体を見つめていた。
「ミラ様……ネル様を救えるのはあなただけです」
大司祭様はそう言って、その場で跪いた。
「分かってる。もう分かってるよ……」
ミラさんはそう言って悲しそうに笑った。
そして、ネルさんから手を離した。
私はその手にネルさんの首輪を渡した。
ふとミラさんの顔が驚きに染る。
「奇跡的にこれだけは無傷で残ってたんです。だから、あなたに……」
ミラさんは首輪を受け取ると、それを握り締めた。
そして、立ち上がった。
「ありがとう……エイラ。行ってくるよ」
ミラさんはそう言って、地下室の扉に足を一歩踏み出した。
私は思わずその背中に手を伸ばそうとしてしまう。
でも、それは叶わない。
ミラさんは……もう一人で歩けるから。
その日から、私の目の前からミラさんは消えた。
どこに向かったかは知ってる。
そして、必ず帰ってくることも。
あの人は勇者だから。