味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女   作:人間として終わってる人

35 / 38
35話 別れる

 ネルの顔を見て、私は安心した。

 まだそこにネルはいる。

 呪いだと思っていたこの力を使える。

 

 私は自分の部屋で一人、遠くを見つめる。

 あの地平線の向こう側には、王国以外の国があるらしい。

 ネルは城壁の上でそんな話をしてくれた。

 

「……見せてあげないと」

 

 私は小さくそう呟いた。

 

 その国をネルに見せてあげたかった。

 その景色をネルに届けたかった。

 

 ふと机に放置されたグチャグチャな紙切れを手に取った。

 

 そこにはネルの情報がビッシリと刻まれていた。

 

 ネルが好きな物、苦手な物。

 性格から容姿、面白いところも全部。

 

自爆特攻させるための計画書。

 でも、それが今は何より大切なものだった。

 

「行こう……」

 

 私はカバンに紙切れを押し込み、扉を開いた。

 

 ネルに貰った命だから、ネルの分まで生きてみよう。

 

 そして、帰ってきたら……。

 

 

 

 *

 

 

 まだ明け方の空。

 暗闇の中、私は一人歩き続けた。

 

「──行くの?」

 

 すると、背後から声が聞こえてくる。

 ミリナの声だった。

 

 その声に私は足を止める。

 

「うん。もう行くよ」

 

 私はミリナに小さくそう言った。

 すると、ミリナの足音が聞こえてくる。

 

「私も……連れていきなさいよ……」

 

 ミリナの苦しそうな声が聞こえてきた。

 微かに震えたミリナの声に、私は少し頬が緩んだ。

 

「ダメだよ。死んじゃうよ」

 

 私は苦笑いをして、再び歩き始めた。

 

「私は……ネルみたいに死なせてくれないんだ……」

 

 背後から苦しそうにしゃくり上げる声が聞こえてくる。

 私は思わず振り返りそうになる。

 

「ダメ。振り返らないで……こんな顔見られたくない……」

 

 嗚咽混じりにミリナはそう言った。

 私は振り返るのを止めて、前を向いた。

 

「……行ってきなさいよ。これで、あんたの顔をこれから見ずに済むわ」

 

 震える声でミリナはそう言った。

 

「うん」

 

 私は短く返事をして、歩き始めた。

 

 ミリナが追いかけてくることはなかった。

 

 

 

 *

 

 

 

 嫌いだった。

 私はミラが嫌いだった。

 

 そして、どうしようもなく好きだった。

 

 消えていく背中を見て、私は体から力が抜けたように崩れ落ちた。

 

 もう、きっとミラの顔を見ることはできない。

 

 いくら願っても、私の前にあなたが現れることは無い。

 

 分かっていた。

 ネルが死んでからもう全て分かっていた。

 

 ミラはいつまで経っても、私の憧れだから。

 いつか魔王を倒し、帰ってくる。

 

 そして、私じゃない誰かを思いながら生き続けるんだ。

 

 

「馬鹿……馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿……!!」

 

 私は思いっきり地面を何度も叩きつけた。

 

 失恋だった。

 人生で初めて好きになった人だった。

 

 苦しくて涙が溢れる。

 

 それでも、ミラはきっと歩き続けるから。

 

 私も……頑張って生きていかなきゃいけない。

 

 

 陽が上り、辺りが明るく照らされる。

 

 地平線に消えてしまったミラの背中を見つめる。

 

 あなたの旅にいつか救いがありますように。

 

 ただそう願った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。