味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女 作:人間として終わってる人
ネルの顔を見て、私は安心した。
まだそこにネルはいる。
呪いだと思っていたこの力を使える。
私は自分の部屋で一人、遠くを見つめる。
あの地平線の向こう側には、王国以外の国があるらしい。
ネルは城壁の上でそんな話をしてくれた。
「……見せてあげないと」
私は小さくそう呟いた。
その国をネルに見せてあげたかった。
その景色をネルに届けたかった。
ふと机に放置されたグチャグチャな紙切れを手に取った。
そこにはネルの情報がビッシリと刻まれていた。
ネルが好きな物、苦手な物。
性格から容姿、面白いところも全部。
自爆特攻させるための計画書。
でも、それが今は何より大切なものだった。
「行こう……」
私はカバンに紙切れを押し込み、扉を開いた。
ネルに貰った命だから、ネルの分まで生きてみよう。
そして、帰ってきたら……。
*
まだ明け方の空。
暗闇の中、私は一人歩き続けた。
「──行くの?」
すると、背後から声が聞こえてくる。
ミリナの声だった。
その声に私は足を止める。
「うん。もう行くよ」
私はミリナに小さくそう言った。
すると、ミリナの足音が聞こえてくる。
「私も……連れていきなさいよ……」
ミリナの苦しそうな声が聞こえてきた。
微かに震えたミリナの声に、私は少し頬が緩んだ。
「ダメだよ。死んじゃうよ」
私は苦笑いをして、再び歩き始めた。
「私は……ネルみたいに死なせてくれないんだ……」
背後から苦しそうにしゃくり上げる声が聞こえてくる。
私は思わず振り返りそうになる。
「ダメ。振り返らないで……こんな顔見られたくない……」
嗚咽混じりにミリナはそう言った。
私は振り返るのを止めて、前を向いた。
「……行ってきなさいよ。これで、あんたの顔をこれから見ずに済むわ」
震える声でミリナはそう言った。
「うん」
私は短く返事をして、歩き始めた。
ミリナが追いかけてくることはなかった。
*
嫌いだった。
私はミラが嫌いだった。
そして、どうしようもなく好きだった。
消えていく背中を見て、私は体から力が抜けたように崩れ落ちた。
もう、きっとミラの顔を見ることはできない。
いくら願っても、私の前にあなたが現れることは無い。
分かっていた。
ネルが死んでからもう全て分かっていた。
ミラはいつまで経っても、私の憧れだから。
いつか魔王を倒し、帰ってくる。
そして、私じゃない誰かを思いながら生き続けるんだ。
「馬鹿……馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿……!!」
私は思いっきり地面を何度も叩きつけた。
失恋だった。
人生で初めて好きになった人だった。
苦しくて涙が溢れる。
それでも、ミラはきっと歩き続けるから。
私も……頑張って生きていかなきゃいけない。
陽が上り、辺りが明るく照らされる。
地平線に消えてしまったミラの背中を見つめる。
あなたの旅にいつか救いがありますように。
ただそう願った。