味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女   作:人間として終わってる人

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37話 あなたに

 ミラが旅に出て、一年が経過した。

 

 最初の3ヶ月で、王都周辺の魔獣の八割が姿を消した。

 あまりに唐突な出来事に、市民たちは全員困惑していた。

 悪いことの予兆ではないかと勘ぐる人もいた。

 

 でも、私は知っている。

 

 そして、半年が経ち、王国周辺の魔獣は完全に0になった。

 突然すぎる平和の訪れに、市民たちは歓喜した。

 王国は平和を迎え、空前の繁栄を成し遂げた。

 

 そして、一年後、魔王が討伐された。

 

 その速報に王国中が沸き立った。

 魔獣を生み出す魔王が打ち倒された。

 

 もう魔獣に脅かされる人々はいない。

 もう理不尽に命を奪われることはない。

 

 この世界は何者かによって救われた。

 

 無印の勇者でもなく、教会の大司祭でもなく、正体不明の誰かによって。

 

 

「……………」

 

 

 今までにないほど活気に包まれる王都を見つめる。

 それと対照的に私の心にはポッカリと穴が空いたままだった。

 

 魔王が倒されて、世界は救われた。

 

 でも、あなたは?

 ミラは救われた?

 

 それとも、今も地獄でもがいている途中?

 

 まだあの人は地獄にいるの?

 

 

 そのことを考えると、胸が苦しくなる。

 涙がこぼれて、死にたくなる。

 

 私も一緒に付き合っていれば……。

 あの地獄の苦しみを少しでも分かち合えたなら。

 

 どれほど幸せだったか。

 

 

「───知ってるか? 最近、向こうの方でヤバいやつが噂になってるらしいぜ」

 

 

 そんなことを考えていると、男の話す声が聞こえてきた。

 

「ああ、知ってる知ってる。ボロボロで浮浪者みたいな奴だろ? なんでも魔大陸から来たらしいぜ」

 

 男は笑いながらそう言った。

 

 その言葉に私は頭が真っ白になった。

 

 ミラのことだ。

 魔大陸から来る人間なんて、一人しか考えられない。

 

 

「………ッ!!」

 

 

 胸がズキンと傷んだ。

 ミラは生きてたんだ。

 

 嬉しさと苦しさが混ざる。

 まだ死んでないのなら、まだあの人は地獄にいるんだ。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 365日目。

 

 ここら辺はまだ魔獣が残ってる。

 私は残った力で何とか生き残った。

 

 もう意識が遠のいた状態が続いている。

 歩くことを止めれば、すぐにでも死ねる。

 

 でも、まだやるべきことが残っている。

 

 

 456日目。

 

 魔大陸を抜けると、そこら中に人が溢れ返っていた。

 ここら辺に人は住んでいないはずだけど……。

 魔王を倒したせいで生存域が広がったのだろう。

 

 私の知っている言葉が聞こえてきて少し安心する。

 でも、そこにあの人の姿は無い。

 私はひたすら歩き続けた。

 

 

 502日目。

 

 知っている場所に辿り着いた。

 高い城壁に囲まれた場所。

 

 やっと、会える……。

 そう思うと救われた気がした。

 

 あまりに長い間、あの人のことを忘れていた。

 でも、もうしっかり思い出せる。

 

 ネルと過ごした日々のこと。

 愛おしい時間のこと。

 ネルの最期の笑顔も全部、私の大切な記憶。

 

 だから、私に残った全部をあげたい。

 

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