ポケ娘 不思議のダンジョン   作:ゲーマーN

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データの参照先を間違えていたのでレベル・習得技関連を修正して再投稿しました。


14F ホンキのくんれん

 ――救助基地

 

「……訓練所、か」

 

 次の朝、ここ数日ですっかり日課となったポストの確認を済ませたハルトは、投函されていたポケモンニュースを手に取り、その一面に大きく踊る見出しと、それに続く記事の内容に目を通しながら、ぽつりと呟いた。

 

訓練所に行こう!

 ホンキチケットがあれば、マクノシタ訓練所で訓練ができるぞ!

 ここでは、ダンジョンで戦うよりも技が大きく成長する。

 特に、敵に効果抜群を繰り返し当て続ければ、かなりの成長が見込めるぞ!

 もっともっと強くなりたい君は、今すぐマクノシタ訓練所に行こう!

                                           』

 

 マクノシタ訓練所――昨日、ローリエにポケモン広場を案内された時にも耳にした名前だ。実際に訓練所まで足を運ぶことはなかったが……。

 

「ふむ……」

 

 ポケダンシリーズでは、物語が進むにつれ伝説のポケモンと対峙することになる。言葉の通り、彼らは神話や伝説に名を連ねるような存在であり、ただ強大というだけでなく、気候、時空、自然法則といった世界の理そのものに干渉する、人智を超えた力を持っている。

 果たして、そんな伝説に語り継がれるような存在が、ゲーム通り「普通のポケモンよりも少しだけ強い」程度のものであるだろうか――答えは否だ。それは作中の描写からも読み取れる。

 

 例えば、グラードンとカイオーガ。ホウエン地方の神話において、大地を盛り上げることで大陸を広げたとされるグラードンと、水を操り、大雨や大波を引き起こすことで海を広げていったカイオーガの脅威は、ゲーム本編にてまさしく”自然災害”そのものとして描かれている。

 ポケモン図鑑の説明が現実のものとなるならば、かの二柱の権能は、バランス調整されたゲーム上のステータスなどでは計り知れない、災厄という表現ですら生ぬるいほどの力であるはずだ。

 

 そしておそらく――いや、間違いなく、自分たちもいずれ伝説のポケモンと相見えることになるだろう、とハルトは確信していた。幸いにもこの世界には、彼らとの圧倒的な力の差を知恵と工夫で覆し得る、特別な力を持つ道具が数多く存在している。それらを駆使すれば、普通のポケモン世界で戦うよりは幾分か優位に戦闘を進められるだろう。

 ――とはいえ、最低限の実力がなければ、戦いの舞台に立つことすら叶わない。今のうちに少しでも力を付けておく必要がある。そう考えると、マクノシタ訓練所はうってつけの場所だった。

 

「……よし。二人が来たら、今日は訓練所に行ってみよう」

 

 仮に今の懸念が単なる杞憂に過ぎなかったとしても――それでも、これから救助隊活動を続けていく上で、力はいくらあっても困るものではない。己の強さは、仲間を守り、依頼を全うし、幾多の困難に立ち向かうための土台となるのだから。

 記事を読み終えたハルトは新聞を折り畳み、仲間を迎える前に家へ置いてこようと、一度中へ戻ることにした。

 

 

 

 ――マクノシタ訓練所

 

 ポケモン広場の中央から、大通りを真っ直ぐ南に下った町の外れにマクノシタ訓練所はある。黄色い外壁と赤い瓦屋根を備えており、その左方――道場らしき四角い区画の屋根からは、木の実のヘタを思わせる緑の飾りが突き出している。

 

「我が道場へよくぞ参られた。ワシはシショー。この道場の責任者でござる」

 

 たっぷりの白いヒゲを蓄えた小柄な老翁。中華風の赤い装束に身を包んでおり、頭部を覆う布の頂点からは、風呂敷の結び目のような黄色いマゲが伸びている。

 

「……ゴホッ、ゴホッ、ゲホッ。ぜぇぜぇ……失礼致した。ワシは体が弱くてな……ワシらは毎日この道場で己の技を磨いておる。もしお望みとあらば、ワシらに挑戦することもできますぞ」

 

 何度も咳き込み、辛そうに呼吸を整えるその姿は、とても強そうには見えない――が、こういう人物こそ侮れないのが世の常だ。……とはいえ、息も絶え絶えな様子には流石に不安を覚え、ハルトはつい、心配げな視線を向けてしまう。

 

「しかして、本日はどんなご用でござるかな? ……ゲホッ、ゲホッ」

 

「これがあれば、ここで修行できると聞いてきたんですが……」

 

 ハルトが取り出したのは、銀色に光を反射する細長い札――ホンキチケットAだった。差し出されたそれを受け取ると、シショーは細い目をさらに細めるようにして両面をしげしげと眺める。次いで、鼻先で小さく息を吐いた後、「よろしい」と、喉の奥から漏れるような声で頷いた。

 

「しからば、『ホンキのくんれん』が受けられますぞ」

 

「『ホンキのくんれん』?」

 

「うむ。『ホンキのくんれん』では、対応するタイプエネルギーに満たされた空間で訓練を行うことで、ダンジョンで戦うよりもレベルや技がぐんと成長するでござるよ。特に、敵に効果抜群を繰り返し当て続ければ、かなりの成長が見込めますぞ」

 

 タイプエネルギー――あまり聞き覚えのない概念ではあるが、何となく言わんとするところには察しがつく。要するにタイプごとに特化した訓練空間ということなのだろう。……細かい理屈はさておき、この道場で修行すれば、確かに効率よく力をつけられそうだ。

 

「ちなみに、この道場は救助隊を応援する目的で建てられたものでしてな。部屋にいるポケモンたちは、みなボランティア。救助隊の力になりたくて、こうして参加してくれておるのですぞ」

 

「ボランティアで……」

 

 実戦訓練となれば、相応に痛い思いをすることになる。それをボランティア――つまりは無償で協力するなど、尋常なことではない。利害も報酬もなく、ただ志のもとに身を投じているというのなら、それだけで敬意に値する。まして、自分たちのような無名の新米のためにその身を貸すというのだから、なおさらだ。

 そんなハルトの考えを読み取ったのか、優しくも真剣な表情でシショーは告げる。

 

「さればこそ、その感謝の念に応えるためにも――より一層、気を引き締めるでござる!」

 

「「「はい!」」」

 

 ハルトたちは、その激励に力強く応じると、案内のままに建物の奥へと進んでいく。訓練所の入口から伸びる廊下を抜け、やがて道場へと足を踏み入れた。

 

 

 

 ――マクノシタ訓練所 ほのおの間

 

 仕組み上、この訓練所では一度に複数のポケモンが訓練に臨めないため、三人はそれぞれ順に挑戦することになり、まずはハルトが『ホンキのくんれん』を体験する運びとなった。

 仲間に見送られながら道場の扉を潜ったハルトは、すぐに周囲の空気が通常のそれとは異なるのを感じ取る。柔らかな赤光に包まれた室内は、どこか温かく、肌に感じる熱とはまた別の、何かしらの力に満ちている。しばらく考えているうちに、それがほのおタイプの技を使う時の身体を熱く駆け巡る感覚と似ているのに気が付いた。

 

「これが……」

 

 それは、自身の内側から湧き上がるものではなかった。むしろ、部屋そのものにほのおのエネルギーが漂っており、その燃え上がるような力が自然と自分に染み込んでくるような感覚だった。身体が、意識せずとも技を発動しやすい状態へと導かれていくのが分かる。

 

「では、訓練を始めさせていただく。気を抜かれぬよう、心してかかるでござる!」

 

 訓練開始の合図と同時に現れたのは、濃い黄色の体色を持ち、頭に5センチメートルほどの鋭い毒針を備えたけむしポケモン――ビードルだった。つぶらな瞳に宿る光は鋭く、小さな体をぐっと低く構え、見るからに闘志を露わにしている。

 ”いとをはく”――不意にビードルが口から吹き出した糸が迫る中、ハルトは敵の本体ごと巻き込むように“はじけるほのお”を放ち、一気に焼き払う。

 

「ハッ……サム!!」

 

「っ、”ドラゴンクロー”!!」

 

 弾け飛ぶ炎をかき分けるようにして現れたのは、真っ赤な鋼の外殻に覆われた人型のむしポケモン――ハッサム。目玉模様の浮かぶカニバサミが容赦なく振り下ろされる。

 対するは、手の甲から伸びるように形成された三本の鋭い爪――”ドラゴンクロー”。昨日、宝箱の中から手に入れたわざマシン……ではなく、カクレオン商店で購入したわざマシンによってハルトが新たに習得した技である。

 

「すぅ……ぼおっ!」

 

 鍔迫り合いの最中、ハルトは押し合う力の均衡を破るべく、ハッサムの顔面めがけて“ひのこ”を吹き付ける。至近距離、殆ど零距離とも言える間合いから放たれた短くも激しい火の奔流が、鋼の面を焼き焦がす。

 

「サムッ……!?」

 

 効果抜群の一撃に、ハッサムの体がたまらず仰け反る。闘志の宿る双眸がわずかに揺らぎ、ぶつかり合うカニバサミから一瞬、圧が抜けた――その刹那、ハルトは身体をひねり、右腕全体に力を籠めて“ドラゴンクロー”を振り抜く――

 

「……ッ!?」

 

 ――寸前か、直後か。左腕に激痛が走る。何かに食い止められたような衝撃。見れば、ポニーテールの少女を思わせる姿のポケモン――クチートが、特徴的な後頭部の巨大な顎で、がっちりと腕に噛みついていた。

 鉄骨すらも噛み砕くと言われる大顎に喰らいつかれながらも、腕が砕けていないのは、これが訓練故か、それとも別の理由があるのか――いずれにせよ、このままやられるわけにはいかない。

 

「”はじけるほのお”ッ!!」

 

 クチートははがねタイプ――ならば弱点は考えるまでもない。ハルトは顎に囚われたまま、構わず”ひのこ”を本体へと叩き込む。怯んだ隙に、より強力な”はじけるほのお”を浴びせかけ、反撃の余地を与えぬまま一気に体力を削り取る。

 

「……”本気”の訓練、か。なるほど、これはなかなかハードな訓練だね」

 

 続々と現れるほのおタイプを弱点とするポケモンたちを視界に捉えたハルトは、額に滲む汗を裾で拭いながら、なおも気を引き締めるように息を整えた。




チーム:アーカイブス

ハルト(ヒトカゲ) Lv.11
・りゅうのいかり
・はじけるほのお
・かみつく
・ひっかく
・ひのこ
・ドラゴンクロー New!!
・えんまく New!!

ローリエ(チコリータ) Lv.13
・げんしのちから
・はっぱカッター
・たいあたり
・くさむすび
・どくのこな New!!
・こうごうせい New!!

カンナ(ポチエナ) Lv.10
・たいあたり
・とおぼえ
・すなかけ
・バークアウト
・さしおさえ
・かみつく New!!
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