秋介が去ったレッスン室。
「くそっ!言いたいことだけ言って出ていきやがって・・・・・・!」
「冬樹くん・・・・・・」
「すみません、私があんなこと言ったばっかりに・・・・・・」
しずくが発した『冬樹の理想』という言葉が秋介にとっての地雷となったことを気にしたのか申し訳なさそうな表情をしている。
「いや、しずくは何も悪くねぇ。オレもみんなの魅力が全然出せてないって薄々は感じていたんだ・・・・・・。言い方に腹が立っただけで、別に秋介の言ってることは間違ってない」
ホント・・・・・・言い方に問題があるってだけなんだよなぁ。
「かわいいを追求するかすみ、自分のスタイルを活かす果林、普段はのんびりだけどステージ上では元気いっぱいな彼方、物語を見ているような演技のしずく、璃奈ちゃんボードで観客と繋がる璃奈、ひとつひとつ丁寧にパフォーマンスをする歩夢、会場のみんなを巻き込んで楽しいを作る愛、会場を一瞬で自分のものにして大好きを伝えるせつ菜、聞いていると心があったかくなる歌声のエマ。みんながそれぞれの魅力を出してこそスクールアイドルだもんな・・・・・・」
みんなが自分の魅力を最大限出せるようにするのがオレたちのやるべきことなのに、そんなことすら忘れてた自分が情けねぇな。
「私たちのことをそんなふうに思ってくれてるだなんて、嬉しいです」
「うん、冬樹さんに言われると自信になる。璃奈ちゃんボード『むんっ!』」
「変に自分の押さえつけさせて無理させちまったな・・・・・・」
「彼方ちゃんたち、別に無理してたわけじゃないんだよ」
「そうだよ。わたしたち、冬樹くんに喜んで欲しかっただけなの・・・・・・それが秋介くんにはきゅうくつそうに見えちゃったのかな?」
「たしかに、ちょっと、かすみんだったらこうしたいなって思うとこはあったかも」
「シュウにはお見通しだったってわけだ。何だかんだ、愛さんたちのことよく見てるよね」
「もちろん、冬樹先輩もですよ!おふたりが私たちのことちゃんと見てくれるから、私たち頑張れるんですから!」
「そうよね、ふたりも一緒にステージを作る仲間よ」
仲間か、改めてそんなこと言われるとは思わなかった。
「・・・・・・ありがとな。そんで改めて言わせてくれ、次のライブはソロに変更しよう」
「次の大会は、ソロ!でも、みんなで頑張るのは、一緒」
「私たち同じステージには立たないけど、心はいつも一緒だよね!」
「一人だけど、一人じゃない。これが虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の在り方だ!みんなで頑張っていくぞー!」
「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」
「・・・・・・秋介先輩、明日来てくれるでしょうか・・・・・・」
「興味がなくなったら辞めるって言ってましたし・・・・・・」
「心配ねぇよ。何事もなかったかのように来るに決まってる」
「でも・・・・・・」
「好きの反対は無関心って言うだろ?」
「つまり?」
「本当に興味を無くしたのなら何も言わずに出て行ったはずだ」
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翌日、帰りのホームルームが終わり部活動の時間。冬樹が俺の席に近づいてくる。
「行くぞ」
たった一言。けれど、俺を試すような言葉にも聞こえる。
「・・・・・・あぁ、行くか」
道中、特に会話するわけでもなく部室にたどり着いた。そのまま冬樹が開けた扉を通り部室に入る。
「本当に冬樹先輩の言った通りだ・・・・・・」
「冬樹の言った通りって何?」
「昨日のことなんて気にもせずに今日も来るって、そう言ってたのよ」
「俺は何も悪くないですから。そんなこと気にすることの方が無駄ですよ。それで、今日は何をやるか決まってるの?」
「あ、レッスンの前にこのビデオ見てください。なんだかエマ先輩ちょっとセクシーになってません?」
かすみに見せられた動画を見ると、かすみの言った通りエマさんの動作がいつもと違う。果林さんを真似たようなものになっている。
「えへへ、いい感じでしょ〜?グループレッスンしてた時に果林ちゃんにアドバイスをもらったんだ」
「あら、じゃあ私のビデオも見てみて?エマから優雅なターンの仕方を教わったのよ」
「グループレッスンはやっぱり必要なことだったんですよ」
「そうだよね。シュウに言われて気づいたけど、アタシたちはやっぱりソロでやるのがいいって改めてわかったけどそれ以上に、グループとして、みんなに教えてもらったことって大きいよ」
「やっぱソロに戻したんだ」
「ああ。でもグループが全くの無駄ってわけじゃない」
「みたいだ。得られるものがあったのなら意味はあったのかもしれないな」
「冬樹さんがグループ出場を勧めてくれて、よかった。いっぱい学べること、あった」
「うん、一人じゃ気付けなかったことに気づかせてくれたし。私たち、これからもお互いの練習をサポートし合おうって約束したんだ。グループレッスンで、みんなで意見を出し合うことの大切さがわかったから」
「そうか・・・・・・それならよかった」
「かすみんたち、着実にレベルアップしてますよね!次は表彰台独占とかしちゃうかも〜!」
「かすみさん、捕らぬ狸の・・・・・・って言葉知ってる?」
捕らぬ狸の皮算用、まだ捕まえてもいない狸の皮を売ることを考えることから手に入るかどうかわからないものを当てにして計画を立てることのたとえだ。
「なにそれ?虎ヌ狸・・・・・・?ヌってなに?」
やはりと言うと失礼かもしれないが、かすみは少々勉強が残念なようだ。
「かすみ、勉強もがんばろうな・・・・・・」
「教養はあるに越したことはないからね。テストで赤点取らないように」
この時、勉強に難があるのはかすみだけだと思っていた・・・・・・
大会前日、
「・・・・・・・・・・・・」
中々寝れないな・・・・・・別に自分が出るわけでもないのに変な気分だ。とりあえず目を瞑っとけばいつか寝れるだろう・・・・・・
prrr・・・・・・
「電話?━━━はい」
『よかった、まだ起きてたのね』
「果林さん?」
電話の相手は果林さんだった。
「一体何の用ですか?もう寝るところなんですけど。果林さんも早く寝ないと明日のライブに影響しますよ」
『ごめんなさい、誰かと話してないと緊張で寝られそうになかったから・・・・・・』
「まあ、明日の結果でスクフェスのメインステージに立てるか決まるし気持ちはわからないでもないですけど・・・・・・果林さんは緊張とは無縁なイメージだったからなんか意外です」
『私だって緊張くらいするわよ。ただ表に出さないってだけ』
「それ、俺に言っちゃってよかったんですか?」
『秋介ならいいの。キミには私を知ってもらいたいから』
「そう思うなら俺が興味を持てるような人になってくださいよ。俺の中では今のところ同好会のメンバーってだけですから」
『あら、それは挑戦状ってことでいいのかしら?』
「どう受け取るかはご自由に。まぁ、明日のイベントで優勝したら何か変わるかもしれないですね」
『・・・・・・そう。なら、明日は最高のパフォーマンスをして優勝してみせるから、しっかり私のことを目に焼き付けなさい!』
「はいはい、わかりましたから早く寝てください」
『そうね。おやすみなさい』
「おやすみなさい」
挨拶をして電話を切る。
「・・・・・・あんなこと言ってる時点で俺は・・・・・・いや、考えても意味ないし寝るか」
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