生徒会長、中川菜々から部員10人を集めなければ同好会の解散を命じられた俺たち。前いたメンバーと冬樹を含めてもあと4人は必要だ。
「そういえばかすみ以外の部員はどんな人なのか聞いてなかったね」
「あと同好会がなんで今の状況になったのか教えてくれないか?それがわからなければオレたちも何からやればいいかわからないからな」
「最初からお話しますと・・・・・・」
かすみの話は要約すると、同好会は優木せつ菜とかすみ、他校から転校してきた近衛彼方さん、桜坂しずくさん、エマ・ヴェルテさんの5人で活動をしていた。みんなやる気はあったものの、ギクシャクしていたという。部員間の仲が悪いとかそういったものではないものの各々がやりたいスクールアイドル像が違いすぎてお互いに遠慮し合うことになり、特に優木せつ菜はそれが強く出てたようで元気がなかったとか。みんなに積極的にアドバイスをしていたようでみんなを引っ張っており尊敬しているとのこと。結局一度もライブをすることなくみんな練習に来なくなった。かすみは部室には来ているものの実質的な自然消滅となっているのが現状だ。
「・・・・・・情熱があればなんでもできるわけじゃないってわかったのはいい勉強になりましたよ、ほんと」
「なるほどね、教えてくれてありがとう」
「話を聞く限りじゃ誰も悪くないんだ、とりあえず元のメンバーに戻ってもらうように話に行くか。スクールアイドルのためにわざわざ転校するくらいなんだ、熱意は消えてないと信じたい。かすみもそれを分かってるから部室を守ってるんだよな」
「な、何言ってるんですかぁ!私は別にそんな・・・・・・」
かすみは否定しているが俺も冬樹も気づいている。足に巻かれたテーピング、彼女が1人になっても練習を続けてきた努力の証が・・・・・・。
「そういうことにしておくよ。時間もないし早速行こうか」
「誰から説得しにいこうか・・・・・・」
「いや、説得よりも新しいメンバーを探す」
「えぇ!?なんでですか・・・?」
そういうことか・・・・・・
「いいかい、仮に4人に戻ってきたとしても彼女たちは同じことになる可能性がどうしても脳裏をよぎってしまう。だったら目に見えて新しい、前とは違うと思ってもらう方がそれも和らぐかも、冬樹はそう考えてるんだよ」
「さすが、よく分かってるじゃねぇか!」
「当てはあるのか?」
「1人だけな、多分秋介も知ってる人だ」
冬樹の後についていく俺とかすみ、2年の教室に入り冬樹が目的の人物に近づく。
「歩夢、ちょっといいか?」
「冬樹くん?どうしたの?」
「当てがあるって上原さんのことだったのか」
上原歩夢、クラスは違うが冬樹を通して一度だけあったことがある。2人は幼馴染だとかで紹介された。
「歩夢、スクールアイドルやってみないか?」
「ええっ!?私がスクールアイドル同好会に!?あんなふうに歌ったり踊ったりするの私には無理だよ!私なんかとは世界が違う感じだし・・・・・・」
「歩夢なら大丈夫だって!歩夢ならみんなを笑顔にするスクールアイドルになれる、オレが保証してやる!」
冬樹・・・・・・詐欺の常套句みたいなこと言ってるけど大丈夫か?
「かすみ、ああいう言葉に惑わされて詐欺に遭わないようにするんだぞ」
「かすみんが騙されやすい人だって言ってるなら心外ですっ!」
そういう人ほど騙されやすいんだよ・・・・・・。
そんな俺の考えとは裏腹に上原さんは笑みを浮かべていた。
「・・・・・・やっぱりすごいなぁ。・・・・・・うん、冬樹くんがそういうなら、私やってみる!」
「本当か!?」
「うん!これからよろしくね!秋介くんとえっと・・・かすみ・・・・・・さん?
「歩夢先輩は先輩なんですからかすみんって呼んでくれていいですよ!」
「でも、部活動ではかすみさんの方が先輩だし・・・・・・」
意外と上下関係を気にする子だったのか。かすみはそれがお気に召さないらしく
「もっとフレンドリーにしてくれていいんですよっ!これから同好会の仲間になるんですし〜!」
「フレンドリー・・・・・・あだ名とか?えっと・・・・・・中須かすみちゃんだから・・・・・・、かすかす?」
「ぎゃー!なんで昔のあだ名知ってるんですかー!?かすかすはダメですー!禁止禁止!」
そうやら『かすかす』は彼女にとって禁句のようでうっかり言わないように気をつけた方が良さそうだ。
「普通にちゃんづけでいいんじゃないか?」
「う、うん。これからよろしくね、かすみちゃん。私スクールアイドルって全然勉強したことないから和辛いことだらけだけど・・・・・・頑張るから、たくさんいろんなこと教えてね」
「もちろんです!スクールアイドルとしては、かすみんの方が先輩ですからねっ!」
「それじゃあ今度こそ元のメンバーの説得に行こうか」
「おう!」 「うん」 「はい!」
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次に向かったのは講堂。虹ヶ咲学園はマンモス校ということもあり相当大きな作りになっている。ここで現在、演劇部が練習をしている。ここに来たのは桜坂しずくさんの説得だ。だが練習の邪魔をするわけにはいかないのでここ数日は鑑賞をしながら待っているのだ。ちなみに上原さんは毎回同じ場面で感動して涙を流している。かすみの話によると桜坂しずくさんは演劇が好きなようでお芝居に活かすためにスクールアイドルを始めたという。最終目標は演劇みたいだが高校生の間はスクールアイドルに集中すると言っていたらしい。裏切られた気分になったのかかすみの目には涙が見える。話を聞いている間に練習が終わったようで桜坂さんがこちらん向かってくる。
「あ、あの、初めまして、桜坂しずくです」
「練習終わりにごめんね」
「いえ、大丈夫です。かすみさんは・・・・・・久しぶりっていうか・・・・・・、ごめんなさい、ですね・・・・・・」
「しずくさんのお芝居、すごく良かったです!何回見ても泣いちゃいます!」
「あぁ、素人目に見てもいい演技だってわかるものだったぜ」
「ありがとうございます。何回も観てくださったみたいで・・・・・・嬉しいです」
「しず子、どうして同好会来なくなっちゃったの?」
涙が落ち着いたのかかすみが桜坂さんに問いかける。
「かすみちゃん!?急にそんな・・・・・・」
「いや、オレたちには時間がないんだ、言い方は悪いが無駄話をしている余裕がない。ここは単刀直入に聞くのがいい」
「・・・・・・いえ、大丈夫です。ホントは、ちゃんとお話ししておかなきゃいけなかったことですから。ええと・・・・・・」
お芝居と同じくらいスクールアイドルに憧れがあったこと。だから高校生の間はスクールアイドルに集中するために虹ヶ咲に転入したこと。やりたいことが違ってもみんなの目指すもの、表現を見るのは楽しくて刺激的だった。特に優木せつ菜についていけばみんなが望むスクールアイドル像に近づけると思っていたこと。しかし、自分の目指す方向を伝えることができなかったことが悔しいと思い、優木せつ菜に感じ取ってもらえる表現力を磨くために演劇部で修行をしていたようだ。
「それならそうと言ってよ〜!かすみんすごい心配しだんだよ!?」
「余裕がなくて・・・・・・ごめんなさい」
「つまり、スクールアイドルを続ける気はあるってことでいい?」
「スクールアイドル活動をしたくて編入したんですもん。そう簡単になくならないですよ?」
「だったら戻ってきてよ〜!今、同好会の危機なの!」
「ええっ!?」
「生徒会長に部員が集まらなければ解散にする言われてんだ。だから今は部員を増やしてるところ」
「やだ・・・・・・私が勝手をしていたからですね・・・本当にごめんさい!」
「しずく、戻ってきてくれるってことでいいんだよな?」
「戻らせていただけるのなら!少しですけど、自信がついてきたところなんです」
「よかったね、かすみちゃん」
「よかったですけど、かすみんまだちょっと怒ってますけどね!?でもでもっ、しず子とは同学年だし、いないとさみしいし・・・・・・」
「かすみさん、ありがとうございます・・・・・・!」
実はツンデレっぽいかすみと桜坂さんの感動的な場面で今日は解散かと思ったが、
「あら、奇遇ですね」
「生徒会長!?」
「演劇部の公演を視察し来たら、ちょうどいいところに居合わせました。部員集めは順調ですか?」
「勿論です!パワーアップしたしず子が同好会に戻ってきてくれることになりましたからね!」
「かすみさん・・・・・・」
「この調子で10人集めるのなんであっという間です!」
桜坂さんが戻ってきてくれて自信がついたのか、生徒会長の前でも怖気付くことなく言い返すことができるようになっていた。これなら本当にあっという間かもな・・・・・・。
「ふふっ、楽しみにしてますね。それでは」
そのまま生徒会長は講堂から去っていき、その背中を見送る俺たち。
「・・・・・・私、やっぱりあの人、苦手です。むぅ・・・・・・」
「とりあえず、桜坂さんが戻ってきてくれたことだしこの調子で部員を増やすしかないな」
「あの、私のことは呼び捨てで構いません。かすみさんと同じ1年生ですし」
「私も歩夢って呼んでほしいな。今のままだと他人行儀みたいで遠慮してるみたいじゃない?」
「秋介、これから一緒にやっていく仲間になるんだ。少し距離を詰めた呼び方に変えてもいいんじゃないか?」
どうやら彼らの中で俺はもう同好会の一員になっているようだ。
「そうか・・・・・・しずく、歩夢。これでいい?」
「はい!」 「うん!」
「あれ?・・・・・・なんでかすみんは最初から呼び捨てだったんですかー!」
スクスタのストーリーって1話1話が濃密な内容ですよね。