秋介たちが果林の勧誘をしている頃、オレは一人生徒会室の前に立っていた・・・・・・
「オレの考えが正しければ優木せつ菜の正体は生徒会長のはず。これで違ってたら笑い者もいいとこだ」
前回、秋介にお小言をもらったことを反省して、コンコンコン、とノックをした。
「どうぞ」
中から返事が返ってきたのを確認してドアを開ける。室内には生徒会長、中川菜々が一人いるだけだった。
「今日はお一人でこられたんですか・・・・・・」
「あぁ、あんたと一対一で話に来た」
「私と?先に言っておきますが、同好会の解散期限の延長ならしませんよ」
「その必要がないことは知ってるんだろ?オレたちは今8人、いや、今日で9人になってるはずだ。あと一人で条件は達成する」
「9人?」
「ああ、オレとかすみ、歩夢、しずく、愛、璃奈、彼方にエマ、あと一人は今頃秋介達が勧誘に向かってるだろうな。これで9人」
「蒼井さんは違うんですか?」
「あいつはオレが最初に無理言って付き合わせちまってるだけだからな・・・・・・同好会が復活した後まで縛るつもりはねぇ。だから後一人、あんたを・・・・・・優木せつ菜を連れ戻しにきた」
「・・・・・・なぜ私が優木せつ菜だと思ったんですか?」
「さっき同好会のみんながせつ菜についての話をしてくれた時に違和感があったんだよ。スクールアイドル界で有名人の優木せつ菜、イベントに行けば必ず会えるが学校ではその姿を見たものはいない」
「そのようですね」
「だが、初めてここに来た時にあんたはこう言ったな。『せつ菜という生徒が同好会に亀裂を入れた』・・・・・・おかしいと思わないか?なぜ誰も会ったことがない生徒の所属する部活動の内情をあんたが知っているのか、ってな。あとは彼方が言っていた、隠れてるんじゃないかって言葉で、変装の可能性を考えて予想したってとこだ。確かに、生徒会長が変装してスクールアイドルをやってるなんて誰も思わないよな・・・・・・一応、オレの考えを話したが合ってるか?」
「・・・・・・あなたが話した通り、私が優木せつ菜です」
よかった〜・・・・・・あれだけ自信満々に話して間違ってたら大恥どころがなかったぞ・・・・・・
「今の同好会なら前みたいなことにはならない、だから戻ってきてくれ!」
「・・・・・・それはできません」
「なんで!?スクールアイドルが好きなんだろ!大好きがいっぱいの世界にしたいって思ってるんじゃないのか!?」
「私が大好きを押し付けたから・・・・・・同好会はうまくいかなかったんです・・・・・・私の大好きのせいでみんなを不幸にしたんです!」
「勝手に他人が不幸かなんて決めるな!かすみもしずくも、彼方もエマも不幸になってなんかねぇ・・・・・・そうじゃなきゃ、あんなに楽しそうにあんたの話をするはずがない。誰もせつ菜を恨んでなんかいない」
「それでも、怖いんです・・・・・・また自分の大好きにみなさんを巻き込んでしまうんじゃないかって」
「そのときはオレがいる。大好きが抑えきれなくなったらいつでも巻き込んでくれ!」
「・・・・・・本当にいいんですか?」
「あぁ、せつ菜の大好きをオレに見せてくれ」
「っ!・・・・・・はい!」
感情を抑えきれなくなったせつ菜の目から涙が溢れる。オレはせつ菜を抱きしめ、涙が収まるまでトン、トンとゆっくり背中を叩き続けた。
「さっきは、その・・・・・・ありがとうございます///」
「別に礼を言われるほどのことじゃねぇよ、気にすんな」
涙が落ち着いて冷静さを取り戻したせつ菜はさっきのことが恥ずかしかったのか顔を赤くしている。
「このことは絶対誰にも言わないでくださいね?」
「わかってるって、オレたちだけの秘密だ」
秋介の方はどうなったのか、スマホの電源を入れると一通のメッセージが届いていた。
『3年生の朝香果林さんが同好会に入ってくれた』
どうやら向こうもうまくいったみたいだな。
『サンキューな』
手短に返信して電源を落とす。後は明日みんなにせつ菜が戻ってきたことを伝えて同好会の活動を開始するだけだ。
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朝香さんが同好会に入ってくれて、冬樹が優木せつ菜を説得できていれば部員は10人、晴れて活動再開となる。部室には冬樹以外の全員が揃っている。ホームルームが終わった後に
「少し遅れる。部室に全員集めといてくれ」
と言われたのでこうして待っている。特にやることもないしソファに座って一人でぼーっと部室内を見ているのだが・・・・・・
「じーっ・・・・・・」
「・・・・・・朝香さん、俺に何か?」
「特に用があるわけじゃないから、気にしないで」
さっきから朝香さんが横から俺の顔を見てくる。本人は気にしないでと言っているが視界の端に映っているし気にするなというのは無理がある。
「果林さん、さっきから何してるんですか?」
朝香さんの行動に疑問を持っているのは俺だけじゃないようで歩夢が聞いてくれた。
「見てわからない?秋介を観察してるの」
「なぜそんなことを?」
「ん〜、なんとなく?」
「なんとなくって・・・・・・とりあえず離れてください」
「はーい」
そう言って素直に俺から離れてくれた。全く・・・・・・迷子になってた時とは大違いだ。
「それにしても・・・・・・冬樹先輩、なかなか来ませんね」
「愛さん待ちくたびれたー!」
「彼方ちゃんも、これ以上はすやぴしちゃうよ〜」
「秋介くんは何か聞いてないの?」
理由は予想できる。だが冬樹がみんなに何も言ってないことには何か意味があるのかもしれない・・・・・・単純に驚かせたいだけかもしれないが。むしろその可能性の方が高いな。まぁ、あいつの考えを尊重しておこう。
「部室で待つようにとしか・・・・・・けどそろそろ来ると思う。ほら、噂をすればなんとやらってね」
「悪い、待たせたな」
部室のドアが開かれ冬樹が入ってくる。
「冬樹先輩、遅いですよ!今まで何処行ってたんですか!」
「みんなに合わせたいやつがいてな。入ってこいよ」
「失礼します」
ドア部室に入ってきたのは生徒会長、中川菜々だ。
「合わせたい人って生徒会長?」
「でも何で・・・・・・璃奈ちゃんボード『ハテナ?』」
「何でって、オレが同好会に誘ったからだけど?」
「ええ!?それじゃあ、せつ菜先輩はどうするんですか!?」
「そうだよ・・・・・・確かに人数は集まるけどせつ菜ちゃんが戻ってこないんじゃ・・・・・・」
「せつ菜ならここにいるだろ」
「はい?せつ菜先輩が何処にいるって・・・・・・?」
「だから、オレの隣に」
生徒会長を指差しながら冬樹は答える。それに合わせるようにヘアゴムと眼鏡を外す生徒会長。
「これで信じてもらえたでしょうか?」
「「「「「「「「えーーーーっ!?」」」」」」」」
確かに、普段の姿と雰囲気が全然違うな。
「ほ、ほんとにせつ菜ちゃんだ・・・・・・」
「そ、そんな・・・・・・生徒会長がせつ菜さんだったなんて・・・・・・!」
「全校集会とかで見ていたはずなのに、もともとメンバーだったみんな気づかなかったの?」
「彼方ちゃん、その時間はすやぴしてるんで・・・・・・」
「全然気づかなかった自分のことがショックです・・・・・・」
「生徒会長とスクールアイドルの二重生活なんて反則です〜。かすみんたら、せつ菜先輩に向かってロボットとか言っちゃいましたよぉ・・・・・・」
「確かに言ってたなぁ・・・・・・」
「私も意地悪に接していましたからね、気にしないでください」
「というわけで・・・・・・これで10人集まった。みんな、これから一緒に頑張っていこうぜ!」
「「「「「「「「「おーーーー!」」」」」」」」」
・・・・・・これで俺の役目は終わりだな。冬樹が同好会に入る付き添いだったはずなのに随分長いこと一緒にいた気がするな・・・・・・。
「・・・・・・って10人?11人じゃなくて?」
「あれ?俺、同好会には入らないって言ってなかったっけ?」
「聞いてないよー!」
「璃奈ちゃんボード『ビックリ!』」
「そういえば、冬樹先輩の付き添いって言ってたような・・・・・・」
「そういうこと。でも嫌々やってたわけじゃないからそこは勘違いしないでほしいかな・・・・・・みんなのことは応援してるから頑張って」
俺はみんなの視線を背に部室から出ていった。
秋介が出ていった部室内、同好会は復活したものの、気分が上がる状況にはなれない。
「秋介くん・・・・・・」
「冬樹先輩はこれでいいんですか!?」
「と言ってもな・・・・・・あいつが言ってた通り、オレが付き合わせちまっただけだからな。これ以上オレから何かを言うことはできねぇ。それでもあいつにいてほしいなら、この同好会に
「・・・・・・!うん、そうだね」
「秋介くんもとっくに同好会の一員だって理解してもらわないと!」
「それではみなさん、秋介さんのところに行きましょう!」
「「「「「「「「「おーーー!!」」」」」」」」」
オレよりもみんなの、スクールアイドルの力を見せてやれ!みんなの想いは必ず届くはずだ・・・・・・
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翌日、数日ぶりに何もしない日になった帰り。前まではこれが普通だったはずなのに・・・・・・
「やることがないってのも考えものだな。いい機会だしバイトとか始めてみるか」
今更だらだらした生活に戻る気にもなれないし、将来のためにお金を貯めておくのもありだな。うん、これも高校生らしい日常だ。
prrr・・・・prrr・・・・・・
「電話・・・・・・」
俺のスマホに連絡先が登録されているのは家族と冬樹の4人しかいない。両親は仕事中で姉は登録しているだけで一回も電話したことはない。つまり、発信者は決まっているわけで
『白河冬樹』
「・・・・・・もしもし」
『おっ、出た!』
「同好会の活動してるんじゃないのかよ」
『安心しろ、これも活動の一環だ』
『先に言っておくが俺は『わかってる。お前を勧誘する気はない、オレはな・・・・・・』
「いました!秋介先輩、発見です!」
「・・・・・・そういうことか」
『オレはただの時間稼ぎ、マネージャーとして立派なサポートだろ?』
そう言って冬樹は電話に電話を切られた。
「それで?予想はつくけど、わざわざ俺を追いかけた理由を聞こうか」
「もちろん、秋介先輩を勧誘しにきました」
「言ったでしょ、同好会に入らないって。人数は揃ってるんだ、無理に誘う必要はないよ」
「別に無理誘ってるわけじゃないよ・・・・・・私たちが秋介くんと一緒にやりたいから誘うの」
「冬樹くんとかすみちゃん、そして秋介くんが私をスクールアイドルを誘ってくれたんだよ?私のスクールアイドルが始まったきっかけだから、一緒に頑張りたいの!」
「同好会を再スタートするきっかけを作ったのは冬樹さんと秋介さんですよ!」
「そうですよ!二人が部室に来たから今の同好会があるって自覚するべきです!」
「それに〜・・・・・・秋介くんがソロアイドルっていう新しいかたちを教えてくれたんだよ?彼方ちゃんたちが理想のスクールアイドルになれるようにサポートしてもらわないと〜」
「サポートなら冬樹がいれば十分ですよ。そういうのは俺には向いてないから・・・・・・」
「冬樹さん一人だと大変そう・・・・・・秋介さんがいると安心できる」
「『とりあえず一回やってみればいいんじゃない?』シュウが愛さんに言った言葉をそっくりそのまま言ってあげる!」
「私をその気にさせたのは秋介よ?それなのに肝心のキミがいないなんてあんまりだと思わない?」
「秋介先輩はとっくに同好会の仲間ですよ!それを自覚するまで毎日勧誘しに来ますから覚悟してください!」
「毎日は嫌だなぁ・・・・・・はぁ、わかった。同好会に入るよ」
「改めて、スクールアイドル同好会再始動です〜!」
みんなと部室に戻りかすみが元気に活動再開を宣言する。冬樹に目を向ければ、こうなることがわかってたような顔をしていて非常に腹立たしいが今回は水に流すことにしてやろう。
「まったく・・・・・・みんな自分勝手だ。俺はスクールアイドルに大して興味があるわけじゃないのに」
「あら、それはいいことを聞いたわ。つまり今は誰のファンでもないのよね?」
「そうですけど」
俺の返答を聞くと嬉しそうな顔をし、近づいてくる。目の前に来たと思ったら・・・・・・
チュッ
「・・・・・・は?」
「「「「「「「「「えーーーー!?」」」」」」」」」
頬を柔らかい感触が襲った。この人、俺に何をしたんだ?朝香さんの方を見ると、蠱惑的な表情を浮かべていた。
「秋介を私の虜にしてあげるから覚悟しなさい♪」
その日、寝るまで頬の感触を忘れることができなかった
ようやくスタートラインに立った気分。スクスタストーリーって50章以上あるんですね・・・・・・。終わりが見える日は来るのか?がんばろう