ハクメイとミコチがアラビにやって来た船を見物に行くお話です。

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定期的に見直すアニメとコミックにザワザワしてきたので投稿


ハクミコの二次小説が書きたい

あの世界の細やかさや丁寧さの世界観を書ける気がしない

でも少しでも書きたい

よろしいならば短編だ


2期祈願

 

 その日、ミコチが朝食の準備をしていると

 

「大変だミコチ!アラビの積木市場に"巨人の船"が来てるってさ!」

 

手に持った新聞をバサバサと振り回し、興奮した声で叫ぶハクメイにミコチは木の実のパンを切りながら

 

「"巨人の船"?何それ」

 

「知らないのかよ!?とにかくデッカい船でさ、なんでも昔からずっと動いてるらしいぞ、すげぇだろ!」

 

と目をキラキラさせながらバッと新聞をミコチの前に広げるハクメイにミコチはあまり興味が無さそうな様子でちらりと新聞に目をやる。

 

そこには太い文字で『あの巨人の船がアラビの市場に寄港中!』と書かれており

 

「って言われてもねぇ、大きくて古いっていうのはわかったけど…」

 

乗り気のハクメイに対し少し首をかしげるミコチ。

 

「見に行けば分かるって!絶対行くぞ!」

 

と勢いよく立ち上がるハクメイにミコチはため息をつきつつも

 

「しょうがないわねぇ…でもそこまで言うって事はハクメイは見た事あるんでしょ?」

 

「うーん、見たと言ってもまだ旅時代に遠目から少し見ただけだからなぁ。

でも見たら絶対凄いって!わたしも近くで見た事ないしな!」

 

勢いよく語るハクメイのその熱意に少し心を動かされていた。

 

幸いにもこの日は2人とも予定が無く、たまたま早起きしていた事もあり出発の準備を整えていく。

 

「よし!じゃあ行くか!!」

 

と2人して沼狸バスのバス停まで向かう。

 

昆虫が牽いてきた乗り合いのバスに

 

「これならアラビまで直ぐだな!」

 

「ちょっと、子供じゃないんだからあんまりはしゃがないの!」

 

と揚々と乗り込むハクメイとスカーフをしっかり押さえながら乗り込むハクメイ。

 

 

道中は特に何事もなくバスは順調に進み、やがてアラビの積木市場の賑わいが視界に飛び込んできた。

 

独特の積み重なった様な建築が建ち並ぶ積み木市場、そこでは小さな住人たちが忙しく動き回っており、その喧騒の向こうには大きく海が広がっていた。

 

そしてそこに浮かぶ目的の船。

 

「うわぁ!でかっ!想像よりすげぇぞ!帆柱がいっぱい並んでるじゃないか!」

 

バスを降りいつもなら市場を見回る所であるが、そのまま港まで向かうと目的の船は岸から少し離れた水面に浮かんでおり、なんと言ってもその大きさは圧巻の一言。

 

 

岸辺にはまばらではあるが見物の客であろう、人々が歓声をあげて"巨人の船"を見ておりその目線の先には、新しい木材と古い木材が混じりあう巨大な船体に、上には何本もの帆柱がまるで森の木々のように立ち並んでいた。

 

見物客か荷物の船か、巨大な船の周囲には小さな船達がまるで雛のように集まっており、想像より遥かに大きなその姿にハクメイが目を丸くして歓声を上げた。

 

ミコチも目を輝かせ、思わず呟く。

 

「本当に…とても大きいわね、どうやって作ったのかしら?

それにあの帆柱の数、やっぱりあれだけ大きいとそれだけの量がいるのかしら、新聞じゃ分からなかったけどすごい迫力ね」

 

「お、アンタらも船の見物かい?」

 

そんな歓声を上げるハクメイとミコチに近づく木箱を抱え、真っ赤な羽織を纏ったネズミが気さくに声をかける。

 

「あぁ!すげぇかっこいい船だな!近くで見ると思ったよりもっとすごいな!」

 

「でも、どうして接舷しないのかしら、こんなに大きいなら岸に寄せればいいのに」

 

ハクメイとミコチの言葉にネズミが肩をすくめて笑う。

 

「いやぁここら辺は遠浅でな、アイツはでかすぎてとてもじゃねぇが接舷できねぇさ、底を擦っちまうからな」

 

「お?その言い方って事はアンタは船の関係者か?」

 

「おぉ、仕入れの途中で、これから船に戻るところだ。

見物って事ならよかったらアンタらも乗っていくかい?」

 

そう言ってネズミは岸辺に停めてある小さな手漕ぎボートを指す。

 

ボートには木箱や食料品…干した果実や木の実の袋がぎっしり積まれ、隙間がほとんどないほどだったが

 

「乗る乗る!絶対乗る!」

 

「ちょっと待って…荷物で狭くない?座るところあるの?」

 

目を輝かせるハクメイと躊躇するミコチだったがネズミが「何とかなるって」と笑うのを見て、仕方なく乗り込むことにした。

 

「ハクメイが騒ぐからいつもこうなるのよね…」

 

「いいじゃん、楽しそうだしな!」

 

ネズミがオールを手に持つと、ボートは静かに水面を滑り始め、木箱の隙間に無理やり座ったハクメイが干した果実の袋に目をやり

 

「この木の実、うまそうだな!ちょっと味見してもいいか?」

 

と手を伸ばし、ミコチが慌てて腕を掴む。

 

「ちょっと、勝手に触らないの人の荷物なんだから!」

 

「ははは、まあ気持ちは分かるが商品なんでね、我慢してくれると有難ぇな!」

 

と言いながらネズミはオールを漕ぎ、ボートが巨人の船に近づくにつれその巨大さがさらに迫ってくる。

 

船はまるで壁の如く高く聳え、船体は古びた木の質感と修理の為か所々に使われた別の質感の木材が歴史を物語っていた。

 

「おーい!!客だ!降ろしてくれ!!」

 

船のすぐそばに着くと、ネズミがボートから甲板に向かって大声で叫ぶと甲板の端からガラガラと音がして、木の板とロープでできた装置がゆっくり降りてきた。

 

随分と使い込まれているのか分厚い板は黒ずみ、ロープも太くて頑丈でしっかりとした様子。

 

「すげぇ!これで上がるのか!面白そう!」

 

「落ちないか心配ね…手すりとかあればいいんだけど」

 

「ま、しっかり掴まってな」

 

の慣れた手つきでボートに積んでいた荷を降りてきた板に手早く載せると、三人はその板に乗り込んだ。

 

ギシギシと音を立てながら板は引き上げられながら

 

「古い部分の板はかなりデカいな…、切り出すだけでも大変だろうにどうやって作ったんだ?やっぱ巨人の船って言うくらいだし巨人が作ったのか?」

 

「あのねハクメイ、巨人なんているわけないじゃ無い」

 

「何でもあっしら"船守"の先祖が巨人から受け継いだって話さ。

巨人が木を切り倒して板を作ってからこの船を手漕ぎの船として作ったって話でな、だからこの船は"巨人の船"なんて呼ばれているのさ」

 

「はははっ!コレが手漕ぎの船だとしたらその巨人ってのはそれこそ牛よりデカいかもしれないな!」

 

「それにしてもいい景色ね!アラビが一望できるなんでなかなか無いわ」

 

「あそこは高い建物ばっかだし確かにな!」

 

そんな話をしながら3人は甲板へ、甲板に足を踏み入れると、二人はその賑わいに目を奪われた。

 

船の上部は広大な甲板で覆われ、甲板には木箱や布袋が積み上げられ、ところどころにロープで固定されている。真っ赤な羽織を着た人々が行き交い、「そっちに置け!」「早く運べ!」「そこの荷物、ずれてるぞ!」と大声が飛び交っており、船の全部と後部には整然と林立するマストにはそれぞれロープが張り巡らせてある。

 

中央の大きく開いた開口部には、数羽の鳥たちが木箱や小さな袋を咥え、掴んだ上で船内と甲板を行き来しており

 

「おぉ!?ミコチ!すげぇぞ、鳥が荷物運んでる!」

 

「凄い活気…、まるでここ自体が一つの市場みたい」

 

予想を上回る光景に2人は圧倒されるばかりであった。

 

「へっ、自慢じゃ無いがこの"巨人の船"はあちこち回っててな…ここヒノチは久々だがハルハンにケイ、ムカクにカナンカ、それからガダイ。

 

各国の物を色々揃えててな、今この船に来てるのもアンタらみたいな見物もいるが殆どはそこのアラビやマキナタ、他にもヤシロとかキオウとかこのヒノチのあちこちから来てる商人共だぜ。

 

だからアンタのいう市場ってのも間違っちゃいねぇよ、それから鳥達は何羽かいてな、みんなこの船専属の騎鳥便達さ」

 

「専属か!しかも何人もいるんだろ?そいつは凄いな!!」

 

「騎鳥便は知ってるけど…専属の人達もいるのね、みんなあちこち飛び回ってるんだと思ってた」

 

「その通り!おれたち"船守"と"鳥の者"達は長い付き合いらしくてその伝手でな、荷物の運搬の他にも航海中の風読みや陸地との連絡役なんかもやってもらってんだ」 

 

「テンの頭!お疲れ様です!!」

 

ネズミの説明にふむふむと頷くハクメイとミコチだったがそこに1人の男の声が響く。

 

「"巨人の船"へようこそお客人、俺はこの船を動かす"船守"の頭をやってるテンってもんだ」

 

そこにいたのは1人の男、野放図に伸びた髪は鳥の羽が刺さった黒いトリコーンと呼ばれる帽子で抑えられ、上は白いシャツに下は何かの皮で出来ているのか光沢のある黒いズボンと腰には曲刀が下げられ、そしてマントのように羽織った真っ赤な羽織には豪奢な金糸の縁取りが見てとれ、ただ者じゃ無い雰囲気を漂わせていた。

 

そして極め付けは自信満々なその表情、無精髭が見てとれるもののその顔はまるで悪ガキのように悪どい笑みを浮かべていた。

 

「へえ、あんたが頭か…どっちかと言うと物語に出てくる海賊みたいだな!」

 

「がはは!言ってくれるじゃ無いかお客人!まぁ良く言われるがな!!ズーミン、仕入れはどうだった!」

 

「へい!ばっちしでさぁ、取り敢えず買ってきたもんは既に83番倉に回してありまさぁ!」

 

「よし!後は大物を求めてる商人がいるからそっちの対応を頼んだぞ、15番柱に待たせてある!物は34番倉だ!」

 

「へい!じゃあお客人がた、あっしは仕事があるんでこれで失礼!」

 

それと共にハクメイとミコチを連れてきたネズミは慌てて帆柱が林立する方に走って行った。

 

「ちなみにわたしがハクメイでこっちがミコチだ、さっきの人が見学に誘ってくれてな、色々見せてもらってたんだ」

 

「そりゃいい事だ!見て!話して!是非俺たちの船を遠くまで広げてくれ!そうすりゃ俺ら"船守"が受け継いできたこの船ももっと大きくなるってもんだ!」

 

「ん?話を広げて船が大きくなるってどう言う事かしら?」

 

「へぇ、面白い考え方だな。

この船を知ってる者の範囲が広がれば、その分影響は大きくなりそれが船の大きさを示すって事か?」

 

「まぁザッと言えばそんな感じだな!俺たちの先祖は巨人と友誼を結び同等であり、その巨人からこの船を受け継ぎ、今に至るまで連綿と繋げてきた!

 

人々が知れば知るほどその大きさは世界に広がり大きくなる!だから見てもらうのは大歓迎だし、見た人々が他で話すのも大歓迎だ!」

 

と、両手を広げ大きな身振りと共に勢い良く言うテン。

 

「なるほどそういう考え方もあるのねー」

 

「面白いな!しかし巨人が作ったってのは本当なのか?伝説上の話じゃないのか?」

 

「わからん!」

 

「えぇ…」

 

「ん?頭って言うくらいならてっきりその辺りにも詳しいもんかと思ってたが…」

 

「俺が知ってるのは巨人から船を受け継いだ後に色々改造をしたって事くらいだな!

 

甲板を張ったり、内部を補強したり、帆柱を設置したりな!!」

「あ、やっぱ甲板は後付けだったか」

 

「ん?何か知ってたのハクメイ?」

 

「んにゃ、船の外板がめちゃくちゃデカかったのに甲板はわたし達にとっても普通のサイズだったから少し気になってたんだ」

 

「へぇ、そうなると船自体は巨人が作ったって説が出てくるのも頷ける話ね」

 

「良くみてるな、ハクメイだったか!そっちのミコチもこっちに来い折角の見物に来たんならこれも見せとかないとな!!」

 

そう言って歩き出すテンに2人はそのまま着いていくと

 

「おぉー!!確かにこりゃ迫力あるな!!」

 

「ちょっとハクメイ!あんまり身を乗り出さないで、落ちちゃう!!」

 

「ガハハ!驚いてくれりゃ何より、何と言ってもこの巨人の船の見どころは落ちりゃ甲板から船底まで真っ逆様のこの"奈落"だ!」

 

巨大な船の甲板中央に大きく開いた四角い開口部。

 

言ってしまえばそれだけの話であるがその大きさは船に比例して凄まじく大きく、ちょっとした建物でもすっぽり入りそうな程であった。

 

開口部…通称"奈落"の両辺にはミコチ達が船に乗り込む時に使われた物と同様の手回し式のエレベータが並び、人々が荷物を下ろすのに混ざって鳥達が荷物を掴んで下に降り立ったり、逆に飛び出て来たりと忙しなく動き、対角には底の方まで左右に折り返しながら続く階段が据え付けられていた。

 

その場にしゃがみ恐る恐る中を覗き込むミコチとは対照的にハクメイは開口部から見える中の様子に目を輝かせており

 

「なぁなぁ、中は見れないのか!さっき83番倉とか言ってたし中も滅茶苦茶広いんだろ?」

 

「悪ぃな、流石に中には入れられねぇよ」

 

「あー、やっぱり部外者はだめかしら?」

 

「いや、ただ単に危ねぇからな。

 

下は深いし、荷物もごちゃごちゃしてるし、広いし、暗いし落ちて迷子にでもなりゃ大変だからな」

 

「ちぇっ、見たかったなー、絶対面白いもんがあるだろ!」

 

テンの言葉に頬を膨らませるも納得したミコチの

 

「危ないなら仕方ないわね。確かにここから見ても深いもの」

 

との言葉に改めて開口部から中を覗き込む。

 

船底までの距離があまりにも遠く、壁面は何本もの木の柱で覆われ、船底の方では昼間にも関わらず明かりが灯されて、荷物の影がちらついていた。

 

「しっかし、こんなでかい船、よく風だけで動くもんだなー」

 

ハクメイが不思議そうに呟くと、テンが帆柱を指さして言う。

 

「その為にこの数の帆を張ってるからな、普通の帆船なら二、三本のマストがありゃ十分だが、この船の帆柱は前部五本五列、後部五本五列の全部で五十本。

操作するのは大変だが船守の一族が代々工夫して来てこうなった、風を読んでくれる優秀な乗組員もいる事だしな」

 

「たくさんあるとは思ってたけどそんなにあったのね…」

 

「じゃあ下がダメなら上ならいいよな!な!!」

 

と勢いよく手近の帆柱によじ登り始めるハクメイ。

 

「ガハハ!元気な嬢ちゃんだな」

 

「ちょっとハクメイー?落ちたらどうするのよー」

 

マストの表面張られたロープを使ってひょいひょいと器用に登っていくハクメイだったが

 

「こら小娘!!勝手によじ登んな、危ねぇから降りな!!」

 

見張りであろうか、上空を旋回していた小型の騎鳥便の一羽が飛んできてハクメイを軽くつつきながら警告した。

 

「ちょっとだけ、ちゃっとだけだから!だからいいじゃん!すぐ降りるって!」

 

「ハクメイー、迷惑になるから降りなさーい!」

 

そう叫ぶミコチと、なおも軽くつついてくる追い立ててくる騎鳥に

 

「分かったよ、降りるって!」

 

とまたスルスルと降りて行きしぶしぶ甲板に戻った。

 

「見張りご苦労さん!この調子で頼むぞ!」

 

「あいあいお頭」

 

対空していた騎鳥にテンが声をかけると1組はそう返事を返すと再び上空へ

 

「ちぇっ、せっかくいいとこだったのに…上から見たら絶対いい景色何だろうなー」

 

「ま、いい景色なのは認めるが上は"鳥の者"達の縄張りだぜ、邪魔すんなよ」

 

文句を言うハクメイだったがテンのその言葉に鳥達が旋回する空を見上げ、ミコチは開口部をもう一度ソロソロと覗き込み

 

「確かにこの大きさなら接舷できないわね、アラビの手前は潮が引いたら干潟が出来るくらいには浅いし…」

 

「あぁ、それもあってアラビには中々な…やっぱ手間がかかっちまうからな。

 

と、すまんが俺は外すからしばらく見ていくといい、後でさっきのズーミンを寄越すから、帰る時はそいつに言ってくれる。

 

何なら商人共と同じく色々買ってくれてもいいぞ、ハルハンの宝飾にケイの木材や乾菜、ムカクの古物にカナンカからは銀糸や絡繰、ガダイのガラス細工、他にも異国の飯酒などなど、何が欲しいかどんと来いってもんよ!」

 

テンの言葉にピタリと停止する2人、そしてそこから先は怒涛の勢いであった。

 

ミコチとハクメイは二手に分かれるとあちこちで行われている船守達と商人達の売買に混ざり込み、気づいた時には2人の両手には様々な商品が抱え込まれており

 

「おぅお二人さん、こりゃ随分と買い込んだみてぇじゃねぇか」

 

「いやぁ、珍しいもんが色々でつい…」

 

「仕方ないじゃ無い、高くて見送ってた外国の生地がこんなにお得だったんだもん…」

 

「ま、それだけ買い込んでくれりゃ上々ってもんさ。

で、この船は楽しかったかい?」

 

ズーミンのその言葉にミコチとハクメイは

 

「えぇ、とても活気があっていい船だわ。最初は乗り気じゃなかったけど見に来てよかった」

 

「だろ?わたしも楽しかった、大きさもそうだし話も面白かったしな!」

 

2人して頷きつつズーミンにそう返す。

 

「チチチっ!楽しんでくれたようなら何よりだ!さて、じゃあまた送り届けるからボートに乗りな!今度はゆっくり座れる…まぁお二人さんの荷物も多いがな!」

 

二人は少し名残惜しそうに甲板を見渡すとそのままズーミンに続き、来た時と同じく甲板縁のエレベーターへ向かい再びボートへ。

 

「しかしあれだけデカいのに一人一人が集まれば動かせるってのは普通に凄い事だよな」

 

ズーミンの漕ぐ手で離れていく巨人の船を見ながらハクメイは感慨深げに言う。

 

「そうね、風の力があっても凄い事よね。

そう言えばちょっと気になってたんだけど昔見たっていつ牛とどっちが大きいの?」

 

「うーん…多分だけど高さなら牛の方がデカいと思う、長さなら巨人の船の方が長いんじゃ無いか?」

 

「そうなるとやっぱり巨人って牛より大きかったのよね、あの船巨人が手漕ぎボートとして作ったって話しでしょ?」

 

「そりゃすげぇ!なら巨人はこの世で一番でかいのかもな!」

 

来た時に話していた事へのその結論に2人はクスクスと笑い合いボートはゆっくりとアラビへ、そして降り際に

 

「そうだ、お二人さん折角だからこれを持っていきな」

 

ズーミンが2人に渡したのは一本の根付、真っ赤な糸で編まれた紐に、先には巨人の船を模したのだろう小さな木彫りの彫刻。

 

「すげぇ!巨人の船の彫刻か!ありがとう!」

 

「へぇ、素敵な根付ね…ありがとう」

 

「気にすんな!たまに逆相手に配ってる土産さ、次は見学だけじゃなく是非"乗客"になってくれよな!」

 

そう言いながらズーミンは片手をあげて再びボートで漕ぎ出し、2人は市場の喧騒を背に、巨人の船を見ながら

 

「"乗客"だってさ、となると次はあの船で旅したいな!絶対楽しいって!それに乗客なら中も見れるだろうし!」

 

「そうね、後は里帰りでもいいかも、海路だったら早いかもだし…まぁ次に来るのがいつかわかんないんだけどね」

 

「ははは、そりゃそうだ!」

 

ミコチの言葉に笑って答えるハクメイであったが

 

「まぁ…その前に家の片付けね、こんなに荷物が増えるなんて思ってなかったし…」

 

「ははは…そりゃそうだな…」

 

異国の酒や乾物、布生地や細工物など、後ろに積まれた山に2人して乾いた笑いをしつつも

 

「よし!小骨に寄って行きましょう!冒険ばっかりじゃ疲れちゃうし休憩は大事よ!!」

 

「お!いいな、折角だしマスターへの話を肴に早速こいつをあけようぜ!」

 

そう言いながら巨人の船で買った酒瓶を掲げるハクメイ。

 

「いいから仕舞いなさい、さっさと行ってゆっくりするんだから」

 

と荷物を抱え上げるミコチと続くようにハクメイも酒瓶を仕舞い荷物を抱え上げると2人して行きつけの店である"小骨"にえっちらおっちらと向かうのだった。

 

 

そうして、二人の小さな冒険は終わりを迎え、二人はとてつもない疲労と共に小骨で飲みつぶれるように眠ってしまったが

 

「全く…子供じゃあるまいし、何て楽しそうな顔で寝てるんだい」

 

二人に軽く毛布をかけようとした丸メガネにバンダナの女性、この"小骨"の主人であるマヤが言うように二人はとても楽しそうな表情で寝息をたてていた。

 

帰り際に貰った根付を握り、まるで大海原へ航海に出た夢でも見ているが如く。

 

 

 

 

 





別名"転生者の足跡"

巨人はハクミコの世界でスローライフを送りたかった人。
古い時代に元の人間サイズで転生、スローライフどころかサバイバル生活スタート。
割と長い孤独な生活の末に小人達(ハクミコ世界におけるヒト)と遭遇、意思疎通に苦労したものの長い時間をかけ友誼を結び、巨人の船はその死の間際に友誼を結んだ"ヒト"達に贈られた。

これがテンやズーミン達"船守"の祖先であり、"船守"達は海において明るく見え易いという教えこそ失伝しているものの、伝統を守って真っ赤な羽織りを纏っている。

船本体は人間が作ったもので使われた板も人間が作ったので"ヒト"から見ればかなり巨大なサイズであり、甲板や内部構造、帆柱は船守達が長い時間をかけて自分たちでも動かせるようにした賜物である。

他にもこの世界線では人間が残した"巨人の〜"シリーズがあるかもしれない。
こっちの世界でも巨人伝説って割とメジャーだし、鬼の雪隠とか鬼の俎とか。



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