嫌われ生徒が頑張る話   作:かぼすみかん

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投稿再開したら思った以上に伸び始めて怖くなっています…またいつ投稿が止まるかもわからないのに、逃げ場をなくされているみたいで素直に喜べない…

今回は先生目線と、アザミ目線の二つの視点でお送りします。(ほぼ先生)


嫌われ生徒はすれ違う

 昨日、便利屋68からの襲撃を撃退した私たちは、その便利屋についての情報を共有するために教室に集まっている。全員が集まったのを確認すると、アヤネが話始めたので私もそれに耳を傾ける。

 

「私たちを襲ったのは「便利屋68」という部活です。ゲヘナではかなり危険で素行の悪い生徒たちとして知られています」

 

 アヤネが便利屋について話を進めて、他の生徒たちもそれに反応したりするの見ながら、自分の中でも考えを巡らせる。

 

 ゲヘナ学園にはまだ行ったことはないけど、あまり治安が良くないのだろうか。もし不良ばかりの荒れ果てた学校だったなら、先生として導く必要があるだろう。

 

 でも、初日に会ったチナツは良い子だったな。当然だが、学校にいる生徒全員が悪い子というわけではないだろう。それに、昨日見た陸八魔アルという生徒も、そこまで悪い子には見えなかった。

 

 そう感じたのは自分だけではないようで、ノノミも同じように思っていたらしい。

 

「あら……校則違反ってことですね。悪い子たちには見えませんでしたが……」

 

「いえ、それが今までかなり非行の限りを尽くしていたようで、ゲヘナでも問題児扱いされているようです」

 

 それは意外だ。柴崎ラーメンで会った時や昨日の様子を見ていても根っからの悪党って感じはしなかったのに。人は見かけによらないものだ。って、生徒の見本となるべき大人が偏見はいけないな。

 

 まだ先生としての自覚が足りないのだろうか、もっと気を引き締めないと。

 

 それよりも、何かが少し引っかかった。問題児というフレーズに既視感というか、最近別の場所でもそんな話を聞いた気がする。

 

「それにしても!昨日のあれはスカッとしたわ!味方の誤射が決め手になるなんてね」

 

 昨日の戦いで、セリカに狙撃を任せた後のことだ。セリカが銃を撃ったすぐ後に、近くの建物が爆発して便利屋68のリーダーのアルが瓦礫の下敷きにされたのだ。私が戦闘指揮をやめて、すぐに助けに向かうと、対策委員会のみんなも手伝ってくれてすぐに掘り起こすことができた。

 

 幸いなことに、ちょうど骨組みの隙間に収まるように瓦礫が崩れてきたおかげで大した怪我はしていなかった。キヴォトスの生徒たちの身体は不思議で、銃弾には強いけど包丁や紙、ガラスでも怪我をするし、転んで擦りむいたりもする。さすがに至近距離で爆発を受けると無事では済まないけど、死ぬことはないのだ。

 

 そのあたりの耐性はまだよくわかっていないけど、建物の倒壊に巻き込まれた場合、普通の人間のように最悪死んでしまうかもしれない。だから、敵対していようが関係なく一目散に助けに向かったのだ。

 

 アルを助けた後、少しだけ話をして私たちは教室に戻ったけど、あの後どこか骨折していたり、後から倒れたらしていないかが心配だ。

 

 なんてことを考えていたら、ホシノが発言したことで現実に戻される。

 

「それについてなんだけどさ〜。前衛で撃ってたヘルメットの子達は明らかに傭兵って感じだったけど、援護してた子銃弾…普通じゃ手に入らないものだよね?」

 

″普通じゃ手に入らないって?″

 

″どういうこと?″

 

 私はまだキヴォトスに来て日が浅いから、ヘルメットの子達の使っていた武器とホシノが言う普通じゃ手に入らないものの違いがわからない。

 

 そもそも私は、ここに来る前から銃について詳しくはない。キヴォトスに来て初めて本物の銃を見て驚いたし、銃なんて形が違うだけでどれも同じようなものだと思っていた。今はちゃんと勉強してある程度はわかっているつもりだ。

 

「それについても、次の話と関係があります。次は、セリカちゃんを襲ったのはヘルメット団の黒幕についてです!」

 

 私の質問の答えが返ってくる前に、アヤネが話を進める。セリカを襲ったヘルメット団と言うのは、アビドスに来てすぐに起きた出来事でセリカがヘルメット団に誘拐された事件のことだ。つい先日のことなのに、もう懐かしく感じてしまう。

 

 っと、いけない。どうやらホシノの言っていたことと関係があるらしいのでちゃんと聞こう。

 

「先日の戦闘で手に入れた戦略兵器の破片を分析した結果……現在は取引されていない型番だと言うことが判明しました」

 

「もう生産してないってこと?」

 

「それをどうやって手に入れたのかしら」

 

「生産が中止された型番を手に入れる方法は……キヴォトスでは「ブラックマーケット」しかありません」

 

 ブラックマーケット。初めて聞く地名?なのだろうか。名前からして闇市ということだろう。なるほど、ホシノの言っていたことにも合点がいった。

 

 多分、あの援護射撃をしていたスナイパーが使っていた爆発する弾、あれはコンビニとかでは売っていない、ブラックマーケットなどの裏取引などで手に入れた可能性が高いと言いたいのだろう。

 

「ブラックマーケット……とっても危ない場所じゃないですか」

 

「そうです。あそこでは中退、休学、退学……様々な理由で学校を辞めた生徒たちが集団を形成しており、連邦生徒会の許可を得ていない非認可の部活もたくさん活動していると聞きました」

 

 おや?てっきり闇市だから大人たちが危ない商売をしている場所なのかと思ったけど、学校に行けなくなってしまった生徒たちが集まる場所になっているのか。

 

 場合によっては大人同士で話をしなければならない状況も考えられたけど、そういった心配はなさそうだ。

 

 そうして話が進んでいき、ブラックマーケットを調査することになった。準備をしてその日のうちに向かうことになるけど、どうやら徒歩で行けてしまうような距離にあるらしい。

 

 砂と廃墟の街を進んでいき、市街地から人気のない場所に進んでいくと新たな喧騒が聞こえてくる。

 

「ここがブラックマーケット……」

 

「わあ☆すっごい賑わってますね?」

 

 セリカが呟くように言うと、それに反応してノノミも感想を述べる。

 

 たしかに、学校を辞めた生徒たちの集まるところだから秘密基地のような場所を想像していたけど、ひとつの地区として登録できるくらいの喧騒がある。それは、シロコも同じようなことを思ったらしい。

 

「本当に。小さな市場を想像していたけど、街ひとつぐらいの規模だなんて。連邦生徒会の手が及ばないエリアが、ここまで巨大化しているとは思わなかった」

 

 まったくその通りだと内心頷く。ブラック、なんてついてるのだから暗いイメージもあったけど、まったくそんなことはないようで屋台や飲食店が普通に営業していることに安心する。

 

「うへ〜普段私たちはアビドスにばっかりいるからねー。学区外は結構変な場所が多いんだよー」

 

「ホシノ先輩、ここに来たことあるの?」

 

「いんやー、私も初めてだねー。でも他の学区には、へんちくりんなものがたくさんあるんだってさー」

 

 少し意外だと思った。ホシノはアビドス高校唯一の3年生であり、アビドス学区に少なくとも2年以上、アビドス高校に入る前からもアビドスにいるならば3年以上はいるはずなのだ。それが、歩いて来れるような距離にあるブラックマーケットに来たことがないというのだ。

 

 ブラックマーケットが危険な場所だとわかっているから避けていたのなら危機管理意識があって良いと思うけど、逆に言えばそれだけ長い時間があったのにアビドス学区から出たことがないということにもならないか?

 

 アビドスの借金はホシノが入学した頃からあったらしいし、ずっと返済に追われていたとすれば相当大変だったに違いない。その頃に心の余裕はあったのだろうか。今のホシノは心に余裕を持てているのだろうか。

 

 この子は表に出さないだけで、今も昔も相当なものを抱え込んでいるかもしれない。

 

「ちよーデカイ水族館もあるんだって。アクアリウムっていうの!今度行ってみたいなー。うへ、魚……お刺身……」

 

「よくわかんないけど、アクアリウムってそついうのじゃないような……」

 

 どうやらアビドス以外の場所に興味を持てるくらいには余裕があると思っていいのかもしれないな。

 

 そんな気の緩んでいた私たちを引き締めようと、アヤネが注意した瞬間に銃声が鳴り響いた。

 

 全員が銃声の鳴った方向を見ると、1人の少女が複数人に追われながら走ってくるのが見える。

 

「待て!」

 

「う、うわああ!まずっ、まずいですー!!つ、ついてこないでくださいー!!」

 

「そうはいくか!」

 

 走っている少女は後ろを気にしながら走っているせいで前をみておらず、というかこっちに向かっていきてないか?このままだとぶつかってしまうんじゃ。

 

「わわわっ!そこどいてくださいー!!」

 

 ようやく前を見る少女だが、全力で走っていたのだから速度が乗っていて、急には止まれずにそのまま向かってくる。

 

 これはぶつかってしまうと思った時には、すでにシロコと少女はドンッと音を立てて衝突していた。

 

「い、いたた……ご、ごめんなさい!」

 

「大丈夫?なわけないか、追われてるみたいだし」

 

 ぶつかった時にシロコがうまく衝撃を受け止めてくれたおかげで、幸い怪我などはしていないようだ。しかし、逃げる足が止まってしまったため追っていた人物たちに追いつかれてしまった。

 

「何だおまえらは。どけ!アタシたちはそこのトリニティの生徒に用がある」

 

「あ、あうう……わ、私の方は特に用はないのですけど……」

 

 口ぶりからして一方的に追われているようで、なにかこの少女との間にいざこざがあった訳ではないようだ。

 

「……!!思い出しました、その制服……キヴォトスいちのマンモス校のひとつ、トリニティ総合学園です!」

 

「そう、そしてキヴォトスで一番金を持っている学校でもある!だから拉致って身代金をたんまりいただこうってわけさ!」

 

「拉致って交渉!なかなかの財テクだろう?くくくくっ」

 

 トリニティ総合学園か。たしかハスミもトリニティの生徒だったな、なんて呑気に考えている場合ではない。犯罪の現場に立ち会っているではないか。

 

「どうだ、おまえらも興味があるなら計画に乗るか?身代金の分け前は……」

 

 これはいけない。二人組の不良が私たちを犯罪な勧誘しはじめたではないな。ここは大人として注意しなければと思った次の瞬間には、シロコとノノミが2人の不良を制圧していた。

 

「悪人は懲らしめないとです☆」

 

「うん。」

 

 あっというまの出来事だった。素早く近づいたと思ったら手刀を一撃。人を気絶させるには打撃の衝撃を脳に伝えて、脳震盪を起こすのとできるらしいが、それを簡単にやってのける2人は流石だと思った。

 

 その後、助けられた少女、ヒフミというらしい。彼女からいろいろ話を聞いたり、モモフレンズという謎のコンテンツを布教されたりとしていたら、さきほど制圧された2人組が仲間を引き連れて大勢で戻ってきたのだ。

 

 私はタブレットを起動して戦闘指揮に入る。今回は街中で、あらかじめ防衛のためのバリケードなどがあるわけではないので、身を隠せるものが少なくなる。生徒たちの安全を考えながらも、自分自身の身を守るために気を引き締める。その時、視界の端を何かが通り過ぎる。

 

″………今のは″

 

「先生!よそ見している場合じゃないわよ!」

 

 セリカに叱咤されて、すぐに意識を戦闘に移す。だからだろう、私はその時横を通り過ぎていった影を気に留めず見逃してしまった。後になってから、見覚えのある少女だったのだと思い返すのだった。

 

ーーー

 

(面倒なことになりました……)

 

 良い気分でお店を出たのに、目の前では昨日襲撃したアビドスの人たちと、知らない生徒、そして不良の3グループがエンカウントしていた。

 

 この雰囲気だと、戦闘になるかもしれないと身構えていたら、あっという間に不良が制圧されていた。もし私が不良の人だったら、反応できずに同じように倒されているだろう。

 

 そのまま、何やら会話を始めてしまい、私は階段すこし降りたところから隠れて様子を伺うことしかできなかった。

 

 普通に横を通っていけばよいのでは、と思うかもしれないが、私は昨日彼女たちを襲撃したメンバーに加わっていたし、1人に狙撃されたのだ。もしこの中に私の顔を覚えている人がいたら、昨日のことで問い詰められたりする可能性があるから、安易に顔を姿を見せられないのだ。

 

 アビドスの生徒たちは、追われていたの少女と話しながら移動を始める、すぐにいなくなってくれそうでよかった、と思ったけど進行方向が私が向かいたい道と被ってしまっている。

 

 やっぱり私は運がない。この場所から彼女たちを避けて帰り道に向かうとすると、かなり遠回りな道になってしまうだけでなく、カツアゲやスリが頻繁に起きる道を通らなければいけなくなるので、できるならそのルートは使いたくない。

 

 仕方がないので、隠れながら後を追っていく。ついでに、昨日のことを何か話したりするかもしれないから聞き耳をたてるけど、妙なキャラクター、ぺろろって名前の鶏だろうか。それのグッズの限定品を買いに来たとか、アビドスの人たちも探し物があってブラックマーケットに来たなどの話だけで、昨日の襲撃については話さなかった。

 

 よく考えればそれも当たり前だ。初対面の間に昨日学校が襲撃された、なんて話をするわけがないのだから。私だって初めて会った人に昨日自分の学校が襲撃された何たら言われてもはいそうですかとしか言いようがない、

 

 それに、ゲヘナ学園では割と日常のことなのであまり驚くほどのことでもない。

 

 そうして隠れて聞き耳を立てていた私の耳が、アビドスの人たちとは反対の方向から大量の足跡が迫ってくる音を拾う。きっとさっきの不良が仕返しに来たのだろう。これは絶好のチャンスだ。そっちに気を取られている間に素早く横を通り抜けるとしよう。

 

 すると、思った通り、アビドスと不良集団がぶつかって、今にも戦闘が始まりそうな空気が流れる。お互いの意識は完全に敵を捉えているので、今のうちにそそくさと横を通り抜ける。

 

 走ったり屈んで歩いたりするとかえって目立つので、普通に何でもないように自然なままで横を抜けよう。

 

 物陰から平然としたまま歩いて出ていく。戦闘の準備をしている横を静かに歩いて素通りしていく。

 

(…大丈夫、誰も私を見ていません…)

 

 そのまま通り抜けてしばらく歩いた後、だんだんと足早になり駆け足でブラックマーケットを出ていく。背後からは銃声が鳴り始めて、戦闘が始まったことを知らせてくる。

 

(うぅ…緊張しました…!まだドキドキしています……!)

 

 気分は宛ら、ホラーゲームで目が見えないクリーチャーの横を音を出さないようステルスしながら通り抜ける感覚だ。バレたらまずいと、体や表情はどうにか平静を保っていた方、心臓はバクバクと音を立てていたし、今にも走り抜けたいくらい怖かった。

 

「はぁ……ついてません……」

 

 大きなため息を吐きながら、自分の不運を再認識して帰路に着くのだった。




瑠珠アザミの情報⑩

着ているロングコートの内側は複数のポケットがあり、いろんなものが入っている。
夏は前を開けていれば涼しくて、冬はボタンで閉じると熱が籠り暖かい。
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