嫌われ生徒が頑張る話   作:かぼすみかん

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アザミのキャラ設定だと清楚系だったはずだろ!どうしてこうなった!

答 作者の癖

誤字修正していただける方々は本当にありがたいです。
終盤の内容を少し変えました。


嫌われ生徒は黒服と出会う

「という経緯でして……」

 

「なるほどー。誰もいないからって、そういうことをしていたわけではなかったんですね!」

 

 私は全力で首を縦に振った。

 

 ノノミさんに裸を見られた時は、とんでもない怪異をされたようで「もしかしてお邪魔でしたか?」なんて言われたけど、すぐに説明した誤解は解けた。

 

 しかし、私の服はまだ洗濯中なのでもうしばらくは布一枚で待機する事になる。そこで、ノノミさんが私の服の乾燥が終わるまでの間付き添ってくれる事になった。

 

 待っている間、お互いのことやゲヘナのこと、アビドスのことなどの話してを暇を潰すことにした。

 

「この辺りだと、紫関ラーメンというお店が安くてとっても美味しいですよ!」

 

「柴関ラーメンですか……ノノミさんがおすすめするなら、行ってみましょうか」

 

「はい!ぜひ食べに行ってくださいね!」

 

 アビドスの美味しいお店の話で、ノノミに紹介された柴関ラーメンというお店をスマホで検索する。市街地の中にあるお店だが、周りに他の飲食店があるわけではなく、ビルなどが並ぶ通りの中にポツンと営業している穴場のようなお店みたいだ。

 

 レビューや評価も良くて、載せられているラーメンの写真がとても美味しそうだ。近いうちに必ず行こうと心の中で決めておいた。

 

 乾燥が終わり、洗濯機の中の衣服をカバンに詰め込んでから、着るものを取り出してノノミに見守られながら身につけていく。家ではない場所で、しかも人前で下着から服を着ていくなんて初めての経験である。いろいろなものを見られてしまったけど、ノノミが相手なら無条件で許せてしまう。

 

 ノノミとはモモトークを交換して、それぞれの用事があるのでそのまま別れる事になった。

 

 コインランドリーで洗濯を終えた後、市街地の中にある銭湯へと向かっていく。衣服は綺麗になったが、体は不衛生なままなのだ。さっきコインランドリーの中でかいた冷や汗で、全身が少しべったりしていて気持ちが悪い。

 

 銭湯に行ってからお風呂に入るべきだったと思ったが、結局汚い服を着る事になるので同じことだと受け入れた。

 

 体に気持ち悪さを感じながら、早くお風呂に入りたい一心で早足になる。後少しで銭湯に着くというところで、予想外のことが起こる。

 

「初めまして。運命の女神、瑠珠アザミさん」

 

「…………どなたですか?」

 

 その人物は道を塞ぐように私の前に立ちはだかり、シワのない整った黒いスーツのポケットに手を入れている。頭は真っ暗で、まるで片目が燃えているかのように白い光を放ちながら煙が出ている。口はニヤついたようにひび割れていて、ただものではない雰囲気を醸し出している。

 

「私のことは好きに呼んでいただいて構いません」

 

「では……まっくろさん。私に何か御用でしょうか」

 

「クックック……少し長話になるので、場所を変えませんか?」

 

「それは、今じゃなければいけませんか…?」

 

「私もこの後用事ができそうなので、お早めが嬉しいです」

 

 銭湯に行きたかったのに、不審者に目をつけられてしまったせいでまっくろさんに着いていく流れになっていことを不服に思う。なので、この大人を利用しようと思う。

 

「私も用事があるのにあなたに付き合わなければいけませんので…お話をするにも条件があります」

 

「構いませんよ。突然声をかけたのはこちらですので。それで、条件というのは?」

 

 この大人は大したことでもないように条件を聞いてくる。ということは、条件を受け入れてでも私と話をしたいということだろう。それならばよっぽどのことじゃない限り断られることはない。それとも、この大人ならばどんな無理でも聞けるのだろうか。

 

 さてここが重要な問題だが、相手がある程度の条件ならば飲んでくれると言っているのなら、条件の選択は慎重に選ばなければならない。銭湯に行けなかったからお風呂に入れてくれ、なんて条件では割に合わない。かと言って大きすぎるものだと反故にされかねない。

 

 ともなれば、反故にされない程度のものか、絶対に反故にできない条件を飲ませればこちらの勝ちだ。何に勝っているかはわからないけど。そして、私が提示する条件というのは。

 

「これにサインしていただけませんか?」

 

「……これはこれは」

 

 その場でスマホでパパッと作ったそれは契約書であり、内容はこうである。

 

【居住提供契約書】

 

本契約は、当事者間の自由な合意に基づき、以下の条項に従って締結されるものである。

 

第1条(目的)

乙は、甲に対し、甲が安全かつ安定して生活できる住居(以下「本件住宅」という)を提供する。

本件住宅の所在地が変更された場合も、乙は同等の条件で住居を提供し続ける義務を負う。

甲は、乙の提供する本件住宅に居住することを承諾する。

 

第2条(費用負担)

乙は、本件住宅に関する家賃・光熱費・維持費その他、居住に必要な一切の費用を負担するものとする。

甲は、これらの費用を支払う義務を負わない。

 

第3条(契約の継続)

本契約は、甲が本件住宅の提供を希望する限り有効に継続する。

乙は、いかなる理由があっても、この契約を一方的に破棄または解除することはできない。

 

第4条(契約の終了)

甲が自らの意思により契約の終了を申し出た場合、本契約はその時点をもって無効となる。

 

第5条(準拠および信義)

本契約の効力および解釈は、当事者間の信義および合意に基づいて行うものとする。

 

以上の内容を相互に確認し、双方の意思により本契約を締結した証として、本書二通を作成し、甲乙それぞれが署名または記名捺印のうえ、各自一通を保有する。

 

 契約書下部には、甲として瑠珠アザミと、乙としてこの大人の名前を記入する部分がある。

 

 この契約書を簡単に要約すると「家ください。家賃払って、役目でしょ」という感じである。しかもまっくろさん側から契約を破棄することはできないから、今後ずっとまっくろさんは私を養わなければいけなくなる鬼畜な契約だ。

 

「まさか、私にあなたを養えと?」

 

「嫌なら結構です……あなたと私はここでお別れするだけです」

 

「ふむ………いいでしょう」

 

「えっ…」

 

 この人は正気だろうか?女の子一人と話をするためだかに家を買い与えるなんて気が狂っているとしか思えない。しかもこの契約では持ち家を建てるのではなく、賃貸で半永続的にお金を払い続けるのだ。そのうえ、引越しし放題。どんなに高い賃貸でもまっくろさんはお金を払わなければいけなくなる。

 

 別にこの大人を苦しめたいわけではないから、高級マンションに住んだり引越しを繰り返したり、複数の賃貸をもったりなど人の心が欠如しているようなことはしないけど、これはそういうことをされるかもしれない契約なのだ。

 

 そうまでして私と話がしたいというこの男性、一体何者なのだろうか。私は不審に思いつつも、コンビニで印刷した契約書にサインと指印までしたこの男の目的に付き合わなければ無くなってしまった。

 

 市街地にあるビルの一つに、大人の男性と二人で入っていく。側から見れば事案もいいところだ。エレベーターで階層を上がり、薄暗いオフィスの中へと案内される。

 

「それで……長話とは……?あ、請求書などは家が決まりましたら送りますので、連絡先をいただけませんか?」

 

「ええ、もちろんです。クックック…まさか家を買わされる事になるとは」

 

 まっくろさんは窓の外を遠い目で見た後、椅子に座って机に肘をつく。そして胸の前で指を組んで語り始めた。

 

「私は、キヴォトスの外から来た者で、観測者でした。しかし、この世界に存在する神秘という概念、不確かだが確かに存在している何か、それはキヴォトスの外と何らかの繋がりがあると私は考えています。そして、生徒としての姿から解き放った時、存在は反転して真の姿が顕現する。そう考えています」

 

 この人の話していることはよく理解できない。これを私に話して何になるのか。

 

「つまり、何らかの要因で反転させることができれば、キヴォトスの外との関係や神秘とは何かという真実に近づける。私はその研究をしているのです」

 

「ーーーーさん、そのあなたの研究と、私には一体なんの繋がりがあるんですか?」

 

「本名で呼ぶのはやめていただきたいのですが……。えぇ、私の研究とあなた自身にはこれと言った接点はありません。ですが、あなたのもつ神秘とは大いに関係があります」

 

「私の神秘……?」

 

「そう……しかしあなたはそれを知らなくて良いのです。瑠珠アザミさん。あなたの神秘は、顕現すらせずにその力を発揮しているのですから。原因はわかりませんが、あなたがそれを知ることで今の状況が変化するのは避けたいのです。」

 

 私の神秘というものについて何か知っている口ぶりだが、私に教える気はないらしい。存在が反転して顕現する何か、その何かが持つ神秘という力。私はその力を反転や顕現することなく使っているということまでは理解できた。

 

 理解できたと言っても、イカれた妄言や幻想の話を「何を言ってるのかわからないがなんとなく言いたいことはわかった」くらいの解釈で理解しただけ。

 

 例えるなら、思春期の子供が妄想の中で戦う時に、かっこいい技名を言ってから擬音を発して状況を説明している状況だ。技名からなんとなくこんな技なのだろう。擬音から、こういうことが起きているのだろう。そうした、なんとなくで話を理解している状況。それがちょうど今だ。

 

「……なるほど。しかしわかりません……今の話からでは、私の住む家の費用を肩代わりするほど私に執着するような理由が見えません。こうしてあなたの考察を教えられても、結局私は何もしないくて良いのでしょう?」

 

「その通りです。あなたが何をしても、何もしなくても。決められた運命を辿っていくだけですから……」

 

 そうして、まっくろさんとは一度話を締めくくるように息を吐く。次に吐いた息を再び吸い込んで、指を組む手に力が入る。

 

「しかし……私は気になってしまったのです。何をしても結末が変わらないとしても、その過程は大いに捻れていくはずだと。その捻れはどこまで広がっていき、変化を交えながら結末へと進んでいくのか。私の探究心が!あなたの神秘が起こす可能性を追求したいと叫んでやまないのです!」

 

 ポワッとまっくろさんの目が大きく燃え上がったような様子を見せると、まっくろさんは深呼吸をして冷静になり、体の力を抜いているのがわかる。

 

「本題に入りましょう……これは取引というより、お願いに近いでしょう。しかし、住む家を与えているのですから、あなたなら少しは聞いてくれると思っていますよ。瑠珠アザミさん」

 

「………」

 

 つまり、まっくろさんは私があの契約書を出してサインした時点で、私は少なからず罪悪感を感じて多少のお願いなら聞くと思っているのだ。その考えは正しい。私も自分の生活を支えてくれる相手に何も返さないというのは心苦しく思うから。

 

「お願いというのは……?」

 

「たいしたことではありません。私が伝えた場所にあなたが行って欲しいというだけのことです。そして、あなたが関わったことでどのような変化があるのかを見せて欲しいのです。おそらくこのキヴォトスで最も外との繋がりが強いあなたなら、私の追い求める真実に辿り着けるはず、それだけです」

 

「よくわかりませんが……私はあなたに言われた場所に行けば良いのですね?」

 

「端的に言えばそうですね」

 

 直接私が何かをするわけでない。私がこの人の言う場所に行って、私がいることでどう変化するのかを知りたい、ということなのだろう。なぜそうするのかはわからない。私がいることで一体どんな意味があるのだろうか。

 

 彼の言うことはまるで、未来を知っているかのようだ。決まった結末に向かう過程の変化、それは未来が決まっていると言っているのと同じことだ。

 

「あなたは……未来を知っているのですか?」

 

「いえ、未来を知っていると言うことではありません。私はあなたの神秘から考察したにだけなのです。運命があるということは、向かうべき先があるということであり、その過程がいく通りもの分岐をしたとしても、必ず最後には一つの道に辿り着く。つまり、運命によって定められた未来があるとわかっているだけで、私自身が未来を知っているわけではないのですよ」

 

「難しいことばかり話しますね……ともかく、何となくわかりました」

 

 私がまっくろさんを生活のために利用するように、この人も私を自分の目的のために利用する。そういうことでいいんだろう。

 

 私はまっくろさんに近づいていき、机越しではなく横に立つ。どちらかが一方的に利用するのではなく、対等に利用し合う関係だからだ。そして、握手のために手を伸ばすと、まっくろさんも椅子から立ち上がり手に伸ばす。

 

 その行動は、お互いに承諾したことを意味して、その証に握手を交わす。

 

「よろしくお願いします。まっくろさん」

 

「よろしくお願いしますね、瑠珠アザミさん……そして」

 

 真っ黒さんは、より一層目の光を強めながら私に聞こえないほどの小声で呟く。

 

「期待していますよ、運命の女神」

 

 そうしてお互いの関係が定まった時、エレベーターが到着した音が鳴る。

 

「おや……もう一人のお客さんが来てしまいましたね」

 

「でしたら、手短にモモトークを」

 

「そうですね。

 

 まっくろさんはスマホを取り出して、お互いのモモトークを交換する。交換が終わると、帰ろうと部屋をフロアを出てエレベーターに向かう時に、対面から誰かが歩いてくる足音がする。すれ違う時に相手に視線を向けてみると、入ってきたのはアビドス高校の生徒だった。




瑠珠アザミの情報⑫

ヘイローの形は舵輪
前髪で目が隠れていて、運命の女神と黒服に呼ばれている。

神秘と色彩についての設定で良いものが浮かんだけど、それを話に組み込むの難しい。
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