不定期投稿にしても間が開きすぎました。
まっくろさんとの話を終えて、お風呂がまだだったりご飯を食べていなかったりと少し不機嫌になる。さっさとお風呂に入ろうと走って銭湯に向かう。汗をかいてしまうが、どうせこの後お風呂に入るならいっそ汗だくになった方がさっぱりするだろうと開き直っている。
汗でベタベタになった体で服を脱いで、肌着と下着が酷いことになっていることにため息を吐きながらも風呂場を入っていく。広い風呂場にずらりと並んだシャワーの一つに座り、頭からお湯をかぶると大量の砂が混じって泥水のようになって流れる。
流れていく汚水を見ながらゾッとする。アビドスて行動するとこんなに砂を纏ってしまうのか。今までで一番しっかりと体を洗ったのではないだろうか。シャンプーも2度使って髪の毛の一本一本を個々に洗うような丁寧さで、念入りに髪と体を泡まみれにしていく。
体を流しているときに、お腹が空腹を訴える音が鳴った。今の時間はまさにお昼時といった時間で、朝ごはんを食べていない私はこの時間になると急激にお腹が空くのだ。
これを放置していると吐き気がしてくるからさっさと胃に何か詰め込みたいのだが、湯船に浸かってゆっくりしたいという気持ちもある。とはいえ、落ち着きたい時に不快感があるとリラックスなんてできないのでシャワーだけを浴びて風呂場を出る。
下着は仕方ないとして、汗が染み込んだ肌着はさすがに着たくなかったのでビニール袋に入れてカバンに詰め込んだ。肌着を着ずに制服だけを身につけると、少しだけ涼しかったので結果オーライだった。
私の制服は白ではなく黒いシャツの制服なので、汗で透ける心配はなく、そもそも暑いアビドスで肌着を着る方がおかしいのだと今更になって気づいた。
銭湯を出るとまたお腹が音を鳴らすので、ノノミさんに聞いた柴関ラーメンに向かう。安くて美味しいと言っていたし、節約中の今はとてもありがたい情報だ。安いと言ってもどれくらいの安さなんだろうか。
私がお昼に使えるのはせいぜい500円。アビドスの相場は、人口の少なさや砂嵐などの影響で高くなっているという情報もあったし、アビドスのコンビニではおにぎり一つでも150円するのだ。
あまり食べない体質だとしても、朝と昼のエネルギーを補充するためにもそれなりの食事をしなくてはならない。
値段がどうであれ、友人におすすめされたのなら食べる以外の選択肢はないので、柴関ラーメンに向かったのだけど。
「………えっ?」
私が唖然としながらその場に立ち尽くすのも仕方がないことだろう。なぜなら目の前で目的の店が爆発したのだから。
爆風と衝撃が頬を撫でても、目の前の惨状に衝撃を受けた体は瞼を閉じるなどの反射もせずに瓦礫を見つめていた。
地面に横たわった柴関ラーメンという文字が彫られた看板。散乱するラーメン皿の破片。そして降ってきた便利屋68のリーダー、完全に白目を剥いて気絶している。
「えっ……え?」
よく見ると他のメンバーも倒れている。かろうじて気絶はしていないようだが。
「こほっ…こほっ……なにが」
「あっ……あ…の……」
声が震えている。現状を知るにはこの人たちに聞く以外ないだろう。しかし、私はこの人たちにトラウマを持ってしまったらしく、うまく言葉が出ない。呼吸が浅くなり、震える手で胸を押さえて、頬を伝った汗が顎から滴となって落ちる。思い出すように腹部が痛くなり、足も震えてきた。
そんな私を見つけた、このトラウマを植え付けた相手が私に向かって声を低くして問いかける。
「瑠珠…アザミ………まさか、あなた」
「いや、これはあんたの地雷のせいでしょうが」
「いったた……あれ、アルちゃんは?」
「ゴホン、ゴホン……う、うああ……。な、何これ!?なにが起きたの!?」
当然だが私が何かしたわけではなく、どうやらあの子が地雷を仕掛けていてそれが爆発した結果こうなった。ということなのだろうか。にしては、爆発の規模が大きすぎる。いったいどれだけの火薬を使ったのだろうか。店一つが吹き飛んでいるでないか。
いまいち状況が掴めないまま、便利屋68たちの会話を眺めることしかできず、立ち尽くしているところに先生を連れたアビドス高校の面々が駆けつける。
「そういうことだったのね!!」
大声を出して、自分達の視線を集めたのはアビドス高校の黒いツインテールの少女だった。
「あんたたち……!!よくもこんなひどいことを!!」
少女は便利屋68たちを鋭い目で睨みつけている。ここはアビドス自治区の中であり、アビドスの建物を破壊したのだから、怒るのは当然のことだと思うが、彼女の怒り様はそれだけが理由ではないように思えた。
彼女の後ろに知っている顔がいたので、そそくさと後ろに逃げて声をかける。
「あ…あの、ノノミさん」
「アザミちゃん…!柴関ラーメンに来てくれたんですね。嬉しいです…けど、すみません。こんなことになっているなんて」
「は、はい……いえ、その…私も…なにがなんやら……それより…申し訳ありません…せっかくおすすめしていただいたのに…食べることができませんだした…」
せっかくノノミさんがおすすめしてくれたお店なのに、食べるどころか、入店する前になくなるとは誰が思おうか。そして、ここでノノミさんと出会うなんて思っていなかった。ラーメンを食べれなかった悲しみよりも、ノノミさんに対する申し訳なさの方が大きく、罪悪感で胸が痛い。
「アザミちゃんは悪くないですよ!でも、よかったです。アザミちゃんが巻き込まれていなくて」
「えっ、あ、はい……その…初めて…無事なことを、良かったと言われました…」
「えぇ!かわいそうです…アザミちゃんの周りは、そんなひどい人ばかりなんですか…?」
「い、いえ…本当は、みなさんいい人なんです……ただ、私が…」
私が、なんなんだろう。私が悪い?違う、私は巻き込まれてる側の被害者。私が誤解させる行動をしてるから?違う、私がそうしてるわけじゃない。私は好きで嫌われてるわけじゃない。私はただ普通に過ごしてただけなのに、結果的に嫌われている。私に悪いところはないのでは?
なら、悪いのは私じゃなくて、周りの人だ。周りの人は悪い人ばかり、いい人なんて。
「アザミちゃん…?」
「いえ……私がなにかしたわけではないのですけどね」
いつのまにか俯いていたのだろう。視界いっぱいに私の顔を覗き込むノノミさんの顔が映った。あんなことを考えた後じゃなければドキッとしていたかもしれない。
私とノノミさんが話をしている最中、便利屋68とアビドスの生徒が銃を向け合って、今にも戦闘が始まりそうな一触即発の空気を漂わせる。
そんな時、突然近くで爆発が起こる。柴関ラーメンを爆破した爆弾の残りが今になって爆発したわけではない。続けざまに空から降ってきた塊が着地と同時に爆発する。
「迫撃砲……それに、あれは……」
見覚えがある。いや、確実に知っている。私が逃げてきた学校で散々見た。私が過ごした自治区で散々見た。
そして、私自身が散々嫌な思いをした相手だ。
「風紀委員会…」
「……イオリ。あの方たちはどうします?」
「ん?ああ、向こう側の生徒?なんだっけ……アビドス?って…あれは……瑠珠アザミ!」
イオリの声に、周りにいた風紀委員たちがざわめく。
「瑠珠アザミだって…?」「あいつ、ゲヘナからいなくなったかと思えば別の自治区で…」
「瑠珠アザミ!もう言い逃れはできないぞ。便利屋68と一緒にいるってことは、なにかしら関係があるみたいだな。現行犯で逮捕する!」
イオリが狙撃銃を構えて容赦なく発砲してきた。ギリギリのところで外れて、私は即座に身を隠す。近くにいたノノミさんの手も引いて。
「きゃっ!!」
「ノノミさん…!」
手を引いて隠れたつもりだったが、直前で銃弾がノノミさんに命中した。
「ごめんなさい…ごめんなさい…!私の近くにいたから…」
「いたた……だ、大丈夫です。気にしないでください。それより…」
遮蔽物越しに向こう側の様子を伺うと、私が隠れたことで次は迫撃砲を撃つように指示を出している。このままここにいてはノノミさんまで巻き込まれるだろう。それだけはいけない。
「ノノミさん…私が…お、囮になります…風紀委員たちは、私を狙うはずなので…ノノミさんは…私が移動してからアビドスの方達と合流してください」
「でも、アザミちゃんが危ないですよ!それに…」
ノノミさんが私の両手を包むように握ってくる。ふと自分を見れば、握られている手も、足も、肩も震えている。私は無意識に怖がってしまっているようだ。
それでも、私はノノミさんが私のせいで傷つく方が怖いのだ。
「大丈夫です…私を信じてください…」
この間の記憶が蘇った。陸八魔アルに言われた言葉だ。あの時、私は自分を運が良いなんて思わなかった。自分が傷つかないことで他人から嫌われる。無事でいることで周りから嫌な視線を向けられる。なにが幸運だ、こんなものは呪いだと思って否定した。
だけど、今は。
「でも……」
「あの…ノノミさん…もし、また会えましたら……その、ラーメン、一緒に食べてもいいですか?」
「もちろんです!だから、絶対無事でいてくださいね!」
「はい、絶対にまたノノミさんに会いにきます……私はどうやら、運が良いらしいので…」
今はノノミさんのために、この呪いが役に立つのなら。それはどれほど幸運なことなのでしょうか。
ノとゾが似ていて、スマホの我慢が暗く、いつのまにか変換にノゾミがいては皆さんも気づきませんよね?そうだと言ってください。すごい冷や汗かきながら修正しました。