学生寮から必要なものだけまとめ、ゲヘナを離れて電車に乗る。
行き先はアビドス。住民が少なく、砂漠に飲まれつつある場所ならば、周りに不幸を与えることも少なくなると考えての決定だ。
電車に揺られながら到着を待っていると、突然電車が急ブレーキで停止する。何か問題が発生したのは明白だろう。
『この電車はあたしたち、ゴトゴトヘルメット団がジャックした!全員、武器とスマホを廊下に置いておとなしくしろ!』
電車のスピーカーから首謀者と思われる少女の声がすると同時に、車両の前方と後方の座席にいた乗客がヘルメットを被って武器を構える。
彼女たちは車内放送主の仲間で、放送を合図に各車両を制圧するという作戦で動いているため、ほかの車両も同じような状況である。
「おい、お前もさっさと携帯を捨てろ。撃たれたいのか?」
通路に置かれた携帯と武器を回収していたヘルメット団員が、アザミに向けて銃を構える。
「…どこへ行っても、こうなるのですね」
諦めたように光のない目で前の座席を見続けるアザミに、若干の不気味さを感じながらも威嚇射撃として頭のすぐ横を撃つ。
「次は当てるぞ」
「好きにしてください」
威嚇射撃に、一ミリも動かないアザミに痺れを切らし側頭部に銃口を押し付けて引き金を引こうとするが。
―カチッ
それは不発に終わった。弾詰まりを起こしたのだ。
「なっ!クソ、こんな時に」
ガチッガチッっと銃を叩いて詰まった弾をはじき出し、スライドを引いて空になったチャンバーに弾を運ぶ。
もう一度撃とうと引き金を引くが、次は弾が暴発してみてわかるほどに銃が壊れてしまった。
「うわっ!?」
「何やってんだ!」
「いや、弾が暴発して」
「あんな中古の安物なんて使うからだっ!?」
―ダダダダダ!!!
「ぎゃ!」
「うがっ!」
ヘルメット団員の二人は、乗客の生徒によって不意を突かれ制圧されてしまった。
「私のスマホ返してよ、もう」
「ヴァルキューレに連絡したけど、このまま私たちでも列車取り戻すよ!」
「うん!」
その後も、他の車両で銃声や爆発音がして、しばらくするとサイレンの音やヘルメット団を捕らえに来たヴァルキューレの生徒たちであふれ、別の列車に乗り換えて運行再開する運びとなった。
「ほら、あなたも…って、またあなたですか」
乗客を別の車両に案内しに来たヴァルキューレの生徒は、アザミの顔を見て訝しげな表情をする。
「証拠さえあれば、あなたをすぐにでも捕まえたいんですけどね」
「私は…何もしてません」
「……そういうことにしておきます。なので早く移動してください。
しっしっと手で払う動きをして、アザミを列車から追い出す。
別の車両に移ろうと移動している間でも他の生徒からの視線はアザミに向いている。
「はぁ、またあいつか」
「いい加減にしてほしいよね」
「疫病神め」
「っ……!」
アザミは一瞬動きを止めるがすぐに動き出し、逃げるように別車両へと移っていった。
「…」
この時、キヴォトスの外から来たというシャーレの先生とすれ違っていたのは、アザミの知るところではない。
「はぁ…疫病神に会うとか運がない」
“あの子は何かしたの?”
疫病神と呼ばれた生徒が気になった先生は、近くにいたヴァルキューレの生徒に聞くことにした。
「知らないんですか?あいつは瑠珠アザミ。ゲヘナじゃ知らない人はいない問題児ですよ」
“問題児?”
「はい、ゲヘナで起こる大体の事件に居合わせてるんですが、あいつだけ目立った被害がないんですよ」
“運がいいんだね”
「毎度毎度、あいつだけ無事なんですよ。周りが酷い怪我を負ってるってのにあいつだけ…偶然でもできすぎてる!」
ここ一年、ゲヘナで起こる負傷者が出るほどの事件、その九割にアザミの姿が確認されている。
爆弾による建物の倒壊、飲食店のガス漏れによる爆発、美食研究会のテロ、そのほとんどの当事者となり唯一何の被害も受けていない生徒である。
「我々はあいつが何か糸を引いてるんじゃないかと考えていますが、これといった証拠もなく本当に偶然巻き込まれたとしか言えないのです」
“それは本当に巻き込まれてるだけじゃないのかな”
「どうであれ、あいつは周りを不幸にします。関わらないのが賢明です」
言い終わると、ヴァルキューレの生徒は他の生徒に呼ばれて列車の中に入っていった。
関わらないほうが良い、とまで言われる生徒を心配する気持ちもあったが、まずは自分の助けを求めているアビドス高校へ向かうのだった。
私に文才はないです。ですが書き続ければ読む人もいるでしょうという気持ちで書いております。書けなくなったら投げますが。
瑠珠アザミの情報②
胸はCカップ。
黒いロングコートがお気に入り。