時刻らアビドスを襲撃する直前。便利屋68の元にアルバイト達が集合する中、鬼方カヨコはある人物を発見する。
「……あの子」
ぽつりと呟く少女の視線の先には、ゲヘナのプチ有名人がいた。
「どうしたのカヨコちゃん、なにか面白い子でも見つけた?」
「面白いかはわからないけど」
ムツキは、カヨコが視線を向ける先を見ると少し驚いた顔をする。そして、いつものイタズラな笑みを浮かべる。
「瑠珠アザミちゃんじゃーん!どうしてこんなとこにいるのかな?」
「最近ゲヘナから失踪したって聞いてたけど、アビドスにいたなんてね」
「くふふ、今日の仕事は一波乱起きちゃうかもね」
二人が話しているところに、カリスマ性のある赤髪の生徒。便利屋68の社長、陸八魔アルがやってくる。
「あら、二人とも何を話しているのかしら?」
「社長。アルバイトの中に珍しい人がいただけ」
「珍しい人?」
アルも同じように視線の先を見て、その生徒に興味を持つ。
「あら、アザミじゃない。自分から動くなんて珍しいわね」
「アルちゃんはあの噂、信じてるの?」
噂とは、瑠珠アザミが裏では犯罪集団のボスだとか、手下を使って騒動を起こしてそれを傍観して楽しんでるだとか、そういった悪い噂のことだ。
「半々ね。正直、あの子にそんなことができるようには思えないのだけれど、もし噂が本当なら、仲良くなれそうにはないわね」
「意外〜、アルちゃんなら同じアウトローとして仲良くしたいって言うと思ってた」
「まぁ、一流のアウトローってとこは認めるわよ?人心掌握が完璧で、自分は手を汚さず証拠も残さないなんて、アウトローとして尊敬できるし見習いたいとも思うわ。でも……」
アルの表情が、冷たく鋭いものに変わる。
「自分で引き起こしておいて、被害者みたいな態度を取るのは気に入らないわ。もっと堂々と振る舞うなら私とも気が合いそうなのだけれど…」
アルはもし自分が同じような立場なら、堂々と悪党らしく、私が起こした証拠などないでしょう?と悪い笑みを浮かべてかっこよく立ち去るのに、と頭の中で妄想する。
「ま、まぁ、あくまで噂だから本当のことはわからないのだけど…それに、噂は全部嘘で、本当にただ巻き込まれてるだけなら、ちょっと同情しちゃうわね。可哀想過ぎるわ」
「…」
ここで、相手を気遣えてしまうところが、彼女の善性なのだろう。と、カヨコは思い、少しだけ笑みが溢れてしまう。
「というか、彼女がいるってことは、何かとんでもないことが起こるかもしれないわ、気をつけましょう」
「はぁ〜い!」
「そうだね…」
「……」
アザミに警戒を強める3人とは違い、一人だけは、アザミを穴が開くほど貫くように見ていた。
ハルカの心中は、瑠珠アザミを今排除しておくか、何かが起きてから排除するか、その二つで迷っていた。
アル様に危害が加わる前に、しかしアル様の命令なく勝手に動くわけには、という二つの気持ちの葛藤でショットガンを持つ手が震えている。
そもそも、ハルカはアザミを嫌っている。何の目的もなく騒ぎを起こして人を巻き込む。そのくせ自分は無関係ですという素振り、当然のようにいじめられても被害者面をして。
自作自演の悲劇のヒロイン。
そんな言葉が当てはまるような彼女を、自分とは似て異なる存在とハルカは認識している。
同族嫌悪ではない、ハルカとアザミは決定的に何かが違う。そう感じているハルカは、アザミを敵視して睨みつける。
そうしている間にも時間は進んでおり、アビドス襲撃の予定時間が刻一刻と迫る。
各々は準備を進める。給糧はすでに支払われ、戦いの火蓋は切って落とされた。
次の瞬間には、投げられた手榴弾の爆発音が轟いたのだった。
瑠珠アザミの情報⑤
武器はブラックマーケットで安売りされていたものを改造した。
実は羽や尻尾などに憧れている。