嫌われ生徒が頑張る話   作:かぼすみかん

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嫌われ生徒はアビドスを襲撃する

ードガンッ!

 

 1発の銃声と共に放たれた散弾は至近距離でアザミの腹に直撃した。衝撃で吹っ飛び、壁に叩き連れられて軽く咳き込む。ぐったりと地面に尻餅をついて、お腹を抑えて痛みに悶える。

 

「あなたのせいで…アル様がっ…!許さない許さない許さない許さない許さない」

 

 銃を構えながらアザミに近づいていくハルカ。それを止めようともせずに傍観する他の便利屋のメンバー達。

 

 事は数時間前に遡る。

 

ーーー

 

 アビドスの襲撃が始まり、序盤は圧倒的な数によって優勢となる便利屋68側。

 

 圧倒的な弾幕によって思うように反撃ができないアビドス側は、アザミによる炸裂弾による援護射撃でジリジリと追い詰められている。

 

「っ!……もう!なんなのよさっきから!」

 

 セリカの書かれていた遮蔽物が破裂して即座に隠れる場所を変える。

 

 他の面々も同じように、隠れては破壊され、移動して、また破壊されを繰り返している。

 

 時には近くの空き家のガスボンベに着弾する音がすれば。

 

「!シロコちゃん右に飛んで!」

 

「っ!」

 

 シロコが回避をすると、ガスボンベが爆発して破片が辺りに飛び散る。あのまま回避せずにいれば至近距離で手榴弾を受けると同等のダメージを負っていただろう。

 

 シロコに指示を出したホシノの方も、近くの屋根に着弾した炸裂弾が瓦を吹き飛ばして、瓦礫が降り注ぐのを盾で防いでいる。

 

「あーもう!あったま来る!」

 

「まぁまぁ…それだけ相手方の援護が上手なんですよ」

 

 思うように動けない現状に痺れを切らすセリカと、それをなだめるノゾミ。しかしそうなるのも仕方がないと思えるような状況なのだ。

 

 ゲームで例えるなら、敵との戦闘中に、即死にならないが体力の半分を削るダメージを、回復するたびにチクチクと負わされるような、嫌がらせかと思うほどに嫌な攻撃を受け続けているのだ。

 

 そんな状態が1時間、2時間と続けばフラストレーションも溜まっていくものだが、歯痒く思っているのは生徒だけではない。

 

 先生は戦場を俯瞰しながタブレットを握る手に力がこもる。

 

″このままじゃ……″

 

 この状況が続けばいずれ押し負けてしまう。アヤネに救急箱の支援を指示しながら、アロナに炸裂弾の主を探らせる。

 

 タブレットの画面には、ミニキャラにデフォルメされた生徒達が現実の戦闘とリアルタイムでリンクした動きを見せていて、自分の目ではなく、戦場を俯瞰して見ることができる。

 

 少しのタイムラグもなくシンクロする動きは、まるでもう一つの世界を画面越しに見ているような感覚にさせられる。

 

 どうやっているのかはわからないが、おかげで先生自身は身を晒さずに状況全体を把握して、的確に生徒達を指揮することができるのだ。

 

 だが、そんな神域の技術も易々と使えるわけでない。

 

"アロナ、見つけた?"

 

「すみません先生…戦闘指揮にリソースを使っていて、あまり遠くまで探知することが難しいです。でも、着弾地点や弾道から予測が可能です!」

 

 戦闘範囲全ての状況をリアルタイムで把握するには、それ相応のリソースが必要とされる。普段アロナが使える容量の大半を戦闘指揮に割り当てているため、他の機能が制限されてしまっている。

 

 それでも、戦闘をリアルタイムで再現しているタブレット内では、当然狙撃手の弾道や破壊されたオブジェクトも記録として残っている。それらの記録から狙撃地点を特定することは可能である。

 

 ただし演算はすごく遅い。

 

 そうして持久戦をしながら日が暮れていく。空がオレンジ色に変わり切った頃。チャイムの音と入れ替わるように銃声が止まる。

 

 銃声が無くなったことで、アビドスの静けさを取り戻した校舎前に聞き馴染みのあるチャイムの音だけが響く。

 

「定時だ」

 

 そんな言葉が聞こえたような気がした後、ヘルメットを被った少女達が撤退していく。なにやら赤髪の生徒が引き留めようとしているが、断られたようで続々とヘルメットの少女たちが帰っていく。

 

 戦闘が一時的に止まったことで、弾道からの逆探知に使うリソースが増えて高速で演算が終わる。

 

「先生!狙撃手の位置がわかりました!」

 

 画面が地図に切り替わり、現在地から線を引くように狙撃手の位置へと矢印が伸びていき、赤い点が強調される。

 

″ありがとうアロナ″

 

 すぐに情報を共有して、狙撃手を狙える生徒に対処を任せる。

 

″セリカ!″

 

 先生から狙撃手の位置を共有されて、攻撃が止んでいる今のうちに狙いをつける。

 

「見つけた!」

 

ーーー

 

 瑠珠アザミは建物の屋上から的確に援護を行っていたが、チャイムの音が鳴ると援護していた仲間達が一斉に帰っていくのを見て唖然とする。

 

(もしかして、定時だから帰ったのでしょうか…?)

 

 給金は戦闘の前にすでに払われていたため、確かにこのまま帰っても問題はないのだが、このまま便利屋を放置していってもよいのか。そんな疑問が生まれる。

 

 その迷いが悲劇を運ぶ。

 

ガンッ!

 

 突然、そんな金属音が鳴る。バレルに何かが激突したのだ。

 

(狙撃…された……?!)

 

 ゆっくりと時間が進むような錯覚を覚える。まるで世界がスローモーションになったようだ。

 

 銃口が向きを変える。指はトリガーにかかったまま。突然の衝撃で力んでしまい、どこかに向けて発砲してしまう。

 

 射撃の反動で世界の動きが元に戻る。尻餅をついて、一瞬だけ放心状態になるも、すぐに自分を取り戻して着弾地点を確認する。

 

 スコープを覗いて急いで探すと、先ほどまで戦っていた場所で砂煙を見つける。どうやら家に当たって炸裂した後、その家が倒壊したようだ。

 

 次に確認するのは、二次被害である。建物が倒壊したのなら、人が巻き込まれている可能性がある。この辺りの家に人が住んでいない事はわかっているため、住民の安全は心配していない。

 

「あっ……」

 

 一気に青ざめる。冷や汗が背筋を伝い落ちると、通った場所から冷え切っていく。凍りつくような感覚に襲われて、奥歯がガタガタと音を鳴らす。

 

 呼吸が浅くなり、息苦しさが胸を締め付ける。グリップを握る手が震えるのに、感覚がなくなったように意識から外れる。

 

 スコープ越しに見た景色は、建物の瓦礫も砂煙。

 

 そして、その瓦礫に近づいていく便利屋68の面々だった。




瑠珠アザミの情報⑥

料理が得意。
だが小食なため多くは作らない。
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