家が倒壊した場所に急いで向かう。もともとあまり運動が得意ではないアザミも、今だけは全力で足を動かす。
スコープ越しに覗いた光景なは、便利屋のムツキ、カヨコ、ハルカの3人が瓦礫を掘り起こしている様子だった。そこにリーダーのアルは見当たらないということは、瓦礫に潰されてしまったと予想できる。
(どうしましょう…私のせいで…大変なことに…!)
誰かが故意にしたことではない。本来スナイパーで狙撃するような距離をアサルトライフルで狙撃したのだ。命中したこと自体が驚くべきことで、狙ってバレルを撃つなどできるわけがない。
つまりこれは不幸な事故である。もっとも、アザミからすればの話だが。
誰も知りようのないことだが、この事態は本来起こるべくして起きたものではなかった。セリカの銃弾はアザミの頭部に直撃して戦闘不能になるはずだった。しかし、アザミの神秘が干渉したことによって運命を捻じ曲げた結果、頭部ではなく銃に弾が当たる運命となったのだ。
とはいえ、アザミの炸裂弾が招いた事故であることに変わりはなく、罪悪感から救出に向かうことにしたのだ。
「はぁ……はぁ……あっ…」
アザミは間違いなく全力で走った。しかし、足が遅すぎたのだ。到着した頃にはすでにアルは救出されていて、4人から冷たい目線を向けられる。
助け出された後に何をのこのことやってきたのか。そう目で訴えるように視線は鋭く、思わずたじろいでしまう。
そして、次の瞬間にはアザミの体は吹き飛ばされていた。
ードガンッ!
1発の銃声と共に放たれた散弾は至近距離でアザミの腹に直撃した。衝撃で吹っ飛び、壁に叩き連れられて軽く咳き込む。ぐったりと地面に尻餅をついて、お腹を抑えて痛みに悶える。
「あなたのせいで…アル様がっ…!許さない許さない許さない許さない許さない」
銃を構えながらアザミに近づいていくハルカ。それを止めようともせずに傍観する他の便利屋のメンバー達。
2発、3発、4発と、マガジンに残っていたシェルを全て排出するまで、アザミに対して射撃が行われた。
それでもまだ怒りが治らないハルカはショットガンを逆さに持ち、ストックで殴ろうとする。アルが止めに入ったのはその時だった。
「やめなさいハルカ…もう十分よ」
「で、ですがアル様…こ、この人はぁ」
今にも泣き出しそうに目尻に涙を浮かべたハルカの肩に、ポンと手を置いて静止するアル。その姿はいい砂と煤で汚れていて、ところどころの服が破けている。
「故意じゃないことはわかっているわ。あのアビドスの子が撃ったのを見ていたもの」
服についた砂を払いながら、地面に横たわって悶えるアザミに歩み寄る。
「あら…?」
そして、至近距離であらためてみるアザミの姿に、困惑と驚きが混ざったような顔をする。
最初の一撃は確かにアザミの腹に直撃した。一瞬で近づいで銃口が腹に接触するような距離で発砲したのだから避けようがない。だが、2発目以降の弾は、ほとんどが外れて壁に弾痕を残しており、アザミ本人には全体の半分以下ほどの弾しか当たっていたないのだ。
歩きながら、まして激昂した状態で狙いをつけていないハルカの射撃ならばこうなることもおかしくはない。おかしくはないが、違和感がある。
とは言えど、何発もの銃弾を至近距離で受けたことには変わりなく、アザミは身動きができないほどのダメージを負っている。それを見たアルは踵を返して立ち去ろうとする。
「今回のことは水に流すわ。不幸な事故ってことでね」
「…アル、いいの?もしわざとだったら」
カヨコは納得がいかない様子で声をかけるが、アルは首を横に振ってカヨコなる言葉に返答して立ち去ろうと歩みを進める。
他の3人も、睨みつけるようにアザミを一瞥してから、アルの後を追うように歩き出す。
途中でアルは首だけで少し振り返り、誰に対して告げたわけでもない言葉を発する。
「随分と運がいいみたいね」
その一言が夕暮れの冷たい風に乗ってアザミの耳に届く。
アザミは今も地面に横たわったまま、うっすらと便利屋の後ろ姿を捉える瞳からは涙が零れる。そのまま痛みによって意識が薄れていき、やがて目を閉じる。
気絶する直前、誰にも届くことのない独り言を残して意識を手放す。
「運がいい…なんて……冗談じゃない」
結局、アザミが目を覚したのは日が完全に沈み切った夜中になってからだった。
瑠珠アザミの情報⑦
ゲームでは軽装甲の爆発属性となる。
配置はサポーター。