嫌われ生徒が頑張る話   作:かぼすみかん

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瑠珠アザミを掘り下げる内容故に珍しく長くなりました。


嫌われ生徒は振り返る

 目を覚ますとすでに辺りは真っ暗で夜風が肌を撫でる感触に体が震える。意識がはっきりした頃には薄れていた腹部の痛みがじわじわと蘇り、今にも暴れ回りたくなるような激痛を蹲って堪える。

 

「っ…はぁっ…!はぁっ…!ぐっ…!」

 

(痛い…痛い痛い…あれは確かに私のせいです…私の銃弾が原因で起きたことです…でも、だとしても…事故じゃないですか…わざとやったわけじゃない…)

 

 ポロポロと涙が頬を伝い落ちる。地面の砂にいくつか窪みをつくり、涙の跡をはっきりと残す。その絵面がまるで自分の腹に撃ち込まれた散弾の後のように写ってさらに涙が込み上げてくる。

 

 悔しいなんて思っていない。怒りももはや湧いてはこない。ただ理不尽な暴力に襲われたことへの悲しみだけが目元から溢れ出てくる。

 

(銃…置いてきてしまいました…戻らないと)

 

 痛みでまともに力が入らず、壁にもたれながら震える足で立ち上がってゆっくりと歩き始める。

 

 自分は並の生徒ほど頑丈ではない。中にはどれだけ攻撃を受けてもすぐに治る人や、そもそも肉体の耐久度が高い人など、撃たれ強い生徒はいると聞くが、自分は逆に傷の治りが遅ければ銃弾に対する耐性も低く、撃たれ弱い体をしていると自覚している。

 

 だから前線には出ず、後方からの支援というポジションに勤めて、自分なりに精一杯頑張っているつもりだ。

 

 どこを壊せば敵に対してどれだけの被害を与えれるか、どの敵を優先的に狙うべきか。どうすれば味方の助けになるのかなど、スナイパーなんて使ったこともなかったし、援護なんてしたこともなかったけど頑張って勉強して覚えた。そして自分なりに落とし込んで完成したのが今の戦法だ。

 

 自分の火力なら敵に大きな隙を与えることができるし、動き回る人を撃つよりも動かない地形を撃つ方が確実に当たる。誰かとの連携は苦手でも全体を俯瞰して把握すればするべきことが見えてくる。

 

 なにより、痛い思いをせずに済むのだ。相手から撃たれない位置から一方的に撃てば自分は痛い思いをせずに済む。

 

 それだけを聞けば、安全圏から一方的に叩くのか好きな卑怯者の弱虫…とまではいかないかもだが、周りからの印象は悪い。でも、自分にはこの戦法が合っているし、これだけを極めてきたから今更他なんてできやしない。

 

 自分の戦い方を誰かに罵られようとも、自分を知った上でこれが最適と判断したのだから貫き通す。そのつもりで今日までやってきた。

 

(……私のせいで…味方に被害が…)

 

 今だけはその自信も信念も砕けそうだった。

 

 自分は好んで戦いをするタイプではないし、できれば戦闘などしたくない。それでもしなければいけない時は必ずあるから、その時は全力を尽くすつもりでいる。

 

 今回もそうだった。敵が隠れる遮蔽を潰して、隙があれば環境武器を使って攻撃をした。自分はちゃんと味方の手助けを出来ていたと自覚している。だけど、それも途中までは良かった。

 

 チャイムの後、皆が帰っていく時にできた隙、その一瞬でまさか自分が撃たれるなんて思ってもいなかった。誰が撃ったのか、誰が位置を特定したのかはわからなかったけど、あの1発が自分の銃に当たったことであの悲劇を生んでしまったのだ。

 

(なら…あの時すぐに地面を撃って砂の煙幕を…でも、そんな時間はありませんでした…なら、トリガーから指を離していれば…)

 

 はっとして首を左右に振る。つい戦闘を振り返って改善点を探してしまった。大事なことだが、今はそれをしている場合ではない。

 

 痛みと疲れで重い体を引きずりながら階段を登っていく。今すぐ倒れたいくらい体が限界を訴えているが、それでも一歩ずつ階段を登っていく。

 

 突然のことだったし、人命がかかっていたため焦ったことで思わず置いていってしまったが、自分の愛銃がそばにないと安心できないのだ。

 

「はぁ……はぁ……お待たせしました…花ちゃん…」

 

 自分が花ちゃんと呼ぶ銃を抱えて、糸が切れたように倒れる。

 

 最初の頃はスナイパーという武器種に興味など一切なく、どれを使えば良いのかなんてわかるはずもなく、自分の体に馴染む銃を選ぼうとさまざまな狙撃銃を試射してみたが、どれも自分には合わなかった。というより、自分は動く的を撃つことができなかったのだ。店員からは「君はスナイパー向いてないよ」なんて言われることもあった。

 

 それでも、前衛で戦って何もできないよりはマシだと思って狙撃の練習や動く的を撃つ練習を続けた。その結果、動く的に当てるのは10回に1回、動かない的ならばそこそこ距離があっても当たるようになったのだ。

 

 だけど、そんな実力では援護なんて到底務まるわけがないので、せめて連射ができる狙撃銃を探そうとブラックマーケットまで足を運んだ。あの子と出会ったのはその時だった。

 

 ブラックマーケットの怪しいお店で、埃をかぶっていたAW50を見つけたのだ。自分の背丈には似合わない圧倒的な大きさ、見るからにスナイパーたと主張するようなフォルム、そして今まで見てきたどの狙撃銃よりも大きくて太い弾倉。この銃は、他の何かと明らかに違う。そう直感できた。

 

 手に取ってみれば、今まで持った狙撃銃よりも一番重かった。「あきゅらしぃ、いんたぁなしょなる…?」なんて、名札に書いてあった名前を読み上げた時は自分でも幼子のような声色で恥ずかしくなった。

 

 さらに驚いたのは、その値段だった。明らかに他と比べて桁が一つ少ない。そう、「多い」のではなく「少な」かったのだ。

 

 ブラックマーケットの安物など、正直怪しさしかなかったので詳しく話を聞くまでは買うつもりなんてなかったのだが、店主がAW50を抱えた自分を見つけてしまったのだ。

 

 店主は語った。この銃はキヴォトスでも珍しい対物ライフルで、表の市場には絶対に出回らない威力をしているのだと。しかし、前の持ち主が妙な改造を施しており、本来コッキングが必要なはずがセミオートで撃てたり、そのせいで初速が落ちて貫通力が低下していたりと、癖のある銃で買う人がおらず価値が下がってしまったらしい。

 

 偶然にも、セミオートの狙撃銃を探していた私は、セミオートと聞いて早速試射したいと言ったのだが、どうにも特殊な弾を使うらしく屋内では撃てないと言われて、ゴーストタウンに連れてこられたのだ。

 

 1発目、あまりの反動に尻餅をつく。2発目、反動を抑え切れず明後日の方向に飛んでいく。3発目、ガッチリと固定して正面に飛ぶようにして撃つ。するとどうだろうか、壁に当たった弾は爆弾の如く炸裂してレンガの壁を倒壊させたのだ。

 

 その瞬間、私は完全にこの子の虜になったのだ。炸裂する瞬間の爆発が美しい花火に見えた。建物の壁を抉り、圧倒的な破壊力を主張するような閃光は輝いて見えた。

 

 私の中でこの銃と何かが噛み合ったような気がした。まさに運命の相手だと、体と心だけでなく魂が叫んで求めるような気持ちになる。

 

 他の銃を見てから決める、なんて遠回りなことはせずに3発目の試射を撃ち終わった状態のまま購入を希望した。自分にしては珍しく即決だった。

 

 今後とも専用の炸裂弾をこの店で買うことを約束すると、セットのガンケースをオマケしてくれた店主に感謝して、早速家で整備を行なった。

 

 今思えば、店の隅で埃をかぶっていた売れ残りという境遇にも、ひとりぼっちの自分と重なってシンパシーを感じる部分もあったのだろう。

 

 私は好みにカスタマイズしたAW50を、眺めて名前をつける。

 

 戦場で自らの存在を主張するように、美しく輝く花火のような、そんなこの子に憧れて、私も同じように輝ける存在になりたいと言う願いを込めて『花火師』と名付けた。愛称は花ちゃんである。

 

 それが私と愛銃の出会いだった…。

 

 

 

「んっ……」

 

 うっすらと目を開ける。いまだに体は重く、きているコートは砂まみれ。髪にも細かい砂が絡みついていてボサボサだ。顔にはきっと泣き跡が残っているだろう。どうやら昨日は花ちゃんを抱えたあとすぐに眠ってしまったらしい。

 

「……夢…でしょうか」

 

 夢の中で遡った記憶をもう一度思い出すようにして、腕の中の愛銃を抱き締める。少し肌寒い早朝の気温によって冷やされた鉄の感触が頬に触れるが、その冷たさすらもなぜか暖かく感じる。

 

「行きましょうか…花ちゃん」

 

 昨日のバレルへの着弾で少し禿げてしまった塗装を撫でたあと、そっとケースにしまって肩に担ぐ。黒いロングコートの砂を少し払ってから、まだ快調とは言えない体に感じる愛銃の重さに安心を覚えながらゆっくりと階段を降りていく。




瑠珠アザミの情報⑧

弾代は1発で、一日の朝昼晩の食事にデザートと夜食がついた値段と同じくらい。
実は週に数回、整備の後に愛銃で……

.50口径の炸裂弾なんてあるのか?ってなるけど、ブルアカ世界の技術力ならあるだろう。そもそもレールガン作れる技術力あるならなんでもいけるべ。
ちなみに炸裂弾の威力はアルちゃんのEXより少し劣るくらい。
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