藍染惣右介は幻想を見ない   作:愛の下僕

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続きます。


第二話『報告と分析』

永遠亭──

静寂と安定が支配するこの地下の月都のような空間は、外の世界の騒がしさとは無縁だった。

 

だが、その扉が乱暴に開かれた瞬間、全てが変わる。

 

「永琳っ!!」

 

「……随分と騒がしいのね、鈴仙。」

 

本を閉じる音が響く。

輝夜とてゐが昼寝をしている奥の部屋に迷惑がかからないよう、永琳は静かに立ち上がった。

 

「……すごいのがいたの。あれ、多分、外から来た……でも、ただの外来人じゃない。明らかに──“違う”。」

 

「違う?」

 

「感覚が狂ったの。波長が見えなくなるなんて今までなかった。位置が把握できないし、存在してるのかどうかも曖昧で……」

 

鈴仙は言葉を切り、息を整える。

 

「始解の瞬間……たぶんあれが“能力”。刀を見た途端に感覚がぐちゃぐちゃにされた。何が本当で、何が幻かわからなくなる。」

 

永琳は目を細めた。

 

「……刀の解放を見せることで、感覚に干渉するタイプの能力……ふふ、随分と手の込んだ催眠術ね。」

 

「催眠、じゃ済まないと思う。“五感”を丸ごと捻じ曲げられたみたいな感覚だった。」

 

「五感を誤認させる……それが本当なら、戦闘中の致命的な錯覚を引き起こすことができる。命に関わるわね。」

 

永琳の声は冷静で、けれど明らかにその“危険性”を重く見ていた。

 

「彼の名前は?」

 

「……聞いてない。だけど、こんなこと言ってた。『かつて尸魂界に神の座を築こうとした者』だって。」

 

「尸魂界……?」

 

永琳の手がぴたりと止まる。

 

「それ、幻想郷の存在とは関係のない――外の霊的構造圏ね。」

 

「知ってるの?」

 

「……ええ、少し。月の都と尸魂界との接点は、ほんのわずかにある。高次の霊魂管理機構、死後の循環システムの一部──それが尸魂界。そこを支配しようとする者がこの幻想郷に来た……ということね。」

 

鈴仙の顔が青ざめた。

 

「……やばくない、それ。幻想郷の“理”すら理解しないような奴が、本気で動き出したら……」

 

「その可能性はあるわ。でも、まずは観察からよ。幻想郷は閉ざされた世界だけど、異物は必ず波紋を起こす。見逃さないで。」

 

永琳は机の引き出しから古びた水晶を取り出し、月光にかざす。

 

「異変の芽は早期発見、早期対処が基本。……鈴仙、しばらく彼の“動き”を追ってちょうだい。」

 

「……あんなのにまた接触するの?」

 

「もちろん直接の接触は避けて。今は、“情報”が何より重要よ。」

 

「はぁ……了解。」

 

鈴仙は渋々うなずいたが、その目には未だ拭いきれない恐怖が残っていた。

 

永琳は水晶にうっすら映る影を見ながら、静かに呟く。

 

「“欺きの王”……幻想郷で何を企むつもりかしらね。」

 




2話目から主役不在で申し訳ない。
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