真木姉弟にはご用心   作:リゼロッテ

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12話 勘違いホワイトデー

 

 ホワイトデー。それはバレンタインにチョコレートなどを貰った者がお返しをするという恒例と化している行事だ。

 

 ホワイトデーの起源なんてどうでもいいが、早い話お菓子メーカーの陰謀その2であることに違いはない。そしてバレンタインで贈り物を貰う量が多い人間はお返しの量も必然的に増える。

 

──そして俺はお返しの量が多い

 

 正直言ってバレンタイン以上に憂鬱な1日だ。基本的に俺は贈り主の名前が分かってる人間全員に返礼品を贈ることにしている。

 

 義理だろうが感謝だろうが贈られっぱなしは借りを作るみたいでごめんだし、世の中はギブアンドテイク、その方が何かと都合が良いからな。

 

 それに特定の誰かだけに返礼しない、なんてことになればそこから無駄な敵意を生むだけ。特定の誰かだけに返礼するのは"そういう気"だと誤解されてこれもまた良くない。

 

 だから返せる人間には全員返す。これが最も敵を作らずにこの日を凌げる最善の方法だ。

 

「お前それって俗に言うキープじゃね?」

 

クソリーゼントに何故か戦々恐々とされたが解せん。キープも何も最初から繋がってないからな。

 

「よし、まあこんなもんだろ。」

 

 返礼品はクッキーとマカロンを贈ることにしてる。俺の趣味の一つだが、読書のお供として紅茶と洋菓子を作るのが一つのライフワークだ。

 

 普段から用意している材料で作れるし、味も確かだから贈りものとしては最適だろう。

 

 

 

 3月14日、既に期末試験も終わり春休みを待つばかりとなっている和やかな学校に俺は袋を持って行かなければならない。

 

 着いたらとにかく教室を巡ってバレンタインをくれた人間に返礼品のクッキーを渡していく。

 

「え、これ真木くんの手作り!?凄〜い、ありがとね。」

 

「真木くんってこういうことも出来るんだ〜羨ましい〜。」

 

 多種多様な感想を頂くのだが、それに逐一リアクションを取るのが億劫になって来た。無論そんな感情を表に出すのは無様だからしないが、半ば義務感による返礼だけに相手を思うとかそういう気持ちはほとんどない。精々敵を作らずに友好的な関係性の構築をしたいだけだからな。

 

 

「宇佐美、今日はホワイトデーだ。ということで返礼品を賜わそう。」

 

「ははぁ〜有り難く頂戴仕るー。」

 

 随分と時代掛かったやり取りだが宇佐美には割とこういうノリが通じるから話しやすい。

 

「氷見と綾辻にもやろう。」

「うむ、くるしゅうない。」

「わぁお菓子だぁ!ありがとね!」

 

とりあえず同じクラスのボーダー隊員には渡せたな。あとは結束と忘れちゃいけないのが三上さんだな。三上さんからバレンタインのチョコを貰ったことは理佐にバレている。俺がお返しを忘れたと知ったら何が起こるか分かったもんじゃない。てかバレた時の理佐の顔がヤバかった。ヤーさんみたいなオーラでケジメ要求してるみたいだった。流石に怖すぎるだろあれ。

 

「中身開けて良い?」

「構わんが聞く前にもう開けてんじゃねぇか綾辻。」

 

「だって甘いものだと我慢出来なくて──あ!マカロンだ!美味しそうー、結構高かったんじゃない?」

 

「お生憎様、それは手作りだ。」

「「「はい?」」

 

3人でハモるな。そんな意外なのか、手作りの返礼品って。

 

「このクオリティで手作り!?凄いよ理央くん!お店で出せるレベルだよ!」

 

「真木くんって妙なところで万能さ出してくるよね。」

「うーん美味しい!」

「いいなぁ遥ちゃん。」

「何言ってんだ、お前らにも同じもの渡してるぞ?」

 

「「「え?」」」

 

だからハモるなって。仲良しかお前ら。

 

「あの、理央くん。マカロンを贈る意味ってその……。」

「何の話だ?他(ボーダー隊員)にも配ってるんだから別に大したことはないだろ。あ、悪い今日はあんま時間ないんだ。味の感想は明日また聞かせてくれ、じゃあな。」

 

早めに渡してさっさと帰ろう。今日は合同訓練もないし、三上さんと理佐が出会う前に渡してしまおう。鬼の居ぬ間に何とやらだ。

 

「──ねぇ、理央くんってもしかしてマカロンの意味知らない感じかな?」

 

「どう考えても知らないでしょあれは。しかも全員に贈るって真木くんらしいわね。」

 

 マカロンを贈る意味には「あなたは特別な人」という意味合いがある。宇佐美たちは理央は知らないだろうと予測しているが、理央は知っている。だからボーダー隊員にはマカロン、それ以外の面々にはクッキーを贈っている。ちなみにクッキーには「仲良くいたい」等の意味が含まれる。

 

 確かにボーダー隊員は「特別な人」かもしれない。理央はそういう意味でマカロンを贈ったのたが……そのズレに気付けるものなど誰もいなかった。

 

 

 

─────────

 

 とりあえず三上さんに返礼品は渡せた。なんか凄い喜んでた気がするが、ギブアンドテイクの範疇だから気にしなくても良いのに。

 

 小佐野や那須にも渡せた。後は結束か。丁度良い、隊室に行くか。片桐隊、というより第二期東隊は今季のランク戦でB級1位に君臨している。このまま行けばA級昇格はほぼ射程圏内と言っていいだろう。片桐は同じ学校のBクラスで交流がある。一言掛けてやろう。

 

「おお真木か。どうしたんだ一体。」

「片桐隊の調子が良さそうだから祝いの言葉を掛けに来た。A級昇格も決まったようなもんだろ?」

 

「それは済まないな。だがまだまだだよ。最後まで気を抜かずにやるだけだ。」

 

「真面目だなお前は。来季のランク戦で当たるのを楽しみにしてるぜ。あぁそれと結束は居るか?」

 

「私ならここだけど、どうかした真木?」

「いや何、ギブアンドテイクの法則に則るなら俺はお前に借りを返さなければならない。だから返礼品だ、受け取れ。」

 

「実にあんたらしいわね。お返しを期待してあげた訳じゃないけど、有り難く貰うわ。」

 

 よしこれで全員だな。あとは理佐と鉢合わせする前に帰るだけだ。

 

「じゃあな。ランク戦頑張れよ。」

「そうかホワイトデーのお返しか。真木にチョコあげてたんだな。」

 

「単なる世話チョコよ。それで中身は……マカロン、ね。真木にしては随分洒落てるわね。」

 

「え、いや結束、マカロンって……。」

「え?何、何か意味あったっけ?」

片桐はそれ以上の追求を止めた。片桐はマカロンを贈る意味くらいは知っている。同校の同級生が同じ隊の女子にマカロンを贈るという何とも言い難い状況に頭が痛い。このデータ最重視の女に少女漫画的な発想がないのは知っていたが、ああなんて可哀想な真木なんだと同情する片桐がそこには居た。

 

──無論、双方勘違いとは梅雨知らず

 

 

 

────────

 

「バレンタインのチョコ美味しかったぞ。はいお礼だ。」

 

「ありがとう真木ちゃん!私からもお返し!」

 

 バレンタインにチョコを贈り合いホワイトデーでお返しをし合うマキリッサと三上。使うのは当然冬島隊の隊室。隊長はエンジニアのラボに引き篭もり、当真はそもそも来ていない。

 

「あ、これね、理央くんに貰ったの!」

「あいつちゃんと返したのか、なら良し。」

 

三上が理央に、弟にチョコレートを渡していると知った時はかなり複雑に表情を浮かべた理佐だったが、それに気付いたのがバレンタインから数日後では三上を止めることも出来ず、仕方なく許容した。その代わりお返しは忘れるな釘を刺して来た甲斐があったと理佐は思った。

 

「あ、マカロンだ!凄い美味しそうだね!手作りかな?」

 

三上はマカロンに込められている意味を知っている。美味しそうなのもあるが、マカロンを贈られたことに内心で喜んでいた。

 

 

そうだな。昨日大量に作っていたやつだな。

 

何かにヒビが入る音がした。透明な心の鏡に僅かに入ったヒビ。今ならまだ修復可能である。

 

 

確か全員(ボーダー隊員)に渡すって言ってたぞ。にしてもあいつにこんな特技があるとはよく分からんやつだ。

 

「──う、うん。そうだね──」

 

 

修復は不可能かもしれない。

 

全員ってなに?

そんな気が多いの?

一瞬でも期待した私は何なの?

 

まあ分かるよ、チョコを渡したのが私だけじゃないことくらい。君は優しいしカッコいいもんね。でもさ、それで全員キープにするのって許されるのかな?

 

「み、三上……?」

「ううん、何でもないよ!それよりさぁ──」

 

 

 

──────────

 

 烏丸京介は二宮隊の隊室へ向かっていた。先のバレンタインで氷見から貰ったプレゼントへのお返しを届けるためだ。

 

 烏丸は本人に自覚こそあまりないが、女子からかなりモテる。当然バレンタインにチョコを貰うことも多いのだが、そう大量に貰っても1人では食べきれない。かと言って下の弟たちに渡すのは躊躇った。手作りには何が入ってるか分からないからだ。

 

 まあそんなことは滅多にあり得ないと内心では分かっていても自らの髪の毛が編み込まれたマフラー、みたいなホラーは何故か信じていて親交のない女子からの手作りは極力自らの手で対処していた。

 

 そんな中で氷見のプレゼントは有り難かった。素晴らしいと言っても良い。売り物として出されている正規品という安心感、お菓子の詰め合わせ、それも人数分という配慮が嬉しかった。一番嬉しいとはリップサービスではなく本心だった。弟たちには大ウケだった。渡された袋には自分用であろうチョコレートも入っていたが、これも購入品で安心して食べられた。

 

 と来ればお礼を兼ねて出向くのが筋と考えた次第だ。だが肝心の氷見はといえば──

 

「あ、あのひゃみさん。受け取るだけだから……。」

 

「つ、辻くんが受け取ってよ!」

「いや僕が受け取るのは違くない……?流石に。」

 

このザマである。

 

 氷見は今日はホワイトデー、烏丸からのお礼がワンチャンあるのではと期待はしていた。だが実際に烏丸が隊室にまで来るのは予想外だった。辻はあたふたするばかりで烏丸を出迎えた犬飼はニヤニヤするばかりで助けてくれない。

 

「あの、氷見先輩?」

「は、は、ははははい!?」

 

「この間のバレンタイン、ありがとうございました。弟たちも凄い喜んでましたし、ついでに俺の分まで用意してくれて。」

 

「いやそんな〜喜んでくれたなら何よりだよ。」

(あまりにテンパって何言ってるか分からないので、言いたかったであろう台詞の翻訳)

 

「あの大丈夫ですか、氷見先輩。」

 

 大丈夫ではない。烏丸がわざわざ隊室にまで来てお礼を言いに来ている、それだけで限界である。

 

「これ、氷見先輩のに比べたら大したものじゃないんですけど……ありがとうございました。」

 

「ふぇ?こ、これってか、烏丸くんの手作り!?そ、そんなわざわざごめん、なさい……私なんて既製品なのに……。」

 

「何言ってるんすか、俺は気持ちが嬉しかったんで。そんなこと気にしませんよ。」

 

笑みと共に掛けられる優しい言葉と心地の良い声。氷見は脳内はショート寸前だったが、烏丸の前で無様は晒せないと何とか意識を保った。

 

「じゃあ失礼します。」

 

烏丸が退出し、室内はようやくニュートラルへと戻っていった。

 

「いやぁ良かったねひゃみちゃん。京介くんからお返し貰えて。でも京介くんじゃなくてその兄妹から懐柔するなんてひゃみちゃんにしては妙案だよねー。」

 

「犬飼先輩、どうやら真木くんのアドバイスを参考にしたみたいですよ。」

 

「へぇ〜理央くんってそういう感覚は持ってるんだ。自分に向けられる感情には鈍感クソ野郎なのに。」

 

「戻ったぞ。ん、どうした?さっき烏丸とすれ違ったが。」

 

隊室には隊長である二宮が帰ってきた。

 

「ああ聞いてくださいよ二宮さん。ひゃみちゃん京介くんからチョコレート貰ったんですよ。」

 

「烏丸から?」

 

「も、もう言わないで下さいよ犬飼先輩!」

 

 二宮は考えた。何故烏丸がわざわざ隊室まで来てチョコレートを渡すのか。こいつらに接点は無いはずだ、ならホワイトデーか?まさか、な。

 

「──氷見、烏丸のどんな弱味を握ったか知らんが、物品を要求するのは良くないぞ。」

 

「「「はい?」」」

 

「あー二宮さんってこういう人だったわ。」

 

 盛大な勘違いがここにも1人居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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