真木姉弟にはご用心   作:リゼロッテ

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念のためタグにアンチヘイトを追加します。あくまでも念のためです。




14話 隊務規定違反の波乱

 

 その日、ボーダーに衝撃が走った。

 

 A級二宮隊の鳩原先輩がボーダーの重大規律違反により除隊となった。除隊というと聞こえは良いが、つまりクビだ。

 

 二宮隊は先日、遠征の選抜試験で合格していたが、鳩原先輩が人を撃つ事が出来ない点を問題視され、合格を取り消されていた。

 

 正規の方法で遠征に行けなくなった鳩原先輩が重大規律違反を犯して失踪した。もう答えはほとんど出ているようなものだが、戒厳令が敷かれているからこれ以上は触れない。

 

 隊室に戻ると当真先輩が珍しく神妙な顔をしていた。同い年のスナイパーが規律違反でクビとなれば何も感じないはずがない。するとそこに理佐も帰ってきた。

 

「ここに居たか。理央、お前今回の一件をどう見る?」

「それは鳩原先輩を遠征から外したことへの是非か?それとも上のやり口についてか?」

 

「どちらもだ。忌憚なく答えろ。」

 

「遠征から外したのは妥当だ。だが、なら何故ランク戦への参加を許可している?人を撃てないから外すなら最初からランク戦自体無理だろ。一度は合格させておいて最後にちゃぶ台返しは気に入らんな。」

 

「よし、なら今から意見書を提出しに行くぞ。透明性を欠いてるし、上の匙加減で思い通りになると思われても癪だからな。不満は公言しておいて良い。」

 

 珍しく馬が合うな。そもそも選抜試験の段階で弾けば良いのに、後出しジャンケンでやっぱり無しにしようとするその魂胆が不愉快だからな。

 

「お、お前ら……。」

「勘違いするなよ当真先輩。俺たちはムカっ腹が立ってるだけだ。鳩原先輩のした事を擁護する気はないが、上の連中が気に食わんのも事実だからな。」

 

 ちょっと救われたみたいな顔を浮かべやがる。まあ純粋な技術だけなら当真先輩でも負けるかもしれないような相手が居なくなったんだ、そういう気持ちにもなるのか。

 

 

 

 

 ボーダー上層部のある会議室まで向かい、理佐が意見書を押し売りの如く渡してる間に事件は起こった。

 

 恐らく鳩原先輩のクビの件について問いただしたかった絵馬が根付メディア対策室長に食って掛かっている。絵馬は鳩原先輩の直弟子であり、鳩原先輩は誰かに重ねるように可愛がっていた。絵馬は年の割には落ち着いてて生意気な奴だが、鳩原先輩と居る時は年相応にも映った。

 

 そんな先輩が失踪したのだがら絵馬とて気が気では無いのだろう。

 

 

 

 

 そして絵馬が居るということは近くにあの人も居る。

 

「おらぁぁぁ!」

「グフっ!?」

 

 絵馬の保護者……では無いがSECOM(セコム)、ある意味番犬のような影浦先輩が根付さんにアッパーをかましたのだ。根付さんの身体が思いっきり吹っ飛んだ。人間ってマジであんな吹っ飛ぶんだな、おもしれぇ。

 

「なっ!何やってんだカゲ!」

 

近くに居た柿崎さんと音を聞いて駆け付けた忍田本部長がやって来て色々とカオスだなこりゃ。

 

 忍田本部長は怒っているが、影浦先輩が殴った理由を話すことは恐らくない。影浦先輩は"感情受信体質"というSEを持ち、自身に向けられた感情が刺さるような感覚で襲ってくるらしい。根付さんの憐れみやら呆れやらの感情がモロに刺さってしまったんだろう。絵馬の心情含めて手を出す選択肢に至ってしまったのか。──まあ殴られたのはご愁傷様。

 

 

 

「根付さん随分と飛びましたねぇ。」

「っ!真木……。」

 

アッパーを受けて喋れない根付さんに変わって柿崎さんが反応する。

 

「お前、近くに居たなら止めるとか──」

「何故?止める義理も義務もありませんよ。」

 

そんなの当たり前だ。正直このおっさんがどうなろうが割とどうでもいい。まさか殴るとは思わんかったけど、溜め息混じりに返答されちゃ拳が出る気持ちが分からんでもない。

 

 

「帰るぞ理央。ん?どうしたこれは?」

「別に何も無い。感情が爆発しただけだ。」

「──暴力に訴えるのは馬鹿のすることだな。こんなのを殴ったところで大したメリットは無いというのに。」

 

「あぁ!?」

 

あぁそういう考え方ね。逆に言えばメリットがあるなら暴力も一つの手段として無しじゃないと。まあ姉の場合、ルールを破る行為の大半を認めない。裏を返せばルールの範囲内なら割とめちゃくちゃにやるタイプだからタチが悪い。今回もこちらに非が無い状態だと理佐の火力は止まることを知らない。

 

「もう過ぎた話だ、終わったならさっさと戻るぞ。じゃ皆さんご機嫌よう。」

 

 倒れた根付さんを起こしも労りもせず、俺たちは帰った。

 

 

 その後、二宮隊は鳩原先輩の重大規律違反によるペナルティでB級へ降格、一定期間の昇格停止処分となった。まあこれは仕方ない。何かしらケジメが必要ではある訳だし。

 

 アッパーをかました影浦先輩は個人ポイント8000点没収と隊ごとB級降格処分となった。柿崎さんが仲裁して執りなしてくれたという噂だが、ボーダー随一の使い手であるA級隊員をクビにしたり、記憶封印措置なんて真似をするメリットがボーダーに無さすぎる。規模もデカくなるし、鳩原先輩の一件をこれ以上大きくしたくないなら極めて妥当な落とし所だろう。

 

 あのおっさんも己よりも組織の利を優先する人間だからな。手打ちにするのはむしろ当然な気もする。

 

 にしても二宮隊と影浦隊がB級とかB級ランク戦荒れるぞこれ。ぶっちゃけクソゲーだからなあれ。

 

 

 

─────────

 

 鳩原先輩が重要規定違反でクビになったのがGWの夕方辺り、それ以来で初めて氷見と顔を合わせた。

 

 顔付きは……まあ酷い。思い詰めてるというか我慢してる感がありありと伝わって来る。まああんなことがあったんじゃ無理も無いが。

 

「大丈夫か氷見。」

「──真木くん……うん、大丈夫、だよ。」

 

作り笑顔だった。鳩原先輩みたいな作り笑顔。二宮さんが"作り笑顔の貼り付いた冴えない女"と鳩原先輩を評していたが、冴えないかはともかく貼り付けているのは分かった。

 

「大丈夫そうに見えないから声掛けたんだが?」

「真木くんに気づかれてるなんて相当だね。」

「お前は俺を何だと思ってんだ……。」

「無自覚鈍感正論──「OK分かった。喧嘩したいなら相手になるぞ。」

 

 何だそれは。罵詈雑言を並べやがって。

 

「あのなぁ、感情の溜め込みは精神の毒だ。吐き出せる内に吐け。」

 

「毒、か……。うん、ごめん、ちょっと、無理かも……。」

 

 

 

「あ、理央くんが亜季ちゃんのこと泣かしてる!」

「だから外聞の悪くなる言い方は止めろ。」

 

「亜季ちゃんもしかして、例の……?」

 

氷見は何も言わずにただ頷くだけだ。こりゃ1回エスケープさせるべきだな。

 

「辻を呼んでくるか?あと犬飼先輩も。」

「辻くんなら私が呼んでこようか?」

「お前が呼びに行ったら辻がフリーズするだろうが。氷見の側に居てやれ。」

 

 俺は隣のクラスまで行って辻を呼びに行った。ちなみに俺はBクラスとは面識が多い。逆にCとDは全くない。ボーダー隊員も居ないしクラス替えが無いから接点もないからな。

 

「辻、居るか?」

「真木くん?どうしたの、珍しいね昼休みに。」

「──氷見が泣いた。お前が必要だ、来い。」

 

 辻を半ば強引に連れ出して氷見のところへ連れて行く。

 

「ひゃみさん、屋上行こ。」

 

何とか連れ出してくれたな。あとは犬飼先輩に連絡いれて……これでよし。あとはあっちで解決する問題だ。

 

 

 

 

──────────

 

「うちの隊員が世話になった。今日は好きなものを頼め。」

 

その数日後、俺は二宮さんに呼び出されて焼肉をご馳走になっている。二宮隊の隊長にしてボーダーNo.1シューターの仏頂面スーツマン。だが何かと焼肉を奢る面倒見の良さがある。先日、氷見たちの面倒を見た?と二宮さんは認識しているらしくサシで食事に来ている。

 

「俺は大したことはしてません。あの場はああした方が良いと判断しただけです。」

 

「だとしてもだ。うちの隊員が感謝していた。氷見は何故か少々罵声混じりだったがな。」

 

「あいつ感謝したいのか貶したいのかどっちだよ……。」

 

「それと鳩原の一件で上層部に抗議文を提出したと聞いた。お前らにその気が無くとも構わない、感謝する。」

 

「俺は単にムカついただけです。まあそれでこうして奢って貰えるなら出した甲斐がありましたかね。」

 

「フンっ。さっさと食え、焦げるぞ。」

 

抗議文は二宮隊としては嬉しかったらしい。別にそういう哀れみや同情の気持ちはない。単に抗議文として挙げておくべきと判断にしたに過ぎない。それで誰かが救われるというのなら悪い気はしないな。

 

 

 

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