真木姉弟にはご用心   作:リゼロッテ

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本当にお久しぶりです。元々投稿していた作品が再開したのでこちらも更新します。


17話 遠征って文字にしてみると中々不穏

 

 遠征の日程が近づいて来た。遠征に行くのはこれが初めてじゃない。

今回の遠征は約1ヶ月半。他の国や現地の住民などと交渉してトリガーを譲り受けるといった外交遠征の意味合いが強い。

 

 今回遠征に選ばれたのはA級1位の太刀川隊、A級2位の冬島隊、A級3位の風間隊だ。遠征隊長は風間さんで既に遠征メンバーでのミーティングも終え、あとは日にちが来るのを待つばかり。

 

 A級の隊、全てが遠征を目指している訳ではない。スカウトで居ない草壁隊と片桐隊はそもそも遠征には消極的だからこそスカウト部隊に選ばれている側面もある。まあスカウトという対外的な社会性を求められるだけにその2チームが適役というのもある。太刀川隊は馬鹿とボンボンしか居ないし、ウチは隊長とリーゼントに問題がある。

 

 そもそも冬島隊は遠征を目指す隊だから関係ないが、遠征はボーダーにとっては最重要案件で世間にも公表していない。なので遠征中の学校はボーダーの合宿という体を取る。それで誤魔化せるかは知らんが、誤魔化されてもらうしかない。

 

 

 隊室に行くと理佐しか居なかった。既に時刻は21時、もはや防衛任務関係の人間しかボーダーには居ない時間だ。遠征に関する資料が散らばっていて珍しく寝落ちしている。

 

「おい起きろ理佐、帰るぞ。」

「──もうそんな時間か。情けない醜態だなこれは。」

 

「遠征が憂鬱か?楽しんでる奴の方がイカれてるぜ。」

 

「そんなんじゃない。お前らの実力なら心配することは無いしお前らをちゃんとオペレート出来る自信もある。──いやナーバスになっているのは事実、か。そういうお前はどうなんだ?」

 

「最悪の気分だ。だがそれを表情や態度に出すのは馬鹿らしいから辞めた。──もう良いだろう、母さんが待ってる。」

 

「──そうだな。」

 

 そもそも理佐がここまで遅い時間までボーダーに居ること自体珍しい。こいつに感傷とかそんなもんがあったとは意外だな。いや俺も人のことは言えないか。

 

 さっさと終わらねぇかなマジで

 

 

 

 

─────────

 

 

遠征前最後の学校だ。既に中間は終わって遠征から帰った3日後が期末試験という弾丸日程だが、期末試験に間に合うだけマシと考えるしかない。

 

「──いよいよなんだね、遠征。」

「何でお前がブルーになってんだ。なりたいのはこっちだ。」

 

「真木くんにそんな感傷あるんだね。」

「氷見、お前は俺に対する考え方を少し改めろ。」

 

 遠征前は正直気が重い。何度行こうと気が晴れるものではない。

 

「とりあえず無事に帰ってくるわ。」

 

 これ以上話しているといよいよ気が滅入ってくる。態度に出すという愚を犯してしまうから別れの挨拶はしない。そもそもこれは別れじゃない。たった1ヶ月半、非日常を過ごすだけだ。

 

 

 

 

 

──────────

 

 遠征と言っても常に戦っている訳じゃない。移動と休息を繰り返しながら目的地まで行く。休息は船を休めることを目的にしており、ここで戦闘が起きることもある。近界(ネイバーフッド)は何が起こるか分からない。突然の敵襲も十分にあり得る話だ。

 

 とはいえ移動中は比較的自由行動が多い。食事は当番制で持ち回りも交代制だ。なので自由時間にはゲームをしたり各々の時間を過ごしている。

 

「理央お前遠征にまで来て勉強してんのかよ!」

「当たり前だ。出水、帰ったら期末だぞ。」

「あー聞きたくない聞きたくない!」

 

 俺は遠征中の自由時間は勉強と決めている。1ヶ月半も学校を休むとなれば授業から大分遅れる。一応公欠扱いになっているが、期末は待ってくれない。だから俺は担任から公欠の間にやる授業で出る部分を課題として既に貰い受けている。遠征が決まった時点から担任に頼んでいた。これを提出すれば出席扱いにして貰えるし、担任としてもA組の成績を落とさずに済むからな。何よりは普段、品行方正で売っているからな。頼めば造作もない。

 

「殊勝な心構えだな。あの馬鹿にも見習わせたいくらいだ。」

「風間さん、そりゃ無理です。」

「やはりか。それで太刀川、レポートはちゃんとやって来たんだろうな?」

 

「え?いやぁボーダーの仕事なら仕方ないって提出期限伸ばして貰ったから良いかなって。」

 

「──呆れた奴だ。」

 

いやそもそも太刀川さんにそんなこと求めても意味はない。大学自体ボーダーの推薦が無かったらまず行けてないし。

 

「あのー真木先輩。自分も課題持ってきたんですけど、よろしければ分からないところ教えて頂いたりは……?」

 

「歌川ってそんなに成績悪かったっけ?まあ良い、課題を持ってくるとは感心だ。見せてみろ。」

 

「ありがとうございます。おい菊地原、お前も一応持ってきたんだろ。」

「別に僕は──まあどうしてもって言うならついでにお願いします。」

 

「もの頼むって態度じゃねぇぞ。」

 

 まあ同じ六頴館で去年やった範囲だし問題ないか。こいつらは地頭が良い。ある程度教えれば十分理解してくれる。というか理解力の終わってる奴らを相手にしてたからな。それに比べたらマシ過ぎる。

 

「なぁ国近、遠征に学校の課題持ってくるって意識高すぎねぇか?俺そんなの持ってこようとすら考えなかったぜ?」

 

「私もだよ当真くん。持ってくるゲーム何にするか厳選することしか考えてなかったし。え?もしかして私たちが少数派なのこれ。」

 

「安心しろ俺もいるぞ。」

「「何も安心できない!」」

 

 なんだ騒がしいな。お前らが課題持って来たって言ったら逆に不吉だわ。遠征が上手くいかない可能性すらあるからやめてくれマジで。

 




マキリッサにこんな一面があるかは知りません。ただそんな一面は絶対他人に見せないんだろうって確信はあります。
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