真木姉弟にはご用心   作:リゼロッテ

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3話 六頴館の日常

 

 ボーダー隊員といえど本分は学生である。学業を疎かにすればボーダー外からの批判を受ける。そうなれば対外的な印象は徐々に悪くなりボーダーへの風向きも悪くなる。どれだけ強力な艦隊でも風向きと位置取りをミスれば海上戦では苦戦を強いられるように可能な限り追い風を吹かせる努力はするべきだ。

 

 ボーダー隊員の多くはボーダー連携校であり、単位や出席の融通が効きやすい三門第一高校、または卒業後の進路に選択肢を増やしたい者が通う進学校の六頴館高校に進学する。

 

 かく言う俺は六頴館に進んだ。三門第一は一般校でボーダー隊員も多い。そうなるとそれ目当て、とまでは言わないがそういう輩も多くなる。六頴館に通う時点である程度の頭脳と分別は保証されている。だからここを選んだ部分もある。

 

 入学式を終えると新入生は各クラスに分かれていく。六頴館はクラスがそのまま成績順になっているらしく俺はA組になった。

 

 席に付き担任の簡単な挨拶が終わると自己紹介タイムが始まる。俺のクラスのボーダー隊員は綾辻、宇佐美、氷見の三人が居る。

 

 綾辻は広報部隊で有名な隊員だ。その挨拶は慣れたようなもので周りの男子から小さな歓声が上がる。

 

 一方の俺はと言えばこれまで人生では特に当たり障りのない挨拶を繰り返してきた。出席番号順だと双子の姉の前に自己紹介をすることが多いのだが、姉はあの感じなので印象も空気も割と持っていかれる。だから自己紹介であれこれはしない。

 

「真木理央です。ボーダーに所属してます。趣味は読書、かな。よろしくお願いします。」

 

 挨拶が終わると俄かに女子が少し騒ついた。双子ということで姉と俺の顔はかなり似ている。姉は女としてはかなりカッコいい系らしい。俺は見慣れ過ぎてて何も感じないがそれを男に当てはめると男前になるらしい。

 

 自己紹介が終わって放課後になる。ボーダーへ行こうと帰り支度をしていると同じクラスのボーダー隊員たちが話し掛けてくる。

 

「理央くんとこっちで会うの初めてだね。宇佐美でーす。改めてよろしくね。」

 

「おぉ宇佐美か。六頴館入るって見た目通り頭良かったんだな。」

 

「ふふーん、メガネの力は偉大なのだ。という事で理央くんもメガネかけない?ね、かけない?」

 

「どういう勧誘だよ。別に目悪くねぇしメガネ掛けたらビジネスマンにしか見えないって言われるだけだろ。」

 

「くッ……!だが私は諦めんぞ!」

 

 この宇佐美栞はA級の風間隊でオペレーターを務めている。何かとメガネを推してくるメガネ信者なのだが、こっそり家で母親がたまに掛けるメガネを掛けて外に出掛けたらビジネスマンに間違われて名刺を渡されるわ、取引先の人間と間違われるわで最悪だったから二度とあれは掛けない。

 

「──この間はどうも。見事にやってくれちゃって。鳩原先輩あの後大変だったんだから。」

 

 おかっぱ頭の女子が話しかけてくる。A級二宮隊のオペレーター氷見亜紀だ。

 

「あれは俺のせいじゃねぇ。撃ったのに移動しないスナイパーがどうなるかの見本だ。」

 

「その後で辻くんまで落としてくれちゃってこの前は完敗だった。二宮さんは凄い微妙な表情してたし。」

 

「──あの人に表情とかあったのか……?」

 

 

 話は先日行われたA級ランク戦まで遡る。冬島隊と風間隊と二宮隊で行われた試合で二宮隊の鳩原先輩が初得点を挙げたのだ。

 

 鳩原先輩は人が撃てないことである意味有名な人だ。だからランク戦では相手の武器だけを的確に破壊することでチームに貢献している。要は人に当てないために練習をしている。努力の方向性を間違えてる気もするが、事実それでもA級部隊に名を連ねている訳で結果が出ている以上はそれが正しい。

 

 その初得点も完全な誤射だ。風間さんのスコーピオンを狙い撃ったはずが弾道がズレてカメレオンで潜伏していたはずの歌川の脳天を貫いたのだ。その場に居た誰もが状況を把握出来なかったと思う。そりゃカメレオン貫通はズルでしょ、俺だってやってみたいのに。

 

『は?ベイルアウト?誰だ一体。』

『鳩原先輩が歌川を撃ったらしい。二宮隊の得点になってる。』

 

『おいおい。鳩原のやつ人が撃てるようになったのか、初得点じゃねぇか。』

 

『──そうでもないみたいだな。狙撃後に惚けてる。理央、そこから狙えるか?」

 

『──余裕でしょ。』

 

 俺はイーグレットの引き鉄を引いた。人を撃ったショックなのか明らかに動揺し狙撃後にも関わらずその場から離れない鳩原先輩の脳天を完璧に撃ち抜いた。これじゃただの的だな。

 

『おいおい理央、お前容赦ねぇな。』

『目の前の点数見逃す程お人好しじゃねぇ。』

 

 この日は俺と当真先輩で二人ずつ撃ち抜いて4点で勝ち逃げした。

 

「まあ何はともあれ学校じゃ同じクラスなんだし仲良くやろうぜ。同じA級隊員として。」

 

「って言ってもこのクラスの戦闘員は真木くんだけでしょ?」

 

「いやA級オペレーターは格が違うから。あんな面倒臭い上に個性の強い面々を指揮してるんだから十分なんだよ、もっと誇りを持て。」

 

「──真木君って偶に嬉しいこと言ってくるよね。なんか腹立つ。」

 

「何で良い事言ったのにムカつかれなきゃならねぇんだ……。」

 

 俺の高校生活は割と順調にスタートした。

B組には同じスナイパーの奈良坂や二宮隊の辻、それと三上さんがいる。

 

 この三上さんは次の風間隊オペレーターに推薦されている人だ。え?何で俺がそんな事知ってるのかって?宇佐美に聞いたからに他ならない。

 

 どうやら宇佐美は玉狛支部に移るらしく風間隊のオペレーターを辞めるらしい。菊地原辺りがめちゃくちゃ荒れそうな案件だが、後任として推してるのが三上さんな訳だ。本人曰く自信を持って推薦したと言っており確かにオペレーターとは非常に優秀だ。

 

 そして俺の姉である理佐は三上さんにぞっこんである。確かに三上さんは可愛らしいが理佐と並ぶとなんかもうよく分からん空間が出来上がる。あんな姉の顔は見た事がないというくらいに穏やかに笑っている。なんて恐ろしいことだ。

 

 だからなのか真木繋がりで俺とも会話をする事がある。ある日、三上さんから相談があると言って呼び出された。内容はいきなりA級のオペレーターが務まるのかという不安で色々と悩みを吐き出している。

 

「三上さん、理佐のお眼鏡にかなったんだろ?だったらそれで不安になる要素はないな。俺が言うのもあれだが、理佐の人を見る目は確かだ。まあ菊地原は正直誰が相手してもあんな感じだから気にするなとしか。」

 

「やっぱりそうだよね……栞ちゃんのこと慕ってるみたいだしやっぱり私は部外者って感じがして……。」

 

「風間さんが認めてるならそれが正義だ。あの人の下した決定は絶対。文句があるなら隊を辞めるべきは菊地原の方だからな。まあ菊地原になんか言われたらいつでも俺か理佐辺りにチクれ。」

 

「うん……なんか少し元気出たかも。私も強くならないとね。」

「まあ理佐みたいになったら怖いから程々にな。」

 

「うふふ、ありがとう。──ねぇ、もし良かったら理央くんって呼んでも良い?ほら、真木ちゃんと混ざっちゃうし。」

 

「あぁ確かに理佐と被るな、好きに呼べばいい。」

 

「じゃあ理央くん、何かあったらまた相談させて貰うね。」

 

「あぁ、良い解答は保証しないがな。」

 

 適当言ったら後で理佐に何言われるか分かったもんじゃないし。こういうのは真面目に答えておくに限る。

 

 いやぁ理佐と違って良い子だよな三上さん。え?何で三上には"さん"を付けるのかって?そりゃ理佐に「は?私の三上を呼び捨てにするとはいい度胸だな?」とか言われそうだからだよ。触らぬ神になんとやらだ。

 

 

 

 

 

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