知ってます?やりこみ要素が多くて、小説書く暇も作りたくないゲームがあるんですけど………
原〇ってゆうんですけど………(バルメテウスの二つ名は某往生堂の自称凡人が頭から離れなくて、そのまま使っちゃったやつです)
書きたい内容は、ベルがオラリオ訪れるまでは決まってるのに情景描写が難しすぎてゲームばっかやってました………
でも最近〇神の方も落ち着いてきて、小説書きたい欲が出始めたので楽しみに待っていただけると嬉しいです。
「う~~~ん………やっぱうめぇな、マールさんよぉ。アンタが作る飯は」
町も暗くなり、家々の窓からの明かりが道の石畳をぼんやり照らす時間帯。
カルモネア唯一の幼き子供のための孤児院から、大の男の感嘆の声が聞こえた。
「まぁ数十年の間、子供たちにうまいもん食わせようと必死こいて続けているからね。あぁでも、あんたが今食ってるの、それはシロが手伝ってくれた料理だよ」
「ほぉ………そうなのか、シロ?」
「………うん」
「そんなら、将来はいい嫁になれるかも「おじさん?」………おい、睨むなよアル…………」
「ねぇねぇ、ミューにレーム。あれって
「うん………たぶん」
「本に書いてあったあれだよね?」
アルの訓練があったその日の夜、バルメテウスが持っている
エリクサーの次に値の張る高級ポーションをこれでもかと持ってい、それを惜しげもなく自分の教え子に与えるバルメテウスを今夜の食事に誘っていたのだった。
バルメテウスは、この町に来て以来一人宿暮らしの身。
隊長の好意で騎士団で住んでもよいと言われたが、教えているだけの身がそれはどうかとも思い、まぁまぁ豪華な宿に住んでいる。(宿のほうが綺麗だとも言われた)
はたから見れば夜にぼっちのおっさんである。が、
「今日、いっぱい食べ物もらってて………おじさん、孤児い………うちで食べる?」
「カルラもレームもおじさんと話したいしって、前言ってたから………………どう?」
そうやって、どこか期待している目でバルメテウスはアルに誘われた。
己を歓迎してくれるのを聞いてはいかないはずもなく、どうせ一人の夜に団欒の色どりを添えようと訪れたのだった。
「しっかし良かったのか?食ってる途中で言うのもなんだが、子供らの食料にって貰ったんだろ?」
「そう言われるとそうだが、腐らせるよりましさ。カルモネアは食料は取れているから、
「数でゆうのもなんだが………ここ、子供5人だけだしな」
「シロ、にんじん嫌いだろ。食べようか?」
「あえ、そうなの?いつも食べてるじゃん」
「いやカルラ、シロがにんじん食べるとき、口きゅってなってるじゃんか」
「シロちゃん、そうなの?」
「………………あますぎる………にぃちゃん、おねがい」
「あっ!それなら~~ねぇねぇアル~、このピーマルも………」
「シロは良いけど、カルラは自分で食べなよ」
「ねぇねぇ、ミューにレーム。やっぱりこれって
「まぁ…………そうだよね………」
「グルトン?コロトン?さんも言ってたよね」
そんな会話をしながら、どこか茶化したり、内心引いていたり。
しかし温かい食事の時間がゆっくりと過ぎていった。
◆◆◆
夕食も終わり、食卓には先ほどとは打って変わって、台所からの桶にためた水が揺れる音と、木の食器がコトコト重なる音が静かに響いていた。
ごちそうに預かったバルメテウスはマールにこれくらい手伝えと言われ、いつも手伝ってくれる子供たちの代わりに皿洗いを、そのたくましい戦士の腕でちゃぷちゃぷしていた。
「働かざる者、食うべからずだよ」
「別に、食わせてもらったんだし不満もねぇよ。でも俺、いちおう騎士団指南役って職はあんだけどな?」
「そんな
他愛もない会話をしながら横の台に、マールが付近で水気を取った食器が次々に積みあがっていく。
最後の一枚の大皿ををアルが洗っていると、マールから彼女の孫への心配事がバルメテウスに告げられた。
「アルの調子はどうだい?」
「………それ、隊長にも言われたぜ」
それまた、日中にかけられた言葉と意味が全く同じになるもの。
周りの人間からのアルへの愛情に、バルメテウスはどこか嬉しくも可笑しく、苦笑してしまう。
「へぇ~隊長も入れ込んでるねぇ」
「それは、俺が言ったわ……、まぁ今日二回目だが、『技』も使えるようになってアルは確実に強くはなってるな。あとは………」
「『駆け引き』、かね」
まるで、自分も経験したのか語るマールにバルメテウスは分かっていたのか、何も言わずに黙々と手を動かし続けている。
だが、次に出てきたマールの言葉に思わず耳を疑った。
「私がアルに願うのは、ただ強くなることさ」
マールが孫に願うのは彼の安全などではなく、困難や苦しみを伴う道の踏破。
ただただ何事にも屈さぬ強者に、『英雄』なってほしいと彼女は願う。
一見非常なものととれるマールの言葉に、バルメテウスは訝しんで怪訝な目をチラリと向ける。
だが、マールに宿すものを見てしまい、皿を洗う手を止めてしまう。
そのたたずむ彼女の胸中に、顔に、目に宿っていたのは後悔。
この世の絶対的な、やり直せない過去への青い感情。
「あぁそうだ。私は
だから、家族を失った元冒険者はあの黒髪の少年に理不尽なくらいの強さを得ることを願う。
バルメテウスは、マールの足運びや体勢からもともと冒険者なのではと当たりを付けていた。
それは見事に的中し、さらにはそのもと冒険者は自分と同じ立場でもあった。
「また?」
「気づいてないのかい?あの子の目は………もう失った私の、そしてあんたの目とそっくりだよ」
マールのその自分でも自覚してないことの啓示にバルメテウスはマールに知れず息をのんでしまう。 視線は手の中の大皿に向けたままだが、全身がまるで蛇ににらまれた蛙のようにみっともなく、一瞬固まってしまう。
………己にもまだこんなものがあったのかと、バルメテウスはここ半年驚かされてばかりだと静かに思う。
「さっ!あとは任せて、子供たちにおもしろい話でも聞かせてやんな。私も憧れた『英雄』さん?」
バルメテウスに渦巻く感情なんか知ったこっちゃないのか、はたまた気を使ったのかはわからないが、ようやくバルメテウスは労働から解放される。
しかしどこか重くなった足を回し、バルメテウスは後の残りをマールに任せて部屋へと向かう。
その心のうちには、同じく『英雄』だった
◆◆◆
「………そうしてアルゴノゥトは………」
アルの声が、『英雄譚』を紡いでいるのがバルメテウスに聞こえてきた。
どうやら、アルが読み聞かせをしているらしい。
耳に入ってきたのははるか昔の、バルメテウスもそうだった『英雄』の物語。
それに少しだけ心を揺さぶられながらも、バルメテウスは子供たちの語らいの場へ足を踏み入れた。
しかしそこに待っていたのは、どんどん「もっと熱くなれよぉぉぉぉ!!」………そんな幻聴がする、二人のオタクの考察。
「やっぱ、『アルゴノゥト』っていいよね~。すごいってより、おもしろいって感じ?」
「レーム!それわかる!わかるよ!」
「やっぱり、ガルムーザもユーリスもエルシャナも………みんな好きだよね!アルのこと!」
「それな!」
バルメテウスは部屋の中に入ったのだが、あの5か月前の朝を彷彿とさせる気づかれなさ。
「俺、影薄くねぇよな………」勝手に傷ついた中年おっさんなんか無視して、カルラとレームの
そんな将来有望なガチ勢二人に、隣に座っていた一般人のミューはついていけなくて、共感できる仲間を探そうとする。
「またカルラとレームの
「俺もついていけないから、大丈夫だよミュー」
「………………わかる」「じゃぁ俺もわかる」
「神はいないの!?今、しんじだい?だけど!………」
しかし、アルとシロにも置いていかれミューは一人。そんなミューに声をかけるものがまた一人。
「安心しろミュー、俺もわからん」
「おじさん………………………うん、ありがとね?」
「頼むからお前も、
仲間が向こうから来てくれた………が、ミューの表情はな~んか微妙なもの。
それもそのはず、大人にわかると言われても………ミューは別にうれしくもなく、これまた困った表情を浮かべながら、逆に気を使ってしまう。
別に、この町に入ってからだが、変なことはしていないはずのバルメテウス。今日のアルのようにフルボッコだドン!……である。
……もうやめて!とっくにバルメテウスのライフはゼロよ!
子供って時として残酷だよネ!
「それから、さっきのシーンは………あっ、おじさんいたんだ」
………………残酷だよネ!!……ネ!!
「おう、まぁ、その、うん、さっきからいたぞ………」
「おじさんも来たし、ねぇアル~新しいの読んで読んで~」
さきほどバルメテウスが聞いた通り
読み聞かせの経験はこの中では誰よりもあり、アルも別に嫌ではなくむしろ喜んでその役割を担っていた。
新たな『英雄譚』の聞き手が来たことを
「うん?どれだ、レーム?」
「え~~と………カルラ、かりたやつどこだっけ?」
「ふふふふふ、これだぁぁぁ!」
勢いよく言ったセリフとは反対に、カルラにしては珍しく丁寧に、その手にあるものをアルに差し出した。
アルに差し出されたのは、近所の子から貸してもらった少し古いものの匂いがする一冊の本。
紫の皮をまとったそれは、美しくもどこか妖艶な装飾が施されたもの。
しかしそれを、まだ幼い子供たちがわかるはずもなく………
「家の棚の奥にあったんだって~~」
「じゃあ、大事な本なんじゃないの?大丈夫?」
「だからアル、だいじにね!」
「ネ!」
勝手にセキニンを作り上げられたアル。(別にカルラとレームに他意はない)
まぁ、ものを大事にしろとは彼らのおばあちゃんから常日頃言われているので、いつも通り読み始めようと本をゆっくりと開けようとするが………
「ちょい待て」
この部屋で唯一の
許可もとらずアルの両手からひょいとバルメテウスの片手に収まったその本の表紙には………
「『ビルガメスの冒険』………」
そんなタイトルが書いてあり、バルメテウスは思わず渋い表情になってしまう。
バルメテウスの記憶では、その『英雄譚』はとある英雄が一人の
カルラ言ったとおりに丁寧にページをめくりながら、読んでいくと………
紙の上にある文字は児童向けとは口が裂けても言えない………、結構
アハ〜んでウフフ〜んな夜のベットの上の祭りもありありと書かれているR-18のその本に、バルメテウスの表情はますます苦いものに変わっていく。
結局、バルメテウスが一人の大人としてした選択は………
「………………これはお前たちにはまだ早い」
「「え~~~~おじさんなんd」」
「まだ早い、いいな?」
「うひぃ!わわわわわかった!!」
「おじさんこわいいいいいいい!!!」
「………(ぶくぶくぶく)」
「………………にぃちゃん」
「おじさんシロが怖がってるふざけんなコラぶっとばすぞ」
その有無を言わさない威圧たっぷりの言葉に、二人は震え、一人は墜ちて、一人は兄の服をギュっとにぎり、一人のシスコンは怒りに燃える。
(ほとんど脅しに近い声音で言っちまったが………まぁこれを読むよか良いだろ………)
少しの罪悪感と安堵をバルメテウスは浮かべる。
そんなバルメテウスは代わりにと………
口を滑らす。滑らしてしまう。
「じゃあ………俺の物語でも、聞くか?」
口にしてしまったころには、しまったと後悔が湧き出てももう遅い。
元『英雄』には、迷いが生まれた。
元『英雄』が輝かしく人々に希望を持たせる『英雄譚』を語ることを、是としてよいか。
彼は『黒き終末』無様に敗れた『英雄』なのだから。
かの『英雄の都』、
剣を、盾を、杖を持つもの全てに、
それでも………それでも、バルメテウスたちは『英雄』だった。
しかしそれは、最後には怪物どもを打ち破った『英雄』だったから恨まれ、親の敵のように扱われながらも、他の冒険者の憧憬になったから。
けれども、敗北し立ち上がれなくなった『英雄』に価値はない。
「「はい!!!聞きたい!!!!!!」」
「ぼ、ボクも!」
「………(スっ)」(手を上げる音)
「俺も!」
だが、目の前の『英雄』から直接物語を聞ける滅多にないことに、カルラとレーム、普段はグイグイいかないミューとシロも、そして『英雄』をめざすアルも目を輝かしバルメテウスを見上げる。
そんなキラキラした昔の己を露ほども知らない
……が、悪い気が全くと言えるほどない。
本当にこれは、絆されてしまったみたいだ。
………そんな期待されては、仕方がない。そう、仕方ないからこの子供らに語ろうか。
『英雄』の物語を………、いいだろ?
もう帰ってくるはずもない、同意を求める四つの文字を虚空になげ、バルメテウスは夢を見せようと語りだす。
「じゃあ、とある
どこか自慢を含んだ声に5人の幼子の鼓膜が、震わされ始める。
そうして元『英雄』が物語を語りながら、カルモネアの夜が更けていった。
◆◆◆
「そうして、俺は………………って寝ちまっとんのか」
「え?あ、みんな寝ちゃってるじゃん」
真夜中に差し迫るまでバルメテウスの物語は続いた。
ある物語は、凶暴な竜を瞬きする間もなく倒し、
ある物語は、地と壁と天井を覆いつくす虫をすりつぶし、
どの話もアル達には心が躍るもので、5人とも興奮が冷める間もないのであった。
だけれども、今だ成長中の身は疲れてしまったのか、アル以外はもう夢の中へと落ちていっていた。
「アルはよく起きれてたな?」
「だって、おじさんの………『英雄』の物語を
「そうか、………よし!マールさんは………いねぇ、気配が消えてる?」
「多分、屋根の修理だと思う。おじさんがいるならちょうどいい~って料理してるとき言ってた」
「それなら、こいつら寝室に運んじまうか。アルは「シロは俺がおぶる」………お、おう………まぁ、そうゆうつもりだったけどなっと!」
あくまで静かな掛け声とともにバルメテウスはそのLv7の膂力を活かし、カルラを背に、ミューとレーム二人を腕の中に宝物を抱え込むかのように一片に運ぶ。
アルはまだバルメテウスよりも小さなその背中に、彼の『大事』な
子供がトコトコ歩く音と、幼児三人大人一人の重みが古くなってきた足下の木材に引きつらせた音を鳴らさせながら、夜の黒に染まった廊下を震わせる。
もうアルも寝るべき時刻なのに先ほどの興奮が、まだ彼の体に残っている。
その余韻がアルに、『英雄』を目指すものにそうさせたのかは、もう誰にもわからないが、
そんなアルにふと、本当にふとして、『英雄』への問いが生まれた。
「ねぇ、おじさんはなんで『英雄』になったの?」
「………随分と、突拍子もないな。さっきの話からか?」
ふと思っただけアルにはバルメテウスの言葉に強く肯定はできず、だが否定もできず、目線を下に落としながら静かにうなずいた。
それを是認と受け取ったバルメテウス。しかし、その口から出たのは、アルが目指すかっこいい『英雄』。
………そんな、想像していた高尚で輝く美しいもの………などではなく
「腹が立ったから」
「………………は?」
今のアルでも、まだましなことを言えるレベルの幼稚で馬鹿馬鹿しいもの。
………聞き間違えかと、次の言葉にアルは身構える。
「あの糞どもを、俺を下に見た『英雄』と呼ばれたやつらを、俺が上に立って馬鹿にしたかったからだ」
「………………」
………………うん、聞き間違えじゃなかった。
「ほらアル、わりぃが扉開けてくれ」
「あっ、うん」
寝室に着いたが、アルは気づけずにとおり過ぎようとするがバルメテウスの呼びかけで我に返る。
寝息を立てる4人の天使(※マールの感想です)をそれぞれのベットに寝かせ、今だ困惑にとらわれているアルに、バルメテウスが意地悪い笑みを浮かべながらアルに尋ねる。
「ガキっぽいって思ったろ?」
「………………オモッテナイヨ」
「ぶふっ!別に腹立てたりしねぇよ。今の俺でもそう思うしな?」
本当に気にしていなく、しかもアルの考えが正しいというバルメテウスにアルの困惑は益々大きくなってしまう。
玄関へと歩幅を小さくしてくれながら歩く、バルメテウスの後をアルはついていく。
「最初は、さっき言った通りだったんだぞ?あの阿呆どもは、今でもうざったらしく思っているしな」
せっかく見送ろうとついてきたのに、どんどん先ほどの、物語の中のバルメテウスを目の前の本人に壊されていくアル。セルフ脳破壊である。
正直げんなり度MAX!のアルは、もう耳をふさいでやろうかとバルメテウスを見上げるが、
そこで見上げてよかったと、未来のアルは言えるだろう。
そこでバルメテウスの本当の思いをしれたのだから。
バルメテウスの顔に、アルは目を見張ってしまう。
言葉はふざけているのに、なぜこんなにも凛々しく『英雄』の顔をしているのか。
ここまでバルメテウスの万物をも切り刻んでしまいそうな、真剣な眼差しを見るのはアルは初めて出会った。
物語などはもうどうでもいい。だからアルは足を進めながらも、このバルメテウスの言葉だけは、聞き逃してはならないと耳の神経を研ぎ澄ます。
そんなアルに苦笑いをバルメテウスはこぼすが、アルの聞き入る態度を感じて、ならばとアルだけに語り始める。
今まで
「あの迷宮都市には金が欲しくて行ったんだ。15の時だったか?まだ今のアルよりも弱っちいのに、挑んでったんだよ」
「そんな無鉄砲で欲だけは一丁前にあった馬鹿な俺は、そこにいた前の『英雄達』に敗北の『泥』を塗り込まれた。嫌ってゆう程な」
「そんな糞どもに、そして惨めだと分からされた己に腹が立った。そっから……だだひたすらに、足を壊しながら駆けた。喉をつぶしながら吠えた。何度も何度もそのたびに踏みにじられて、そのたびに血を吹き出しながら立てもしないってゆうのに睨みつけた。」
「そうして、気づいたらあいつらよりも、強くなった。技は極まって階位も上がった」
「だがな?そこからの景色は、ただただ重かった。」
「あいつらの位置に立ってやっと知ったが………………あいつらは、侮蔑も嘲笑も入ってはいたが、
「弱者のままの己を許すな、敗北を受け入れるな、そして………
まだ『英雄』より弱いアルの頭を、バルメテウスは彼の考えとともに少し雑に、だけれども優しく導こうとなで回す。
それにアルはただ黙って受け入れていた。『英雄』の言葉を我が身に刻もうとして。
「それを知ってから、俺は強者であろうと『英雄』であり続けようとは思ったな。ま、今は違うけどな」
「………え?」
「ん?聞いたりしてないのか?……………………負けたんだよ、
バルメテウスの、彼の強さを一部であるが知っているアル。
いつも理不尽なくらい強く、厳しく、まさしく『英雄』とよべるもの。
その存在からの突然の敗北宣言。そして、彼のその鋭い目が何を見据えているのかもアルは気づく。彼から聞いた『英雄』の責務なんてものではなく、過去の敗北した彼自身を見ている。
衝撃を受け、アルは足を止めてしまう。バルメテウスも一緒に止まったが、なんとか歩き出したアルに合わせてまた歩を小さく進めていく。
「あんなにも強者として蹂躙してきたのに………情けねぇな、俺ら」
バルメテウスが思いをすべて吐き出すとともに、二人は玄関に着いた。
玄関の外と内をつなぐ戸は、ただの木の扉であるのに今のバルメテウスには自分を阻む壁に感じてしまう。何に関しても弱気になってしまっている彼は、もうアルの目から見ても『英雄』とは呼べない存在に映ってしまっているかもしれない。
そのことには恐怖もない。なぜなら己が、弱い己が悪いのだから。
けれども、アルの夢の存在を汚した。それに、バルメテウスは罪の意識が芽生えている。
勢いのままアルに、愚痴にも近い元『英雄』のうめきを聞かせてしまったことに。
そのままただの木の扉を開け、静かに孤児院から離れようとするが
「次は、無理なの?」
全く本当に情けない。
『英雄』だったのに情けない。
「だって………俺は、一回自分で許しちゃいけないことをした。妹を守れず………死なせた」
アルに聞けずにいた、彼の夢の出発点を。
夢を燃え続けさせる、絶望を知れた。
アルの家族を守れなかった、『黒き終末』よりもちっぽけで小さな絶望。
だが、今のアルに向かってそんな馬鹿なことは口になんて、心にだって出せない。
精一杯自分の過去の弱さを、そしてそれによる後悔をを伝えようとする、そんな黒髪の少年を邪魔なんてしたくない。
バルメテウスを、自分より強くて憧れてもうアルの『大事』である元『英雄』さえも。
………いや、『大事』だからこそ守ろうとしてくれる少年を。
「………………」
「でも、そんな俺でも情けないけど、次こそは………次こそは!シロを守りたいから!だから、その………おじさんもまた………」
「………………ぷっ、くはっはっはっはっはっは!!」
アルはあの、『黒き終末』の絶望を知らないから言えるのだ。
そんな緩い言葉を出せるのだ。確かにそうだ。
だが………アルもまた、絶望にいたのに立っていたのだ。
それが深いとか強いとかなんて関係なしに、アルは立ったのだ。
バルメテウスも
そんなアルにまた焦がされるほど照らされて、そんなバルメテウスが滑稽で……まだ立てる自分に気づいたことがうれしくて、笑ってしまう。
先ほど、アルには静粛にと言ったのは、いったいどこへ行ったのだか。
またアルと初めて会った時のように、この歓喜に流されるまま目の前の少年を頭を今度は少し強く、グリグリとなで回す。
そんなバルメテウスの顔は、あの敗北以来、彼の中で一番と言えるほど安らいでいた。
「ほんと、お前も俺も情けねぇなぁ?」
「おじさん、流石に痛い………」
「これくらい許してくれよ、これでもうれしいんだぜ?」
「まずはアル、お前が『英雄』になるのを待っているぜ」
「………!!!うん、待ってて!」
「もう真夜中だから、静かにな?………じゃあ、おやすみだ、アル」
「うん、おやすみ。おじさん」
「まったく、なんつー子供だよ?生意気にもほどがあるぜ」
夜の黒に染まっている町を、どこか浮足立った足音と興奮が冷めきらぬ言葉が空気を静かに震わす。
乱暴な口調で話すも、その元『英雄』は自身が浮かべる深い笑みをやめることができない。
これだけ心が浮き立つのも、彼には実に5ヶ月ぶりである。
「町抜け出して、体動かしてくるか。これじゃおちおち寝てられねぇしな」
そうしてその日の最後にアルは受け取った。
そこでまた、受け取ってしまった。
『英雄』からの、まだアルには理解もできやしない、重い重い期待を。
しかし彼は救った。
今回は救えた。
彼が目指している、『英雄』の存在のこれからを。
次回……明日(2025,5,11)投稿!!がんばる!!