米花町でちんちん出したら逮捕された件について。   作:ひつまぶし太郎

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なんだって、それは本当かい!?


第二話。これも全部工藤ってやつのせいなんだ!

 

 

「いや、ごめん。あ、ごめんじゃなくて、はい。すみません。いや、ほんと反省してる…ます。はい、はいほんと、いい年してご迷惑をおかけしてすみません…はい」

 

ちんちん出して捕まったあと。

僕は身元保証人として警察に掛け合い、釈放を勝ち取ってくれた保護者に電話で平謝りしながら警察署をあとにする。

 

そんな後ろ姿を、すごく心配そうに見つめるのは先程まで僕を取り調べていた佐藤刑事だ。

ご迷惑をおかけしました。

たぶんまた来ます。

そんな予感がするのでよろしくお願いします。

 

とりあえず、釈放されたはいいが、釈然としないことはあった。

いや、ちんちん出して捕まったことじゃなくて。

さすがにそこに関して異論があるわけではない。

そりゃちんちん出したら捕まる。

だってちんちん出してんだぜ?

捕まるだろ、そりゃ。

ちんちん出してんだもん。

 

ただ、やっぱり釈然としない自分がいた。

僕はパトカーのガラスに映った自分の姿を見て、ため息をつく。

 

「そんなに女児に見えるか…?ほんとに…?」

 

真っ白でダボッとしたウニクロのTシャツは、一応下にショートパンツを履いてるとは言え身長の関係でワンピースのようになっている。

つまり、僕の体はとても小さい。

そして、髪の毛と瞳。

真っ白でふわふわした前髪の下から、真っ赤な瞳が僕を見つめ返している。

 

「…女児か…」

 

僕のつぶやきとともに、へニャリとアホ毛が垂れ下がる。 

色素を失って髪の毛が伸びてるだけなんだけど、そこまで少年に見えないものだろうか。

 

死ぬ思いして、なんか身体も小さくなってというか赤子状態からやり直す羽目になって。

身体をまともに動かせるようになった3歳児状態からは、できる限り組織壊滅のために動いてきたつもりだ。

小さくなった身体ではできることはそう多くなかったが、組織の取り引きを破壊し、スパイごっこみたいな感じで施設に侵入して、幹部と戦闘になったりもした。

 

…しーちゃんの足取りも追ってみたが途中で追えなくなったし、最近は組織からカーネイジとかいうあだ名もついた。

なんだカーネイジって。

ヴェノムかコラ。

そこはお得意の酒で例えろよ。

 

…もう、いいだろう。

ほんと。

ここまで大変ならちんちんくらい出すだろ。

許されるだろ。

むしろちんちん出すのが普通だろ。

ちんちん出させろよ、もう。

 

「許されるわけなくないか?」

「やばいアルミホイル巻かなきゃ…」

「あのな、別にこれは思考盗聴じゃなくてお前が口に出してたのが電話の向こうまで聞こえてただけだ」

「なぁんだ、ついに再生能力以外も芽生えたのかと思ったのに…」

「無茶を言う」

 

僕は、話しかけてきたやけに爽やかな金髪の兄ちゃんに微笑みかけた。

 

「とりあえず釈放ありがと」

「ほんと、局部を出して捕まったと聞いた時は耳を疑ったよ…まさかほんとに出してたとは…」

 

安室透。

あるいは降谷零。

そしてバーボン。

僕のつけたあだ名はあむぴ。

探偵、公安、組織の幹部、僕の保護者の4足のわらじを履く金髪のゴリラだ。

フレイザードもゾロもびっくりな四刀流。

いつか過労死するんじゃないかと僕は結構真面目に心配していたりする。

 

「若さ故の過ちかな。あと局部じゃなくてちんちんな。ちんちん。リピートアフタミー。ちんちん」

「…はぁ、まったく。坊やだからとでも言うつもりか?」

「…あー!それだよそれ!」

 

僕は車に乗ったことで距離が近づき、よく見たら化粧で誤魔化してるだけで目元にごっついくまがあるのを一旦見て見ぬふりしながら、叫ぶ。

 

「坊やで思い出したけど、僕の戸籍5歳になってたんだけど!あと帝丹小学校に入学してることになってたし!どうなってんの!?」

「どうなってるって…俺が偽装しただけだが?」

「クソ公安野郎!じゃあ働けとかいうなよ!」

「働けとは言ってないさ。行くべき場所があるだろうと言っただけで」

 

そうだっけ?

正直朝から目玉焼きが破裂したことに萎えた勢いで履歴書買って、その場のノリで面接に行ったらあんまり朝のこと覚えてないんだよな…。

 

かー!しょうがないよなー!

後遺症…後遺症がなー!

馬鹿になっちゃってるらしいから!

へへっ、記憶力も鶏並みだぜ!

 

「…それに、その直前にニートとか言われたら勘違いするって!だって18だもん!あーやっべ、働いたほうがいいのかなとか思うじゃん!」

「…そもそも、学校への入学手続きの話はしたはずなんだけどな」

「えっ」

「ゲームしながら『あーはいはい。あむぴご苦労さん、おつかれおつかれ。わかったから下がっていいよ。うん。今ちょっとバゼルギウスと戦ってっからぁぁぁあ!?テレビが消えた!?ええおい、電源ぶっこぬきだと!?クソ、許されるのか!?こんな横暴が!』ってやり取りしたの、覚えてないとは言わせないぞ」

 

…言われてみると、たしかにそんな会話をしたような気もする。

でもあの日はモンハンしてたし、組織の取り引きに横槍入れて十人切りしたあとだったし、モンハンしてたし…。

なにより電源ぶち抜かれた恨みしか記憶に残っていなかったので忘れていた。

 

ちらり、と保護者の方を盗み見る。

無表情だ…。

わからん、これどっちだ。

呆れてるだけか?

それともブチギレてるやつか?

とりあえず惚けよう。

いけるいける。

今の僕の可愛さなら、いける…!

 

「てへっ、許してニャン」

「今日の夜ご飯はにんじんサラダににんじんハンバーグ、にんじんのスープと丸かじりな」

 

ダメでした。

まぁそれはそう。

いくら僕が今の容姿を最大限活用して懇親のあざとかわいいポーズをしたとて、中身は18歳男である。

いやまぁさっきも言ったけど、昔の僕から色素抜いただけで、容姿が変わったってわけでもない。

ますます成人男性が興奮するわけもなかった。

 

「…あ、でも今日は家帰ってくるんだ。最近なんか爆薬盗まれたりして忙しそうにしてたのに」

「…ま、これも家族サービスってやつだ。少なくとも、引き取った責任は果たすさ」

「…ふーん」

 

あ、やば。

なんか顔にやけそう。

いかんいかん。

18にもなって親代わりが自分のために家に帰ってきてくれたからって喜ぶのは、なんか…あれだ。

こけ…こく…。

なんだっけ。

……股間に関わる?

 

でもあれだなぁ、育ての親は論外として一番最初のうちの父親もまともに家にいなかったしな。

ちゃんと優しかったし、家族サービスも年に一回くらいはしてくれてたけど、こうして自分のために時間を結構割いてくれる保護者っていうのは、新鮮だ。

 

「あと、普通に説教な」

「えっ、ここはなんか平和な感じで話が終わるんじゃ…」

「そんなわけ無いだろ。ただでさえ目立つ容姿のくせに、とんでもないことしてくれやがって…!君の生存がバレたらどうする!ややこしくなるだろ!」

 

こーれはマジギレですね間違いない。

この人怒ると怖いんだよな…。

どうにかなんないかな…ならないだろうな…。

僕は誤魔化すように窓の外へと目をやる。

 

「でもこれで僕の生存確信するやつがいたらただの変態だと思うんですけど…」

「目立つなって話をしている」

「それはそう」

 

車の窓の外をおにぎりみたいな顔の小学生とそばかすの少年とメガネの少年とサークルクラッシャーになりそうな少女が通過していく。

それを見て、改めて思う。

 

「僕、小学生になるのか…」

「なんだ、嫌なのか?見た目的にはぴったりだけどな。それに、赤子の頃から考えると順当な年齢だし」

「や、別に。全然嫌じゃないというか。学生生活のほとんど好きな女の子裏切りながらの毎日だったから、普通に学校通うのは楽しみかも」

「…そうか。……そうか」

「あ、同情禁止。僕別に自分の人生に後悔とかないんで。つまりちんちん出したのも後悔してない」

「それは後悔してくれ頼むから」

 

こうして、僕の新生活初日は終わりを告げた。

ちんちんを出して逮捕されたけど、実に穏やかな春の一幕だった。

 

ほんと、逮捕さえなければな。

ちんちん出したのはしょうがないにしても、ほんと。

逮捕されたのがなー!ほんとなー!

という僕の嘆きは、ついぞ聞き入られることはなかった。

 

なんでだ。 

いや、当たり前か。

そうか…。

ほなしゃーないか。

堪忍な工藤…。

工藤って誰か知らないけど、お前のせいにしとくぜ…。

 

 





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