米花町でちんちん出したら逮捕された件について。   作:ひつまぶし太郎

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数ある二次創作小説で一番最低な時計仕掛けの摩天楼です。
よろしくお願いします。


第四話。米花町ご当地ヒーロー

 

 

「いやあああああ、犯されるー!!」

 

米花町は犯罪都市。

闇が深く、一度入ったら出られない。

そう口さがなく言う人達がいる。

それはある一側面では真実かもしれなかったが、米花町には光があった。

 

希望を忘れない人々がいる限り、その手を伸ばし、何度だって立ち上がる存在がいた。

 

「へっへっへ、いい反応だけどその言い方はよくねえな…金を出せって言ってんだよ俺は!別にそういう風な手は出さねえよ!」

「きゃあああああ! 手を出さないなんて、そんなのきっと噓だわ! だって、こんな美少女を路地裏に連れ込んでるんだもの!」

「すごい自己肯定感だなおい…じゃなくて、金を出せつってんだよ!そのブランド物バッグにアクセサリー!そっちに目をつけたんだよこっちは!」

 

今日もまた、少女の悲鳴が上がる。

その者は、悪を絶対に許さない。

その者は、何があっても立ち上がる。

その者は、光に向かって突き進む。

 

「待て、悪党!!!」

「何だてめえコラ、正義の味方きど…り……か?………は…?」

「きゃああああ!変態よ!!!」

 

人は、彼を。

 

「───俺の名はちんちんライダー!通りすがりのヒーローだ!覚えておけ!」

 

ヒーローと呼んだりは別にしなかった。

 

「ちんちんライダーってか、ちんちんじゃねえか!!!!」

 

その男はヒーローと言うには卑猥すぎた。

大きく、分厚く、重たく。

そしてそのまんますぎた。

 

そのまんまのちんちんだった。

 

「何を言う。自転車のベルがちんちん鳴るからこの名前なだけで、他意はないぞ。ほら、ちんちん電車とか、そういうのと同じやつさ」

「いやその理屈はおかしい」

 

成人男性をゆうに超えるサイズのちんちんが路地裏に現れたことに、少女にナイフを突きつけていた男も、悲鳴を上げていた少女も恐怖した。

 

よく見たらちんちんから手足が生えていて、足の先には金色にコーティングされたゴムボールが装着されている。

きしょい(直球)。

 

「俺が来たからにはもう安心だ、少女」

「ひぇっ」

「悪党は俺が倒す!」

「おい誰か警察呼んでくれ!女の子が変態に襲われる!」

「黙れ悪党!くっ、少女を人質に取るつもりか!させんぞ!食らえ、我が必殺の奥義!」

 

怯えた少女を庇うように、チンピラの男が前に出て変態に向かってナイフを向ける。

それを抵抗の意志と受け取った変態が跳躍する。

そして、無駄に洗練された動きで回転すると、その矛先…矛先?頭?…あのあれ、ようは亀さんを男に向け叫んだ。

 

「デスキャンサー!!!!」

「ぐわぁぁぁぁぁああ!!!!」

 

そして放たれる白くベタつく何か。

なんかもう色々と最低だった。

 

「ふ…トリモチ爆弾マークIII。全ての犯罪者を捕らえるために生み出された、白く粘つく何か。しばらくその白い繭の中で反省するといい」

「なにかってなんですか?」

「そんなもの、俺が知るか!どうせスパイダーマンとかのパクリだろ!」

「こんなきたないスパイダーマンはいません!今すぐ謝罪してください!」

「ふ、超断る。はははっ」

 

そして、変態は到着した警察官に流れるように逮捕された。

何を思ったのか、正義の味方面して馴れ馴れしく警察に肩を組みながら話しかけにいったのだから、当然とも言えるスピード感だった。

 

「…ふむ。なぜ俺が逮捕される?」

「むしろ他の誰を逮捕しろってんだよ…」

「くっ、致し方ないか…。ヒーローは所詮孤独。理解されぬものよ…残念だ。俺をこのような姿に改造した敵を見つけるまで、悪を倒し続けると誓った初日にこうなるとは…」

「それが本当なら心の底から同情するけどな…」

「はぁ…すまない、公僕くん」

 

変態は諦めたように首?を振ると、ため息をつく。

 

「なんだ?正直娘の誕生日にあんたみたいな人生史上一番のインパクトな犯罪者を逮捕することになって俺はへとへとなんだが…」

「おや、それはおめでとう。…じゃなくてだな、自転車を持ってきてくれ。あれは形見でな、どうせ連行するなら一緒に連れて行ってほしいのだ。乗るだろう?その白と黒の無粋な鉄の箱になら」

「…まぁ、どのみち証拠物件として押収するから構わんが…おい、持ってきてやれ!」

 

ベテランの警部が部下に命じたことで、自転車がその変態の近くに持ってこられた瞬間、閃光が闇夜を切り払った。

 

「な、なんだ!?」

「警部、上です!電柱の上です!」

「はーっはっはっは!油断したな諸君!くれぐれも今日という日を忘れるな!我が名はちんちんライダー!君たちが捕らえそこねた、ヒーローの名だ!」

「まだヒーローを名乗れると思ってるのかお前は!」

 

警部からのもっともな指摘を無視して、電柱の上で自転車にまたがる変態はポーズを取る。

 

「次会う時は敵同士。悪いが君たちを見た瞬間我が白濁棺(デスキャンサー)の餌食にすることすら視野に入れるとしよう…!」

「ヒーローのセリフか?それが?」

「では、さらばだ!ひゃーっハッハッハッハ!」

 

ちりん、と自転車のベルがなる。

直後、突風を巻き起こしながらその変態は空へと飛んだ。

正確にいうと、電線の上を曲芸師のように自転車で爆走していっただけなのだけど。

あまりの速さに、空を飛んでるように見えたのだ。

警部は自称ヒーローの変態パワーに恐れ慄いた。

あれはただのバカではない。

とてつもない力を持った変態だ。

 

「わー…E・Tみたい…」

 

それを見た被害者の少女は、そう締めくくったという。

 

 

「───やっべ、あむぴから鬼電来てる。今日捜査会議で帰れないって言ってたから今日決行したのに!急げ急げ!」

 

 

 

 

「それが、ちんちんライダー?」

「はい、そうなんですよ!まさに、米花町のご当地怪人って感じですね!」

「最低すぎない?」

 

昼休み。

コナンは、光彦が興奮気味に話すその都市伝説に眉をしかめる。

あまりにも荒唐無稽だ。

だが、嘘にしては無駄に凝ってるし、夜の電線上を自転車で爆走する変態は正直見たくない。

追求しないほうがいい真実ってのはどこにでもあるもんだよな…と、目を逸らしたのだ。

 

だが、まさか自分が遭遇するとは。

 

時は進み、次の日の深夜0時前。

コナンはとある爆弾犯を追い詰めたはいいが、幼馴染の毛利蘭が待ち合わせで訪れていたビルに爆弾が仕掛けられていると知って、そのビルへと飛び込んでいこうとしていたところだった。

 

「ただのちんちんです、通してください」

 

猥褻物がいた。

 

どうやらその猥褻物は警備員に止められてるようで、それでもなおその先へと進もうとしているらしかった。

その先。

つまりは今なお爆発が続いており、火が立ち上るそのビルに。

 

「おいただのちんちんって言ってるぞ、どうする?」

「ただのちんちんなら通していいんじゃないか?」

 

嘘だろ?

コナンは己の耳と目を疑ったが、夢の中だとしてもそうありえない非現実な現実は変わらない。

 

『待て、そいつを通すな!そいつは、そいつは───!』

 

だが、ありがたいことにここは現実で、まともな人間がきちんといた。

無線の向こうから警備の責任者らしき男の怒鳴り声が聞こえてくる。

 

『現在指名手配中の凶悪犯罪者だ!』

「ちっ、もう嗅ぎつけられたか…。まったく、ちんちんに対する反応はもはやメス堕ち済みの女騎士並みだな…!」

『やめろその言い方!つーかそんな目立つ格好できといて、バレないと思うな!こっちは警察から不審者情報を渡されてんだよ!』

「正論なんてつまらんとおもわんかね?」

 

つまるとかつまらないとかじゃないと思う。

 

「はっ、おいおい。凶悪犯罪者様だってよ相棒」

「ま、わかってたけどな」

「ほう?」

 

猥褻物を足止めしていた警備員二人に向かって、拳を構えようとする変態をサッカーボールで気絶させるか、それとも蘭の命を優先するかでほんとに、ほんとのちょっとだけ、ごくごく一瞬迷い、コナンは即座に変態を無視して走り出した。

 

「あんたほどの漢が、ただのちんちんなわけねーよ」

「そうだぜ。そんな剥き出しの漢らしさ、見逃す間抜けじゃねえさ」

『お前ら遊んでないで早く捕まえろ!つーか素通りさせようとしてただろ、間抜けども!応援も今向かっている!』

「悪いが主任、俺達はこの人に惚れちまった」

「いけよ、ヒーロー!ここは俺達が食い止める!」

「くっ、すまない勇者たちよ!君たちの輝きを、俺は絶対に忘れない!」

『無駄に熱い展開をしとる場合かー!!なんだコレ!周りの人間もバカになる領域展開!?』

 

コナンには聞こえなかった。

聞こえなかったってことにしてほしい。

 

コナンは必死に走った。

頭のおかしくなりそうな空間から逃げ出して、幼馴染の命を助けたくて走って、走って。

 

「ほう、その年の子にしてはいい顔をする」

 

変態に追いつかれた。

 

 

 

 

「えっと…」

「ふん!」

「あの…」

「でやぁぁああ!」

 

変態がめちゃんこ強い。

さっきから落ちてくる瓦礫や、道を塞ぐ壁を破壊しながら最短で最上階へと駆け上がっていっている。

 

コナンは、そんな現実に挫けそうになりながら、負けじと走る。

そして、最後の扉すら変態はぶち破ると、あたりを見回す。

当然場はパニックになるが、それを意に介さずに変態は大きな紙袋を見つけて歩み寄ると、持ち上げる。

 

「…それ、どうするの?」

「…これもヒーローの務めだ。少年が気にすることではない」

「いや、どうするのか聞いてるんだけど…」

 

変態は真実を見通す青い瞳と正論を前に、沈黙し誤魔化すように空を見上げる。

 

「なに、ちょっと月まで届けるだけさ」

「ダメだよ、その方法じゃへん…おじさんが死んじゃうかもしれないんだよ?」

「優しいな、君は。どうだろう、この名前とコスチュームを君に授けてみようか」

「全然いらない…」

「ハッハッハッハ、冗談さ」

 

屈伸して、アキレス腱伸ばして、腕もクロスストレッチで十分体をほぐしたその変態は爆弾を抱え直した。

 

「俺の一言で即座に何をするか察した賢い少年よ。心のちんちんはでっかくな!」

「意味わかんないです」

「…さらばだ、皆様!我が名はちんちんライダー!生憎愛車は小銭がなくて駐輪場から取り出せなかったので今は手元にないが…その名をどうか忘れないでほしい!俺は米花町のご当地ヒーロー!困ったことがあればいつでも参上する!!!」

 

その日の夜、米花町の空には大きな花火が上がった。

死者は一人も出なかった。

 

 

ありがとうちんちんライダー。

ありがとうご当地変態怪人。

君のお陰で今日も米花町は守られた!

 

 

誰もが表面上の感謝を口にするの中で、心優しい毛利蘭と生粋のヒーロー気質な江戸川コナンだけが心の底から感謝したという。

 

 

 

 

 

「ただまー」

「遅い。コンビニに行くだけじゃなかったのか?」

「いや、ちょっとヒーローごっこしてて…」

「はぁ…程々にしろよ?お前の強さは知ってるからあまりとやかくは言わないけど、それでも心配なものは心配なんだから」

 

僕は、あむぴの説教を軽く聞き流しながら達成感に満ち溢れていた。

楽しかったしまたやろう。

ヒーローっていいね。

 

ちょっとデザインがあれだけど、あれなら絶対僕ってバレないし最高だ。

なんかあれだよね。

子どもの変身ヒーローって、プリキュアとか魔法少女みたいでテンション上がる。

 

僕はリュックに隠した伸縮自在のヒーロースーツに思いを馳せながら、歯を磨いて、シャワーを浴びて、あむぴの隣で眠りにつくのだった。

 

 




最後までこんなクソ小説を読み切った皆さん、お疲れさまでした。
前回評価について触れたところ、たくさんの方から応援をいただき、なぜかランキング順位も上がり、感謝してもしきれません。
仕事終わりのテンションで無理矢理ひねり出した続編はきっと皆さんが思っていたものとは違ったことでしょう。
…でもタイトル通りだしいいか…の精神で今後とも宜しくお願いします。
その手を伸ばし、何度だって立ち上がる存在(意味深)
今回もお叱りを受けそうなので、出来れば評価や感想を頂けると嬉しいです。
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