米花町でちんちん出したら逮捕された件について。   作:ひつまぶし太郎

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第六話。米花町の怪盗紳士と日常

 

 

 

「僕のこの手が光って唸る! お前を倒せと輝き叫ぶ!」

「うわぁぁ!待てよ、俺が悪かったよ!だからやめてくれ!」

「カレーを運んでる時にふざけた結果ひっくり返したんだ!死刑に決まってんだろ!!お前の命納品クエストの時間だコラァ!」

「許してくれよぉ!」

「ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」

 

いやこれどういう状況?

コナンは昼休み、給食係が食事を配膳する間、教室の外に出される他の子供達と同様に暇を持て余し、光彦たちと暇つぶしにサッカーをしていた。

 

帰ってきたらこれである。

なんとなく、リョウのセリフと教室に漂うカレー臭から何があったのかは予想できたが、無言で下手人拘束している元太とブチギレて周りで部族の威嚇みたいなことをしている男子生徒たちが普通に怖い。

 

「吊るせー!」

「やれー!」

「ぶっ殺せー!」

 

ずるずると縄で縛られた下手人が持ち上げられていく光景に、なんだかコナンは引っ掛かりを覚えたが、それよりも先に聞くことがあった。

 

「なぁ、先生は?」

「…火傷した子がいるから保健室に…」

「だからあんなにキレてんのか」

「リョウ君って友達想いなんだね!」

「…そうな」

 

カレーだけでなく、クラスメートが怪我をしたというのなら、意外とあれで人助けを自然としているリョウもキレるというものか。

歩美の言葉に頷きながらも、コナンはちょっとだけ嫌な予感がしていた。

 

「人のカバンにカレーぶちまけやがって!ぶっ殺してやる!」

「友達想いとは」

「さぁ、行くぜ!必殺技!!!」

「おいそこまでにしと───」

「ただの普通のパンチ!!!」

「ただの普通のパンチだった!千年殺しとかそういう感じかと思ったら、ただの普通のパンチだった!おい大丈夫か竹内!?」

「コナン君大変です、泡吹いてますよ!」

「ちょ、誰か先生呼んでー!」

 

暴力ダメ絶対。

そう言い聞かせられ怒られた直後、普通に殴られた生徒と一緒にバレーボールを開始してゲラゲラ笑ってる子どもたち。

 

そんな帝丹小学校の最近ではよくある日常を見て、コナンは最近早とちりして偽札偽造組織を真剣に追いかけていた自分がバカみたいに思えてきて───

 

「あ、コナン君よけてー!」

「え?」

 

コナンが歩美ちゃんの声に顔を上げた瞬間、バレーボールが顔面に突き刺さった。

 

「やべ」

「どうする?」

「逃げるか」

「つーかそこにいるのが悪くね?」

「歩美ちゃんと仲良く話しやがって許せねぇ」

「だいたいあんだけおきれいな顔してんだし、ちょっとボールで腫れてる方がバランスも取れるってもんだよな。俺達と」

「そうそう、大きな顔してんだから顔も大きくしないと」

「じゃあ…そういうことで…」

 

犯人たちが随分好き勝手言っている。

ぶちっ、と。

コナンの中で何かがキレる音がした。

 

「………待て!お前ら逃げんな!!そこになおれ!!!俺が先生に変わって説教してやる!!!!」

「きゃー!コナン君が怒った!」

 

クソガキ達とブチギレたコナンによる全力の鬼ごっこが始まった。

 

「やってみろよクソチビ!元太の半分くらいの身長しやがって!実は5歳じゃないんじゃないねーの!僕の目はごまかせないぜ!」

「ち、ちび…だと…?」

「けけけけ、それに普段から蝶ネクタイするなんて変なファッションでやんす!」

「竹内お前キャラ変わってない!?」

「つーか竹内って誰だ?」

「知らないんですか元太くん!彼は今回都合良く話を進めるために急遽抜擢されたエキストラで…」

「光彦、クラスメート覚えてないからってエキストラ扱いすんの最低だぞ」

「そうだよ光彦くん!竹内くんは…竹内くんはね…あれ、竹内くんってほんとに誰?」

「…え、てっきり隣のクラスのやつなのかと」

「あれ、お前の友達じゃないの?」

「つーか竹内いなくなってね?」

 

見渡せば、先程まで一緒にいたはずの竹内と呼んでいた生徒がいない。

 

「…え、このノリでホラーオチなことある?」

 

…そう拙者はこの学校で死んだ生徒…でもなんでもなく。通りすがりのただ小さい子供と遊びたかっただけの浮遊霊…ぐふ…ぐふふ…おじさん楽しかったから成仏するね…

 

「なんか悪寒が…」

「隙あり!死ねぇ、コナン!」

「させるかぁ!」

 

まぁ、たぶんどっかのクラスの誰かが紛れ込んでたんだろう。

立ち止まった瞬間に背後からボールをぶん投げてきたリョウに向かって、ボールを蹴り返しながらコナンは考えるのをやめた。

 

「はいキャッチ。甘い甘い、僕の前世あれだから。円堂守だから」

「にゃろぉ…」

 

その後ムキになったコナンとリョウのPK戦は下校のチャイムが鳴っても止まることはなく、二人揃って先生に怒られるのだった。

 

 

 

 

ビッグジュエルと、怪盗による空中歩行。

それを暴く探偵という頭脳戦は、探偵がトリックと変装を見破ったことでひとまず終幕へと近づいていた。

昼間に見たクラスメートの凶行がヒントになったことは、ちょっと秘密にしておこう。

コナンは推理を披露しながら、少しだけ後ろめたい気持ちになった。

 

「まさにブルー・ワンダー!大空の奇跡の脱出ってわけだ」

「大空?ブルー・ワンダーのブルーは大海のブルーだぜ?」

「同じじゃねーか!海のブルーは空のブルーが写ってんだろ?」

 

二人はバイクの上に乗り、互いに笑っていた。

互いに宿敵同士で、ライバル。

探偵と怪盗という、決して相容れない二人は、好敵手を前に、恋人とそうするように笑っていた。

 

「探偵や怪盗と一緒さ。天と地に別れているようで、もとを正せば人がしまい込んでる何かを好奇心という鍵を使ってこじ開ける無礼者同士…」

「バーロー…空と海の色が青いのは、色の散乱と反射…全く性質が異なる理由によるものだ…一緒にするなよ!」

 

おしゃれなやり取り。

そこに混入する異物があった。

あったというか、いた。

 

「…ん?あれ…やっべーな、目がおかしくなったか?町中にいちゃいけないタイプの化物が目の前にいるように見えるんだけど…」

「うわ出た」

 

キッドは初めて見るその異形に目を見開き、コナンはもう会いたくなかった相手との再会に天を仰ぐ。

 

「やぁ、諸君。いい夜だな」

 

今日も今日とて、変態は変態だった。

2メートルサイズのちんちんに、手足が生えた姿。

なにやら片手でボコボコにしたチンピラを引きずっているのが恐ろしい。

 

「「………」」

「おや、無視とは手厳しい」

 

無言になった二人が目を合わせないようにしてバイクに乗ったまま通り過ぎると、変態は悲しそうに首?を振った。

 

そして、チンピラをゴミ捨て場に投げ捨ててから自転車に跨ると、勢いよくバイクを見据える。

嫌な予感がした。

 

「───逃げられると思ったかね?白き孤影…アルシュベルド…」

「人違いです」

「ふっ、そう照れるな」

「おい名探偵!なんだこの人の話を聞かない化物は!」

 

気が付けば、ハーレーに自転車が並走している。

相変わらずバグみたいな身体能力だった。

 

そして、巨大な猥褻物に話しかけるキッドは気絶しそうな意識をなんとか繋ぎ止め、事情を知ってそうなコナンへと話しかけた。

 

「わり、俺もわかんねーんだ!なんにも!」

「すべてを諦めた顔!」

「ふむ、どうやら本当に人違いらしい…変装の達人と聞いてもしやと思ったのだが、もしやと思っただけのようだな…」

「日本語怪しくない?」

「くっ、しかしこの速度で走ると風圧がすごいな…思わずはだけてしまいそうだ…」

「誰も望まないサービス」

「見ていてね、ちんちんが何をするのかを…」

「何もしないでほしい切実に!」

 

頭がおかしくなる。

キッドもコナンも無駄に明晰な頭脳を冴え渡らせていた直後に、バカが乱入してきたことでその温度差に吐きそうになっていた。

 

「ま、あれだな。人違いだったとはいえ、人に迷惑をかけるのはよくない」

「鏡持ってこようか?」

「黙れ小僧、貴様に俺が救えるのか?」

「急なモノマネ…しかも自己弁護モロの君とかいう最悪のやつ」

「さて」

「掴まれ名探偵!」

「もう止まらんよ、ゾ・シアと同じだ」

 

変態は自転車を漕ぎながら、懐から何かを取り出そうとした。

それに危機感を抱いたキッドが咄嗟にサイドカーに乗っていたコナンを抱え、続けざまにハーレーに取り付けられていたサイドカーをパージ。

 

このバイク本来の持ち主である鈴木次郎吉氏が施した加速用の仕組み。

本当は逃亡する時に名探偵ごとパージして逃げるつもりだったのだが、人としてさすがにあの変態の前に子どもを置いてはいけなかった。

 

「ぐわぁぁぁぁ!俺が何をしたというのかね!?」

「悪いな、あんたに恨みはないがビジュアルが悪すぎる!」

 

パージされたサイドカーにぶつかられ、猥褻物は自転車もろともこけ、空に打ち上げられる。

月をバックに舞うちんちんの姿には僅かながら哀愁が漂っており、さすがに紳士の振る舞いではなかったな…と若干の後悔が頭をもたげ、直後。

 

「バカ、伏せろ!」

 

コナンに頭を抑えられ、なんとか間に合ったキッドはつい先程まで自分の頭があった場所を何かが通過したのを察知する。

そして、閃光と轟音が夜の街に響きわたったことで、冷や汗が吹き出した。

 

「フラッシュバンかよ!?」

「おいおいおいおい!あの変態、マジやべーな!?」

 

空中で体勢を整え、コナンのシュート並みに正確な投擲。

もうほんと、誰か止められるんだこの変態。

 

「変態ではない…!俺の名はちんちんライダー!米花町を守るヒーローの名だ!」

「「ひぇっ」」

「俺は何度だって勃ち上がるさ!じゃなきゃヒーローは名乗れないからな!」

 

走っていた。

ちんちんが走ってきていた。

煤けて、ちょっとボロくなりながら、それでも立ち上がったちんちんが走っていた。

巨大なちんちんの頭が風圧で僅かに左右前後に揺れながら、見事な前傾姿勢と惚れ惚れする足の動きで迫ってくる姿は、普通に恐怖映像だった。

 

「待てーい!!!!お仕置きしてやる!というか怪盗と探偵が好敵手を気取るなら、怪人の俺も混ぜてもらおう!二十面相だって怪人だろう!なぜ俺だけのけものにする!くそがー!見た目か!?やはり見た目なのか!揃いも揃って美男どもが!皮剥いでやろうか!?」

「「いや怖い怖い怖い怖い怖い!」」

 

その日、キッドは人生で久しぶりにポーカーフェイスを忘れ、探偵も人生で初めて目に涙を浮かべたと言う。

 

「ちょ、あれ!?バイクのエンジンが!」

「やべえ、やっちまった!お前を捕まえるためにバイクに細工したんだった!」

「バッカお前!何やってんだぁ!?」

「しょうがないだろこんなことになるなんて思ってなかったんだから!」

 

そんなやり取りを聞いて、ちんちんが加速する。

 

「はーっはっはっは!ひゃーハッハッハッハ!!!怪盗破れたり!ついでに服も破るなり!死ねよやぁ!」

「最悪のコロ助!」

 

二人の天才は最もフィジカルで最もフィジカル、そして最もフィジカルな馬鹿からなんとか逃げ切り、好敵手とはまた別の意味で奇妙な友情が芽生えたというのは、まぁ完全に余談だろう。

たぶん。

 

「ちぇー逃げられた…ま、昔の知り合いじゃないならいいか。むしろ知り合いだったらなんでこんなことしてんの?って話ではあるんだけど…一応。うん、確認大事。知り合いだったら普通にシリアスバトルに移行してたんだけど…最近ハズレが多いなぁー。ムカついてきたし今度組織のやつにカチコミかける時この格好で行こ」

 

 




今回も最後まで読んでくださってありがとうございました。
たくさんの高評価と感想ありがとうございます。
もはやネタもきれてきましたけど、今後も頑張ります。
あと最近作者の過去作が掘り返されて、作者のアホさ加減が露呈してますが、これを期にもしよければ他作品もよろしくお願いします。
見なくても別に大丈夫なタイプの小説ばっかですけど。
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