米花町でちんちん出したら逮捕された件について。   作:ひつまぶし太郎

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第九話。トリック・オア・デス

 

 

コナンにとって今日は厄日と言っても過言ではなかった。

朝、リョウが急に強盗犯に向かってスプラトゥーンを始め、全身絵の具まみれになり。

サッカーして遊んでたら、隣町のガキ大将が公園に攻め込んできて大乱闘になり、締めはまた強盗に遭遇してボールを蹴ったら爆発。

もうほんと、あいつと関わるとほんとロクでもねぇなみたいな1日だった。

しかもコナンがボールを蹴った瞬間リョウは逃走して一瞬でいなくなったし。

 

結局その場に駆けつけた佐藤刑事と高木刑事にコナンだけ連行され、こってり絞られたのだ。

 

「あいつ…どこ行った?」

 

コナンは困った顔をする高木刑事と怒り心頭な佐藤刑事の厳重注意から解放され、さて、あいつをとっちめてやろうと思っていた。

だが、見つからない。

 

思い返すと家の場所も知らないし、普段リョウが何を食べてるのかも何が好みかも知らない。

あれだけ騒がしくしているやつが、ここまで情報を残していないことに、少なくない衝撃を受ける。

知っているのはちんちん出したことくらいだ。

 

なんでそれは知ってんの?という突っ込みはさておき、探偵をやっているという保護者の教育の賜物なのか。

それとも、明らかに何かあった家庭事情を知られたくないという無自覚な線引なのか。

 

少なくとも、一緒にバカやって笑う仲なのだから、もう少し踏み込んだっていいのかもしれない。

 

『ごめんごめん。許してちょんまげ。いや、コナンのサッカーボールに火薬仕込んだらどうなるかなって…思っちゃって。気がついたら仕込んでたよね。僕は悪くねぇよ。快晴のせいだから。でも次はもうちょっと火薬詰めとくわ。コナンが蹴った瞬間もろとも逝くくらいのやつで…あ、なに?道案内?えー…見た目めっちゃ怪しいし、友達と電話中だし…。あ、チョコモナカジャンボ…。へー、で、どこ行きたいの?パチンコ?風俗?』

 

「…まさか。いや、ないない。…え、マジ?」

 

誘拐された?

コナンがリョウの最後の通話を思い出してそんな可能性に思い至った直後、警察署の前に駐車されたパトカーが爆発した。

 

「なに!?」

 

 

───俺は剛球豪打のメジャーリーガー

さぁ、延長線の始まりだ

 

 

 

 

「風見、情報きてるか」

「降谷さん…ええ。たった今警視庁宛に暗号が」

 

警視庁も警察庁も蜂の巣をつついたような騒ぎになっている。

なにせ自分たちのお膝元で爆破事件を起こされたのだ。

 

しかも。

 

「クソ、なんでこのタイミングなんだ…!」

 

今日は11月7日ではない。

だというのに7年前と3年前に警視庁に予告を送りつけた同一犯のものと思われる予告状なのだ。

 

『───至急、至急!警視庁から各局!場所は不明なるも爆弾を仕掛けた旨の犯行予告アリ!』

「行くぞ、風見」

「まずはどこに?」

 

だが、警察官に迷っている暇などない。

 

誇りと使命感を持って国家と国民に奉仕し、恐れや憎しみに捉われず、いかなる場合も人権を尊重して公正に職務を執行する。

そのためになら、憎しみも焦りも、理想すらも捨てろ。

それができないやつは、警察官なんて辞めるべきだ。

 

『爆弾は2つ!爆発時間は正午十二時と同日十五時と思われる!だが、日付が異なることから、全てが同じという先入観は捨てるように!!』

「南排戸駅…それを一望できる場所だ」

 

正義と立場が違っても、志は同じ。

降谷は、警察無線に耳を傾けながら、風見を伴って自身の車へと乗り込んだ。

 

そして。

 

「た、助けてくれ…」

『───あ、やっと繋がった…。やったぞ…!やっとだ!直電が繋がらないならこのバカの電話越しに伝えればいい…降谷なら必ずこの男にたどり着く…ふっ。私ってば天才だろ…!』

「……ん?」

『私の名はプラーミャ。あの時あいつと一緒になって私の邪魔をした松田という警官…そいつを殺したバカを動かし、お前の大切なものを人質に取った…』

「なんだと…」

『驚いてるようだな』

「ええ…あなたみたいにアホっぽい人でも大それたことができるんですね…」

『キレそう』

 

南拝戸駅を見下ろせるビルの屋上。

そこで見つけたのは、首に蛍光色の液体の入った首輪をつけた一人の男。

脂汗がひどく、痩せた顔に乗ったメガネはズレかけている。

 

その男が手に持つ携帯から流れる音声は、変成器を通しているせいで男か女かもわからない。

 

「というかあの時とは?」

『11月6日…私の右腕を奪ったお前たちを私は許さない』

「…あー!ああー!ああー?」

『その反応思い出してないだろ!…ふん、まあいい。まずは、お前の子どもを殺す。それが嫌ならその男を見逃せ。くくっ、お前は警察官としての自分と親としての自分、どちらを選ぶ?』

 

悪魔のささやきを前に、降谷は思わず唾を飲み込んだ。

 

公安としての降谷零は知っている。

情報として、リョウの異次元の再生能力を。

裏社会に身を投じるバーボンは知っている。

何度も共に戦った戦友として、その頼もしさを。

探偵としての安室透は知っている。

経験として、彼の生意気な笑顔の裏にある覚悟を。

保護者としてただのゼロは叫ぶ。

心配だ、助けに行くべきだ、と。

 

だが、降谷零は冷静に自分の役目を全うした。

全ての自分の意見に耳を傾けた上で、全ての自分が同じ答えを出したから。

 

「答えは…ノーさ」

『なら死ね』

 

駆け出して男を一撃で昏倒。

降谷は、爆弾の首輪へと手をかけた。

同期と同じように爆死するかもしれない。

だが、警察官として眼の前の生命は投げ出さない。

そんなふうに、青臭い自分に戻る日があったっていいだろう?

 

『───うんうんでりゅうううううううううう!!!』

『えっ…は?』

「ははっ、やっぱりお前は最高だよ…!」

 

隙ができた。

たった一言で自分の寿命を1秒伸ばしてくれた頼もしいバカの期待に応えるように、あるいは死んだ二人に導かれるように降谷は最適解を叩き出した。

 

 

 

 

そして、時は現在へと巻き戻る。

プラーミャは、2時間かけて脅迫電話をしていたら、爆破する直前にとんでもない言葉が聞こえたせいで動揺し、その隙をつかれてチューインガムで爆弾を無力化され、拘束していた人質のところに戻ってホッとしたのもつかの間、うんうんでりゅ怪人に殴りかかられていた。

何もうまくいってねえな、とやさぐれてる暇もない。

 

「右、左、からのストレート!」

「ちっ、邪魔くさい…!」

「んでもって、得意技はロー!見事な伏線回収!イエイ、拍手!」

「離れろ!」

 

やけくそ気味にナイフを振り下ろすが、眼の前のガキは躊躇なく飛び込んでくる。

そのナイフは吸い込まれるように子どもの右目に吸い込まれ、その直前で拳で軌道を逸らされた。

獰猛に嗤う、ただの子どものはずの相手にプラーミャは恐怖する。

 

頭がオカシイ。

なぜ、なぜ。

なぜこいつは───!

 

「爆弾をつけたまま戦える!?」

「爆弾がなんぼのもんじゃーい!」

 

動揺した隙は見逃されず、ガキの低身長から繰り出される、成人男性の一撃並のローに再び足を取られ、すぐに受け身を取って距離を取る。

 

だが。

 

「に、がぁす、かってんだ!」

「くそ!しつこい男は嫌いだ!」

 

離れられない。

離れてくれない。

まるで獲物を見定め、地の果てまで追いかける猟犬を思わせる恐ろしさに、背筋に冷たい汗が流れ始めた。

 

「お前の近くにいりゃ、爆発させれねえよなぁ!こいつの威力はあんたが一番良く知ってるもんな!ははっ、ほら、頑張れ頑張れ!トリック・オア・トリートならぬトリック・オア・デスだぁ!ひゃははは!」

「セリフが逆じゃないかなんか!そっちが悪役!?」

 

長い髪が視界を塞ぎ、拳銃を撃とうにも地面を這うように駆け回るせいで狙いが定まらない。

なんなら今、撃った弾を避けられた。

 

「銃口の向きとぉ!引き金の指の動きに集中してたらさぁ!鉄砲は避けれるらしいぜ!師匠が言ってた!」

「何を言っているのか本当にわからない!!」

「問答無用───!!」

 

本人が嫌々認めるほどに染み付いた銀髪で目付きの悪い元保護者の面影に、新たな力を纏いながら。

 

殺戮者(カーネイジ)が、獰猛に吠えた。

 

 

 

 

まさか追い詰められて自分もろとも僕の爆弾を爆破するとは。

結果的には意味なかったけど、確かに逃げ切るにはそれしかなかったのだろう。

死なないだろ、みたいな僕の躊躇のなさは結構刺さるやつには刺さるのだ。

ガンガン行こうぜみたいな。

防御にあんまり意識割かなくていいし、攻撃食らった瞬間に殴り返せば回避不可の攻撃になるし。

 

それにあむぴだって、一定期間部屋に閉じこもったあととかに急に戦闘にでもならない限り余裕な気はする。

どうだろ。

案外墜落するヘリの中で互角の格闘戦を繰り広げてたりするかも。

 

僕は片腕が消し飛んで、壁にもたれかかる今にも死にそうな女に話しかける。

 

「ゲホッ、ゴホ…ぁー、あー?あ゛あ゛、よし、ごえ出た。まったく、首がちぎれちゃったじゃん勘弁してよ。足も消えたし…」

「化物が…!」

「良く言われる」

 

プラーミャの使っていた拳銃を拾い上げ、照準を合わせる。

悪いけど、見逃すという選択肢はない。

僕とあむぴの関係性だけでなく、僕の能力すら知ってしまったのだから。

 

「地獄に行ったらうちの父親によろしく。たぶんそっちにいるから…なんだろ。天国に行っててほしいけどうちの父親たぶん地獄なんだよな…僕の首絞めたし。僕の首絞めたし!」

「…はっ、お前には…ジャック・オー・ランタンが…お似合いだよ…クソが…」

 

ジャック・オー・ランタン。

ウィル・オ・ウィスプ。

地獄にも天国にも行けず、ただランタンの灯りだけを頼りにあの世を彷徨う罪人。

 

死ねない僕の末路は、きっと。

 

「ま、どうでもいいか」

 

銃声が響いた。

これにて、米花町の早すぎるハロウィンは幕を閉じる。

若干の後味の悪さを残しながら。

 

「───別に、僕がやっても良かったんだけど」 

「手を汚すのは大人の仕事、だろ?」

「ふーん…ヒロさんって普段銀魂ネタこすってる痛いだけのおっさんじゃないんだ…」

「そんなこと思ってたのか!?…ははっ、ゼロのやつめっちゃ鬼電してるぞ。写真撮ろう写真。ツーショットで」

「いえーいあむぴみてるー?」

「よし送信…マダオも案外やるだろ?ちょっとの聞き込みと推理だけで、相手に探ってることすら悟られずに潜入する…ゼロにだって負けないさ」

 

でもそれ以上に意外と愛されてんな僕、と嬉しくなりましたとさ。

 

 

「風見…ニートってぶっ飛ばしても罪にならないよな?」

「えっ……もしかしてヒロさんのこと言ってますか!?駄目です落ち着いてください!というか前前前!ドラテクでなんとでもなるからってよそ見運転しないでください!」

 

 




今回も最後まで読んでくださってありがとうございました。
ヒロさんとエヘ顔ダブルピースするクソガキ男の娘。
それにキレるあむぴ。
公安二人組には永遠にじゃれててほしいという作者の願望丸出しなハロウィンの花嫁編でした。
うんうんでりゅ!
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