米花町でちんちん出したら逮捕された件について。   作:ひつまぶし太郎

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コープス・リバイバー。
カクテル言葉は、死んでもあなたと。


コープス・リバイバーで乾杯。

 

 

どうやらしーちゃんは組織にとって重要な人物の忘れ形見らしい、という聞きかじった程度の知識で行われた僕の作戦はシンプルだ。

しーちゃんを餌に、悪い大人を一箇所に呼び出す。

そして、それを僕が殺す。

ゴリ押しでしかなくて、失敗が目に見えたその作戦しか僕には思いつけなかった。

それ以外、しーちゃんのためにできることを思いつけなかった。

 

組織の手足をもぐ。

それが、敵の心臓にも頭にも届かない、銀の弾丸にはなれない出来損ないの僕ができるせめての手向けだ。

 

とはいえ、うちの保護者が性格最悪なお陰で、こんなゴリ押しな作戦もほぼ成功したと言ってもいい。

二度と家出なんて考えないように心を折るべきだ。

そのためにもできるだけ強面幹部を大人数揃えて迎えてあげよう、なんて提案に乗ってきたあたりほんと性格終わってる。

元から集団行動好きなのもあるだろう。

 

それに、最近しーちゃんに近づく怪しい大人がいる。

個人か組織かわからないが、FBIだとか言ってたし一網打尽にするチャンスだと付け足せば、こんなに兵隊を連れてきてくれたのだから、やっぱり感謝くらいはしていいかもしれない。

少なくとも、うちの保護者のお陰で目的の8割位は達成できたのではないだろうか。

 

「どうします、兄貴」

「ふん、飼い犬に手を噛まれたところで別に痛くはないが…」

「へえ、寛容じゃん。普段からその調子のほうがいいよ。人気出るんじゃない?」

「くくっ、弱い狗ほどよく吠えるってのは、お前の親父の国の言葉だったか?」

「うわっ、ムカつく言い方!」

 

死の匂いが、屋上にまで立ち昇ってくる。

僕の背後は血まみれだ。

いくつもの死体が僕を睨みつけている。

もう戻れないな、なんて今更な感想が頭によぎって思わず笑った。

なにを今更。

僕は、とっくの昔に地獄行き確定の大量殺人犯だろうに。

 

「…お前とのおしゃべりもここまでだ。いくらエデンの林檎って言っても、限度ってもんがある…無様だな」

「節穴かよ。こっから起死回生の必殺技で逆転すんのが王道でしょ」

 

銀髪の保護者は僕を見下ろしていた。

僕の手にあるのは、血脂でほとんど使い物にならない斧と3発だけ弾の入った拳銃。

僕の右腕は千切れかけで、左膝から骨が飛び出してる。

お腹からは腸が飛び出ていて、左目は開かない。

 

空は雲一つない快晴で、金色の満月が他の星の輝きを霞ませている。

そんな空を見て、保護者は嗤った。

 

「雲一つない深海に落としてやる。手向けにくれてやるのは、この鉛玉だけだがな」

「10点。あ、これ10点満点じゃないぜ。100点満点だから」

 

ちょうど、十三歳の誕生日を迎えた深夜0時。

僕は持てる生命の全てを解放した。

 

 

───しーちゃんへ。

 

この手紙を読んでるってことは、僕は死んだのだと思う。

もしこの手紙を見つけた数分後とかに僕が慌てて走ってきたら読んでないってことにしてほしい。

ほんとお願い。

結構恥ずかしいやつだから、これ。

 

さて。

まずはごめんなさい。

僕は最初からしーちゃんのことを知って近づいていました。

いや、あの喧嘩とかは…うん。

恥ずかしながら何も考えてなかったんだけど。

まぁ、ほら。

結果オーライみたいな。

まぐれだけど銀髪で性格がドブカスな保護者の指示通りできたぜ、みたいな。

僕ってば超悪いやつ。

これは恨まれて当然。

しかも子どもだからね。

騙されたしーちゃんは悪くない。

僕が悪い。

 

そう、全部僕が悪い。

しーちゃんにお姉さんがいて、お姉さんのことが心配で最初から戻るつもりだったとしても、僕が悪い。

逃げたい気持ちと、友人を大切にしたい気持ちと、家族を思う気持ち。

それらを必死に比べて考えて、その末にしーちゃんなら自分じゃなくて友達と家族を選ぶって僕は知ってたから。

わかりやすいんだから、もう。

あ、これは皮肉じゃなくてね。

心の底からそう思ってる。

家族は大切にするべきだし、大切な人のことを思いやれるのはしーちゃんの素敵なところだ。

でも、家族に置いてかれる経験も置いていく経験も知らなくていい。

自分を犠牲にお姉さんを助けようなんて思わなくていい。

 

しーちゃんは優しいから、自分が死んで大切な人が助かるならそっちを選ぶと思う。

でも僕はしーちゃんに死んで欲しくない。

つまり、どっちもお互いの命を賭けようとしていたわけで、自分勝手さで僕が一歩上だったってことだ。

 

というか、しーちゃんを囮にして君の保護者の団体様御一行ぶっ殺そうとしてんだから、お互い様どころかやっぱり僕のが悪い気がする。

ちなみにこんなこと言っといてなんだけど、どこまで綺麗にお掃除できてるかはわかんない。

案外一人目とかに返り討ちにあってるかも。

頑張れ未来の僕。

 

本当は、組織壊滅させてしーちゃんと昇る朝日をバックにキスして終了とかしたかったんだけど。

どう頑張っても無理なので、それは諦めます。

でも、いつか。

ほんとうの意味で君の手を掴んで、ここではない何処かへ連れて行ってくれる誰かの道のりが、少しでも楽になっていたらいいなと思う。

 

出来損ないの僕が出来るのはしーちゃんを外に連れ出すまで。

そこから先は、ヒーローに任せる。

ヒーローなんていない?

なら、しーちゃんがなればいい。

自分の足で地面を踏みしめて、希望に向かって歩き続ければいい。

ここではない何処かなんて曖昧なこと言わずに、幸せな未来に向かって突き進めばいい。

 

最後になるけど、僕は犯罪者だ。

殺人を手段にしちゃうようなどうしょうもないクズだ。

かつて僕をヒーローと呼んでくれた妹にはとても顔向けできない悪党だ。

でも、君は違う。

だからどうか、幸せに。

生きて、幸せになってほしい。

ないと思うけど復讐とか考えないでね。

君は硝子の檻に囚われた魚じゃなくて、青空をどこまでも自由に羽ばたける鳥なのだから。

 

さようなら、しーちゃん。

大嫌いで、大好きだった僕の友人。

君死にたまふことなかれ。

 

死んでも君を愛してる。 

 

───大嘘つきの自分勝手野郎より。

 

 

「…ほんと、嘘つきで自分勝手…」

 

朝日が昇る。

優しい黄金色に抱きしめられ、少女は車の中で目を覚ます。

事前に少年が話を通していた彼女の姉とその恋人によって密かにホテルから連れ出されていた彼女は、事情を聞かされその手紙をただ抱きしめていた。

 

朝日に照らされ、世界がどれだけ優しく見えたところで意味はなかった。

大好きだった少年はもういない。

少女は、少年の命を犠牲にここではない何処かへ連れ出された。

全員で闇に戻って、命だけは助かる未来は選択されなかった。

 

なるほど、たしかにハッピーエンドだ。

少年は目的を達成し、少女は姉とともにここではない何処かへ行けたのだから。

そう納得しようとして、堪えきれずに少女は嗚咽を漏らす。

 

快晴嫌いが一人増えた。

 

 

 

 

一つの昔話と少しだけ未来の話をしよう。

どこかの少年が命を投げ出すちょうど13年前、とある日本の小さな病院で一つの生命が誕生した。

その赤子は首にへその緒が巻き付いたことによって、医師の夫妻による懸命な救命活動虚しく、麻酔で意識のない母親は息子に会えずじまいになるはずだった。

 

だが、あり得ない事に、その赤子は息を吹き返した。

文字通りの黄泉返りを為し、神の奇跡を再現した赤子の誕生を誰よりも喜んだのは、きっと医師の夫婦だったことだろう。

 

その後の血液検査において、細胞組織の逆再生が確認され、巻き戻しのように、傷ついた組織が修復されていく様を観察することができた。

本来、人に備わった回復力とは異なる力は僅かではあったが老化すら覆していることも分かった。

 

そして、その流れで検査を行ったところ、父親にも同じ力があった。

本人は傷の治りが人より早い、くらいの認識だったわけだが、さておき。

 

父親の人生が狂ったのはそこからだ。

世のため人のため。

最初は人類の可能性を飛躍させる、人類のための薬の開発のために検査に協力していただけのはずだった。

 

かの夫妻がいつからその組織と関わっていたのかはわからない。

だが、気付けば父親は犯罪組織から逃げられなくなっていた。

その診療所の夫妻が息子のことを隠し通せていたことだけは不幸中の幸いだった。

 

とはいえ、さらに不幸は続く。

夫妻が亡くなり別の医療機関に研究が引き継がれて数年後、開発が行き詰まり、組織の方針が転換されたのだ。

元から毒薬として転用可能だったその薬は、いとも簡単に多くの悪党が求める最良の毒へと姿を変えた。

 

細胞分裂を自在に操る再生者。

その細胞を利用したその毒は、アポトーシスに干渉し細胞死を促すという、証拠を残さず、完全犯罪も可能なシロモノになった。

 

自分の細胞が毒薬に利用されていることを知った父親は、研究施設に火を放ち逃亡した。

しかし、彼は組織の悪辣さを見誤った。

再生者を殺すためだけに行われた、後にバードストライクが原因とされる、飛行機事故を装った致死量の攻撃。

毒ガスをありったけ積んだ飛行機は、その男めがけて突っ込んだ。

 

生み出されたのは地獄だ。

奪われた命は約一万。

組織の目論見通り父親は再生能力を超えた攻撃により瀕死となり、その家族も二人が命を落とした。

だが再生者を殺すために生み出されたその地獄でたった一人だけ、あの世に行けない子どもがいた。

 

息子だ。

息子は、父親よりも遥かに優れた再生者だったのだ。

父親は生きていたことに安堵し、歓喜した。

それと同時に、自分の遺体を確かめに来る組織の人間に見つかれば息子が実験動物にされることを悟って絶望した。

なにせ、この周辺には生きた人間はもう自分と息子しか残っていない。

逃がそうにも、どうにもならない。

 

どうか死んでくれ、頼むから。

神様どうか、この子を殺してくれ。

ごめん。

うわ言のように、祈りながら首を絞める父親は、それでも本音がこぼれ落ちた。

 

『愛してる』

 

結果として、その親子は一番悪い引きをして、子どもは健やかに大きくなることは許されなかった。

 

だが、成し遂げたものもあった。

200人。

200人だ。

下っ端の構成員から幹部候補生までの200人がたった一晩で死に絶えた。

再生能力に任せた命がけの特攻によって、組織はほぼ壊滅。

幹部は7名死亡。

組織の手足はもがれ、潜入捜査官たちが本来の未来よりスムーズに幹部として成り上がるという楔が打ち込まれた。

 

なにより、少年が何よりも救いたかった少女は外へと連れ出された。

銀の弾丸には決してなれない少年は、それでも命をかけて少女と向き合い、少女の夢を叶えた。

 

最後のバトンは銀の弾丸へと引き継がれる。

手足がもがれたとは言え未だ敵の主要な幹部は存命で、頭も据え置き。

そんな巨悪を見据える青い瞳が、その目標を見定めるまであと5年───

 

 




これにてハッピーエンド。
と言いたいところですが、それでは面白くないのでこっからは未来も作品の雰囲気も余韻もぶち壊していくギャグパートになります。
筆が乗ればですが。
今のうちに感動しておいてください。

めったと書かないドシリアスは書いてて作者は楽しかったですが、でも需要がねえな!がはは!という学びも得ました。
最後まで読んでくださった貴重な読者の皆様、お付き合い頂き誠にありがとうございました。
良ければ記念に高評価とか…感想とか…頂けると、今作の未来も明るくなるかもしれません。
というか第二章はさっきも言った通りしょうもないギャグです。
ちんちんとか出します(適当)。
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