始動、暁の水平線に勝利を刻めるのか?
……決して交わらない時と場所における、ある者の追憶……
「……ものの見事に何もないなぁ……」
離れていく貨客装甲列車の煙を見送りながら、何年も放置された駅に降り立つ……
「……最近は皇都湾沿岸付近まで深海棲艦が現れているとは言え、いくら何でも過疎化し過ぎ
でしょ(泣)」
完全に寂れてしまった駅前ロータリーで早くも途方に暮れてしまった……
「えっと…着任時間まで後6時間か……」
昨日質屋から買い戻した懐中時計をしまいながら、周りをキョロキョロと見回す
「……お店どころか駐在所すら無いのね(泣)これじゃ連絡すら出来ないか……方向的には
あっちか……」
完全に寂れてしまった駅前ロータリーから伸びる、比較的新しい道を見る
「……待ってても休む所も無いし歩くか…新設らしいし、上手くすれば途中で軍関係者に
会うかもしれないからな~」
支給された新品の真っ白い士官服に、愛用の背負い袋を担ぎ、華々しい第一歩を踏み出した
…関係者に会う事も無く、行軍さながら5時間近く掛かる……まるでこれからの艱難辛苦を表す
様に…
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「……軍港のデカい起重機が見えて約30分……どんだけ遠いんだょ……」
既に白い士官服はヨレヨレで埃まみれになり、肩賞は本来の仕事を全うし、腰に付けた軍刀を
杖替わりにし、モヤモヤだった視界に、ようやく正門がハッキリ見える位置までたどり着く
??「止まりなさい!ここは帝国海軍の敷地よ…一般市民及び皇国軍は関係者以外立ち入り禁止
なのよ!?」
片手に槍状のアンテナマストを構え、鋭い眼差しを向ける艦娘さん…確か名前は叢雲さんだった
かな?
「ちょっ、ちょっと待っててね?!」
慌てて肩章に食い込んでた背負い袋を下ろし、中に入れている着任状を出そうとする
叢雲 「動くな!!」
叢雲さんの鋭い声と共に、正門歩哨詰所からワラワラと〝妖精さん”が自分を取り囲む(泣)
叢雲 「……ゆっくりとその右腕を出しなさい…アンタには視えないかもしれないけれど、少し
でも変な動きをすると痛い目に見るわよ?」
「わかったから、先ずは完全武装した周りの〝妖精さん”を後ろに下げて貰えないかな?…
このままだと、どこぞの青狸っぽく目的の物が出せずにパニックになるので(泣)」
アンテナマストを構え直し、少し確かめる様に詰問を始める
叢雲 「……アンタ〝妖精さん”が視えているの?」
「視えてるよ?三八式騎銃どころか八九式重擲弾筒や刺又とかで完全武装での包囲はちょっ
とやりすぎです(泣)」
叢雲 「……ちゃんと視えているみたいね…悪かったわね」
アンテナマストを優雅な作法で姿勢を直し、歩哨妖精さん達を撤収させる
「はい着任状、一(にのまえ)一(はじめ)帝国海軍少尉です、よろしくお願いいたします…
叢雲さん」( ̄▽ ̄)ゞ
叢雲 「……ちゃんと視えているみたいね…色々と悪かったわね…案内するわ」
残心の様に頭を軽く下げて返礼し、クルリっと正門に向けてスタスタと歩いていく
叢雲 「着任状は司令室に居る大淀に渡してくれれば良いわよ?…それと私はアンタの秘書艦娘
になるのだから、呼捨てでかまわないわ」
「よろしく、叢雲…秘書艦娘なら歩哨しないで駅まで迎えに来てくれれば良かったのに……
おかげで5時間も歩いてボロボロだよ(泣)」
叢雲 「……ひょっとしてアンタ、民間の最寄駅で降りたの?…呆れた…いくら新設とは言え、
ここは帝国海軍の軍事施設なのよ?……民間路線とは別に軍需品運搬用の路線はある
のだけどね……」
正門をくぐり、左側の30分前に見たデカい起重機の下に駅のプラットフォームと倉庫群が
見える……
「……五時間前行動かな?…ほら、やっぱり早目早目の行動は、三文の徳だし、兵は神速を
尊ぶし~(あーだこーだ)」
背負い袋を担ぎ直し、右側の建物に向かう叢雲の後を追いかける
叢雲 「その割にはせっかくの第二種海軍士官服が土埃で汚れているけれど?」
「やはり士官たる者は実際に自分の目と脚で周辺の状態を把握しないとね~」
我ながら苦しい言い訳をしながら、まだ新築の匂いが残る玄関を通り抜ける
?? 「あら?叢雲、その方は?」
階段から大きなリボンにポニーテールな艦娘が降りてくる
叢雲 「コイツは5時間も単独行軍してきた…一時間後に着任予定の、うっかり新任司令官よ、
夕張」
紹介が本当過ぎてツライ……(泣)
夕張 「司令官さんでしたか…あら?その背中のは、陸軍さんの九三式背負い袋?」
「そうだよ~これ、背嚢より沢山入るし、色々と雑多に突っ込めるから楽なんだよね~
……海軍の背嚢だとキチンと入れないと、そんなに物が入らないからな~」
夕張 「狭い艦内用でコンパクト設計ですしね~、なるなる……私まだ艤装が来ていないのです
が、妖精さんと相談して作って貰おうかしら?…上手くすれば新しい補給タンクとして
使えるかもしれませんし……」ブツブツ
「……もしもし夕張さん?」
叢雲 「どう考えても艤装の邪魔になるでしょ…ったく、もう…大淀の所に行ってから、工廠に
行くから、明石達にもよろしく伝えておいてね」
夕張 「良いアイデアだと思ったんだけどな…了解了解、伝えておくわね~」
叢雲 「途中で変な発想起こさないで、先にしっかりと伝えなさいよ?」
夕張 「は~いです、大丈夫大丈夫」
叢雲 「…ったく……」
「……背中の艤装で邪魔になるなら、前に廻して前後でバランス取れば良いのでは?
空挺部隊の予備落下傘みたいに……丁度前方胸部装甲も薄そうだし」
叢雲 「…少しはデリカシー持ちなさいよ……」
階段を上がりながら、呆れた声を出す
叢雲 「そこの突き当りがアンタの執務室よ、大淀が司令官代理で業務代行しているわ」
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叢雲 「入るわよ、大淀居るかしら?」
大淀 「居ますよ叢雲さん…申し訳ございませんが、今チョット立て込んでまして……」
ノックもせずに入った叢雲の背中越しに見た大淀と呼ばれた艦娘は、執務机に積まれた書類を
顔も上げずに、両手で別々の動きで処理していく……
大淀 「もうすぐ司令官さんが到着しますが、今、夕張が持ってきた書類を整理してまして…
本当にあの娘はこんなギリギリで持ってきて……司令官さんに素早く引継ぎをお願い
したいのに……」
叢雲 「……その司令官がもう着いているのよ」
チラッとこちらを見る叢雲
「ど~も、予定より早く着いてしまった司令官予定者です」( ̄▽ ̄)つ着任状
両手の万年筆の動きを止め、ゆっくりと顔を上げる
大淀 「…………し、失礼いたしました!!」
慌てて(それでも書類を片付けて)立ち上がる
大淀 「司令官代理を務めてました軽巡洋艦娘の大淀です!申し訳ございません、まだ着任手続
きがまだでして……」
「大丈夫です、自分が早く着いてしまいまして……」
叢雲 「コイツわざわざ歩いて来ちゃったのよね…民間の駅から」
大淀 「……あそこはここまで14海里程ありますが…それを5時間で踏破されるとは司令官さん
随分とご健脚ですね…」
「脚には自信があるんですよね~…海では溺れますが(泣)」
叢雲 「溺れるってアンタ……本当に帝国海軍軍人なの?海軍兵学校卒業したんでしょ?!」
「川とか真水だったら泳げるし、他もギリギリアウトだったけれど卒業はしたよ?!
富士校長からのお情けの補習と拳骨と強制新設軍港勤務に着任されたけれど…まだ
留年してダラダラ戦史を勉強したかった(泣)」
大淀 「富士大将のお墨付きですか……余程何か光るものがあるのですね…」
叢雲 「……とてもそうは視えないけれど……」
「(泣)兎に角これからよろしくお願いします」(;_; )つ着任状
大淀 「あ、はい……確かに拝受いたしました……関係各所に連絡しますので、その間に工廠
で艦娘の建造をお願いいたします…水雷戦隊を編成しませんといけませんので」
「建造?…確か水雷戦隊を編成するなら最低6艦だったかな?」
大淀 「ですね、ただ艤装がある艦娘は叢雲さんだけですが、他の鎮守府や警備府、要港部から
駆逐隊が派遣される予定ですので、1艦だけお願いいたします…帝国海軍的にも資源等
が足りませんので……」
「……戦局が逼迫しているからな……わかりました」
大淀 「よろしくお願いいたします、まだ〝こちらの世界” に来ていない艦娘のリストです」
そう言うと引き出しから数十枚分の紙の束を差し出す
「……結構ありますね……」
大淀 「はい…まだ〝こちらの世界”に来ていない艦娘と……先の南海区での喪失艦も含んで半分
くらいです」
「了解です、なら工廠に行ってきますね~」
叢雲 「アンタ工廠の場所わかるの?」
「わかりません!!」エッヘン!
叢雲 「……附いてきなさい、案内したげるわ」
「助かります!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
叢雲 「ほら、こっちよ!無駄にキョロキョロしないの!……しかし人間のアンタが私達の司令官
にね……」
「(キョロキョロ)まぁね~…〝こちらの世界”とは違う歴史や文化等に直接触れられるのは中々楽し
いものです!」
叢雲 「……変わった人ね…〝こちらの世界”って言いまわしと言い、私達兵器や妖精さん達に
対しての言葉遣いと言い、何か色々と変わっているわね」
先導してくれる叢雲のフワフワしているウサ耳(?)を眺めながら、自分は答える
「まぁ言葉も喋れて意思疎通が出来れば、存在そのものが異種でも関係ないしね~……
残念ながら深海棲艦って共通の敵もいるし、何より……」
叢雲 「?」
「……艦娘さん達は、美人さん美少女さん美幼女さん揃いだしな~www富士校長は、
チョット怖かったけれど(泣)……あれはアレでこう何か新しい性癖が開かれそうだし、
それにそれに(ポカッ!)」
叢雲 「真面目に聞いた私が本当に馬鹿だったわ!今度変なこと言ったら本当に酸素魚雷を食らわ
せて、このアンテナマストで叩いて起爆させるわよ?!」
「止めてあげてください(泣)チョット本音を言っただけで、酸素魚雷とマストアンテナで
体内外攻められたら、いくら何でも快楽を味わう前に昇天しちゃいます(泣)」
叢雲 「なら、変な事を口走るな!……まったく…」
「……こわっ(泣)……」
叢雲 「…何よ」ギロリッ
「何にもございません!」(泣)
叢雲 「怪しいわね……アンタ本当に艦隊指揮が務まるの?」
「やるからにはやりますよ……上手く行けば、夢のお気楽極楽恩給生活がかかっている
ので!」d( ̄▽ ̄)b
叢雲 「…動機が不順過ぎるわ……ま、せいぜい頑張りなさい……」
「おうともよ!精一杯頑張ります!」
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「ここか……妖精さん達用だけではなく、実物大のも兼ねているから建物デカいな~」
叢雲 「……何かおかしいわね……」
「?何が?」
叢雲の頭のフワフワしたウサ耳(?)みたいのを工廠の扉に近づける
叢雲 「……静かすぎるわね……普段なら作業等で夕張と整備妖精さん達が騒がしい筈なの
に……」
「……それって聴音機だったの?」
自分も扉に耳を当ててみる……
叢雲 「……何かコソコソひそひそ聞こえるわね……」
「……ひょっとしてサプライズ着任祝いパーティー?もしくは人生において2回はあると言
う伝説のモテモテ期の到来かな?……こうしちゃ居られない!早速爽やか、かつ朗らかに
挨拶をしなければ!」
叢雲 「待ちなさい!」
叢雲の制止も聞かず両手で勢いよく観音扉を開け開く
「皆様お待たせしました!本日「「「「「着任おめでとうございます!!」」」」」ドン!!!
祝福の歓声と凄まじい爆発音で……その日、自分は皇国軍人初の未公認の無装備最長最高飛翔距
離記録保持者になった……
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「ぶぇっくしょん!」
大淀 「大丈夫ですか?」
明石 「本当に申し訳ございません……ほら、あんた達も謝りなさい!!」
吹き飛んだ後、大量の紙吹雪と共に海に落水、叢雲のアンテナマストと明石さんの起重機で
引き揚げて貰った……
夕張 「いや~圧縮空気試製20.3cm(祝砲使用)3連装砲の12門の一斉射は……流石に気分が高揚
しました///」
「……成程……圧縮空気か…観音扉を両手で開けた状態で、最大表面積で柔らかい紙吹雪を
全身で受けた結果、あの飛翔距離が出せたのか……プロペラ、ジェット、ロケットに替わ
る第4の推力になるかもしれない!!」
夕張 「人間大砲ですね!司令官さんは80mは軽く超えていましたから、妖精さん製なら或は…」
明石 「出来るわけないでしょ!?」
叢雲 「コイツが異常に無駄に頑丈だから助かったのよ…普通だったらくしゃみだけで済まないの
よ!?」
大淀 「執務室まで響く大爆音だったんですから……怪我等はしていませんけれど……」
叢雲 「そうね…流石に何らかの懲罰が必要ね」
「と、言ってもなぁ……まだ自分は正式に着任してないし、怪我もしていないし、楽しかっ
たし、お腹が空いたし……と、いう訳で、ぶっばなした夕張君と、空気砲を作った妖精
さん達はお咎め無しで」
夕張 「良いんですか?」キラキラ
明石 「……私が言うのもおかしいですが……本当によろしいのでしょうか?」
「こうゆう革新技術は試行錯誤な部分が強いからね…発想が萎縮するよりかはマシですし、
そもそも兵装実験軽巡としての本能まで止める気はないですよ~……何だかんだ楽しか
ったし」
叢雲 「まぁアンタがそう決めたなら、良いんじゃないかしら…大淀もそれで良い?」
大淀 「ですね…私も構いませんです」
夕張 「ありがとうございます、司令官さん」
「まだ正式に着任していないんだよなぁ…と、言う訳で明石さん、建造をお願いしたいので
すが……」
明石 「あ、はい、建造ですね?」
?? 「新しい仲間が誕生するのですか?」
一同 「「「「「えっ!?」」」」」
夕張 「……妖精さん達、許して貰った御礼に超最速で建造したみたいですね……」
「速い、速過ぎる(泣)せっかく見学しようと思ったのに……」
叢雲 明石 夕張「「「…………助平」」」
大淀 「?¿?」
「何故(泣)ただ純粋な探究心なのに……」
叢雲 「アンタは何か胡散臭いのよ……ところで貴女は?」
初霜 「初春型四番艦、初霜です、皆さんよろしくお願いします」(ニコッ)
大淀 「初霜さん!?〝こちらの世界”では初めましてですね…急いで連絡してきます!」
「大淀さん、お気を付けて~……初霜君か…また凄い艦娘さんが来てくれたなぁ…」ナデナデ
叢雲 「アンタ知っているの?〝あちらの世界”を」
「聞き伝えだけどねぇ~〝こちらの世界”の帝国海軍兵学校には富士校長を初め、
〝あちらの世界”の話や記録を見聞きできたから」
夕張 「……ひょっとして、この司令官さんって凄い方なのかしら?」(小声)
明石 「……途中途中変な発想が出ているけれど、中々良い感じね」(小声)
「それにこんな美人さん美少女さん美幼女さん達を深~~~く知れて、尚且つあわよくば
浪漫のハーレム桃源郷酒池肉林黄金郷を築けるかもしれない!!よしんばその夢破れて
かなわかったとしても、そう!得た知識をフル回転して深海棲艦達に上手い事手を尽く
せば、第二の理想郷、夢のお気楽極楽豪華な自堕落恩給生活が待っている!!行くぜ若人
頑張れ自分!時代は正に(以下略)」
叢雲 「これでも(酸素魚雷)食らって黙りなさい!」
「もがもがモガー(泣)」
叢雲 「……61cm酸素魚雷で口を塞いでも、まだ五月蠅いわね……残りの二本は鼻の穴に入れて
やろうかしら?」
「もがモガもが(泣)」
夕張 「……想像以上に私利私欲過ぎてるわ……」(ドン引き)
明石 「下手に弄るとより一層酷くなるタイプね……」(ドン引き)
初霜 「?」
「モガもがもが(泣)」
叢雲 「約束通りこのアンテナマストでとどめを刺してやるわ…沈みなさい!」
「モガーぁぁぁぁぁあああ!(泣)」
読みにくい、何処かで見たような?等あると思いますがよろしくお願いいたします
作中に出ている富士校長(大将)はオリジナル艦娘となります