結局僕は何もできないまま、この人達にオークが倒されていた。最初に僕に話しかけてきた人が「アラン」短髪黒髪で手には剣を持っていた。オークの背中に刺さっていた剣はこの人の物だったらしい、がさつそうな感じの大男が「オーガスト」その体同様手には大きな斧を持っていた。他にも女性の弓使い「クレア」や両手に短剣を持っている「ベネット」そして一人だけ杖を持っている「シーザー」の五人が僕を助けてくいれたようだ。彼らが自己紹介した後に僕もきちんと自己紹介をした。
「私達はこの近くの隠れ里に住んでいる、そこの腰を抜かしている男も私達の里の者だよ」
アランがランタンを持って腰を抜かしていた男性に指を指していた。
「まったく、護衛をつけずに森には入るなってあれほどいったじゃねーか!」
オーガストが腰を抜かしている男性に手を差し伸べていた。
「す、すまない、君達が来てくれて助かったよ!!」
「まずはあたし達じゃなくて、そこの彼に御礼をいうべきじゃない?」
この五人の中で唯一の女性であるクレアが僕を見ながらそう言った。
「そうだった!君、助けてくれて本当にありがとう!!」
男性は僕の手を取って涙ながらに御礼を言ってきた、なんでもこの近くにはオークの巣があるらしく、一般人は護衛もなしに森に入ることを禁止されているらしい。
そしてこの男性はそのオークの巣の近くに生えている薬草が欲しくて、森の中に入ってしまった。なんでもオークの巣は護衛がいても近寄ってはいけないらしく、命の危険があると知りながら護衛をつけずに黙って森に入ったのだとか。
「それで?その薬草はあったのかよ?」
ベネットがその辺の切り株に腰を下ろし、二つの短剣を磨きながら男性に問いかけていた。
「いや・・・・それが・・・・」
この反応からするに見つからなかったのだろう、ここ最近はオークの動きも活発化しているらしく、巣の近くまで行ってしまうと臭いに敏感なオークが大勢で襲いかかってくるのだとか。
「とりあえず里へ戻ろうぜ、こんなところにいたらまたオーク共に襲われちまう」
「そうだね、シーザー!」
「なんだいボス?悪いがテレポートとかは使えないぜ?」
「そんなこと期待していない、ふざけてないでさっさとしてくれ」
アランが唯一の魔法使いであるシーザーの名を呼ぶ、アランの言いたいことが分かったのか「ライト」の魔法を使い、ランタンよりも明るい光が杖の先に灯り、里への道を案内するかのように森の中へ進んでいった。
「もう時間も遅いし、よければ君も里へ来るといい」
「いいんですか?」
「彼を助けてくれた恩人だからね、隠れ里というだけあって普段は人を招いたりしないんだけど、特別に案内するよ」
今晩はキャンプをする気満々だったので、ちゃんとした寝床につけるのは正直言ってありがたかった。僕は置いてきた馬のところに戻り、馬を連れて彼らの里へと向かうことにした。
「さぁ着いたよ」
数分歩いたところでアラン達は立ち止まった。しかし僕の目からは周囲となんら変わらない森があるだけだった。
「えっと・・・ここが里ですか?」
「隠れ里だって言っただろ?」
ライトを使い周囲を照らしていたシーザーが「見てなっ!」と言い、なにやら長めの詠唱を唱え始めた。そしてさっきまで森だった場所にいくつもの民家が姿を現したのだ。
「おでれーた!幻影か!?」
「その通り、普段は人に気づかれないように人払いの魔法も周囲にかけてあるんだ」
彼らはその人払いの影響を受けない物を所有しており、その彼らについてきた僕もその魔法にかからずにここまで来れたのだという。
「しかし君、インテリジェンスソードなんて珍しいものを持っているんだね?」
アランが興味深そうにデルフリンガーを眺めていた。そういえばルイズも初めデルフリンガーを見たとき驚いていたな、こっちの世界では魔法があるわけだしそれほど珍しいものではないのかと思っていたけど、どうやらそうではないらしい。
インテリジェンスソードは魔法を込めながら剣を作ることで意思を持つとルイズから教わったが、誰でも作れるものではないとアランは言う。物に意思を持たせるということは、生物を誕生させることと同様の意味を持つ、いくら魔法が万能だからと言っても生物を誕生させる魔法なんておとぎ話でしか聞いたことがないんだとか。
「まぁそれだけ俺っちはすげぇーってこった!!」
デルフは自慢げにはしゃいでいた、実際すごいのはデルフではなくデルフを作った人なんだけれど、そんなことを言うとデルフが怒ってしまいそうだから何も言わないことにした。
彼らの隠れ里に入ると、村の人々が自然と集まってきた。
「おかえりなさい!」
「怪我してないかい!?」
どうやら彼らはこの村の人々から信頼されているようだ。そしてその中でも特にシーザーと呼ばれていた魔法使いの周りには多くの人が集まっていた。
「はっはっは!!人気者はこまっちまうな!!」
多くの人に囲まれて上機嫌なのか、シーザーという人は妙にハイテンションだった。だがそのテンションとは裏腹にどこか少し考えごとをしているようだった。
「おいアラン、そこの彼は一体・・・?」
一人の男性が僕の存在に気づきアランに問いかけていた、それを聞いた村の人々は一斉に僕のほうを向いた。なにやらよそ者が来たと警戒されているようだ。
「彼はダンの命の恩人だ!警戒するような人物じゃないよ」
ダンというのはさっき助けた男性の名前のようだ。
アランの言葉に安心した村人は僕に近づいてきた、さっきまで警戒されていたのに彼の言葉一つで完全に警戒が解けているようだった。
その後村人から歓迎された僕は、村の集会場に泊まっていいといわれたのでそこで一晩明かすことにした。宿はないのかと尋ねてみたけれど元々人が尋ねてこないようにしているため、宿を作る必要がないのだとか。
「ベットは無いけど敷布団くらいなら用意できるから、今日はここに泊まってくれ」
「ありがとうございます」
アランに案内された集会場にはすでに敷布団と食事が用意されたいた。
「そうだ、一つだけ聞きたいことがあるんだけど」
「なんだい?」
僕は彼らに会って一番最初に感じた疑問を聞いてみることにした。それは剣士や弓使いなどはまだ分かるが、その中に一人だけ魔法使いがいること、そしてこの村のが魔法によって守られていることだった。
通常魔法は貴族が使えるものと聞いているが、ここには貴族なんて一人もいないようだし、シーザーと呼ばれていた彼が昔貴族だったにしても、その貴族としての面影が一切感じられなかったのだ。
「・・・・この村のことは他言無用だよ?」
隠れ里というだけあって深いことは教えてくれないかと思っていたが、それほど村人を守ったことに感謝されているのだろう、アランが少し考えた後に色々なことを教えてもらった。
なんでもこの村に住んでいる人々は様々な理由によって、世間から姿を隠しているらしい。あのシーザーという男性は今も昔も貴族なんかではないんだとか、シーザーの親が昔貴族だったらしく、なんらかの原因によって家計が潰れてしまい貴族に命を狙われ、この森まで逃げてきたらしい。そしてシーザーの両親はこの周辺に人払いの魔法をかけ、誰にも見つからない家を作った。それからこの森に逃げてくる人を見かけては、その人々を人払いの中に招きいれ、気がついたら隠れ里になっていたらしい。
「シーザーの両親は、シーザーを生んだ後に命を落としてしまったね、彼は両親の顔すらみたことがないんだよ」
シーザーを生んだあと、母親が重い病にかかってしまった。その病を治すためにシーザーの父親が森の中に生えている薬草を採りにいったのだが、それ以来シーザーの父親は森から帰ってくることはなかった。おそらくその頃からオークは森に生息していたのだろう、シーザーの父親もきっと薬草を採りに行きオークにやられてしまったのではないだろうか。
「そしてシーザーは貴族である両親の血を引き継いでいるから、平民でありながら魔法が使えるんだよ。村の人も彼の両親には感謝していたからね、両親が死んだあとは村の人が彼を育てたんだよ」
少しだけだけれど、シーザーと僕は似ていると思った。幼い頃に両親をなくしていること、育ての親が本当の親ではなかったこと。まぁ僕なんかよりも彼のほうがよっぽど苦労したと思うけど。
「さっきのダンって男がいただろう?彼のお母さんが病にかかっていてね、そのために薬草を採りにいったのだろう」
「その病ってのは、魔法でどうにかならないんですか?」
「シーザーの系統は火属性なんだよ、だから彼には怪我や病気を治すことができないんだ」
「おいおい、それならこの村で病気にかかった奴は皆どうしてるんだい?世間から身を隠してるってんなら外にも出られねーんだろ?」
デルフが疑問に思ったのか、アランに質問をした。
「この森には薬草が豊富でね、その病にあった薬草を私達が見つけてくるんだよ。でもオークの巣には私達でも近づけない、数体ならまだしも数十体で来られたらどうにもできないんだ」
「それじゃあ、あのダンって人のお母さんは!?」
「・・・・・」
アランは黙ってしまった。そして自分の無力さを嘆いているのだろう、彼の握りこぶしを作り肩を震わせていた。
するといきなり集会場のドアが盛大に開けられ、外からあの大男のオーガストがずかずかと入ってきた。
「大変だ!!シーザーがいねぇ!!」
その言葉に僕とアランはオーガストの方を見た。
「いないって?彼の家には!?」
「もちろん行った!!あいつの行きそうな場所も全部だ!!だかこの村の中にあいつはいねぇ!!」
考えなくてもわかる。オークの巣へと向かったのだろう。
「オーガストすぐに準備をしろ!!私はクレアとベネットを呼びに行く!!」
「おうよ!!」
彼らは慌しく準備を始めていた。当然だ彼ら五人が集まってもオーク数十体相手にすることができないのに、それを一人で戦おうとしているのだから。
「相棒!!」
「うん!僕も行きます!!」
デルフに言われるまでもなく、僕は彼らと一緒に戦う覚悟を決めていた。
「何を言っているんだい!?君は関係ないんだよ!?」
「ここまで話を聞いて、関係ないってことはないでしょう?それになんと言われようと着いてきます!!」
「おい急げ!!早くしねーと手遅れになっちまうぞ!!」
オーガストはすでにある程度準備をしていたのか、外から彼の声が聞こえてきた。
「・・・・分かった、でも危なくなったらすぐに逃げない!いいね!?」
「はい!!」
外に出るとシーザーを除く三人がすでに集まっていた。
「おそらくシーザーはオークの巣へ向かった!!我々もこれから向かうことになる!!だが強制はしない!!残りたいものは残ってもらって構わない!!」
アランは簡潔に重要なことだけ仲間に告げた。そして誰一人として残る者はいなかった。
僕らはオークの巣があるという場所へと移動した、里に来るときはシーザーの魔法のおかげで周囲を確認することができていたが、今はオーガストが持っているランタンだけだった。
「おい、道中にシーザーいたか・・・?」
先頭を歩いていたオーガストが気になることを聞いてきた、見つけていたら今頃オークの巣の近くまでは来ていないだろう。
「いや、見なかったが」
「あいつは薬草を採りに来たんだよな?ならなぜこの辺にいないんだ」
「おい!これを見てみろ!!」
ベネットが何かを発見したのか、しゃがみこんで木の根元を観察していた。
「土がごっそり削られてやがる、しかも周囲にはこの足跡だ」
それは豚のひづめのような足跡だった、そうオークの足跡だろう。
「オークが薬草を採ったっていうの!?」
「かもしれねぇ、見てみろそこらじゅうこんなのばっかりだ」
オークの知能は高いといわれているが、人間の用に薬草を作れるほどではない。
「・・・・なぜオークが薬草を採ったのかは分からないが、シーザーがこれに気づいたとしたら」
「おいおい、あの中に入ってったってことかよ!?」
「・・・・かもしれないな」
「ねぇ、オークって臭いに敏感なんだよね?」
「ああ、そうだけど?」
「じゃあなんでオークの巣の近くまで来てるのに、一体も出てこないんだろう」
誰も僕の質問には答えなかった。いや答えられなかったのか、重たい空気が流れていた。もしかしたらオークの罠かもしれない、巣に入った瞬間大勢で襲い掛かってくる可能性だったあるのだ。
「アラン、怖気づいたか?」
オーガストが少し笑いながらアランに問いかけた。
「まさか仲間の危機なんだ、クレア、ベネット、二人はどうだい?」
「ここまで来たのも覚悟のうえよ」
「同じく」
クレアもベネットも自分の武器を取り出し、戦闘態勢に入っていた。
「君はどうだい?ここからは本当に付いて来なくていいんだよ?」
「僕もここまで来たんです。覚悟はできてますよ」
「そうか」
アランはそれ以上何も言わなかった、オークの巣からは異様な空気が流れていたが、僕らは意を決して中に入ることにしたのだ。
その先に地獄があるとも知らないで。
オリジナル展開なのでおかしなところがあるかもしれません。