ギーシュとの決闘から数日後、体調は完全に回復していた。やはり魔法ってすごい、全身がボロボロだったにも関わらずたった数日で傷を治せるのだから。しかし僕には気になる点が一つあった、僕がギーシュにやられた傷といえば後頭部打撲だけだ。それなのに僕は体中ボロボロだったらしい、何故かと考えてみたところ思いつくことがあった。数日前ルイズに言われた使い魔の「特殊能力」だ、僕が剣を握った瞬間体力が回復し、軽く走ったにも関わらず10メートルは離れていたであろう人形の目の前に一瞬で移動したのだ。
つまりあの能力には副作用があるってことだ、一時的に身体能力を上げる代わりにその力に体が付いていけなければ、体は反動を受けボロボロになってしまう。ただ剣を握って立ってるだけなら体力を消耗しないので問題はないが、決闘のときみたいに動き回ってしまったら最後は倒れてしまう。
おそらくその所為でギーシュと話しているときに倒れてしまったのだ。
「便利な力かと思ったけど、そう上手くはいかないよな・・・」
今後また決闘を申し込まれることがあるかもしれない、なんせ平民が貴族に勝ったという噂がすでに学院内に広がっているらしいからだ。ギーシュはもう挑んでこないと思うが、この噂をよく思わない貴族だっているはずだ。
「体鍛えたほうがよさそうだな・・・」
今は授業中のため校庭には誰もいないはずだ、現にルイズだって授業を受けている。僕は校庭に向かうためルイズの部屋から出た。するとズボンの裾に何かが噛み付いてきたのだ。
「おわ!?って、フレイム?」
確かキュルケの使い魔のサラマンダーだ。フレイムは僕のズボンの裾に噛み付いて離そうとしない、というかこっちへこいと言わんばかりにグイグイと引っ張ってくる。
「行くからやめて!?歩きづらいよ!?」
フレイムに引っ張られるままについていくと部屋の前で立ち止まった、おそらくキュルケの部屋だろう。今は授業中だからキュルケは留守のはずだ、さすがに勝手に入るのはまずいだろう。
だがフレイムが後ろから鼻で押してくる。もしかしたら部屋に入れないから開けてくれってことなのかもしれない。
「鍵がかかってたら僕には開けられないよ?」
そういってドアノブを回してみたら簡単に開いてしまった。そして部屋の中から声が聞こえた。
「どうぞー」
完全にキュルケの声だ、てか今授業中だぞ。しかも「どうぞ」ってことは入って来いってことなのか。後ろに下がろうとしてもフレイムが押してくるため下がれなかった。
「お邪魔します・・・」
「いらっしゃいダーリン♪」
誰がダーリンだ、部屋に入って一分もしていないがすでに帰りたい。
「そんなところにいないでこちらにいらして」
ベットに座っているキュルケが僕に向かって手招きしている、どうせ逃がしてはくらないのだから早めに用件を済ませることにしよう。
僕は言われたとおりキュルケの元へ近づいた。
なんでも僕とギーシュの決闘を見ていたらしく、僕が剣を持ち戦う姿に惚れてしまったらしい。
あの力は使い魔の能力であって僕の力ではないと説明したのだけれど、それでも構わないと言われてしまった。本当に逃げ場がなくなってしまいどうしようかと悩んでいると、部屋のドアが勢い良く開かれルイズが入ってきた。
「キュルケ!?あんた私の使い魔に何してるのよ!!」
どうやら授業が終わったらしい、そしてものすごく怒っているようだ。どうやら外から僕の声が聞こえていたらしい、そしてここがキュルケの部屋だと気づき入ってきたのだとか。
その後はまたルイズとキュルケが言い争いを始め、最終的には強制的に僕を引っ張り部屋から出て行った。
「あんたね!!私が授業受けてる間に何やってるのよ!!」
今までにないくらい怒っている、下手な発言をしたら食われそうな勢いだった。僕がキュルケの部屋にいた経緯を話した。僕が望んで行ったわけではないと分かると、少しだけ怒りが治まったようだった。
「そう、まぁ今回だけは許してあげるわ」
まだ少し怒っているようだけど、それでも許してくれたみたいだ。
「でも何でそんなに怒ってたんだい?」
今まで見たことないくらい怒っていたため、触れてはいけないのかと思ったけど聞いてみることにした。
「・・・私の家とキュルケの家は代々いがみ合ってるのよ、あの女には髪の毛一本すら渡したくないわ!使い魔なんてもっての他よ!!!」
ルイズの背後に炎が見えた、これ以上この話題をするのはやめたほうがよさそうだ。
「そういえば明日は虚無の曜日だったわね、城下町まで買い物に行くわよ」
時間をおき冷静になったルイズが、思い出したかのようにそういった。
「虚無の曜日?」
「休みの日ってこと、あんたがまたキュルケに襲われても対処できるように、剣を買いに行くのよ」
いやさすがにあれくらいで人を斬り捨てたりはしないけど、でも剣を買ってもらえるのはありがたい、今日はキュルケに捕まってできなかったが、体力作りに剣を振るうのもありだろう。
その後またルイズが授業を受けに行くというので、今度は僕も連れて行かれた。その後解くにトラブルなどは無く一日を終えることができた。気づいたのだが、こっちに来てから僕が意識のあるときは常に何かが起こっている気がする。最初の召喚、次の日の決闘、今日はキュルケに絡まれる。明日は何事も無く終わってくれればいいのだけれど。
時間はとんで虚無の曜日、城下町まで行くってことで僕は早起きして現在校庭でルイズを待っている。なんでも馬を借りてくるのだとか、今思えば学院の周りは広い平原になっており、町なんてまったく見えない。馬で行くとなると何時間掛かるのだろう、てか僕は馬なんて一回も乗ったことないんだけど。
「ユウト!はやく乗りなさい!!」
気が付いたらルイズが校門近くまで来ていた、乗れといわれても馬が一頭しかいないのだけれど。
「この馬に二人で乗るの?」
「当たりまえじゃない、それともあんた馬を操れるの?」
「すいません無理です」
「ならさっさと乗りなさい、日帰りなんだからあまり時間を無駄にはできないわ」
すでに馬に乗っていたルイズに手を貸してもらい、馬に乗ることができた。
それから2・3時間掛けて城下町へと向かったのである、こんなの毎日乗ってたら腰を悪くしそうだ。
虚無の曜日は私にとって大事は日だ、平日だというのに一日中本を読むことができる。タバサは朝から早起きをしてベットの上に数冊の本を置き、読書の時間を存分に楽しんでいた。すると廊下からドタバタと走る音が聞こえてきた。
「サイレント」
タバサは杖を持ち自分の周囲の音を消し去る魔法を唱えた、これで静かに読書ができる。何事も無かったかのように本の続きを読んでいると、視界の隅に誰かいることがわかった。キュルケである、タバサが唯一友人と呼んでもいい存在だ。キュルケは慌てた様子で何かを言っている、通常なら無視して本を読み進めるところだが彼女だけは特別だ。
タバサは再度杖を持ち先ほど唱えたサイレンとを消した。
「・・・イズとユウトが城下町へ行ったの!あなたのシルフィードなら追いつけるでしょ!?」
最初のほうはサイレントの効果で聞き取れなかったが、どうやらキュルケは城下町へ行きたいらしい。
「お願いよ!あなたが虚無の曜日を大事にしてるのは分かってるけど!私を城下町まで連れて行ってくれないかしら!?」
タバサの使い魔であるシルフィードはいわゆるドラゴンだ、その飛行速度は最高で時速150キロにもなるため、馬くらいなら今から追いかけても十分間に合う。
タバサは手に持っていた本を閉じ、部屋の窓を開けて使い間を呼んだ。
「連れて行ってくれるの?」
キュルケがそうたずねてきたため、タバサは小さく顔を立てに振った。
「ありがとう!タバサ!!」
キュルケが背中に抱きついてくる、そして私には無いものが背中に当たっていた。タバサとキュルケはシルフィードの上に乗り、城下町の方向へと飛んで行った。
人ごみはあまり好きではない、解くに懐に大金を持っている状態で人ごみに入るなんて、変な輩には僕がカモに見えるだろう。
もちろんこっちに来てから金稼ぎなどしていないし、当然日本の金を使えるわけもない、つまり僕が今持っているお金はルイズのものってことだ。
「ねぇこのお金僕が持たないとダメなの・・・・?」
「あんた今までまともに仕事してないじゃない、このくらいやりなさいよ」
たしかに僕が召喚されてからやった仕事というと朝ルイズを起こしたくらいだ、それからすぐに三日三晩寝てしまったため、やらせたかった仕事も全部自分でやったのだとか。
しかし目覚まし代わりに使われるのはまだいいとしても、次の仕事が金運びだなんて、僕にはこっちの通貨が分からないのでどのくらい価値があるかは知らないが、懐に入れているだけでもずっしりと重い。
そして僕が挙動不審な所為か、あちこちから視線を感じる。これは確実に狙われている。道幅が狭いせいか先ほどから何人かの人間に肩をぶつけられ、そのたびにズボンのポケットなどを触られている気がした。おそらく財布の場所を探っているのだろう、僕は一刻も早くここを抜け出すためにルイズの近くを歩くことにした、さすがに貴族が近くにいたら躊躇しているようだ。
「ちょっと、歩きづらいじゃない」
申し訳ないが少しだけ我慢していただきたい、命とまではいかないが大事なものが狙われているので。
少し歩いたところにRPGなどで見るこれぞ武器屋って感じの看板がかかっている店を発見した、どうやらここで剣を買うらしい。
ルイズが店内に入ると店主が冷や汗を掻きながらこちらを見ていた。
「き、貴族様!?うちはまっとうな商売をしておりますが・・・・・」
怪しそうな店主がいかにも怪しそうなことを言っている。これ絶対まっとうな商売してないだろう。
「客よ」
ルイズが一言そういうと、店主は少し安心した様子だった。
「彼に合う剣を探しているわ」
ルイズは僕を指さしながら店主に問いかけた、店主は「少々お待ちください!」といい店の奥へと向かったが、先ほどまでは緊張していた様子だったのに振り返る一瞬笑っていたように見えた、これはど素人が来たとでも思っているのだろう。
まぁそうなんだけどね。
僕は店主が戻ってくるまでの間店内の武器を見て回ることにした、日本じゃこんなお店ないから少しだけ興奮している。
どうやらケースに入っている武器は店主が鍵を開けないと触れないようになっているが、棚に無造作に置かれている武器は自由に触っていいようだ。
僕は気になった剣をいくつか手に取ってみた、すると決闘のときは気づかなかったが左手の紋章のようなものが少しだけ光っているのが目に入った。
ここは剣だけではなく槍や斧も扱っているため興味本位で触ってみたところ、決闘のときと同じようにその武器の情報が頭の中に流れ込んできた。
どうやら僕の能力とは「剣」を達人の用に操れるようになるのではなく、「武器」を達人の用に操ることができる能力らしい。店内にある触れる武器をある程度触ってみたが、初めて触る武器は僕の頭の中に情報が流れ込んでくるらしい。また触っている間は左手の紋章が光り続けていた。
色々試しているうちに店主が店の奥から戻ってきた、手には金で作られたのかと思うくらい光り輝いている剣を持っていた。
「貴族様のお連れ様にはこちらなんかいかがでしょう!?」
「ずいぶんと綺麗な剣ね、本当にこんなので斬れるの?」
「当然です!見てくれだけではなく斬れ味もピカイチですぜ!?」
どうも胡散臭い、そう思った僕はおもむろにその剣を掴んでみた。
しかし紋章は何も反応しなかった、ここの武器屋にある武器をさわり色々試してみたが、武器の形や種類で反応しないってことはなかった。つまりこの紋章がこれを武器と認識しなかったということだ。
「こんな上等なもの僕はいらないよ、少なくとも剣としての機能を果せていればそれでいい」
ここでこの剣は装飾品だなんて証拠もないことを言っても無駄にもめるだけなので、適当に煽てておいて他の剣を探すことにした。
「あんたさっきから店内を見てたけど、何かいいものでもあったの?」
ルイズは武器屋には興味がなかったのか、変なことをしないようにと僕を観察していたらしい。
「いや・・・僕もあまり分かってなくて・・・」
そういうとルイズは「はぁ」とため息をついた。
僕のその言葉を聞いた店主はまた何か思いついたのか、見え透いた作り笑いをしながら話しかけようとしていたそのとき。
「ったく!これだからド素人は!?」
後ろのほうから口調の悪い声が聞こえてきた。
「こらデル公!?お客様に失礼だろうが!?」
僕は振り返ってみたがそこには誰もいなかった、しかし声は聞こえる。
「っへ!?何がお客様だ!?散々カモろうとしてた癖に!」
その声が聞こえるところをよく見てみたら、一本の剣がカチャカチャと動いているのが見えた。
「剣が・・・・しゃべってる・・・?」
「これって、インテリジェンスソード!?」
ルイズに聞いてみたところ、インテリジェンスソードとは意思を持った剣のことらしい、剣を作る際に魔法をこめながら作るとできるのだとか。
「おっと!?よく見たら小僧!お前使い手じゃねーか!?」
この場において「小僧」というのは僕のことだろう、ルイズなら「小娘」と呼ぶだろうし、それにしても使い手って一体なんのことだろうか。
「買う剣が決まってねーんならオイラを持ってきな!きっと役に立つぜ!!」
その自信はどこから来るのだろうか、鞘からはみ出して少し見える剣の刃は少しだけ欠けており、柄糸も少し解けているようだった。
しかし話をする剣とは興味深い、これから毎日トレーニングをする身としては話し相手がいてもいいだろう。
「わかった、君にするよ」
「本気でいってるの!?」
「ああ、剣と話ができるなんて面白いじゃないか、僕は風間 勇人だ」
「おれっちはデルフリンガーだ!よろしくな相棒」
こうして僕は自分の剣を手に入れた。まぁルイズに買ってもらったんだけど、なんでもデルフは口が悪く客を怒らせてしまうため、店主も早めに売りたかったらしい、そのおかげで予定の出費よりも安く済んだとルイズが言っていた。
そしてそのお店で僕はデルフの他に小さなナイフも一緒に買ってもらった、ルイズに必要なものなんだと言ったら嫌そうな顔をされたが買ってくれた。
どうやら鞘に収まった剣を持っても紋章は光らないようだ。デルフを鞘から抜いたり収めたりして紋章が光るのを楽しんでいたら「やめろおぉぉぉ!?」という声が聞こえた。
基本的に1話5000文字前後でいきたいのですが、話の進むペースが若干遅い気がしています。