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なぜ僕が彼女のためにここまでできるのか、僕自身あまり理解できていない。勝手に召喚され日本に戻れないと言われ、そんな理不尽な彼女のことを助けなくてはと思ってしまう。使い魔になった使命感というものなのか、彼女を守るために体が勝手に動いてしまうのだ。
「僕って洗脳されてるのかな?」
「いきなりどうしたんだ相棒?」
「あ、ごめんただの独り言」
「あまりボーっとするなよ、奴さんは待ってくれないぜ!」
デルフリンガーの言うとおり、巨大なゴーレムが大きな足を僕に向かって振り下ろしてきた。
「そうだねっ!!」
ゴーレムはその巨体ゆえ動きがのろい、これなら動きを確認した後でも十分避けられる。まぁこの使い魔の能力があってこそなんだけど。
「一回避けたくらいで安心するな相棒!!次くるぜ!!」
デルフリンガーの言うとおり足を振り下ろしてきた直後、次はその巨大な腕を僕に向かって地面すれすれに振ってきた。
一瞬反応が遅れてしまったせいか、僕はその攻撃を避けられずもろに食らってしまう。
「がぁっ!?」
気がついたら数十メートル後方に吹き飛ばされていた、幸いデルフリンガーを体の前に構えていたため、少しだけダメージを軽減することができた。
「デルフ大丈夫!?」
僕の変わりに攻撃を受けてしまったデルフリンガーを心配する。
「俺っちは平気だ!盾にしてもかまわねぇから、相棒は敵を倒すことだけに集中しな!!」
「わかった!」
なんとも頼りになる言葉だ、そして使い魔の能力のおかげか、あれほどの衝撃を受けたというのにまだまだ動ける気がした。
「まずは足から斬り崩す!!」
「あいよ!!」
あれだけの巨体だ、左右どちらかの足を斬ってしまえばバランスが取れなくなるだろう。先ほど飛ばされた数十メートルという距離を一瞬で詰め、その勢いのままゴーレムの右足首に向かいデルフリンガーを斬りつけた。
するとギーシュの人形を斬ったとき同様、まるで豆腐を切っているかのようにいとも簡単に斬ることができた。
そして狙い通りゴーレムはバランスを崩し、背中から地面に倒れたのだ。
「よし!!」
「もっとバラバラにしてやりな相棒!!すぐに再生しちまうぜ!!」
デルフの言うとおり、斬った足の根元から周囲の土を集めて再生を始めていた。
「きりがないな・・・」
「やっぱまだ相棒には無理か!娘っ子達が逃げる時間を稼ぐことだけを考えて戦いな!」
「それがいいね」
僕の実力ではまだ倒せないことを実感し、ルイズ達が確実に逃げ切れる時間を稼ぐことにした。しかしそんな僕の思いとは裏腹に、上空からルイズの声が聞こえてきたのだ。
「ユウト!!」
ルイズがフーケに盗まれた箱を手に抱え、タバサの使い魔の背中から飛び降りてきたのだ。
「レビテーション」
そのまま落下しては間違いなく怪我ではすまないため、タバサがとっさに浮遊魔法をルイズにかけた。
タバサのおかげで無事地面に着地することができたルイズは、手に持っていた箱を開け中から「破壊の杖」と呼ばれている物取り出した。
「あれは!?」
ルイズが持っていた「破壊の杖」は丸い筒のような形をしており、僕がいままで見てきた杖と形状が違っていた。というか僕はあの「破壊の杖」を見たことがった、こちらではなく日本でだ。
「この!!この!!・・・もう!!なんで何も反応しないのよ!!」
ルイズは「破壊の杖」を上下に振り、魔法が発動しないか試していた。
「あれがあればこのゴーレムを倒せるかもしれない!」
「どういうことだ相棒!?」
「説明はまた後で!!」
そういうと僕はルイズの元まで駆け寄り、その「破壊の杖」をルイズから奪い取った。
「ちょっとユウト!?」
「ごめん、説明は後でするから!!」
破壊の杖に触れると頭の中に情報が流れ込んできた、思ったとおりだこれは破壊の杖なんかではなかった。
「ルイズ!両手で耳をふさいで、危ないから伏せてて!!」
「えっ?」
頭上に?マークを浮かべているが、説明する時間が無いため「はやく!!」と言って強制的に伏せさせた。僕は先ほど破壊の杖を日本で見たことがあるといったが、あれは少し語弊がある。正確には日本にいるとき海外映画や戦争映画で見たことがあるのだ。
ゴーレムが再生を完了しついにこちらに向かってきた、だがこちらも準備は完了した。
「食らえ!!」
凄まじい反動と爆音が僕を襲った、確かにこの威力なら「破壊」の杖と呼ばれているのも納得する。ゴーレムは木っ端微塵に砕け散り、再生する様子はなかった。
「相棒・・・こいつは一体なんだ!?」
「M72っていう対戦車用のロケットランチャー・・・・って言っても分からないよね、とにかく僕の国の協力な武器だよ」
「・・・・・・」
ルイズが少し顔を赤くしながら僕を見上げていた。
「大丈夫?」
「へ!?だ、大丈夫よ!!」
ルイズがスカートについた土を払いながら立ち上がった。
そして上空で待機していたのか、ゴーレムをい倒したことを確認したタバサとキュルケが戻ってきた。
「すごいじゃないユウト!!」
「驚いた、あのゴーレムを倒すなんて」
キュルケとタバサに褒められていたら、森の探索を終えたのかミス・ロングビルが森の中から戻ってきた。
「お疲れ様です」
「ミス・ロングビル!フーケは見つかりましたか?」
ルイズがロングビルに尋ねた。
「いえ残念ながら見つけられませんでした、逃げられてしまったようです。破壊の杖は回収できたようですね、私がオールドオスマンに渡しておきましょう」
そういうと僕が持っていたM72をほとんど強制的にとられてしまった。
「おい相棒、あの姉ちゃんなんか様子がおかしいぜ」
デルフが僕にしか聞こえないような小さな声でつぶやいた。
「・・・・ふふふ、はっはっはっはっは!!」
ロングビルがいきなり高笑いをし始めた、ルイズやキュルケはどうしたのだろうと呆然とした顔をしていたが、タバサは警戒していたのか瞬時に杖を構えた。
「おっと!杖をおきな!!坊やはその剣をだよ!!」
ロングビルは性格が変わったかのように乱暴な口調になり、僕らに対しM72を向け杖と剣を取りあげたのだ。
「ミス・ロングビル!?一体どういうことですか!?」
「分からないのかい?あのゴーレムを操っていたのは私さ!!これ(破壊の杖)の使い方が分からなくてね、教師の誰かが知ってるかと思ったけどまさかそこの坊やが知っているとはね!!」
「そんな・・・」
オールドオスマンの秘書なだけあって、皆ロングビルを疑ってなどいなかったのだろう。その分裏切られたという事実が受け止めきれず、ただただその場に立ち尽くすだけだった。
「さてもうあんたらに用はない、私の正体がバレたわけだし、ここで死んでもらうよ!!」
そういうとロングビルはさっき僕がしたようにM72を撃とうとした、しかし僕のときとは違いM72はピクリとも反応しのかったのだ。
「!?な、なぜだ!?」
僕らから目を離したその瞬間、僕は腰につけていたナイフを抜きロングビルの元まで駆け寄った。
「しまっ!?」
杖を抜こうとしたのか懐に手を入れようとしていたが、その前に僕のボディーブローが見事に決まり、ロングビルは膝から崩れ落ちてしまった。
「ごめんね、これは使い捨ての武器なんだよ」
「はっはっは!やるじゃねーか相棒!!」
「本当すごいわダーリン!!」
ロングビルを倒したことでキュルケが僕に抱きついてきた、それを見たルイズにはものすごく睨まれた。
その後はタバサがロングビルを魔法で縛りつけ、衛兵を呼び捕まえてもらった。そして僕らはM72をきちんと回収し学院へと戻ったのだ。
「・・・そうか、ミス・ロングビルがフーケだったとはのう」
オールドオスマンに事の真相を話した、やはり少しショックを受けているようだった。
「しかし君達の活躍はみごとじゃ、三人には国から褒美がでるじゃろう」
「ちょっと待ってください!三人って、ユウトには何もないんですか!?」
「残念ながら彼は貴族ではないのでのう、ワシにはどうするのこともできんのじゃ・・・」
「そんな!?」
どうやら僕のことを気にかけてくれているらしい。
「僕は褒美なんていらないよ、でも聞きたいことがあります」
僕はオールドオスマンの目を見ながらそう言った、オールドオスマンも僕が何を聞きたがっているのか薄々気づいているようだった。
「ワシに応えられることならなんでも応えよう、さぁ今夜はフリッグの舞踏会じゃ、主役は君達なのだから存分におめかししてきなさい」
どうやら今日の夜に学校でパーティーがあるようだ、キュルケは目立つことがすきなのだろう、主役と言われて妙に張り切っていた。タバサはまったく興味のないような顔をしている。
オールドオスマンが彼女達を学院長室から出て行くように促した、その際ルイズが不安そうな表情でこちらを見てきたが、僕は先に部屋に戻っててと言いオールドオスマンと話をすることにした。
「さて、君はワシに何を聞きたいのかな?」
オールドオスマンは手で長い髭を撫でるように触っていた。
「まず僕はこの国・・・いえ、おそらくこの世界の人間ではありません。地球の日本という国にいたのですが、ルイズによってこちらに召喚されたんです」
僕は今まで自己紹介をする際には面倒なこともあり、あえてこっちの世界の人間ではないことを伏せていた、だがこのオールドオスマンという人物は全てを見透かすかのような目をしていたため、誤魔化さずに真実を話すことにしたのだ。
「ほう・・・」
オールドオスマンは少し興味深そうに僕を見つめた。
「そしてあの破壊の杖は、僕の世界の武器です。一体あれをどこで手に入れたんですか?」
「・・・・あれはワシの命の恩人からもらったのじゃよ」
それは随分昔の話らしい、森の中でドラゴンに襲われていたオールドオスマンは魔法で何度も攻撃をしかけたのだがまったく歯が立たず、ついには逃げ場のないところまで追い詰められてしまった。死を覚悟したその時、すさまじい魔法がドラゴンを襲ったのだ、その魔法を放った人物は奇妙な格好をしており、手にはあの破壊の杖を持っていた。
「彼を見つけたときはすでに瀕死じゃった、ワシが礼を言わぬうちにこの世を去ってしまったのじゃ」
そしてその人物は破壊の杖を二本所有しており、彼が使用したという一本を彼と共に墓に埋め、もう一本を学院の宝物庫に保存しておいたのだとか。
「それでは、その彼がどこの誰なのかは分からなかったってことですか?」
「そうじゃ、だが彼の遺品ならこことはまた別の場所に保管してあったと思うがのう」
「本当ですか!?」
もし仮にその人物が僕と同じ世界から来たのなら、その彼がどうやってこちらに来たのか何か手がかりがあるかもしれない。昔のことらしいし可能性は少ないかもしれないが、少しでもいいので帰れるという希望が欲しかったのだ。
「うむ確か町外れの小さな村だった気がするのう、今度改めて場所を教えよう、さて君の聞きたいことはこれだけかのう?」
一番聞きたかったことは聞いたが、僕にはもう一つ気になっていることがあった。
「いえ実はこの召喚の紋章が気になっているんです、そもそも僕みたいな人間を使い魔にするのは異例だとか、なのに僕は使い魔の能力として武器を自在に操ることができます」
使い魔の能力は個々に違ったものというわけではなく、主と意思疎通ができたり、主の目となり耳となるなど決まったものがあるらしい。
僕が今まで見てきた使い魔達はどれも、人のような形状をしていなかった。すなわち武器を操ることのできる能力なんて、二足歩行で両手を自由に使える人間くらいしか効果がないのだ。にも関わらずこの能力が存在していた。
「この能力は一体何なんですか?」
「その紋章はミスター・コルベールが興味を示しておったのう、何でも今までに見たことのない紋章だとか、今度彼を訪ねてみるといいじゃろう。校庭の隅に彼の研究所がある、ワシが話を通しておこう」
「ありがとうございます」
直接有力な情報を得ることはできなかったものの、色々と話を聞くことができた。
僕が部屋に戻るとテーブルの上に一通の手紙が置いてあった。
「・・・・・読めない」
当然僕にこちらの文字は読めない、前に一度絵の書いていない本を読もうかと考えたが、タバサと話をしているうちにそれもすっかり忘れていた。
「デルフ、これなんて書いてるか分かる?」
背負っているデルフリンガーに見えるようにその紙を背中のほうに持ってくる。
「え~っと・・・衣装に着替えるから先に舞踏会の会場に行ってなさい。追伸、文字が読めないだろうからメイドにでも読んでもらいなさい。だってさ」
いや追伸書かれたところでそれも読めないんだけど・・・
手紙には舞踏会の場所までは書かれていなかったので、結局近くを通りかかったメイドさんを捕まえて会場まで案内してもらった。
舞踏会というのはいわゆるダンスパーティーだ、貴族の方々が交流を持つために開かれるものだったかな。ようするに僕のような人間には一生縁のない場所であって、会場内にいるのはどうも落ちつかなかった。
「パーティーで盛り上がってるっていうのに、相棒はベランダでお食事かい?」
「いいんだよ、周りの人はドレスとかスーツとか着てて立派だけど、僕はこれしか服ないし、逆に目だって仕方ないでしょ」
僕はデルフをベランダの手すりに立てかけ、いまだに違和感のある二つの月を眺めながら食事をしていた。
すると会場内が一瞬静かになり、今日の主役達がステージから出てきたのだ。
キュルケは皆にフーケを捕まえたことを自慢気に離していた。タバサはそそくさと人の間をすり抜け、テーブルに用意されている食事を頬張っていた。そしてルイズは普段馬鹿にしている人達から声をかけられ「一緒に踊りませんか」と誘われていた。
「ものすごい手のひら返しだな」
「貴族ってのはああいうもんよ、長いものには巻かれろってこった」
あまり理解したくない考え方だな、そしてルイズは複数の人間に声をかけられていたのに、それを全部聞き流し僕の方へと歩いてきた。
「こんなところで何してるのよ?」
「僕には場違いな場所だからね、こっちのほうがお似合いでしょ」
僕はちょっと皮肉っぽく言ってみた、なぜだか分からないけどルイズが声をかけられているのを見て少しだけイラついているのだ。
「・・・・主をエスコーするのも、使い魔の仕事よ」
ルイズが僕に向かって手を差し出してきたのだ。
「・・・?」
「おい相棒、娘っ子は一緒に踊ってくださいって言ってるんだよ」
「え?でも僕踊りなんて踊ったことないんだけど・・・」
「私に合わせないさい、さぁ行くわよ!!」
半ば強引に手を引かれ会場内へと足を踏み入れた。
「やっぱり僕場違いじゃないかな・・・?」
「気にしないで堂々としていないさい、あんたは私の使い魔でしょ」
僕はルイズと踊りながらオールドオスマンと話した内容を伝えた。
「そう・・・・ねぇやっぱり日本ってところに帰りたいと思ってる?」
「うん、やっぱり僕の居場所はあそこだからね」
「・・・そう」
ルイズの表情が少しだけ暗くなった。
「・・・・それでも、僕がこっちにいる間は全力でルイズをサポートするつもりだよ」
このときなぜ僕はこんなことを言ったのか分からない、別れのときが来たら悲しくなるだけなのに、それでもちゃんと本音を伝えないといけないと思ったのだ。
その言葉を聞いたルイズの表情は、気のせいか少しだけ明るくなっていた。
今回はセリフ多めだったかもしれません。