『夜』幻想に泣くユウガオ 作:ある日そこに居たであろうクマさん
唐突ながら説明せねばなるまい。
ここは幻想郷。
この世界では時偶にしか起こらない二つの珍しい事案が存在する。
一つ。外来人の幻想入り...即ち、外の世界の人間が博麗大結界を通り抜けてこの幻想郷に入ってきてしまう事。そもそも幻想郷には幻想入りというものが存在しており様々な物や動物が外の世界から流れ着く事が多々ある。だが、それ以外にも人間が幻想入りする場合もありその場合には大抵の人間が妖怪に襲われて絶命。もしくは危険地帯に入り、また絶命となる。まあ、運良く人里か博麗神社に赴きなんとかなる場合もあるのだが...
今回大事なのはもう一つ...
二つ。
これは幻想郷を突如包んだ赤い霧とその元凶の吸血鬼。そしてそれを解決すべく動き出した博麗霊夢と霧雨魔理沙の戦い...
ではなく...
「ねえ...貴方、だあれ?」
「?俺の事言ってるの〜」
暗き夜...
輝く満月を背に浴びる二人の怪物の出会いを描いた物語である。
ここに開幕!
そして話は今朝...
紅い霧が広がり始めた頃まで遡る...
幻想郷 博麗神社。
そこには...
「ええ〜もう眠たいよぉ」
「ダメよ。今回ばかりはアンタも同行して貰うから」
「おいおい、霊夢」
布団に包まりその場でそっぽを向くロンとそれを強引に引っ剥がそうとする霊夢。そしてそれを開かれた様子で見守る魔理沙の姿があった。
「おい、霊夢そのくら「アンタは黙ってなさい」はい、すいません」
そして魔理沙もあまりに強引な霊夢を止めようとしたが敢えなく失敗。強制的に覇王色ばりの威圧で黙らされてしまった。
「アンタねえ、この間も私が留守の間に人里の奴等を連れ込んで料理を振る舞ったって紫の奴から聞いたわよ!アンタを残しておいたらまた勝手に私抜きで宴会を開くに決まってる!ならアンタを連れて行って異変を解決してから宴会を開けば誰も不幸にならないわ!」
「お前それでロンを連れて行こうとしてたのか!?」
「知らないもんッ!!あれは紫お姉ちゃんが勝手に料理作ってって言ったからやっただけだもん!そもそも不幸になるのは霊夢ちゃんだけだから問題ない!!」
「なっ何ですってえぇぇぇッッッ!?」
そして霊夢が今回ロンを異変解決に連れて行こうとした理由も明らかとなった。それ即ち以前に自身が留守中の間に八雲紫と人里の人間がロンの手料理を自分の神社で自身の分まで全て完食しそのまま帰っていったのが不服だったらしい。要はロンを残していると皆が自身の居ない間にまた勝手に飲食をして帰り、尚且つ自身の料理が残らない。故に最初から料理を作るロンを同行させ異変を解決してから宴を行えば問題は無いという事だった。
そうして役数分。折れたのは...
「もう!分かったよッ!行けば良いんでしょ、行けば!」
「フン。分かれば良いのよ!」
「普段そう簡単に起きないロンを無理矢理起こすとは...霊夢の執着心に私もびっくりだぜ」
そうして魔理沙は箒にまたがり、霊夢は自身の能力で空を飛ぶのだが...
「あれ?アンタ空は飛べたっけ?」
「はあ!?まじか...」
(こいつ、今まで何年ロンといんだよ。確か5年以上は確実に一緒に居るはずだが...)
その時、霊夢が自身の記憶からロンが空を飛んだ姿を見た事がない事に気づいた。そしてそれを聞いた魔理沙はため息を吐きながら呆れて、そのまま自身の箒にロンを乗せようとするのたが...
「おい、ロン!飛べねえなら私が」
「あっ大丈夫だよ」
すると、ロンはその身をふわりと宙に浮かせそのままゆっくりと空中に舞った。
尚、そんな光景は霊夢はもちろん。魔理沙も初めて見ており...
「えっアンタ」
「飛べたのか!?」
「そうだよ。霊夢ちゃんには前に言ったけど、俺は月そのものみたいなものだから月が浮いてたら俺も浮くっていう...要は月に起こった事や月に関する事は何でも出来るっていうか。まあ、俺も詳しい事は分かんないけど」
「「はあ!?」
これが最夜のロン。
彼の大きな特徴の一つ。
これを使う事で彼は月が空にあるから自分も空にある。月が光っているから自分も光る、などなど自身と月を同一存在として扱う能力を持っている。故にその逆も然りなのだが...
「まあ、そんな事は置いといてさぁ」
「えっでも」
「魔理沙、十分驚いたけど今はそれどころじゃないわ!」
「お前が言うな!」
そう、今は異変解決が何よりも優先!故にそれどころではない。一刻も早く異変を解決する。
つまり...
「全ては宴の為に...よ!」
「お前、早く晩飯が食いたいだけだろう!」
「そんな事ないわよ!ほら、急いだ、急いだ!!」
「ちょっ待てよ霊夢!」
「ねえ、置いていかないでーーー!!」
そうして三人は飛び立って行った。
異変の元凶。
紅魔館へ...