もし個性の伸ばし方を指南してくれる教本があったら 作:毎日がチートディ
「ねぇねぇ、どうして私、空を飛べるんだろう、不思議」
凄いねって昔はみんな褒めてくれた。
「ねぇねぇ、お母さん、どうして私の個性って捻れてるんだろう、不思議」
どうしてだろうね、って昔は一緒に考えてくれた。
「ねぇねぇ、どうして○○ちゃんは雄英受けないの? 不思議」
ずっと仲良しだったからずっと一緒に居られると思ってた。
「ねぇねぇ、どうして・・・」
『おまえさぁ、なんでも出来る“個性”だからって、そうやってウチらの事見下してるんでしょ』
「ねぇねぇ、どうして・・・」
『あいつは所詮俺たちとは住む世界が違うもんな』
「ねぇねぇ、どうして・・・」
『五月蠅い!!! どうせあんたみたいな優秀な人には私の気持ちなんて分からないのよ!!!』
「ねぇねぇ、どうして・・・」
『無知なフリして裏で私たちのこと嘲笑ってるんでしょう』
「ねぇねぇ、どうして・・・」
『雄英高校に推薦特待生として受かるなんて先生は鼻が高いぞ! おまえらもこいつを見習ってもっとマシな高校に受かるように頑張れ! そんなお前達に先生、良い参考書を貰ってきたんだ、この本は・・・』
「ねぇねぇ、どうして・・・誰も、私と話してくれないの?」
『ヒーロー科に入学おめでとう! 今年はちょっと先生もビックリするような事があったけど、これなら団結力はバッチリだな!』
「・・・・・・・・・なんかここでも同じ、不思議」
『今から模擬戦を行う! 特待のお前は・・・』
「どうせ・・・また私は一番になって、疎まれる」
そう、思ってた。
『はっ! どれだけの物かとおもってたらこの程度か』
『中学でアレだけ俺らのことを馬鹿にしていた癖に、まさかこんなに弱いだなんてな!』
『特待生さんよ、もしかしてお前、持ってないのか、これ?』
『おいおい、教本は知らない奴には見せちゃダメなんだぜ、まぁヒーロー科1年で教本貰ってないのお前だけみたいだけどな、ハハハハハハ!!!』
手も足も出なかった。
クラスの生徒は、全員同じ中学のクラスメイトだった。
『ほら、読めるか? これが教本だ。才能があるヤツだけが読めるんだってさ』
私の目の前に広げられた本。
“貴方にはこの本は必要ありません。貴方は既に捻れています”
「私には・・・必要ない?」
『やっぱりそうよ。私たちみたいな選ばれた人間しかこの本は読めないの。あんたは選ばれなかったのよ』
倒れて立ち上がれない私の頭を、幼なじみの○○ちゃんが踏みつけながら言った。
『本当、何時も何時も上から目線でウザかったのよ。でもこれでスッキリしたわ』
「不思議・・・なんで?」
『私、あんたのことが昔からキライだったからね』
私は・・・捻れている。
その日、私の世界は捻じ曲がった。
「結局、みんなの事、なにも知れなかったな」
私はもっともっと捻れていったよ
もうなにも知れなくて良い。
世界なんてどうせ、捻れている。
雄英高校地下100メートル、特別高耐久トレーニング室。
通称、独房。
その部屋の隅にある、自分のベッドの上。
私は今日も同じ夢を見て目が覚める。
何時もと違うのは、久々に教師からの呼び出し音が鳴っていること。
『起きたか』
誰だっけ? ああ、相澤先生か。
「何? また公安からラブレターでも届いた?」
何やら難しい顔をしている先生の顔を見て当たらずとも遠からずって所かな?
なんか海外派兵用に広域戦闘能力者を欲しがってるみたいで、去年から熱烈なアプローチが来ている。
公安のおかげで未だに雄英生で居られるのはありがたいけど、戦争に行くのはちょっと違うよね。
先生も反対してくれているけど、でもきっと最後は無理矢理行かされる事になるんだろうな。
流石にタルタロス送りをちらつかされたら・・・ね。
ヒーロー、か。
どうせ私みたいな捻れた女には向かない職業だったってことか。
『いや・・・違う。誤解させてしまったな、すまない』
相澤先生は私の顔を見て、慌てて否定する。
「まぁどうでもいいけど、ちょっと待ってね。お薬飲むから」
人と話すときは心を落ち着ける薬を飲まないと。
私はシンクに置いてある薬瓶の蓋を個性で開けて、中から薬を取りだし、粉砕してから私の口の中に直接流し込んだ。
飲むときに砕くと効きが早くて便利。
『今日はお前に頼みがあってな、担任にも許可は貰ってある』
「私に頼みって珍しい。どこのヴィランを殺してくれば良いのかな? 噂のヴィラン連合かな?」
『そんなことを生徒に頼む馬鹿はいない』
「公安は頼みたがってるみたいだけどね」
その言葉を聞いて相澤先生の顔がまた厳しくなる。
『俺の目が黒いうちはお前にそんなことはさせない、信じてくれ』
「信じる? 私を? 何それ? まぁいいや、用件は何?」
どうせこいつも口だけだろう。
『実は・・・・・・・・・』
久々に独房から出て、戦闘訓練場へと私はやってきた。
「おい、なんかスゲーエロい美人なんだが」
「バッカ、峰田。さっき聞いたろ、先輩なんだから少しは控えろって」
「タッパとケツがデカい女がタイプだ」
「砂藤、お前、キャラ変わってないか?」
「ありゃ浮いてるから身長デカく見えるだけだろう」
「無表情でクールだな」
「何やら彼女からは闇の波動を感じる。もしや同族か?」
ワイワイと私を見ては騒がしくおしゃべりを続けている。
「・・・ねぇねぇ。相澤先生。これなに?」
もしかして、精神負荷に対するトレーニング?
だとしたら凄く効果的。
「よし、殺そう」
「いや、殺すのだけは勘弁してくれ。ただ再起不能にさえしなければとことん叩きのめしてくれて構わない」
「はぁ・・・手足捥ぐのは勘弁してあげる」
でも・・・イライラが止まらない。
あの子達を見ていると、胸がムカムカしてしょうがないのだ。
お薬飲んできて良かったな。衝動的に殺しちゃうところだった。
「最初に言っておく、二人だけ別格が居る」
うん、なんとなく分かる。
あのおっぱい強調したエロい格好の女と、後ろでのほほんとしたちっこい女の子、だね。
でも、他は有象無象だ。
「お前ら、これからお前らの先輩との模擬戦だ。彼女はこの雄英高校では文句なしのトップだ。胸を借りるつもりで全力で戦うように」
相澤先生の声に、一人の生徒が私に向かって前に出てきた。
「あー、先輩なんだよな。悪いが俺はこれでもヴィラン相手の実践もあるし、今更生徒相手ってのものな。だからまずはこっちだけで相手させて・・・へぶべぼっ!」
「焦凍ぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーー!!!!」
首元を掻きながら余裕ぶった紅白頭のおめでたい馬鹿をとりあえず捻り飛ばした。
なんか、練習場の隅っこからこっちをこっそり覗いていたエンデヴァーが大声で叫んでいるけど、なんで居るのナンバーツー。不思議。
とにもかくにも何もかもが私の神経を逆なでする。
「・・・ねぇねぇ、なんでなんで? なんでそんなに弱いのに、そんなに強気なの? 不思議」
紅白頭が倒されたのを見るや、トンガリ頭やボサッとヘアーやら手が沢山あるヤツやら、とにかく一斉に飛びかかってくるが・・・まぁ関係ない。
ただ一言唱えるだけ
「凶がれ」
それだけでいとも容易く、そいつらの胴体が捻れて倒れ伏す。
「ガッ・・・カハッ・・・んだ・・・これは・・・」
トンガリ頭はまだ意識があるようで、ユックリと身体を起こそうとするが、「凶がれ」手足を丹念に捻じ曲げてひれ伏させる。
そうそう、そうやって地べたに這いつくばって仰ぎ見ろ。
『そうやってウチらの事見下してるんでしょ』
別に。
ただ、○○ちゃんが、みんなが、そういう私を望んでいるなら。
「有象無象の塵芥ども。お勉強の時間だよ」
私は所詮選ばれなかった。
キラキラとした才能の子達。
倒れた子達を守るように連携して私へと攻撃を放ってくる。
私には、誰も居なかったのに。
飛んでくる攻撃は全部私の波動で相殺し、丹念に捻っていく。
最近は波動はあまり使ってないけど、手加減するのには便利。
「みんな! もっと連携を意識だ!」
メガネが何やら苛立つので、首を軽く捻って昏倒させる。
ゴキュッと良い感じの音が鳴ったけど、あの程度なら渡我と婆さんが上手く治すだろう。
煩わしい羽音は段々と数を少なくしていく。
恐怖の混じった眼差し、苛立つ。
命乞いした○○ちゃんの歪んだ顔を思い出す。
あの時みたいに、手足を捻じ切ってしまわないように、加減しないといけないのがそもそもイライラする。
どうせ、お前達も、私の事なんて選ばないんだろう。
私はどこまで行っても一人だ。
しょうがない、捻じ曲がってるんだから。
名前も、個性も、性根も、人生も、全てが捻れているのが私だ。
私は捻れている。
私の世界は捻れている。
だから、みんなも捻れてしまえ。
「凶がれ」