もし個性の伸ばし方を指南してくれる教本があったら 作:毎日がチートディ
Side:死柄木弔
ヴィラン連合アジト、そう呼べば多少は箔がつくが、どう言い繕ってもここは廃墟だ。
ここはとある山の中にある半ば崩れかけた寂れた廃ホテル。
遙か昔、バブルと呼ばれた日本が栄えに栄えた時代に行われたリゾート開発に先立ち建てられたものの、開通予定だった駅やそれに伴う街がバブル崩壊により頓挫してしまったため、閉鎖し放棄されたままで忘れ去られた建物だった。
元々人里もない山奥を切り開いて開発する予定だったため、人里までは道無き山を一つ二つ越えないと辿り着くことは出来ない。
お尋ね者になった俺たちが隠れるには実に都合が良い場所ではある。
水も電気も来ていない場所ではあるが、補給に関しては転移個性の黒霧がいるし、その黒霧が運んでくる燃料で自家発電機を使うことにより辛うじて生きていける。
DIYの本を買ってきて不格好ではあるが、雨漏り対策などを施して寝床は確保できた。
先生が囚われてから不幸なことが色々あり、俺は残った仲間を引き連れてなんとか逃げ延びてはこれたが、これから一体何を成すべきか。
不幸中の幸いは仲間が誰も離反しなかったことだろう。
こんな俺に付いてきてくれた頼もしい仲間。
長年俺に連れ添ってくれている黒霧。
そして・・・
「にくっキレイなおにくのだんめん!」
「グガガ・・・主・・・歯、刺サル。痒イ」
跪いた格好のギガントマキアと、その巨体にひたすら歯を突き刺している未だに拘束服姿のムーンフィッシュ。
以上三名。
ダメだ・・・話が通じる奴、黒霧しかいない。
ギガントマキアはまだしも、ムーンフィッシュの奴は爆豪を浚ってきたときも勝手に殺そうとするし、口の中にスピリタスを突っ込んで酔い潰すまで大変だった。
林間学校襲撃の時はガス使いの教本持ちがいたけど、あいつは生徒を死なせないように無効化する為だけに先生が多額の報酬を出して臨時で雇った傭兵だからな。
先生が居ない状況じゃ雇い続けるのは無理だ。
そもそもあいつは中東にて国単位で殺し回ってて世界中から生死問わずで指名手配され、そして都市まるごと犠牲にした核攻撃をされても生き延びてる超大物ヴィラン。
あんなイカれ野郎と一緒に居たら命がいくつあっても足りやしねぇ。
速やかに中東までお帰り願ったよ。
そんなわけで、こんな狂人ですら得がたい人材だ。
ぶち切れそうになるのを必死で押さえて遇しているが、時々本当にこれでいいのか悩んでしまう。
黒霧は個性の都合で色々手配するために各地を飛び回っているので、俺は日がな一日こいつらの相手をしないといけない。
まだ幾ら切っても大丈夫なギガントマキアがいるからいいが、居なかったら俺は早々にゲームオーバーを選んで居ただろう。
戦力供給取引をする予定だったヤクザ組織は何故か壊滅してるわ、
先生から預かって溜め込んでた脳無はどっかから来たキチガイヴィランに全部食べられるわ、
そのヴィランに危うく食べられそうになって(あと一人居た未熟だがマトモな仲間と黒霧の半身が喰われた)半泣きで逃げ出すことになるわ、
一体俺が何をやったというんだと問いただしたくなるぐらいの不幸が立て続けに起きて、この有様だ。
あそこであいつが喰われなきゃ、一緒にLOLでもやって現実逃避出来たのにな・・・。
「にくうううううううーーーー!!! おにくううううううう!!! きれいなだんめんがみたいのおおおおおお!!!」
マジで挫けそう。
先生、俺、本当にこのままで良いんだろうか。
適当な戸籍でも買ってフィリピン辺りに高飛びして畑でも耕そうかな。
そんな欲求に後ろ髪を引かれつつ、俺はムーンフィッシュを宥めるために捕獲しておいたウサギを差し出すのだった。
ガスの個性って普通に考えて最強クラスだと思うの。