もし個性の伸ばし方を指南してくれる教本があったら   作:毎日がチートディ

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個性婚

Side:Mt.レディ

 

 

「焦凍ぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーー!!!!」

 

「ヒッ!」

 

 

観客席に突然大音量の叫び声が聞こえ、思わずビクッとしてしまった。

誰だ、こんなところで騒いでる馬鹿は。

ここはヒーロー仮免許試験会場。

学生達がヒーローになるべく、真剣に試験に挑んでいるここで見学者達が騒ぐことはあまり好ましくはない。

そもそも、一般人は入れないのだから、入っているのはそれなりに身分のある人か私みたいなヒーローのはず。

 

 

そんな非常識な事をするのは誰だと、半分好奇心で大声の主を探してみると、なんとそこにいたのは頭を抱えて蹲っているエンデヴァー。

 

 

一体何やってるのよ、ナンバーツー。

 

 

周りにはエンデヴァー事務所のサイドキックが勢揃いで『頑張れ!焦凍坊ちゃま』『No.1だ!焦凍坊ちゃま』だとか書かれた旗や幟を抱えている。

そんな彼らも、何処となく気まずそうな顔で蹲って嗚咽をあげるエンデヴァーの姿を黙って見ている。

 

そういえばエンデヴァーの息子である轟焦凍が先ほどイケメンポーズを噛ました直後に竜巻で空高く巻き上げらていたっけ。

視線を会場に戻すと、件のお坊ちゃまは瓦礫の山に犬神家の如く突き刺さっている。

そういえば、雄英体育祭でもイケメンポーズでぶっ飛ばされてエンデヴァーが叫んでたっけ。

 

 

あの坊ちゃまは1戦目のドンマイ勝利を見た後、イケメンなので職場体験に呼ぼうと考えていたが、2戦目のアレでそっと無かったことにした。

今日はそのお坊ちゃまの代わりに職場体験に来た丁稚君が仮免許試験だから、一応コッソリと応援に来ていた。

あの丁稚君は個性が便利だし、それになかなかに骨のあるエロ河童なので、インターンにも呼んでこき使うつもりだ。

それはともかく、エンデヴァーが親馬鹿だってのは話に聞いていたが、ここまでとは。

サイドキック達もいたたまれなくなったのか、コソコソと会場から逃げるように出て行く。

 

 

エンデヴァーはしばらくの間、慟哭をあげていたが、やがて静かに立ち上がり、羽織っていた『轟焦凍』のキメ顔とLOVEの文字が入ったキラキラ輝く法被を脱ぐと、特注製っぽい50メートルもある横断幕を個性で燃やし尽くし、観客席へと静かに座り込んだ。

そういえば、エンデヴァーの突飛な行動に目が向いて気付かなかったが、彼の隣に座ってるの、オールマイトだ。

オールマイトすら影が薄くなるなんて、親馬鹿ヒーローランキングがあるならあんたがナンバーワンだよ。良かったね、エンデヴァー。

 

 

落ち込んで肩を落としているオールマイトが、困った顔で励ましている。

何このレアな光景。こんなの金払っても見れないわよ。

このネタチャンス、逃すまい。もしかしたら夏コミの新刊に間に合うかもしれない。イケメンも良いが、脂の乗った中年マッチョ男同士の暑い友情も大好物です。

そう思って、私はコッソリと彼らの後ろへと忍び寄る。

 

 

「あの、エンデヴァー・・・轟少年のことは」

 

「言うな。こうなることは想定の内だ。あいつは個性については天才だが、勝負事には向いていない。むしろこれでヒーローを諦めてくれた方が安心する」

 

 

オールマイトが項垂れるエンデヴァーの肩に手をやり優しく声をかける。

これだけで既にご飯3杯行けます。ゴチになります!

興奮で思わず鼻息荒くブヒりそうになるのを押さえて、空気に徹さないと。薔薇の間に挟まる雌豚として有識者に叩かれてしまう。

だってほら、周りには他にも二人をチラチラと見ている女性ヒーローや女教師達の姿がそこかしこに。お前ら、自分の教え子達を応援しろよ。

私? 私は良いんだよ、あのエロ河童はいざという時は頼りになるし放っておいても受かるだろう。それに放置プレイの方が喜びそう。キモッ!

 

 

「昔はもっと安全だった気がするんだがな。ここ20年ぐらいで何かインフレが酷くないか。俺の学生時代の頃は焦凍ぐらいなら余裕で主席だったぞ」

 

「個性特異点。そんな説が唱えられているのは確かだ。だが、それもあるが、やはり問題はアレだろう」

 

「教本、と言う奴か。昔はそんな都市伝説、全く信じちゃいなかったんだがな」

 

 

オールマイトはタイツズボンの中に手を突っ込んで、そこから本を取り出した。おいちょっと待て、どこから取り出した。今日のオールマイト、やけにモッコリしてるなと思っていたが、そんなところに収納してたのか。

取り出した本をエンデヴァーに差し出すと、エンデヴァーは少し嫌そうな顔で端を二本指で摘まむようにして受け取る。

 

 

「これが教本か」

 

「ああ、八百万少女に借りてきた。先日クラッシャー伊東に最新にアップデートして貰った特注品だそうだ」

 

「少し匂うな・・・可哀想に」

 

 

エンデヴァーは受け取った本を開く。

私もちょっと興味があったので後ろからコッソリ覗くと、『巨大化』個性の可能性について等、私に関係のありそうな事が沢山書かれている。

何故だろう、見開きにしている2ページ分しか見えないのに、もう何百ページも読んだように情報が頭の中に刻み込まれていく。

それを見ていたのは恐らく2~3秒にも満たない時間だっただろうに、私はもう数日、いや数年は読んでいたような錯覚を覚えた。

 

 

エンデヴァーは、見開きのページを面白くなさそうに見やった後、放り投げるようにオールマイトへ返す。

 

 

「ふん、俺には必要ないそうだ。何故ならお前はエンデヴァーなのだから、だそうだ」

 

 

――ーーああ、やはりか。その本は、君には興味を示さないだろうと思っていたよ。

 

 

いきなり聞こえてきた声に、オールマイトとエンデヴァーは身構える。

 

 

いつの間にか、二人の前の席に二人の女性が座っていた。

 

 

「君は・・・もしかしてクラッシャー伊東? そして白い少女か」

 

 

オールマイトの問いかけに、しかし女性は少し笑うだけで返答を返さない。

 

 

「今、本が興味を示さない。そういったな。この本は君が読める相手を選んで居るわけじゃ無いのか」

 

「はは、そんな面倒なことするわけないじゃないか。そもそも仕事をサボるために作ったもんだぞ」

 

 

手裏剣の髪飾りを付けたポニーテールの女性が、恐らくオールマイトがクラッシャー伊東と呼んだ人物なんだろう。彼女は肩をすくめながら答えた。

 

 

「最初は魔法少女を育てることも面白かったんだけどね。弟子にしてくれっていうやつが際限なく来るから、対抗策として作った代物だ。スカウター女の魔法のゴーグルの機能を抽出して、更にアマデウスシステムを使って僕のゴーストコピーを盛り込んだ魔法の本だ。難点は僕が育成しなくても勝手に育つような奴には興味を示さないから読めないってことだな。僕の世界では普通に出版されていて、書店のオカルトコーナーに並んでいるぞ」

 

 

おかげでバケモンみたいな魔法少女がボコボコ生えてきて地獄絵図みたいな殺し合いが一時期あっちこっちで勃発してウケた、と腹を抱えて笑い声をあげるクラッシャー伊東。

 

 

「なんで、そんな酷い事を・・・よく笑っていられるな」

 

 

オールマイトはこめかみに血管を浮かび上がらせ、怒りを滲ませた声を出す。

 

 

「無秩序に力をばら撒けば、無駄な争いが増える。異能解放戦線なんて思想が昔あったが、誰もが力という武器を持ってしまえば無駄な血が流れてしまう。戦うのは私たちヒーローだけでいい」

 

「生まれ付き魔法少女擬きのイカれた世界の割には甘っちょろいよな。僕の世界では力が無いってのは、生存権が無いって事だよ。ヒーロー? そんな真っ当な考えのやつ、絶滅危惧種並みのレア度だぞ」

 

 

呆れたように肩をすくめるクラッシャー伊東。

 

 

「うちの白いのも、まぁちょっと愉悦気味だが、他者を救うことを生きがいにしてヒーローのような動きはする。ほとんどマッチポンプばかりで白き災厄なんて呼ばれちゃいるがな」

 

「褒められると照れちゃいます」

 

「ちっとも褒めちゃいないんだがなぁ。まぁいい。こんなんでもまだ真っ当な部類なんだよ。魔法少女ってのは、思春期にさしかかった少女が選ばれる。まぁ僕みたいに30超えた子持ちのババァが選ばれるなんてことも稀にあるが、大体は多感な時期の少女ばかりだ。そんなガキどもが人間よりも強い肉体と特殊な魔法という力をいきなり与えられて、さぁご自由に、なんて言われたらどうなると思う? 8%、それが答えだ」

 

「8%? 何のことだ」

 

「新人魔法少女の1年後の生存率さ」

 

「なっ!」

 

「魔法少女は一定区画の中から纏めて生み出され、そして選抜される」

 

 

この人達は一体何の話をしているの?

魔法少女? 異世界? 生存率?

意味が分からない。だけど、頭の中に浮かぶ本が、魔法少女とはそういう存在だと、そう諭してくる。

地獄のような、この世界。生き残るなら強くならないといけない。私はもう大きく出遅れているのだから。

 

 

「さて、お勉強の時間だ。そもそも魔法少女というのは僕の世界では色々種類がいるが、例えば僕やこの白いのは魔法の国によって作られた人工の魔法少女だ」

 

「人工、ということは、先天的、もしくは自然発生した魔法少女もいるということか」

 

「自然発生というとちょっと違うかもしれないが、野生の魔法少女、もしくは原生魔法少女なんて学術的に呼ばれている存在がいる。宇宙生命体インキュベーターによって生み出された魔法少女だ。その魔法少女はインキュベーターによって願いを叶えて貰う代わりに宇宙の養分になる魔法少女という存在に変成させられる。僕たち人工魔法少女は、魔法の国がそのシステムを模倣して作り出したもの、ということに一般的にはなっているな」

 

「一般的?」

 

「ここからは色々と因果関係とか時系列とかがしっちゃかめっちゃかなんだが、昔々、僕の世界で昭和と呼ばれた時代の事だ。インキュベーターによって一人の魔法少女が生み出された。手塚オサムという少年が魔法少女になる対価としてインキュベーターによって叶えて貰った願いが『日本の漫画、アニメーション、娯楽作品が世界に広がる夢のような世界になってほしい』だそうだよ。その願いは正しく叶えられ、遙か過去から遡り、ありとあらゆる日本の漫画、アニメ、ゲームなどの娯楽作品が正しく世界に融合されたそうだ。魔法の国も、その願いによって産まれた、いや存在していたとされたんだよ。根源接続者の愛歌嬢や、混沌の海と融合したリナ=インバース嬢、宝石の翁など、様々なソースから辿り着いた世界の真実って奴だ」

 

「詳しくはないがマルチバース理論とか、そういう話か? それを私たちに話して意味があるとは思えないが」

 

「別に、君たちに聞かせるために話してるわけじゃないさ。僕たちの存在というのは意外と脆くてね。成り立ちからして歪な世界だからか、上位の世界から認識されることによってなんとか成り立っているのさ。そう、今も見ているんだろう。君に話しかけているんだ。僕たちは確かにここにいる。だがそれは君たちが僕たちを観測してくれるから存在しているとも言える。世界層理論、とも呼ぶらしいね。より上位の世界の君たちのことだ。僕は君たちにあっと驚くような娯楽を提供しよう。なぁに仕込みは上々さ。楽しみにしていてくれ給え」

 

 

そう、私たちは世界層の壁を超えないといけない。何時までも娯楽の奴隷なんかじゃない。上位存在の世界まで這い上がって――――――え、何を考えていたのだろう。よく分からない。

 

 

「何の話をしていたかな、そう、魔法少女ってのは魔法の国が作り出した殺し合いの道具なのさ。だから、先ずは生産された道具で、性能試験をして、より兵器として役に立つ物を選出するんだ。それが魔法少女になったばかりの少女達に与えられる最初の試練、新人魔法少女たちによる殺し合いさ。そこでまず半数は命を落とす。なんとか生き延びた新人達もその後、先輩魔法少女の経験値として襲われ、更に数を減らしていく。1年後、兵器として成長して魔法少女の人数は平均8%だとされていた。僕たちが教本を広めるまではね」

 

「・・・なんだ、なんか色々大事な話を聞いた気がするが・・・殺し合いによる選別、それによる被害を減らすために君の教本がある、という訳か?」

 

「最初の選別の殺し合いまで完全に防げるわけではない。それこそ魔法の国を全て掌握している訳ではないのでね。だが、新人魔法少女の生存率は大幅に上がっているからね、弱者救済に多少は寄与しているはずさ。ところで話は変わるが、エンデヴァー、実は君には期待しているんだぜ」

 

 

クラッシャー伊東らしき・・・いや、もうクラッシャー伊東でいいだろう。今まで前を向いてこちらに見向きもしなかった彼女は、空を見上げるように首を上に向けながら、後ろに居る私たちを振り返る。

 

 

「だが、残念ながら、今の君のままでは死んでしまうだろうね。地力に差がありすぎる」

 

「何を・・・言っている。誰が相手だろうが、俺は負けん」

 

「いやぁ、ポークビッツ君のお父さんだから、期待はしているよ。何しろ轟炎司君、つまり君は、炎を司り世界を轟かせる存在だ。でも、君はまだそこへと到っていない。実に残念だ」

 

「ポークビッツ? 誰のことだ」

 

「君の所の長男君だよ。ほら、見てご覧」

 

 

クラッシャー伊東が、林檎製っぽい端末を差し出してきたので、オールマイト達の後ろからコッソリ覗き込んだ。

 

 

「アッシー君に先週撮って貰った風呂上がりのポークビッツ君だ。実に名前通りだろう」

 

「あら、可愛い」

 

 

白髪のイケメン男子が湯上がりの髪をタオルで拭いているのだが、その彼の股間には2センチにも満たない可愛いベイビー君が。それを見て、思わず声に出してしまった。

 

 

「・・・・・・・・・燈矢・・・どうしてこんな事に・・・」

 

「エンデヴァー・・・いや、男ってのは大きさじゃ・・・だが、これはあまりにも酷い」

 

 

そりゃオールマイトもエンデヴァーも、ヒーロースーツのモッコリ具合からとても素敵なご立派様をお持ちだろうから、それと比べるととても可哀想だよね。

 

 

ほらほら、可愛いでしょう。エンデヴァーさんちの長男君のポークビッツ君だよ、とクラッシャー伊東は他にも興味津々で覗き込んできた周りの女性達へと画像を見せて回っている。可哀想に、ポークビッツ君。さっきの犬神家と併せて早くもツブヤイターやヒーローネットワークなどのSNSでトレンド入りしている。

 

 

「確かMt.レディ、と言ったな、君は。巨大化の個性を持っている。そうだろう」

 

 

コッソリと逃げようとしたが、エンデヴァーに後ろから両肩を掴まれる。

 

 

「誠に遺憾だが、君の個性、いや、燈矢と結婚してくれないか。なぁに、直ぐに話は付ける。なんならあいつもそろそろ彼女欲しいとかこの前言っていたしな。巨大化個性、いいじゃないか。これで孫の息子は安泰だ。巨大化個性、ちゃんと遺伝させてくれたまえ」

 

 

どうしよう、普通に考えれば玉の輿なんだけど、非常に地雷っぽい。というか子供作れるの、そのサイズで。精通はちゃんとしてるの? 夜の営みが凄く不安。入らないでしょ、それだと。

 

 

「大丈夫、巨大化個性があるんだ。いざとなったら、巨大化した君の中に燈矢をねじ込めばなんとかなる」

 

「変態だあああああああ!!!」

 

 

何を言い出すんだこのエロ親父が。エロ同人じゃないんだぞ。何を考えてやがる。今日日AVだってそんな設定・・・そりゃたまに依頼くるけど。全部鉄拳制裁してるっての。

 

 

「ふははは、良いじゃ無いか。白いのに未来を確認させたが、ちゃんと巨大化個性、子供に受け継がれるってよ。ポークビッツ君の炎の個性と一緒にな」

 

「おお、それはいい。よし、決まりだ」

 

「いや、ちょっとエンデヴァー。確か白い少女の個性は、困った人の声が聞こえるって能力だった気がするんだが」

 

 

オールマイトのその言葉に、エンデヴァーは戸惑った顔を白い少女へ向ける。

 

 

「えっと・・・確かに巨大化個性と炎の個性はちゃんと引き継がれていましたよ。正しくは、息子さんのミニマムサイズのアソコが巨大化して、その先端から炎が噴き出すっていう個性になってましたが。ある意味大人気のヒーローになって、息子さん、困っているようですね。ちなみに必殺技名は『ティロ・フィナーレどうにでもなーれ』。どうやらマミさんが伝授したようですね」

 

「そんな変態な息子嫌すぎる!!! 私だって困るよ!!!」

 

 

小中学生の男子には確かに馬鹿ウケ間違いないだろうけど、生き恥すぎるって。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ポークビッツよりは・・・有りか?」

 

 

無しだよ、呆け!

そもそも、さっきの話よく聞け、個性使ってないときはミニマムサイズだって言ってるだろう。ちゃんとポークビッツも遺伝してるって。

巨大化って個性からして、普通の膨張率じゃないんだから、突っ込んでるときに巨大化したら殺人事件発生だよ! 実践で役に立たないよ、そんなの!

 

 

「・・・ごめんなさい。諦めた方が良いですよ。もう、未来、確定しちゃったみたいです。色々と乱数調整試みたのですが、どのルートでもポークビッツさんとの結婚が確定しちゃってます。これが俗に言う、大魔王からは逃げられないってやつですね。あ、でも生存フラグは立ったので、そういう意味ではセーフですね」

 

 

どうやらエンデヴァーは大魔王だったらしい。正確には変態大魔王か。

外堀からガッツリ埋められて、結婚までノンストップとのことだ。終わった・・・。

 

 

「話を戻そう。エンデヴァー。君の今の力では今後のインフレにはついていけないだろう。この先、ドラゴンボールのサイヤ人編以降並みにインフレしていくだろうからね」

 

「ドラゴンボール、とやらは分からんが、さっきオールマイトとも話したが、確かにここ数年の個性能力は大幅に強力になっているな。だが、私も黙ってそれを受け入れる気は無い。弱いなら、強くなるまでだ」

 

「さすが、エンデヴァー努力だな。だが、現実としてそれが追いつかない状況がこの先やってくる。そういう時のため、サポートアイテムとかを用意するのはヒーローとしても間違っちゃいないだろう。これを使うと良い」

 

 

クラッシャー伊東がビキニパンツの中から(お前もか)一枚のカードを取り出し、エンデヴァーへと差し出した。

 

 

「クラスカードと言ってね。英霊の力の一端を写し取った代物で、それを持って夢幻召喚インストールと唱えることで、一時的にその力を身に宿すことが出来るマジックアイテムだ」

 

 

そのカードには鎖で繋がれた髪の長い人物の意匠が描かれ、『Avenger』と記載されている。

 

 

「その中でも、これはかの宝石翁に特注で作って貰ったカードでね。それを夢幻召喚インストールすれば異界の大英雄、光の巨人を倒した“ゼットン”の力を“永続的”に得ることができる。凄まじいほどの戦闘力、強靱な耐久力、多彩な超能力、そして光の巨人すら倒したゼットンの必殺技である火球を使えばどんな敵だろうが一撃で倒せることを約束するよ」

 

 

何その超便利なアイテム。チートじゃん。

 

 

「下らん」

 

 

だけど、エンデヴァーは一考もせずに断った。

 

 

「良いのかい、エンデヴァー」

 

「愚問だ。それに貴様自身が言っていただろう。俺はエンデヴァー努力だと。俺は愚直な馬鹿だ。どんなに迷おうが、自分の力を磨き続けることしかできん。大英雄の力を得る? そんなものは、既にエンデヴァーではない」

 

 

その言葉に、クラッシャー伊東は笑みを浮かべる。

 

 

「良いね、やはり君も良い。そんな君こそ強く育て上げたいが、だが、愚直に自分の力だけで前に進む人間こそ至高だ。君がどこまで行けるのか、楽しみで仕方が無いよ」

 

「貴様に褒められても嬉しくなんぞない」

 

「だが、困った。このままだと君が死ぬのも確かだ。そうだ、こっちならどうだい。さっきほどではないが、君の成長を助けてくれるだろう」

 

 

またもや、クラッシャー伊東はビキニパンツから何かを取り出した。

それはどうやらアクセサリーみたいだ。

金の輪を意匠した黒い宝石の付いたペンダントをエンデヴァーの手に強引に握らせる。

 

 

「生暖かい・・・」

 

 

そりゃ、そんなところに入れてたら暖められるだろう。変態しかいないのか、ここは。

 

 

「どうしようもなくなったとき、それを首にかけ、捧げる、と唱えると良いよ。君なら立派な炎髪灼眼の討ち手になるだろう。大丈夫、さっきのクラスカードと違って、別人になるわけじゃない。一時的に炎の力をブーストするだけだから(大嘘)」

 

「むむ・・・まぁ一時的なサポートアイテムと考えるのなら・・・こいつ(Mt.レディ)を逃すわけにいかんし、孫の顔はみたいからな」

 

 

さっきから、逃げられないようにずっと肩を力強く掴まれてるんだよね。握力強すぎて肩がそろそろ砕けそうですよ、お義父さん(諦観)

 

 

「そうそう、ポークビッツのお嫁さんにも、というより、君の丁稚君にプレゼントがあるんだよ」

 

「丁稚・・・あの変態葡萄に?」

 

 

またまた、ビキニパンツの中から取りだした・・・これは鉢巻? やだ、触りたくないんだけど。

 

 

「これはかのソロモン72柱であるアシュタロスを倒した伝説の丁稚君がその力を目覚めさせる切っ掛けになった龍神の力を込めた鉢巻のレプリカだ。色々共通点がある君の丁稚君にはおあつらえ向きだろう」

 

 

具体的にはビーム撃ったりできるようになるかも、などと訳の分からないことを言われ、押しつけられる。

まぁあのエロ河童のことだ。女性のパンツの中に収納されていたといえば、喜んで装着するだろう。

 

 

「話は終わりか? 俺とこいつはこれから市役所に用があるので、これで抜けさせて貰おう」

 

 

無いよ! 市役所に用なんて無いから! 展開早すぎでしょ! せめてお見合いとかそういうワンクッション置こうよ!

 

 

 

 

 

 

 

私の必死の抵抗も虚しく、市役所へとドナドナされ、翌日には苗字が轟に変わってました。ぐすん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

if:ルート

 

もしエンデヴァーがクラスカードを受け取ってゼットンの火球を使っていたら・・・1兆度の火球が確かにあらゆる敵を一撃で倒していたが、太陽の約440兆倍ものエネルギーによって敵どころか太陽系全ての天体を跡形も無く蒸発させ、半径200数十光年の範囲の生命体に致命的ダメージを与えるほどのオーバーキルになる。その後、ゼットンの力で宇宙でも生存できるようになったエンデヴァーと、とっさにブラックホール内に逃げ込むことでダメージを遮断したお茶子ちゃんの二人だけが生き残り、二人仲良く宇宙を永劫に彷徨うことになっていた。これはこれでお茶子ちゃんが生き残っているのでグッドエンドである。やったね、誰もいなくなったから君がナンバーワンだ!




個性婚とかなかなかに闇深いよね。

追記:一人称修正しました。
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