もし個性の伸ばし方を指南してくれる教本があったら 作:毎日がチートディ
肉球で触れた対象を無重力状態にする。
でも無重力って何だろう。
個性を伸ばすには個性の本質を知る必要がある。
その本質を理解せずに個性をこういうものだろうと誤解して使っていて、それ故に本来持っている力の欠片程度しか発揮できない人は多い。
クラッシャー伊東先生はそのように説いていた。
私たちは個性が発動した後、個性専門の医者に行き、起きている現象からどういう個性であるというレッテルが貼られる。
そして私たちはそのレッテルが正しい物だと思い込んで成長していく。
個性が伸びない人は、そのレッテルを疑いもせずに使っている場合が多いのだろう。
では私の個性、無重力ってなんだろう。
今日も図書室に一人籠もって勉強をつづけている。
念願の雄英高校に入れたといってもたいした結果は出せていない。
同じクラッシャー伊東先生の教えを受けた人達は凄い結果を出しているのに。
「あれ? 麗日さん。こんなところで勉強してたんだ」
「デっデクくん! なっなんでここに!?」
背後から覗き込むようにして声をかけてきたデクくん。
私は見られないように教本を急いで隠した。
「え? なに? なに読んでたの?」
「な、なんでもないよ! 私、用事あるから先帰るね!」
なさけな。
こんな人目につくところで読んでたら気付かれちゃうのちょっと考えれば分かるはずなのに。
慌てすぎたせいで、道路ボコボコにしちゃうし、何やってるんだろう私。
アパートの自室へと戻ってきた私は自分の情けなさに死にたくなる。
そしてまた取り出した教本を開く。
すると最後の方に新しいページが追加されていた。
「先生からのお返事!」
私はここ数日、先生からのお返事を待ってて、それが待ちきれずに学校にまで教本を持って行っていた。
この不思議な魔法の教本は新しいページなどが自動で追記されるのだ。
一体どんな個性で作られたのか不思議。
見ると、私の個性についての考察が書かれていた。
他にも重力を扱う魔法(個性のことを魔法と記載しているみたい)を使う子達の例なども記載されている。
お礼書かなきゃ。
私は便せんに先生への感謝の気持ちと、そして今日の追記内容についての質問などを纏めた便せんを、切り取った私の髪の毛と一緒に封筒に入れて教本の上に置いた。
すると、虚空から腕一本だけ通る大きさのゲートが開き、そこから腕が伸びて封筒を持ってまたゲートの中へと戻っていった。
手の人はクラッシャー伊東先生ではないらしいが、先生へと手紙を届けてくれる親切な人だ。
髪の毛が大好物らしくて、髪の毛と一緒に手紙を封筒に入れて教本の上に置くと回収して届けてくれる。
この事はあまり、というか殆ど知られていないらしくて、私も偶然発見した。
お金を節約するために自分で髪を切っていたら、思いっきり切りすぎてバサリと教本の上に髪が束で落ちちゃって。
あの時は切りすぎた髪の毛や、それを回収するために現れた手とか、深夜にも関わらずビックリしすぎて大声で悲鳴をあげてしまい両親に酷く心配させてしまった。
それ以来、私は自分の個性についての相談の手紙を出すようになった。
お返事はいつも教本の改訂でだったけど、手の人とは何度目かで、髪の味で体調とかが分かるそうで、過労気味なので休んだ方がいいなど一言二言声をかけてくれることがあった。
それにしてもやっぱり重力ってのは難しい。
昔は私は対象を無重力状態にするだけの能力だと思ってた。
でもそもそも重力って何?
それを先生に指摘された。
重力って言うのは物と物が引き合う力のこと。
なにも地球だけが重力を持っているわけじゃない。
ありとあらゆる物がお互いに引き合うのが重力であって、私の個性でなんの重力を無効化しているの?
地球の重力だけを無効化しているの?
それだと今度は太陽の重力に引っ張られて太陽に向かって落ちていくのではないかと、先生から指摘された。
だけど実際はそんなことはなく、ぷかぷかと浮いているだけ。
何も考えずに使うのではなく、重力について考えて使うようにすると、私は少しずつ重力について感知できるようになっていった。
私は物と物が引き合う力を操作できる。
もっとも簡単なのは対象に干渉する重力を遮断して浮かせること。
これは意識しなくても今までできていたこと。
次は干渉する重力の取捨選択すること。
これついては難航している。
ただでさえ全ての物質が重力を持っているのだ。
それら全てを把握して瞬時に選択するのは困難極まること。
だから先ずは自身と地球に関する重力だけを操るようになった。
これが一番分かりやすい対象だったから。
そして先生の指示を受けて、少しずつ地球と私のひっぱりあう力を強くするようになった。
これは比較的早い段階でできるようになり、初めは1%程強くする程度だったけど、少しずつ強めていって、今では常に1万倍ぐらいの強さで地球と引き合っている。
まあ、個性の出力は上がったけど、その特訓ばかりにかまけていて体術は味噌っかすだと八百万さんに怒られたけどね。
実際体力は一般人よりずっと悪い。
個性把握試験では散々な成績だったよ。
まさか100メートル走で後方ポツンと一人、なんて言われてしまうなんて。
うう-もしかしてまた体重増えたかなぁ・・・。
体重については私は自身の正確な体重なんてもう何年も把握してないから分からないけど。
地球との引き合う力の増やすようになってから実家の床が抜けたり、走ると道路が陥没するようになって、私は地球以外の干渉を常に操作するようになったから、体重計に乗っても0kgと表示されてしまう。
だから身体測定の時はそれっぽい重さに調節するようになった。
皆には肉付き良い割には軽いんだねってよく言われる。
それを聞く度に死にたくなる。
そんなこんなで、重力操作については多少は自信がついたけど、それでも危険な個性なのは変わりが無いそうで、他者への重力操作について無重力以外の使用は緊急時を除いてまだ先生から止められている。
下手すると地球が宇宙の彼方に吹っ飛んでもおかしくないそうだ。
だからまだ個性届の変更もしていないまま。
こんなんで私、本当にヒーローになれるのかな。