もし個性の伸ばし方を指南してくれる教本があったら   作:毎日がチートディ

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爆豪少年

なんで。なんで俺はこんなに弱っちいんだ。

 

 

 

雄英に入るまで、俺は自分が一番最強だと思ってた。

確かにオールマイトやエンデヴァーとかトップヒーローにはまだ勝てるなんて思っちゃいなかったが、同世代で俺に勝てる奴なんていねぇ、それに卒業する頃にはオールマイトを超える超強ぇヒーローになっている、そんな馬鹿らしいことを疑いもせずに思ってた。

今考えると井の中の蛙過ぎて本当に笑えてきちまう。

 

 

だから中学まで馬鹿にしてたデクがオールマイトを彷彿とする個性を身につけていたことに怒りを覚えたし、そのデクとの演習で勝てなかったときは悔しくて仕方がなかった。

 

 

あれは調子が悪かっただけ。

幼なじみでずっと俺の手の内を知っていたから。

舐めてかかったせいで、最初から本気だったら負けてねぇ。

 

 

だって俺は最強だから。

 

 

そんな根拠無い自信は数日後には脆くも崩れ去った。

 

 

USJでのヴィラン襲撃。

あの時、俺はなにも出来なかった。

ただ、後ろで呆然と見ているだけのモブでしかなかった。

 

 

あの特待生の女、八百万百がクソヴィラン共を血祭りに上げるのを見ているだけ。

いや、あの時俺は見ていただけだったか?

 

違う。震えていたんだ。

 

ヴィランが恐かったんじゃねぇ。

同じ歳の女が振るう力を前に、怯え、震えて、凍り付いていたんだ。

もしあの力が俺に振るわれたら、抵抗する暇も無く肉片になっていた。

理性ではなく、本能であの女との圧倒的なまでの実力差を分からされていた。

 

 

一晩中ずっと枕に顔を押しつけて泣いて。

 

 

そしてその次の朝から、俺はひたすら特訓していた。

あの日から、俺は荷物を纏めて家を出て、山に籠もって特訓を続けた。

山と学校の往復だ。

行き来もずっと爆破で飛んで、個性を磨き続けた。

 

 

そして入学前に密かに習得していた俺の必殺技『榴弾砲着弾ハウザーインパクト』を更に超える超必殺技を手に入れた。

修行で籠もっていた烏帽子山をまるごと吹き飛ばした超威力の『爆星砲着弾メテオインパクト』だ。

 

 

これならあの女に勝てる。

俺は砕け散った自信を再度取り戻した。

 

 

山を吹き飛ばすのは流石にやり過ぎだったみてぇで、警察のお世話になって相澤先生に次ぎやったら除籍と激しく怒られたが、そんなの気にしてちゃ強くはなれねぇ。

 

 

そして雄英体育祭。

 

 

俺は満を持して、あの女も、半分野郎も全部ぶっ倒して優勝する、そう宣言した。

 

 

もう負けるわけにはいかねえ。

言い訳できないように退路を断つ覚悟だった。

 

 

だが、その張り子の虎のような自信は特待生でもなんでもない、認識もしていなかったモブ女に打ち砕かれた。

 

 

 

 

麗日お茶子

 

 

 

デクの周りをうろちょろしてるだけのモブ女。

 

 

物を浮かせるだけしか能が無い愚図だと思っていた。

 

 

 

試合が始まる前は、直ぐ終わると思っていた。

本当に走ってるのかと思うようなとろくさい走りで向かってきたあいつを、いつも通りの右爆破で場外まで吹っ飛ばして終わりだな、そう考えていた。

 

 

油断はしてないし、一撃で終わらせようと思ってたから割と強めに爆破した。

 

 

防御すら間に合わず、顔面にもろに入った爆破だったが、あいつは何の痛苦も感じないような顔でそのまま突っ込んで来やがった。

意表を突かれた俺は、差し出してきた奴の掌にあと少しで触れるところだった。

 

 

辛うじて避けた俺は、麗日の横を回り込みながら連続で爆破を叩きつけていったが、それすらも全く効き目がなかった。

 

 

挙げ句の果てには「私が女だからって! 馬鹿にして! デク君にやったみたいに本気出してよ!」なんて喚かれる始末。

 

 

訳が分からねぇ。

 

 

その後も何度も何度も俺の爆破を一方的に受けつづけては平然と向かってくるあいつの姿に、俺が舐めプをしているって会場からはブーイングの嵐だ。

 

 

その頃にはもう俺は麗日の異常性に気付いていた。

 

 

だから、俺は『爆星砲着弾メテオインパクト』を使うことにした。

 

 

すっかり熱が上がって、体中汗まみれになっている俺の最高の状態で放つ『爆星砲着弾メテオインパクト』はまさに山一つ吹き飛ばす威力だ。

 

 

それを掌一カ所に集中した超威力の爆破を、それでも麗日お茶子は何の痛苦も感じていなかった。

 

 

ただ、巻き上がった土煙にむせこんで、息苦しそうにしていたあいつの背中を俺は無我夢中で押し飛ばした。

 

 

そして足をもつれさせて場外へとあいつが倒れ込んだところで土煙も晴れて、俺の勝利が宣告された。

 

 

 

 

これのどこが勝利だ?

 

 

 

 

俺は勝ってねぇ。盗んだだけだ。

 

 

 

 

クソみてぇな結果だった。

 

 

 

 

こうなったら八百万だけでも倒して・・・そう思ってたんだが。

 

 

 

 

八百万は個性も使わずに、体術だけで俺をボコボコにしやがった。

 

 

 

 

その直前の半分野郎がB組の特待生にワンパンで倒されてざまぁねえなって思ったが、個性すら使って貰えなかった俺はもっと惨めな存在だ。

 

 

 

 

その後、保健室のベッドの上から最終戦の中継を見たが、特待生が個性を使ったのは特待生相手だけだった。

 

 

 

 

結局、俺は個性を使うに値すらしねぇ雑魚だと認識されていたってことだ。

 

 

 

何も残せなかった俺には、職場実習の指名も殆ど来なかった。

ただ一人俺を指名してくれた、ベストジーニスト先生。

 

 

そこで俺は生まれ変わるためにひたすら努力した。

 

 

だが職場実習から戻ってきても、差は全然縮まってるようには感じられなかった。

 

 

 

 

そして、俺はこうして惨めにヴィラン共に捕まってるわけだ。

 

 

 

 

ほんと、死にてぇ。

 

 

 

 

林間合宿でヴィラン・・・なんだっけなんとかってUSJの時のヴィラン共がまた襲撃してきた。

 

 

 

 

前を遙かに上回る数の脳無、そして指名手配されている凶悪なヴィラン達を引き連れて。

 

 

 

 

俺は今度こそはと周りの止める声にも耳を貸さずにヴィラン共と戦った。

脳無も何体もぶっ倒したが、多勢に無勢。

特待組は分断されている上に、更にB組のもう一人の特待生は林間合宿に不参加という戦力が落ちている所での襲撃。

 

 

幾ら特待生でも広範囲に散らばった生徒達を護りながらは限度があり、奥深くまで巧妙に誘い込まれた俺はあっさり捕まっちまった。

 

 

その後、ヴィラン共に勧誘されたが、誰がヴィランになんかなるか。

そんなことしたら、あの化け物どもが俺をいの一番にぶん殴りにくるだろう。

幾ら俺でもそこまで惨めな死に方はしたくねぇ。

 

 

だけど、逃げる手立てもない。

 

 

こいつらは俺の事をオールマイトを釣るための餌だって言ってた。

こんな奴らにオールマイトがやられるとは思えねぇが、それでも不利になるのは確かだ。

 

 

どうにかして逃げ出したいけどどうしようもねぇ。

 

 

自分の惨めさと情けなさで、思わず涙が零れ落ちる。

 

 

 

 

 

 

そんなとき、どこからか声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

『力が欲しいか?』

 

 

 

 

 

なんだ?

 

俺は拘束されて動きづらい首をなんとか動かして周りを見るが、誰も今の声に気付いちゃいねぇ。

 

酔い潰れて寝てたり、黙々とテレビゲームをしていたり、呑気なもんだ。

 

空耳か?

 

そう訝しんだ俺の耳に、再度声がかけられる。

 

 

 

 

 

『力が欲しいか?』

 

 

 

 

 

今度はハッキリ聞こえた。

 

周りは未だに気付いた様子もないが、確かに俺へと問いかける声が聞こえた。

 

いつのまにか、俺の前に渦が出来ていた。

 

その渦が少しずつ開き、渦の中から本を持った手が差し出される。

 

 

 

 

 

『力が欲しいのならくれてやる』

 

 

 

 

 

なんだこの状況は。

 

誰も、この声も、この渦も、手にも気付いちゃいねぇ。

 

 

 

 

 

『さぁ、本を取れ。さすればお前は最強の力を得るだろう』

 

 

 

 

 

もう見間違えもしないほどに広がった渦の向こう側、本を差し出した黒ビキニで手裏剣の髪飾りというイカれた格好の女。

 

 

その本の表紙には『サルでも分かる魔法の教本』と書かれていた。

 

 

アングラサイトで見たことがある。

どんなダメ個性でもトップヒーロー並の個性に成長できる教本があるって。

眉唾も良いところのくだらねぇ都市伝説だ。

 

 

白い少女に渡されるって聞いてたんだがな。

 

 

 

 

 

『さぁどうする? 今なら初回サービスで同じ本がもう一冊。更に48色入りの色鉛筆もついてくるぞ』

 

 

 

 

 

やべぇ、途端に胡散臭くなってきやがった。

 

どこのテレビショッピングだよ。

 

 

 

 

 

『あー、後あれだ。なんならこいつら全部まるっとぶっ殺してやっても良いぞ。私の魔法ならサクッとやれるぞ』

 

 

 

 

 

「いや、いいわ」

 

 

 

 

 

無様に捕まったのは俺の不始末だ。

弱いのも弱い俺が悪い。

いつか最強になってやるって気持ちは今も変わらないが、だからといってソレは違うだろう。

ガキの頃からならともかく、今更そんな本に頼って成った最強に一体どんな価値があるっていうんだ。

最強になるためなら、どんだけ痛めつけられようが、どんだけ泥水すすろうが、どんだけ負けようが構わねぇ。

 

 

 

「だがな・・・自分だけには負けたくねぇ」

 

 

 

『ぶっぷははは! なんだよお前、エミヤシロウかよお前! いいぞ、くっそかっけぇじゃねーか。気に入った』

 

 

 

だれだよエミヤシロウって。そんなに笑うんじゃねぇよ、こっちはマジなんだよ。

 

 

 

『ふひーふひー、笑い死ぬかと思ったわ。良いぞ、本当に気に入った。よし、お前にはもうこの本はやらん』

 

 

だから最初から要らねぇつってんだろ。

 

 

『これだから人って凄いよな。これからお前がどんな人生を歩むのか、どんな魔法少女になるのか、楽しみにしてるぜ』

 

 

なんで魔法少女なんだよ。俺は最強のヒーローになるんだよ。

 

 

『良い物見せてくれたお礼だ。本当にどうしようもなくなったとき、一度だけ助けてやるよ』

 

 

誰が頼むかクソボケが。

 

 

 

クソアマはまだ笑い足りないのかヒーヒー言いながら渦を狭めて消えていく。

 

 

 

 

最後に『ああ、君が無様に拉致られてるこの場所について、お茶子ちゃんに半泣きの君の写真付きで送っておいたから』なんて爆弾を落としていきやがった。

 

 

 

 

あんのクッソアマがぁ!

今度現れたら一発ぶん殴ってやる。

無茶かも知れねえが、絶対だ。

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