主人公強者
「へ?」
俺の気のない返事にエヴァンジェリンは呆気にとられた顔をしている
「ん?続きは?」
「あ、あの私のこと怖くないんですか!?」
「なんで?お前は俺のことを害したり、殺そうとするのか?」
「そんなことしませんっ!」
「だろ?それにどうせ俺を殺そうとしてもお前は俺には勝てない。自分より圧倒的に弱い相手をどうやって怖いと思うんだ?」
俺は、エヴァンジェリンにお前は弱い、とはっきり伝える
そうしたら、エヴァンジェリンはなぜか涙を流してまった
「ふむ。嬉しいのか?」
「ッ!」
「嬉しいのか」
俺はわかっていた。これでも中年くらいには年をとってるんだ。人生経験も濃い。化け物には化け物の精神性を持っている者、持っていない者がいる
エヴァンジェリンは後者だ
だから、今まで人に迫害され、人から逃げるように各地を転々としてバレれば罵倒され追いかけられる。そんな生活をしていけば、心はすり減っていく。
人と一緒にいたい。認められたい。なにより自分を受け入れてほしい。そんな者が、自分を受け入れてくれる他者が現れれば、涙を流してしまうのも必然だった
それから、ひとしきり泣いたあと、エヴァンジェリンは話の続きをしてくれた
「何者かに吸血鬼にされたあとは、その場所にいられなくなったので、色んな場所に行きました」
「どこの場所でも、見た目が10歳の女の子が生きていくのは難しかったです。これでも私18歳なんですよ?」
エヴァンジェリンの見た目は幼女のままで、しかし精神は大人、ここまで来るのにも大変だったであろうがここまで来たことも褒められたことだ
「各地を周っているときに、ある人たちにあったんです。その人たちは自分たちを魔法使いと言っていました」
「ふむ、やはり魔法はあったか」
「はい。その魔法使いたちは自分たちを正義の魔法使いと言って、吸血鬼は滅ぼさなければならないといって攻撃をされました」
「そして今日、初めて捕まって磔台に処されました。そこで貴方がきたんです」
「なるほど。だいたいわかった」
エヴァンジェリンはいわば造られた吸血鬼ということだろう。それが噛まれたのか、吸血鬼として造られたのかどちらかだ
しかも10歳で吸血鬼にされてしまったのはこれからの人生、吸血鬼生?で生きていくのは大変だろう
特にエヴァンジェリンのように出来れば表で生きていたい吸血鬼には酷な話だ
「エヴァンジェリンはこれからどうしたい?」
「へ?」
「だからこれからも逃げながら生きていたいか聞いてる」
「…もう逃げたくないです。誰にも悪く言われたくない、もう磔なんかされたくない、もう火あぶりなんかされたくないっ!」
「なら俺が鍛えてやる」
エヴァンジェリンはその言葉を聞いてから、顔つきを変えた
このチャンスを活かし、もう誰にも自分を害されないように強くなることを
「よろしくお願いします!」
ーーーーーーーーー
「え!?ゴジョウさん、魔法わからないんですか!?」
「ちがう。詳しくはこの世界の魔法を知らない、だ」
エヴァンジェリンにあれだけ言っていたのに魔法のことわからないんですか、みたいな顔をされてしまった
そこで俺は異なる世界から来ていて、この世界の魔法はこれから覚えるとエヴァンジェリンに話した
「この世界の魔法を知らなくても、戦い方はたくさん知っている。俺は強いぞ」
そう言って、目の前の岩を粉々にする
今は外に出ていて、森の中を歩いている
「え、え、え?」
「どうだ?すごいだろ?ちなみに手加減してこれだ」
エヴァンジェリンは驚いているようだが、俺を舐めることはなくなった
俺達は今次の街に向かって森の中を歩いている。なんでも情報によると次の街には魔法使いがいるらしいのだ
だから、ちょっと捕まえて魔法について教えてもらおうと思っている
ついでに歩いている間にエヴァンジェリンに戦い方を教えていた
体の動かし方、目線の動かし方、体幹の矯正など魔法を教える前に出来ることをしていた
夜は大人の空間(ラブホテル)で泊まり、朝になったら森の中を歩いていく
途中で鍛錬し、夜は安全なところで寝る
エヴァンジェリンは吸血鬼になってから、一番充実した毎日を送っていた
こんなにも誰かに追われる心配がなく、安心できる相手と強くなりながら旅をする
吸血鬼になる前、いやそれよりもずっと毎日が楽しい
吸血鬼になる前はそれが普通だと思っていた。だからこそ吸血鬼になって人の悪意に触れたこそ今がどれだけありがたい日々であるかエヴァンジェリンは十分知った
そうして魔法使いがいるという街に着いた
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