主人公曇らせ
俺は初転生、初殺人を経験したかもしれないことについてナーバスになっていた
「自分の意思じゃないとはいえ、かなりクるものがあるなー」
はぁ、と息を吐きながら俺の心は疲弊していった
「...まぁこの男が悪党ってのは確かだし、子どもたちの無念が晴らせと考えればいいか」
俺はそう言いながら自分のやったことを正当化して、心の疲弊を癒すことにした
ある程度持ち直したあと、このあとの行動について考える
「さて、このあとどうすっかなー。この場所を見られたらヤバいし、金もないし、知り合いもいないし」
ほんとにもうないないづくしである
「よし逃げよう」
答えはすぐに出た。っていうか早く行動に移さないと俺自身にも危険が迫るだろう
そうして俺は不思議の国のアリス(アリス・イン・ワンダーランド)の能力を使ってこの倉庫内のあらゆるものを収納していくのだった
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「さて、あらかた収納できたかな?」
俺は1時間ほど時間をかけて子どもたちにかけられていた手枷、足枷などから男が所持していた服、財布、金目のものをすべて収納したのだ
収納は簡単だった。なにせ1メートルの範囲ではあるが、念じれば出すのも収納するのも自由自在なのだ
他にも、この能力を使っていると高級そうな本の表紙にある数字が少しずつ減っているのだ
最初は何の数字かと思っていたが、能力を使っていると減るってことはこの能力を使用する際に必要ってことなのだろう
まぁ、念能力に必要なエネルギーみたいなものは不思議の国のアリス(アリス・イン・ワンダーランド)を使用する際に必要な分だけなのは嬉しい誤算だ
ただ、この表紙の数字が減るってことは、足さなきゃいけないってことだから、どうやって足すか調べないといけないだろ
そして、最後にやるべきことがある
それはアリスちゃんの遺体をどうするかだ
「なにが正解なんだろうなー」
そう、俺は迷っていた。アリスちゃんの遺体を子どもたちと一緒に埋葬するか、それとも不思議の国のアリス(アリス・イン・ワンダーランド)に収納してなにか蘇生が出来るようになるまで保存しておくか悩んでいた
「よし!後で考えよう!」
そう決断してアリスちゃんを収納していったのだった
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俺は倉庫内でのすべてのことが終わったあと、コソコソと倉庫から出ていた
倉庫から出たときに思ったのは、ここ倉庫街じゃんという考えだった
周りを見渡してもコンテナしかないのだ。良くアクション映画で狭いコンテナが積み上がっている場所で戦うというのを前世で見たことがあるが、まんまそれだった
「マジかよ。いやまぁ見つからないように行動することにしたら嬉しいけどさ」
実際そうなのだ。監視カメラはあるかもしれないが、ここから遠くに逃げようと思っている俺にとっては見つからないに越したことはない
そうしてコソコソしながら、偶然にも誰にも会うことなく倉庫街から出ることができた
「問題は出入り口だな。どうやって見つからずに突破するかだが」
そう考えながら、出入り口を確認する。このときでも不思議の国のアリス(アリス・イン・ワンダーランド)は展開し続けていた
理由としては、なにがあったとしてもこの能力を使えばなんとかなるという浅はかな考えではあるが。実際浅はかではあった。能力の確認もほとんどしないででてきた勝負に賭けるのは、俺がまだ危機意識が足りないからだろう
でも責めないでほしい。平和な国からいきなり能力がはびこっている世界に来たのだ。そんな人間にハリウッド映画のスパイみたいに行動しろというのが土台無理な話しなのだ
まぁ、自身も能力を使えることにテンションが上がっていることもあるかもしれないが
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俺は出入り口を確認していたが、一向に人間らしきものがいないのだ
普通だったら輸送車などが出入りする際に、関門みたいなところで警備員に質疑応答をされると思うのだが、俺が確認してから輸送車が1台も通らず、人も誰も来ないので疑問を感じていた
それからもなんの音沙汰もなく時間がたち、意を決して俺は関門所に近づいていった
「げ、監視カメラあんじゃん。…もういくっきゃねぇ!」
俺は勢いそのまま関門所を走り抜けようとしたが、関門所の様子がおかしかったのだ
「え?」
関門所に人はしっかりいたのだ。だがいたのは死体だった
警備員らしき服装をした男は白目を剥いて体の生存活動を止めていた
「この人あの外見詐欺の念能力者と同じだ」
そうこの警備員はあの俺が殺したと思う念能力者と同じ死に方をしていたのだった
心臓の音がうるさいくらいにバクバクいっている
そして俺は走り出した。もう見つかるとか捕まるとか考えていなかった
「ハァハァ、ハァハァ、ッハァ!」
こんな衰弱した体で全力疾走なんて正気の沙汰ではないが、そんなこと関係ないとばかりに走っていく
そして、少しひらけたところに出るとそこにはーーーー
「マジか…」
車は横転していたり、車同士でぶつかっていたり、お店に突っ込んだりしている
これだけでも大分地獄絵図なのだが、問題は人だった
誰も彼もが白目を剥いて倒れているのだ。車の運転手も全員そうなのだ
俺は行ける限りの場所を巡ってみたが、どこもかしこも全員同じ状態だった
一応、10秒間触れてみてステータスを確認していったが、内容は外見詐欺の念能力者と同じだった
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「…」
俺は黄昏ていた
時間は倉庫街を出たのが夜中だったから、もう朝日が出ているということはあれから6時間くらいはたったのだろう
走り回ったのはせいぜい1時間ほど。それ以上は体力がもたなかった
それ以外の時間は吐いたり、悩んだり、鬱になったり。この現状で時間を無駄にするのは悪手だと分かっているが、心がそれを拒否する
「…」
もう朝だ。監視カメラには俺がバッチリ映っているだろう。もしここだけじゃない場所も全滅だったら、悩まなくていいがこの現象が範囲指定されたものだったらまずいことになる
「…行かないと」
俺は無理やりにも自分を叱咤して体を動かすのだった
お読みいただきありがとうございます
今後とも拙作をよろしくお願いします