エヴァがアルカ以外のネギとゆかいな仲間達に不合格を出した後、早くも2週間が経っていた
早速、アルカは次の日からエヴァンジェリン邸へやって来てダイオラマ魔法球内にてエヴァから修行を受けていた
「なぁ、エヴァンジェリンはずっと変な型みたいのさせているけど、いつになったら魔法教えてくれるんだよ」
そう言いながらアルカは何かの武術の型のようなものをここ2週間ずっと行っている
「マスターと言えと言っているだろうバカ弟子」
そう言うエヴァはビーチチェアでトロピカルジュースを飲んでいる
まるで、避暑地に来ているお嬢様のようだ
「私が持っているダイオラマ魔法球の倍速は26倍まで出来る。ネギのぼーやの試験までは魔法は教えん」
エヴァのその言葉にアルカは思わずやっていた型を止めてこちらまで走って来る
「お、おい!話が違うじゃねーか!合格だって言うから期待して来たんだぜ俺は」
納得出来ないのかアルカはエヴァに話が違うと怒りながら騒いでいる
まぁ、確かに魔法を教えてくれって言って、合格した結果が魔法とは真逆の武術だった
そりゃ文句を言いたくなるのもあるだろう
「黙れ。そもそも私は合格と言ったがすぐに魔法を教えるとは言っていない」
アルカの文句にも動じずエヴァはトロピカルジュースを飲みながら答える
エヴァのその様子に何も言えなくなったアルカであった
「だいたいだな、貴様もネギのぼーやもだが、温室育ちの魔法使いどもは魔法だけを鍛えようとする。そういう魔法使いは一流の魔法使いにはなれるだろう。だがな、一流までしかならんのだ。さらに向こう、超一流以上になりたいのであれば、武術も出来なければならんのだ」
「あ、確かに…」
エヴァの説明に納得出来る部分があったのか、アルカの口から肯定の言葉が出てきていた
「アルカ、お前の父親もある程度魔法なしでも戦えるくらいには動けていただろうさ」
まぁ、逆にあいつの魔法使いとしての頭の良さは笑えるくらい鳥頭だったがなと言いながらエヴァは笑っていた
アルカは少し俯きながら考えていたようだったが、自分の中で折り合いがついたのか、元の場所で型の修行に戻る
「そういえばエヴァ、彼のこの修行は何時までやるの?」
俺はなんとなく思ったことをエヴァに聞いてみた
「まぁ、とりあえずネギのぼーやの試験までは体力作りと武術を教えるつもりだ」
今の会話が聞こえていたのかアルカがこちらを見ながら型の練習をしている
「ということはあと2週間はずっとこれかー。…ちなみに現実の時間とダイオラマ魔法球内のどちらの時間での話かな?」
「そんなもの、ダイオラマ魔法球内で2週間。つまり約1年は武術だけだ」
…かわいそうに。ダイオラマ魔法球というチート空間さえなければ、すぐに魔法を教えてもらえただろうに
視線の先のアルカは心なしか気落ちしながら型の練習をしていた
ーーー
時は早いもので現実時間で2週間が経ち、ダイオラマ魔法球内では約1年が経っていた
その間もアルカは教職員の仕事をしながら真面目にエヴァの指導を受けていた
俺やエヴァは毎回アルカの修行を見ていたわけではなく、エヴァは従者のチャチャゼロという人形に任せたりしていた
俺も回復や武術の相手をたまにしてあげたりと手伝いもしている
カンピオーネになってから、自然と武術も出来るようになっているので参考にはなっただろう
もともと武術はある程度出来ていたが、カンピオーネの才能はそれをさらに押し上げてくれた感じだ
…同じカンピオーネである中国の女には敵わないが
まぁ、それはおいていて、この1年でアルカは実戦でも通用するような武術を修められただろう
時間や師匠が良いというのもあるだろうが、何よりも彼には才能があった
世の中には努力の天才というものがあるが、天才が努力をしてしまったら、凡夫との成長の差は開くばかりだろう
ステータス風にすると彼の才能はAき相当するのではないだろうか
俺の才能はEXだけどね
ほとんどの人の才能の平均がCだとしたら、彼は上位数パーセントに該当する
当然、双子の片割れであるネギも同じくらいの才能を持っているんじゃないだろうか
俺の嫁たちにも迫る才能だ
他にも、神楽坂や近衛、次点で綾瀬がアルカとネギに迫るくらいの才能を持っているだろう
さすが英雄の血を引いているだけはあるなとアルカを見ながら俺は考えていた
ーーー
さて、ネギとゆかいな仲間達には2週間。アルカやエヴァ、俺にとっては久しぶりの相対だ
「ぼーやたちは久しぶりだな。見た限り少しは成長したようだが…」
そう言うエヴァの視線の先には、身体の至るところに絆創膏やガーゼをしたネギがいる
なぜかネギの後ろには白い付け髭をしたクラスメートの古菲がいたが
さらになぜか対決の場所となった広場には魔法と無関係なクラスメートも来ていた
エヴァは呆れながらもクラスメートがいることに許可を出している
今回の対決には魔法は使われない。だから許可を出したのだろう
「さて、ぼーやたちには茶々丸が相手をするといったな。あれは嘘だ」
「え!?ど、どういうことですかエヴァンジェリンさん!」
「ちょ、ちょっとエヴァちゃん!前は茶々丸さんがネギの相手って言ってたじゃないの!」
エヴァの言葉にネギとゆかいな仲間達+ギャラリーのクラスメートたちが騒ぎ立てるが、エヴァはそれがどうしたといわんかぎりの態度で続ける
「あぁ、最初は茶々丸に相手をさせようとしたがな。だが、私は思ったのだ。ちょうどいいから私が鍛えた者の相手をさせたほうがぼーやたちも修行で得られる強さを実感出来るのではないかとな」
エヴァのその話を聞いた者たちの中で、頭の回転が早い者はネギの相手が誰かわかったようだ
「まさか、エヴァンジェリンさん。僕の相手って」
ネギや綾瀬などの地頭がいい者は感づいていた
「え、えっ!?誰よ?」
「うーん、誰やろうなぁ?せっちゃんはわかったかいな?」
「え?あ、そのまぁはい。そうですね」
桜崎にあの感じわかってないだろう
「はあ!?聞いてないぞ俺は」
そこでその相手である者が声を荒げていた
「なんだ?戦いと言うのはスポーツではないのだぞ?自分が思ってもみないところで起きるものだ。最初に教えたはずだが」
エヴァが威圧しながらネギの相手、つまりアルカに脅しながら言う
「…わかったよマスター」
ダイオラマ魔法球内で1年過ごしていたせいか、アルカの身長はネギよりも10cmほど大きく、ひたすら身体を動かしていたせいかガッシリともしていた
しぶしぶ了承したアルカのことをネギは驚いたように見ている
自分は古菲に頼んで鍛えてもらった。しかし兄弟であるアルカも鍛えてもらっていたのだろう
古菲に鍛えてもらったからわかる。アルカが2週間前よりも存在感が増しているように見えていた
ネギのゆかいな仲間達もアルカが相手だとわかって驚きの表情をしていた
「驚いている暇はないぞ。早速立ち合いをしてもらう。内容はあのときと変わらずにアルカに一発当てれば合格だ」
最初は驚いていたアルカだったが、ここ1年ダイオラマ魔法球内で修行したせいか切り替えが早く軽く準備運動をしている
…単純にエヴァが怖かっただけかもしれないが
「では始めるぞ。時間無制限、アルカはぼーやを気絶させるか降参させることで勝ちとする。ネギのぼーやはアルカに一発当てれば合格だ。無論、魔法は使用禁止だ」
エヴァが2人を見ながら目で確認する
ネギは覚悟が決まったのか、コクンと頷いている
だが、アルカは同意の意思を示さずに何かを考えている様子だった
「…マスター、この試合で俺が勝ったら一つ願いを叶えてくれないか?」
アルカの突然の申し入れにエヴァは目を細めながら、願いだと?とアルカに聞いている
「ああ、そんなに難しいことは頼まないつもりだ。ダメだろうか?」
「ふむ」
アルカの申し入れにエヴァは少し悩んでいると、なぜか俺のほうを見てきたが、俺は意味深に頷いてやる
意味深にしたのはノリだ
「いいだろう。だが、まずはこの試合で勝たなければな」
エヴァの言葉にアルカはやる気が上がったようだった
対して対戦相手のネギは兄弟であるアルカと戦うのに躊躇っている様子である
だが、エヴァはそんなの待ってやるほど優しくない。いや、もしかしたら兄弟であるアルカと戦うという心理戦さえも試験の一つなのかもしれない
「始めろ!」
その言葉と同時にアルカが飛び出し、ネギの腕を取って引き寄せる
ネギは驚いているが、古菲との修行の成果か、反射的に身体の制御権を奪われないように重心を後ろに下がらせる
だが、それを待っていたようにアルカもネギと一緒に前へ一歩進む
そして、2人が接近したと思ったら急にネギが氷で滑ったように尻から派手に転ぶ
受け身を取れずに転んでいるが、原因はアルカがネギの足を引っ掛けたからであった
アルカが接近してそれをネギが反射的に逃げる。その際に重心が後ろになったネギの足は片脚のみで支えている状態だ
そこでその足を地面から引っ掛けてしまえば、人は簡単に支えをなくして、身体が倒れてしまうという単純なものだ
これは素人でも出来る簡単な合気の技術だが、極めれば相手の意思を隙間から技をかけることが出来るのだ
「うわっ!?」
意識外からの突然の攻撃にたまらずネギは声を上げる
周りのギャラリーもえっ!?とか感心したようなほぅ?といったような素人と武術を嗜んでいる者で反応が分かれていた
ネギは急いで立ち上がりアルカから離れようとするが、腕を掴まれたままで離れることが出来ないでいる
「くっ!」
そこで掴まれていないもう片方の腕から、何かの技を出そうと振り被る
しかし、いざ技を出そうとした瞬間アルカは腕を離してネギの後ろへと回り込んだ
「お前は単純すぎるんだよ」
そう言ったアルカは腕を振り被っていたネギの手を掴み、背中へと押さえ込む
そのまま腕と背中を押さえるようにネギを地面へと倒していた
「ぐっ!」
倒れ抑え込まれたネギは何とか起き上がろうとしているが、腕と背中の支点を押さえ込まれているので起きあがることが出来ないでいる
「動くな。それ以上動くと腕を折るぞ」
バタバタとしていたネギはその言葉に思わず動きを止めるが、顔だけをアルカに向けてキッと睨むように言う
「嫌だっ!僕は絶対に勝たなきゃいけないんだ!」
「そうか」
ネギの絶対に勝つという言葉にアルカは特に気負いもせず返したかと思えば、押さえ込んでいる腕に力を入れた
ボキッ
「うあああぁぁ!!!!!?」
見ているこちらまで聞こえて来るくらいの音でアルカがネギの腕を折る音が聞こえた
「ちょ、ちょっとアルカ!?」
ギャラリーである神楽坂が突然の凶行に非難するような声色でアルカに声をかける
他の者たちもここまで怪我が出るような試合ではないと思っていたのだろう、きゃっとかえっとか驚いたように声を上げていた
中には見ていられないという風に顔を背けてしまう者までいた
そんな声にもアルカは気にせずにネギを抑え込んでいた
「うっ、うっ、うぅぅぅあああぁあ!」
ここまで痛みがある怪我をしたことがなかったのか、ネギは涙を流しながら激痛に耐えている
そんなネギに向かってアルカは降参するよう声をかけていた
「ネギ、さっさと降参しろ。そうすればすぐにその腕も回復してくれるだろう」
俺はアルカの言葉に違和感を感じた
すぐに回復する?
…ああ、そういうことか。となれば、最初の言葉もこのためのブラフということか
「い、嫌だっ!僕は必ず力を手にいれなきゃいけないんだ!」
その言葉とともに折れた腕を捨てたのか、ネギは涙を流しながら折れた腕ごと回転した
まさか腕を捨てるとは思っていなかったのか、思わずアルカは後ろに下がっていた
その隙にネギは立ち上がって距離をとる
そして残った左腕で構えをとり、技を出していく
見る限り中国拳法なのだろう
腕、足、指、そして身体全体で攻撃を仕掛けていく
たった2週間しかなかったのに武術としての形にはなっていた
やはり才能はあるのだろう
普通、2週間でここまで武術を学び、そしてそれを実践に移せる者はそうはいない
アルカもそうだったが、この兄弟の才能は天才どころじゃないだろう
だが、ネギは2週間だが、アルカはダイオラマ魔法球内で約1年ほど修行したのだ。同じくらいの才能を持つ者同士でも期間が違えば、その完成度は大きく変わってくる
その考えとおりに、ネギの攻撃はアルカにほとんど通用していない
ネギが古菲に中国拳法を学んでいるようだったが、エヴァはアルカに教えたのは柔術だ
なんでもエヴァは昔に日本のある爺に柔術を学び、達人並みに習得しているとのこと
それをアルカは1年ほど修行してもらっていたのだ
ネギが攻撃すれば、アルカがそれをいなしていく
アルカは余裕そうに対応しているが、ネギは脂汗が酷く、体力ももうもちそうにないようだった
そこでネギはこのままでは勝てないと思ったのか、今までとは違う構えをとり、重心を下げていた
アルカも何か来ると感じいたのかどんな攻撃でもいなせるよう構えをとった
周りのギャラリーもここで決まると察したのか、ゴクリと喉を鳴らして静かになる
「はっ!」
重心を下げたネギが今日一番の速度でアルカに接近すると、左手を開き、八卦の要領で攻撃をする
「ふっ!」
ネギの攻撃は速度が出ているが、言ってしまえばただの押し出しだ
相撲で言えばかなりの威力になるが、ネギはただの子どもだ。その威力はそこまで強くないだろう
アルカも同じ考えなのか、余裕そうに押し出しをする左手を掴んで捻ろうとしている
その瞬間、ネギは左腕ごと一歩下がり、右脚を振り上げアルカの脚に向かって振り抜こうとする
それを感知したアルカは軽くジャンプをしてその攻撃を避ける
ネギは2弾越しの攻撃が避けられることを想定していたのだろう。なんと折れたはずの右腕をアルカの顔へと繰り出していたのだ
これには、この場にいる者全員が大なり小なり驚いていた
かくいう俺も今までのネギだったらしないような泥臭い攻撃におぉ!?っと思わず腰を椅子から上げていた
流石のアルカもびっくりした顔をしていたが、この1年ほどの修行で身についた感覚で、反射的に対応しようと腕を動かそうとしていた
しかし、ここで思わぬ事態が起きた
まず一つはアルカとネギの斜線上に俺がいたこと
次に、今日俺が着ていた服のボタンが古くなっていたこと
そして、急に腰を浮かしたせいで服の耐久性が下がったことだ
それは男にとって普通は見られるものではなく、現実ではほぼありえないことだった
しかしここはラブコメの世界
それが起きるのは、定石ともテンプレとも言えただろう
ブチッ
パァンッ
瞬間俺が着ていたワイシャツのボタンが弾け、純白の下着に包まれた黄金比とも言えるGカップが白日の下へとさらけ出された
ネギの攻撃が塞がれようとしたとき、アルカの目にそれは映っていた
世界中探してもいないほどの美人の、しかも超絶スタイルの良い人物の胸に思わず視線が吸い寄せられた
ペチン
気づけばネギの折れた右腕がアルカの頬を叩いていたのだった
アルカの精神年齢は大人です