あれから、服を着替えた美女が戻って来て、コナンたちがいるリビングで話すことになった
「さて、あなたたちはなぜ私の家に入っていたのですか?」
美女は至極真っ当のことを聞く
「あのよ!俺が姉ちゃんの部屋で女の人が何かで殴られているところを見たんだ!」
「ほう?」
「えっと、その前にお名前聞いてもいいですか?あ、僕は江戸川コナンって言います」
コナンの大人じみた挨拶に続けて3人も挨拶する
「ああ、ご丁寧にどうも。私の名前は防人たまと言います。ですが、女の人が殴られているですか…」
元太が言ったことに何か思うことがあるのか、少し思案している様子だ
「はい。たまさんはなにか心当たりはありませんか?」
「私は旦那様とここに住んでいますが、今日は旦那様も出ていますし。というか、それでうちに不法侵入していたのですね」
「あ、それは本当にごめんなさい」
「「「ごめんなさい」」」
コナンたちは不法侵入したことについて、謝って頭を下げていた
「いえいえ、もしかしたらと心配で来てくれたんでしょう?そういうイケ魂、もとい正義の心はこれからも持っているといいと思いますよ」
イケ魂?とコナンたちは思っていたが、言葉には出さないでいた
「それよりも元太くんが見たというのは、本当にここだったんでしょうか?」
「う、うそじゃねぇって!俺は本当に女の人が殴られているところ見たんだよ!」
「ええ、ええ、わたしくしも疑ってはおりません。ですが、現にわたしくしは今日は誰にも会っていません。ならどこやって元太くんは傷害事件の現場をここだと判断したんでしょうか?」
「あっ」
そこでコナンは思案した
「(元太はおそらく嘘は言っていない。けど、たまさんも嘘を言っているようには見えない。もし、たまさんが犯人だとしても、あんな短時間で隠蔽工作をするのは無理だ)」
そう考えて、ふと後ろを振り返るとコナンは驚いたように目を見開き、口元が不敵に孤を描いた
「おや?コナンくんはなにか思いついたのですか?」
「うん。ねぇたまさんってここのマンション以外にどこか物件所有していない?」
ーーー
今コナンたちとたまは、あるところに来ていた
そこは、たまが住んでいる部屋と同じ作りで、なおかつ道路を挟んで真正面にあるマンションだった
「お、おいコナンっ!どういうことだよ!?」
「簡単さ。今回俺たちは近くの飲食店で食事をしていたよな」
「そうですが、それがなにか?」
線の細い少年、円谷光彦が代表して返事をする
「ああ、実はあそこの窓ガラスには一部空間を広く見せるために鏡張りの場所があったんだよ」
「へっ?鏡張りですか?」
「ああ、こういう1等地ってのは、土地が高くて店も中々店舗を大きく展開出来ないところも多いんだ」
マンションのオーナー夫婦であるたまが自分の権限で、コンシュルジュに事情を説明して、コナンたちと最上階へとエレベーターで昇っていく
「ですがコナンくん、それが元太くんが見たという犯罪とどういう関係があるのですか?」
エレベーターを昇りながら、たまが不思議そうな顔でコナンに聞く
「うん。さっき鏡張りって言ったように、元太が見た犯行の現場は鏡に反射して写ったたまさんの住んでいる反対のマンションだったんだよ」
なるほどとたまは思った
「ああ、そういうことですか。わたくしが住んでいるマンションもこちらのマンションも作りが同じだったから、元太くんは鏡に反射したマンションを勘違いしてしまったということですね」
「そう、そして犯行現場はこっちのマンションの最上階だったんだ」
そう言ったコナンの言葉と同時に、エレベーター到着して、たまが代表でチャイムを鳴らす
その後は簡単だ
灰原哀が呼んでおいた警察が、住人と話をしたところ、犯罪を認めたということだ
ーーー
今回の一件は簡単な事件だったが、犯行現場を見た元太が店の一部が鏡張りだと気づかなかったことで、複雑化してしまったということだった
合流した博士たちにコナンは事情を説明したところ、たまにものすごく謝っていた
それはそうだろう。コンシュルジュに止められたのに勝手にエレベーターに乗って、マンションオーナーの住居に無断で侵入したのだ
普通だったら、子どもと言えど咎められても仕方のないことだったろう
しかし、そんな博士にたまは苦笑しながら大丈夫と伝えてその場は解散となった
帰りの車中にて
「それにしても、ものすごい美人さんじゃったのぉ」
そういう博士に一同は頷く
「髪がピンク色だったけど、お菓子とかいっぱいくれていい姉ちゃんだったぜ!」
「名前もたまって猫みたいで可愛かった!」
「あ、みこーんとも言っていましたね」
子どもたちがそれぞれたまについて思ったことを口に出す
「たまにみこーんって、なんか狐みたいね」
子どもたちの言葉に灰原が口を挟む
「え、なんでそれが狐になるんですか?」
「ああ、たまは漢字で『玉』、あと狐ってよくこーんって鳴き声を表現されがちだからな」
「なるほど!でも『玉』はなにか関係あるんですか?」
コナンの説明に納得するが、まだ子どもたちは理解しきれない様子
「なるほど。漢字で『玉』で狐と来たら、もう玉藻の前しか浮かばないわね」
灰原がそう言うと、子どもたちは玉藻の前?とわからないよだった
「玉藻の前ってのはな、平安時代末期に鳥羽上皇に仕えたとされる伝説上の美女なんだ。その実態は白面金毛九尾の狐という妖怪だっらしいけどな。中国の殷王朝の妲己が日本に渡来した姿とも言われていて、その美貌と知識で上皇を魅了したが、陰陽師の安倍晴明に正体を見破られて、那須野原に逃げ、最終的に殺生石になったとされている。言っちまえば、ゲームに出てくる九尾の狐だな」
その詳しい説明に車内の中はへぇという声が響いた
「でも、伝説の美女って言われるくらい綺麗な人でしたから、あながち本物だったりして」
光彦が浮かれたように言うと灰原は冷めた声で忠告する
「もしそうなら、取り憑かれないように気をつけないとね」
「は、灰原さん…」
「もう哀ちゃん、怖いこと言わないでよ〜」
「灰原、お前ってたまに怖いこと言うよな」
灰原の言葉は不評だったようだ
「実際そうじゃない。あんな若さで超高級マンションのオーナー。あの美貌で今の旦那を落としたってところかしらね」
皮肉気に言う灰原にコナンは言う
「いや、たまさんは落とされた方なんだってさ。それに、他のマンションの住人も旦那さんはかなりのイケメンってことらしいぜ?金目当てだとは俺は思わねーけどな」
「そうそう。たまさん旦那さんのこと言うとき、本当に幸せそうな顔してたよ!」
灰原の言葉を否定したコナンに乗っかって、歩美も自分が思ったことを言う
「なら、おしどり夫婦と言ったところじゃのう」
博士が最後に締めたことで、話題は別のことに移った
「あ、そういえば明日はトロピカルランドに連れてってくれるんですよね博士!」
「ああ、そうじゃ。じゃからみんな明日は寝坊しないでくるんじゃぞ」
「「「はーい!」」」
ーーー
翌日コナンたちは、トロピカルランドに来ていた
そこで、入園前に記憶喪失の人を見つけた
その人物は外見は銀髪にオッドアイの美しい女性であった
コナンや灰原は濡れていたり、靴が脱げていたりとおかしい点がある女性のことを怪しんでいたが、子どもたちが女性も一緒に連れていきたいというので警察が来るまでは行動をともにするのであった
………
「うわあーーー!!!」
「げ、元太ー!?」
「元太くーん!?」
「な、なんてことじゃ!」
観覧車を待っているときに、寄りかかっていた柵を乗り越えて元太は落ちてしまった
全員が大怪我をする未来を考えたが、そこで記憶喪失の女性が柵を乗り越えてアクロバティックな動きで元太を助け出した
「なっ!?」
「よ、良かったぁ」
「ふぅ、なんとか助かったようじゃのぉ」
見ていた全員が、元太が助かったことに安堵を覚えていた
係員も来て、安否も確認出来て、無事元太と記憶喪失の女性が戻ってくる
「ねえ、工藤くん。さっきの彼女の動きだけど…」
「ああ、あの動きは普通じゃねぇ。おい、灰原、あの人は黒ずくめの奴らの仲間だと思うか?」
「いいえ、顔も見たことがないわ」
「そうか」
コナンと灰原は自分たちの身体を小さくした黒ずくめの男たち、つまりジンやウォッカと関係があるのか、記憶喪失の女性を先ほどの動きから再度調査の対象になっていたのだ
「わりぃわりぃ、ドジふんじまった」
元太と記憶喪失の女性が戻ってきた
しかし、元太は軽い感じでみんなに謝罪の言葉を言う
「おいっ元太!お前、どれだけ心配させたかちゃんとわかってんのかよ!?」
そんな元太にコナンは大人が叱るように、大きな声で怒鳴ってしまう
「う、でもよぉ」
「でもじゃねぇ!この人がいなかったら、お前今ごろ怪我だけじゃ済まなかったんだぞ!」
「しゅみませ〜ん」
コナンのすごい剣幕についに元太は涙目になって、落ち込んでしまう
「まぁまぁ、元太くんも反省したようじゃし、このくらいで勘弁してやらんか」
「博士…はぁ。いいか元太、今度からは気をつけろよ」
「あ、あぁ」
博士の取り成しに矛を収めたコナンは記憶喪失の女性に向き直る
「お姉さんも元太を助けてくれてありがとうございます」
コナンに続いてみんなでお礼を言う
「いいえ、元太くんが無事でよかったわ」
女性は笑顔で元太が無事で良かったと言う
そうしていると、隣のVIP専用の空いている通路に、つい昨日会った女性が通った
「あれ?たまお姉さんだ!」
「え?」
いち早く気づいた歩美が、たまに向かって大きな声で声をかける
「本当です!あれ?男の人もいますね」
光彦の言葉通り、隣には白髪の長身の男性がいた
「あら?昨日ぶりですねみなさん」
「これはどうも。先日はこの子たちがお世話になりました」
「いえいえ、良いんですよ。それよりもみなさんも本日はここに遊びに来たんですか?」
たまの質問に一同はそうだと答える
「それより姉ちゃん、そっちの通路は係員専用なんじゃねーの?」
「こちらはVIP専用の通路でもありますから、私たちは並ばないで観覧車に乗れるんです」
「えぇ!?」
「羨ましいです!」
「ずっりぃよ!」
そういう子どもたちに博士はこれこれと言いながらも、たまに謝罪の言葉を言う
「すみませんこの子たちが失礼なことを」
「あはは。良いんですよ、ずるいのは本当ですから。そうですね、ならあなたたちも一緒に来ますか?わたくしたちと乗るのでしたら、今すぐ観覧車に乗れますよ」
「「「えぇ!いいの(ですか)!?」」」
「ええ、大丈夫ですよ。旦那様もよろしいですよね?」
そう言ったたまに旦那様と言われた男性は苦笑しながらOKを出す
「本当にいいですかのぉ?」
「ええ、それじゃあ行きましょうか」
子どもたちはわーいとテンション高くVIP専用通路に入り、観覧車乗り場まで走っていく
それを困った顔で博士は追いかけながら付いていく
「君たちは走らないで偉いね」
コナンと灰原はたまの夫だという男性に声をかけられた
「はい、せっかく招待してもらったのに、失礼なこと出来ないですから」
コナンはそう言って、灰原を背中に隠しながら失礼にならないよう返答する
男性はそうかいと言って、自分も観覧車乗り場に向かっていった
男性が少し離れたあと、灰原は息を整える
「おい、あの人になにか感じたのか?」
コナンは険しい表情でいる灰原の様子を伺いながら聞く
灰原の様子は冷や汗が浮いており、身体も震えていて、普通ではなかった
「まさか、あの人が黒ずくめの仲間ってことか!?」
コナンは怨敵の相手仲間かもしれない男性について灰原に問う
「…いいえ、ジンやウォッカような独特な雰囲気はあの人からは出ていないわ」
「なんだよ。じゃあなんでそんな顔してんだ?」
目的の人物じゃないと知って、コナンは身体の力を抜く
「でも、感じたのよ。ジンたちとは違った、何か得体のしれないなにかを」
「何かってなんだよ」
コナンは呆れながら言うが、灰原の表情はずっと優れない様子であった
………
「ふーん、あの子まぁまぁ勘がいいのかね」
どっかの白髪青目バカがそう言いながら、観覧車に乗っていくのであった
ーーー
それから一行は、観覧車に乗って、空からの眺めを楽しんでいた
「うわーすっげー!」
「ほんとう!」
「トロピカルランドが全部見えますよ!」
子どもたちが観覧車のガラスにへばりつきながら、テンション高く見ている
大人たちはそんな子どもたちを微笑ましく見ながら、自分たちも眺めを楽しんでいた
「本当、こんなに高くから見ると壮観ね…うっ!?」
天井付近まで観覧車が来た瞬間に記憶喪失の女性が、急に苦しみだした
「ど、どうしたのお姉さん!?」
「う、うぅ!」
みんなが声をかけても、記憶喪失の女性は頭を押さえて痛みに呻いている
そうこうしていると、記憶喪失の女性の口から、英語のような単語をはじき出す
「うぅ、スタウト、アクアビット、リースリング、キール、バーボン、ライ…」
「「なっ!?」」
「すたうと?」
「あくあびっと?」
「なんだそれ?」
コナンと灰原以外の子どもたちが聞き慣れない単語に戸惑っている
「ほぉ」
そして、小さい声で白髪の男性、ゴジョウは目を細めながら呟いた
「なるほど。そういうことか」
「(なんだとっ!?)」
ゴジョウが呟いた言葉が聞こえたのか、コナンが険しい顔をしながらたまの夫を盗み見る
「と、とりあえず安静にしながら下に着くのを待とう」
博士がそう言いながら記憶喪失の女性を寝かせる
そして、下に着くまで全員心配そうな顔をするのであった
ーーー
「お姉さん大丈夫?」
「ええ、もう大丈夫よ。ありがとうね」
「ううん。元気になって良かった」
そう言って歩美は記憶喪失の女性に微笑む
「あの、あなたもありがとう。優先して治療室を使用させてくれたのもあなた方の口添えのおかげだって聞いているわ」
「いえいえ、困ったときはお互い様ですから。元気になって良かったです」
ここを早く使えるようにたまはゴジョウに頼んで、優先的に使用出来るよう係員に言っていたのだ
たまはここにいるが、というか女性以外は外で待っている
それで、今は3人で話しているのだった
外にいる男性陣は中に入るわけにはいかなかったので、そわそわしながら会話をしていた
………
「なぁ博士、あの姉ちゃん大丈夫かな」
「心配です」
「まぁ、大丈夫じゃろう。ここに来るまでにだいぶ、症状が治まっていたようじゃし」
「そうだぜ。多分あれは一時的なもんだと思うぜ?」
コナンと博士がそう言うと、男の子2人は安心した様子で笑う
「それよりも、ゴジョウさんはあのお姉さんが言っていた単語に覚えがあるようだったけど、何か知っているの?」
コナンがゴジョウに探るような、そしてまるで子どものような無邪気さで聞く
「うん?ああ、ちょっと聞き覚えのあるお酒の名前を言っていたから、反応しちゃったんだよ」
「へえ、そうなんだ」
コナンはゴジョウの返しに少し平坦な声で言う
「ええ!?あれってお酒の名前だったんですか」
「うちの酒屋にあんな名前のやつ聞いたこともねえぞ?」
光彦と元太は記憶喪失の女性が呟いていた単語がお酒の名前とはわからなかったようだ
「まぁ、お前たちがお酒を飲むにはまだまだ先だから、気にすんなよ」
コナンが2人にこの話を忘れさせるように話題を逸らす
「お前たちこの後どうする予定なんだ?」
「え、あ、はい。このあとは屋台を周る予定です」
「おう!母ちゃんからお小遣いもらってるからよ」
その後も、屋台のどこを周ろうかなど話をして、少ししたあと女性陣が戻って来た
「みんなお待たせ。心配かけちゃってごめんなさいね」
「お姉さん大丈夫でしたか!?」
「姉ちゃん大丈夫かよ!?」
「ええ、お医者さんの話では一時的なものらしいわ」
そう言うと、みんな笑顔で次周る屋台のことを話している
そうした中で、コナンと灰原はコソコソと小声で会話をしていた
「おい灰原、ゴジョウさんもそうだが、あの人も何かあるみたいだから注意していくぞ」
「ええ、今のところ問題ないけど、もしかしたら彼らの仲間がすでに潜んでいるかもしれないわね」
「ああ。ってか、灰原本当にあの2人に見覚えはないのかよ」
「ないわよ」
そう言って、2人は治療室を出ていく同行者についていくのであった
夢の国高くなったね