PCゲームの金字塔『NG-O2』のサービスが終了して早数年。
『NG-O』シリーズにのめり込んでいた一色 新澄の世界は灰色だった。
そんな新澄の姉にVRゲームの超話題作『CoP』をやるように勧められる。
この物語は新澄たちが繰り広げるVRMMOの物語。
※続きません。書いたけど続きが書けなかったので供養します。
–1–
いつも隣にいた相棒を見る
その表情は誇らしげでどこか哀愁が漂っていた
「これで私たちの目的が果たされました。」
彼女が身に纏う純白のドレスと腰に携える深紅の剣は普段使用することのない貴重なもの。
それらに使われる素材や力を込めてくれた人に相応しい神々しさを放っていた。
が、それは過去の話
ドレスは所々に破け、焼き焦げ、血が滲んでいる。
刃が収まる鞘もなく、刀身がむき出し。しかもその刃も刃こぼれが激しい上に例に漏れず血が媚びりついている。
普段は漏れ出す神々しさは微塵も感じられない。それをこびりつく血が放つ威圧がかき消しているから。しかし彼女の儚さまではかき消されず、こんな姿でさえ折れてしまいそう。
「これも全てマスターのお陰です。この道のりは大変でしたがその道は私にとって大切な思い出です。」
彼女が思い出を語り出す
「そう、A++級侵虫『脂鱗粉 アゲノザーズ』の討伐戦やA++級侵魚『光彩鏡鱗 ウォノグライド 』の討伐戦、そしてS級侵獣『万貌反転 アルダバーブ』の戦闘。全て私の思い出です。」
それは間違っても年頃の女の子から出る字面ではない。だけれど、確かに彼女との軌跡であり俺たちの思い出であった。
「だけど……だけど……もっと貴方と居たかった。もっと貴方の隣に居たかった。もっと貴方と一緒に笑っていたかった。もっともっともっと!!……貴方との思い出を作っていきたかった……」
過去の戦闘を思い出したことを皮切りだったのだろう。彼女の本音が洪水のように溢れ出す。燃えるような赤い瞳は潤み、口元は震えている。
最終決戦前に『涙は絶対に流さない、最後は笑顔でお互いを送りましょう』という約束を結んだからか、涙を流すことを堪えている。しかしそれも1歩手前を踏みとどまっている状態。いつその光が流れてもおかしくはない。
ここまで感情的に叫ぶ彼女を見るのは初めてかもしれない。そんな新しい彼女の発見も最後になってしまう。
少し落ち着いたのかいつもよりも真っ赤な目でこちらを真っ直ぐ見つめる。
「長い間、最後まで私とともに戦って頂きありがとうございました。」
こちらこそ感謝を伝えたいが、伝えられない......伝わらない
彼女に声はおろか指一本も届かない。
「本当...にこれで最後......なんですね。本当...に...」
彼女の目尻が光り、その言葉に嗚咽が混じる。
俺ももう流れないと思うほどの涙を流したばかりなのに、自然と目尻が潤む。
「ダメですね、『涙は流さず最後は笑顔で』ってあんなにも言ったのに、もう貴方の手を煩わせてはいけないのに……
もう……貴方の手を借りられないのに……」
目を擦り笑みを浮かべる。
それは強引につくられた笑顔であることは俺でも分かった。
……スー……ハー
……スー……ハー
何度か深呼吸をする
そして何かを決意したようにこちらに目を向ける
「それではマスター、さようなら
マスターの進む道に幸あらんことを」
それはため息が出るほど綺麗な笑顔だった
── GAME END ──
いままでプレイして頂きありがとうございます。
2066年3月31日18時59分現時刻をもって『New Generation-Online 2』のサービスを終了させていただきます。
全マスターの新たな物語に祝福を
Thank you for all master.
–2–
終わった
終わってしまった
一度目とは違う。耐えられるわけがない
もう一度長いため息を吐き、天井を仰ぎ見る。
久しく流していないが、今日だけで二度流した涙を拭う。目が赤いのは鏡を見なくても分かる。
思わず背もたれによりかかり脱力してしまう。
気づけば辺りは暗くなり肌寒い。3月もあと数時間で終わり。季節的には春に片足どころか両足突っ込んでいても未だに寒いようだ。
再びため息をつき、気だるい気持ちを押しのけて窓を閉めようと普段より重い腰をあげる。長時間同じ姿勢だったからか、身体の至る所がポキポキと鳴る。
外の空気を拒むために窓をしめる。そして窓ロックに手をかけるが、ふと上を見る。
あの宙で俺たちは……
アニメでも小説でもゲームでもそうだが、最終回を観るとしんみりとしてしまう。悪いくせだ。
出来ればこのまま静かに一人で感傷に浸りたいがそうもいかない。
下の階から俺を呼ぶ声が聴こえる。
時計を見ればいつもなら家族とともに席に着いている時間。しかも長時間パソコンに集中していため気が付かなかったが腹の虫が鳴っている。
指をかけたままのロックをそのまま下ろし、カーテンを閉める。ふと、とある悪友のことを思い出し灯りのついた向かい部屋を見る。その数秒後灯りが消えた。
なるほど、あいつも俺と同じか
そう思い苦笑する。部屋を出るために翻すがとある一点に目が止まり、数秒悩む。結局そのまま放置することにし、心に居座った思い出を噛み締めて部屋を出る。
その部屋に残るのは
初春の寒さで冷えた空気と
戻れない世界のページを開いたままのパソコンだけ
–3–
ゲーム史は長い。これまで様々なゲームが流行してきた。
頑張ればアナログゲームまで遡ることができるが一旦デジタルゲームの話をしよう。
その流行はアーケードゲームから始まり家庭用テレビゲーム、携帯型ゲーム、スマホゲーム、VRゲームと技術の進歩とともに環境ハードも移り変わってきた。そして、それらが社会現象になることも珍しいことではない。
ところで、ゲーム好きの人達は一度は考えたことはないだろうか。「ゲームの世界に入ってみたい」と。
その欲求を体現していたのが創作物という形である。
世に無数の物語が存在しており、一大ジャンルとして受け入れられ、長年人々から愛されてきた。
それはフルダイブ型VRゲームだ。
今までファンタジー作品として王道のジャンルであり、様々なゲーム好き、創作物好き、ゲーマーから恋焦がられていたものでしかなかった。
しかしある日、天才たちによってそれは現実と化した。
夢がついに現実となり世界は沸きに沸いた。同時に批判的なコメントもあったのだが、今は話すべきことではないだろう。
長年憧れ続けられてきたものが社会現象となるのは道理であった。が、その道理は人々がディスプレイゲームから離れることも内包している。
そんな荒波に逆らうかのように、一つのPC専用MMORPGゲームがサービス開始した。それは後に「時代遅れの神ゲー」と謳われた『New Generation-Online』の伝説の始まりでもある。
「New Generation-Online」、略して「NG-O」は襲い来る地球外生命体を亜神たちとともに倒すバトルコマンド型オンラインRPG。どこにでもあるそんなゲームシステムであった。
発売当初こそ見向きもされなかったこのゲームだが、次第にその異常さが世に顕になる。
まるで無限と思えるほどの無数のアイテム、まるで人間と喋っているかのようなAIを搭載したNPC。その現実味を助長させる物理エンジン。そして胸熱くなるストーリーと魅力的なキャラクターたち。
それらだけでもPCゲーム一、いや全作品一の異常作と評されてもおかしくない出来だった。それだけ飛び抜けていたのだ。
そして最も異常であったのが、プレイヤーごとに展開するストーリーが異なっていたという点。
よく「貴方だけの冒険譚」「あなたの旅路」という謳い文句が存在するが、実際は「寄り道の順番は違うけど、結局ストーリー的な部分では俺たち同じ道歩いて来たよな?」状態。
しかしこれは違う。これだけは違った。本当の意味、言葉そのままの意味で「私たちの冒険譚」であったのだ。
その実、まるで異世界へ飛び立つフルダイブ型VRゲームより異世界していたのだから。「異世界していた」ってなんだよと思うかもしれないが、実際そうだったのだからそうなのだ。
そして一度のめり込んだプレイヤーたちは、こう口を揃える。「たしかに俺たちはあの世界で生きていた」と、
そんな作品があれば
そんな
「『New Generation-Online 2』サービス終了のお知らせについてのご案内」
そして2066年3月31日、
時代遅れの神ゲーと謳われたPC専用MMORPG『New Generation-Online』シリーズ
その二作目が惜しまれながらも幕を降ろした。
「次回作」
この三文字は残らず、残されたのは元プレイヤーたちの「もう一度」という願望だけ