魔法少女☆鹿目まどか 円環最期のZERO秒間   作:凡庸

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第13話

 鹿目まどかは眼を開いた。

 心地よい程度にひんやりとした空気が彼女を出迎えた。 

 体は重く、視界はまだぼやけている。手を動かし、足を動かした。

 通学用のスニーカーで包まれた爪先は硬い何かに触れた。車の助手席に乗っていた時を思い出した。

 

 そう思うと、急激に感覚が戻ってきた。

 背を預けているのは背もたれの大きな椅子であると気付いた。

 鹿目まどかが思ったように、乗り物の為の座席と気付いた。傾きは少なく、乗り手を衝撃から守る作りをしていた。

 目の前には車のハンドルをより頑丈にさせたような操縦桿があり、その周囲にはレバーやボタンが配置されている。

 

 どう使えばいいのか、当然ながら鹿目まどかには分からなかった。

 それでも手を伸ばし、操縦桿を掴んだ。

 初めて触ったものであるのに、それは妙に手に馴染んだ。まるで初めて愛弓を呼び出し手に持った時のように。

 

 操縦桿を握ると、鹿目まどかは前を見た。

 一面のガラス張りの奥に、一面の白が見えた。白でもあり、無色でもあった。

 その白が近いのか遠いのか、距離感が定かではない。音も聞こえず、無色の世界がどこまでも広がっている。

 

 

おはよう、鹿目まどか

 

 

 声がした。音の無い空から降る、物静かな声が。

 声を聞いた時に生じた震えを、鹿目まどかは操縦桿を強く握って必死に耐えた。

 華奢な手が握る操縦桿と、細い背中を支える座席冷たい感触が体の中で沸き上がった恐怖の熱を幾らか楽にしてくれた。

 

 

どうやら不思議なことが起きてるみたいだね

 

君も気付いているんだろう?

 

権能を剥ぎ取ったとはいえ、さすがは女神といったところだろうか

 

それにしても、まさか僕たちが支配した空間に外部から侵入できる存在がいるとはね

 

でも、そこまで不思議じゃないから驚くには値しないね

 

こういったことは、既に経験済みだろう

 

ねぇ、暁美ほむら。いや、悪魔様とでも呼ぼうかな?

 

 

 虚空からの声に、鹿目まどかは思わず片手で胸を抑えた。

 どこかで小さな声が鳴った気がした。感情の無い嘲笑に聞こえた。

 

 

やっぱりそこにいるんだね

 

待ってておくれ、二人とも

 

今すぐそこから出して、またあるべき場所に戻してあげるよ

 

そう、君たちが終わるまで終わらない、永劫の世界にね

 

 

 鹿目まどかは息を吞み、胸の内側からは熱を感じた。奥にいる者が発した怒りと恐怖の感情だった。

 その様子に、声は無言で答えた。そして再び声は降ってきた。

 

 

今の現状が気になるのかい?

 

じゃあ、見せてあげるよ。君たちが今いる場所を

 

 

 

 声が響くと、虚空がぼやけ、そこに映像が浮かび上がる。

 そこに映っていたのは、虚空に浮かぶ人型だった。

 ロボットという言葉が鹿目まどかの脳裏に浮かぶ。

 その存在を、彼女は幾度も目にしていた。自らの姿を模した存在の心を覗いた時に、この姿を幾度も見た。

 何度も何度も、数が無意味になるような回数を。

 地獄の最前線に、常に立ち続けた黒鉄の城の威容があった。

 

 だが今、その威容には歪みがあった。

 各所の装甲が大きく歪み、全身に無数のヒビが入っている。

 四肢は胴体に付いているが、背中の翼は大きく捻じれて原型をほぼ失っていた。

 その痛ましい姿に、鹿目まどかは胸が締め付けられる思いだった。

 

 

 

鹿目まどか

 

君は何故悲しんでいるのかな?この存在は外の世界から来たんだよ?つまりこれは僕達の宇宙の敵さ

 

それでも泣くのかい?

 

相変わらず理解しがたいね、君は。仕方ない、ちょっと説明をしておこうか

 

この存在、機械だけど知性を持つみたいでね。解析したら、『Z』という名称であることが分かったよ

 

まぁ名前なんてどうでもいいよね。機械人形と呼ばせてもらうよ

 

実際、人形みたいなものだったし、今は壊れた人形だ

 

この機械人形は僕達が支配した世界に突然現れて、破壊の限りを尽くしていったんだ

 

もう無意味な存在になっているけど、隷属させた魔女達を次々と殺していって

 

ワルプルギスの夜にイツトリ、遂には絶望の魔女まで斃してしまった

 

少し前の僕達なら、これには驚いただろうね

 

何せ魔女達は解析のついでに大きさは個体差はあれど数十倍、戦闘力もそれに準じた力に引き上げたのに

 

その割れた胸からの熱線、「ブレストファイヤー」という武装で一撃で倒していったのだから

 

でもそれだけだ。最初から魔女達には期待していなかったし、空間支配能力下で他空間に干渉できる存在なら、その程度はやるだろうからね

 

驚くということであれば、その機械人形の奇妙な行動かな

 

魔女くらいなら殴る蹴るだけで圧倒できた筈なのに、なぜか一撃で倒すことに拘っていたんだ

 

まぁ理解はできないけど察せはするね

 

この機械人形は、魔女を苦しめたくなかったのさ

 

だから防御に徹して、確実に一撃で仕留められる時にしか攻撃をしなかったんだ

 

魔女の苦痛を気にするなんて、わけがわからないよ

 

性能は低いとは言わないけれど、搭載されている思考回路はお世辞にも賢くはないようだ

 

でもこの装甲と動力源は興味深い

 

魔女からの攻撃だと、結局傷一つも付けられなかったからね

 

それに幾ら稼働してもエネルギー切れを見せなかった。頭脳に反して性能面では本当に優秀らしい

 

まぁ、それももう無意味に近いのだけどね

 

そう思わないかい?

 

機械人形の内に宿る者よ

 

 

 空から降りる声に、鹿目まどかは身を前に乗り出した。

 そして目いっぱいに両手を広げた。

 その様子に、声はしばし言葉を失った。

 やがて、空からは溜息が降りてきた。

 

 

守ろう、というのかい?

 

君は本当に、無意味なことが好きだと見えるね

 

実際、君は何も守れなかったじゃないか

 

それに今も、魔法少女達を守ることを放棄している

 

 

 無機質な声には諫めるような響きがあった。

 

 

これば僕達との契約の不履行にあたるよね

 

まぁ今回は例外として、見逃してあげるよ

 

 

 そこで声は少し途切れた。再び溜息が零れた。

 

 

君はどうにも反抗的だね

 

矮小で脆弱とはいえ、味方であり盾を得たから、少し調子に乗っているのかな

 

 

 やれやれと声は続けた。

 

 

なら、思い出させてあげよう

 

僕達と結んだ契約を

 

 

 声と共に、虚空の光景が変化する。鹿目まどかは、それをじっと見た。

 このとき、座席の前のパネルが光を発していた。鹿目まどかは、そこに手を触れて優しい手つきで左右に振った。

 大丈夫、という意思表示だった。意思を受け取り、光は消えた。

 

 虚空に浮かぶ光景は、瓦礫の山と一面に広がる水面だった。

 豪雨の中、一人の少女が立ち尽くしている。

 桃色の髪に学生服を纏った少女、鹿目まどかであった。

 

 

 

 

 

 

 

鹿目まどか

 

 

 映像の中でも、今と同じく彼方からの声が鹿目まどかへと届いた。

 雨に打たれる鹿目まどかは動かない。動けない。

 今の自分が無力だと、心の底から分かり切っていた。

 

 

分かっているとは思うけど、君にはもう女神の権能はない

 

今の君は、ただの無力で無価値な一人の少女

 

何の役にも立たず、何者にも成れない者

 

魔法少女ですらない、『鹿目まどか』だ

 

今の僕達はもう、魔法少女を必要としていない

 

女神であった頃の君ですら正直なところ、少し珍しい昆虫か石ころみたいなものさ

 

だから処分してもいいし、無視してもよかったのだけど

 

それだと余りに勿体ないし、君達への不敬にあたると思ったからね

 

僕達は君らの存在を肯定し、残し続けることにしたのさ

 

しかし鹿目まどか

 

それには僕達と契約を結ぶ必要がある

 

懐かしいよね、このやり取りも

 

まず前提としてだけど、魔法少女達は僕達が預かっている

 

今は全員、眠っているような状態さ

 

行動を観測するために、支配下に置いた魔獣の瘴気や忘却の魔女イツトリ、ワルプルギスの夜の力で人形のように動かしてはいるけどね

 

彼女たちの意識は完全に封じてある。だから安心するといい

 

それでだけど、鹿目まどか

 

先ほど僕達は君を虫や石ころと称したけど、決して無価値とは思っていない

 

君は納得いかないかもしれないけど、僕達の認識における価値観の比較対象がそれである事を君にとやかく言われる筋合いはないし、こちらの価値観の否定は君の品位を下げるだけだからね

 

まぁ兎に角、これでも僕達は君の事を価値があると思っているんだ

 

だから君だけには自意識を残して、行動の自由も与えたんだよ

 

久々の人間の体は、とても懐かしいんじゃないかな

 

痛みや肉の疼きといった、低レベルとはいえ高次元下では縁遠かった感覚も再現してあるから、存分に味わってほしい

 

尤も僕達が望むのは前者であって、後者はもしかしたら君の認識が変化することでそう感じてしまうことかもしれないけれど

 

それで価値についてだけど、君も極めて弱い存在ながら神ではあった

 

現状、神という概念のサンプルが足りないということもあるのだけど、だからこそ君の存在は貴重だ

 

だから君から剥ぎ取った神としての部分は、細胞の一欠片まで大事に解析させてもらうよ

 

それだけだったら、もう君には要は無いのだけど

 

それでも君は神だった。神になれた存在だからこそ貴重なんだよ

 

もう一体、魔法少女に類似する個体がいるけれど、あちらは君と比べたら権能は幾らか劣るし特定条件下での発生だったからね

 

だから今回は君で試すことにしたのさ、鹿目まどか

 

 

 声が言い終わると同時に、鹿目まどかの眼の前で水が大きく跳ねた。激しい水流は容赦なく鹿目まどかを襲った。

 既に豪雨に全身を打たれ、前髪が顔の半分を覆っている。華奢な体が揺れたが、彼女は耐えた。

 そして無力感と悲しみと、そして恐怖に囚われながらも彼女はそこを見た。

 髪の奥で目が痙攣し、口からは小さな悲鳴が漏れた。

 

 

懐かしいだろう

 

かつて君の胴体を貫き命を奪ったものだ

 

美国織莉子は、良い因果を紡いでくれた

 

 

 水の中に人の胴体ほどの大きさのコンクリ片が沈んでいた。

 鹿目まどかの足首より少し上程度の水面から、その表面が僅かに突き出ている。

 声の主の言葉通り、鹿目まどかにはその物体に見覚えがあった。

 嘗ての記憶が鹿目まどかの脳裏に浮かぶ。学舎が襲撃され、眼の前で多くの友人知人達が虐殺された。

 何もできないままに、自分は死んだ。それは破滅へと向かうしかなかった、悲しき運命の紡ぎ手の物語だった。

 

 

想い出に浸っているところ悪いのだけど

 

そろそろ契約の話をしよう

 

鹿目まどか

 

君は第三者の加入があったとはいえ、単体で女神へと至った類稀な存在だ

 

その存在を喪うのは少々惜しい

 

だからまた、因果を重ねて欲しいんだ

 

 

 雨の中、鹿目まどかは黙って聞いていた。

 何を自分にさせたいのか、彼女には分かってしまった。

 

 

今からずっと、君には死に続けてほしいんだ

 

そうして因果を重ねて

 

また女神になってほしい

 

君が因果を重ねている間

 

魔法少女達には

 

手を出さないと約束しよう

 

 

 言葉の抑揚は全て等しいが、発している者の数が増えていた。

 一つの言葉の中で、幾重もの声が唱和している

 

 

だから僕達と契約して

 

死と再生を、永劫に繰り返して欲しいんだ

 

君の心が絶望して

 

砕け散って

 

魔女になるのか

 

或いは女神になるのか

 

そのどちらかになるまでの間

 

魔法少女達は生かしておいてあげるよ

 

ただその時が来たなら

 

女神化は最早普遍的な事象となる

 

だから他の魔法少女を使って

 

君と同じことを試してみるつもりだよ

 

次の女神になるのは

 

美樹さやかか

 

美国織莉子か

 

呉キリカか

 

和沙ミチルか

 

昴かずみか

 

天音鈴音か

 

日向華々莉か

 

ジャンヌ・ダルクか

 

王妃か、その娘達か

 

今から楽しみだね

 

それが嫌だというのなら

 

君だけの犠牲で済ませたいのなら

 

鹿目まどか

 

君は未来永劫、死に続けてくれ

 

 

 無慈悲、という話ではない。

 それは新たな法則だった。万物が支配された中で、少女に出来ることは一つしかなかった。

 だがそれを選べるものが、果たしてどれだけいるのだろうか。

 条件を提示された時点で、正気を失うものが殆どだろう。

 しかし、女神でだった少女は正気だった。正気のままに、恐怖と悲しみに苛まれながら絶望の寸前で鹿目まどかは留まっていた。

 

 

しかし

 

少々君にとって都合が悪いかもしれないね

 

君達との間で生じた認識の差異による契約の齟齬は

 

僕達にも不利益をもたらした

 

これは反省すべき点だ

 

だから鹿目まどか

 

もう一つの道を提示しよう

 

それは、君は女神のままでいるという条件さ

 

円環の理も

 

並行世界を観測することも

 

魔法少女を現世の絶望から救うということも

 

全てを許容してあげよう

 

ただ一つ

 

君以外の円環の理の魔法少女を

 

定期的に実験台として差し出して欲しいんだ

 

これは君と円環の理にとって

 

破格の条件の筈だよ

 

君達はこれまでとなんら変わらない生活を送れるんだ

 

聞くまでもないけど、一応聞いておこう

 

どちらを

 

「お願いします」

 

 

 声を遮り、鹿目まどかが声を発した。哀願に満ちた声だった。

 

 

「思う存分、私を殺してください。皆に手を出さないでくれるなら、何をしても構いません」

 

 

 水しぶきを上げながら、鹿目まどかは倒れ込んだ。

 脚を折りたたみ、水で覆われた地面に座る。それは、土下座の形だった。

 

 

「だからお願い…私の願いを叶えて…お願いです…なんでもしますから…皆には…皆には手を出さないで…」

 

 

 嘗てに近い言葉を鹿目まどかは言った。

 しばらく時が流れた。恐らくは、困惑していたのだろう。

 その選択を選ぶことが、信じられなかったために。

 

 

勿論さ

 

遠慮するわけないじゃないか

 

そういう契約なのだから

 

安心しておくれ、鹿目まどか

 

だから君の心が絶望して壊れるまで、何度でも何度でも、永久に死に続けて欲しいんだ

 

では、早速

 

 

 声を遮るように、鈍い音が鳴った。

 土下座の姿勢の鹿目まどかは、既に水に沈んだコンクリ片に額を打ち付けていた。

 小さな頭の中で鈍痛が響いている。しかし再び、鹿目まどかは頭を強打した。

 額はまだ割れておらず、しかし皮膚が破けかけていた。

 次で皮膚が破れた。次の殴打までには時間を要した。

 余りの苦痛で、肉体が麻痺していた。

 

 

鹿目まどか

 

 

 急かす様な声が鳴った。

 

 

鹿目まどか

 

鹿目まどか

 

鹿目まどか

 

鹿目まどか

 

鹿目まどか

 

 

 声が唱和する。突っ伏していた体がゆっくりと動き出す。

 そして鹿目まどかは、狂ったように顔をコンクリに激突させ続けた。

 額と言わず、頬に鼻にとぶつけていく。

 

 

頑張っておくれ

 

鹿目まどか

 

君が死に向かって生きている間は

 

魔法少女達は光ある場所で生きられるんだ

 

君の死によって存続する世界

 

それが今の円環の理だ

 

その世界を肯定するのなら

 

君もまた生と死の円環を繰り返すといい

 

今はその第一歩だ

 

だから頑張っておくれ

 

鹿目まどか

 

 

 激痛が顔全体を覆い、可愛らしい顔が見る見るうちに損壊していく。

 前歯は全て折れ、舌は嚙み砕かれて肉片となった。鼻は潰れ、眼も潰れかけている。

 それでも必死になって、鹿目まどかは己を破壊しようとしていた。

 顔をコンクリの表面に擦り付けて、少しずつ少しずつ、自分を壊していった。

 

 

やれやれ

 

非力すぎて

 

自殺も出来ないみたいだね

 

君は本当に

 

弱すぎる

 

でもまだ

 

時間はたっぷりあるからね

 

とはいえ

 

こちらも試したいことがあるからね

 

だから鹿目まどか

 

これは僕たちなりの

 

誠意だと思って

 

受け取っておくれよ

 

お礼なんて

 

言わなくて大丈夫だよ

 

まぁ

 

その様子じゃ

 

何もできないだろうけど

 

 

 

 鹿目まどかは動きを止めていた。水面には血が浮いている。

 土下座の姿勢のまま、鹿目まどかは停止していた。

 その体が、血と水を垂らしながら引き上げられた。

 潰れかけた目で、損壊した顔で鹿目まどかは見た。

 自分の首を掴んでいる、異形の髑髏を。

 

 

 

さっきも言ったよね

 

魔獣達は僕達の支配下にあるってさ

 

この存在は君に恨みを持っているようだから

 

喜んで協力してくれたよ

 

そうそう

 

次からは魔獣達が君の相手をするよ

 

相手とは言っても

 

性的な辱めは禁止してあるから安心しておくれ

 

快感を覚えて

 

希望を持たれても面倒だからね

 

 

 

 

 細首が髑髏の手で掴まれ、爪先が肉を抉っている。顔の感覚は既に無いが、首を引き延ばされる痛みが鹿目まどかの意識の喪失を許さなかった。

 血だまりとなりかけている眼に映ったのは、周囲に並ぶ無数の魔獣達。

 鹿目まどかは、その中へと放り投げられた。

 宙にいる間に、無数の手が小柄な少女の全身を掴んで引いた。

 服が、皮が、肉が剥ぎ取られ、桃色の内臓が晒された。それらもまた魔獣達に掴まれ、一気に引きずり出されて引き千切られる。

 手足も胴体から引き抜かれ、鹿目まどかの肉体は破壊されて伽藍洞になった胴体に、壊れた顔が乗せられている状態となった。

 その鹿目まどかの体を、無数の武具が貫いた。

 それは槍であり銃剣であり、サーベルであり斧のような赤黒い爪であり、十字架のような杖であり、熱せられた刃であり白銀の剣であった。

 潰れかけた眼の奥には、極大の悲しみがあった。

 

 

 

これらの魔法少女達は

 

ワルプルギスの夜の影魔法少女と

 

イツトリの忘却魔法の応用と

 

鏡の魔女の技術を応用して

 

動かしているんだよ

 

大丈夫

 

本人たちの意識は眠ったままさ

 

だから安心して

 

君は死に続けておくれ

 

 

 体を貫く得物が一斉に動き、鹿目まどかの胴体を破壊した。

 飛び散る肉片を、闇色の小さな異形達が奪い合うようにして喰らっていく。

 魔女の使い魔と思ったときに、鹿目まどかの顔を複数の足が踏み砕いた。

 原型がなくなるまで何度も何度も彼女は踏み続けられた。

 やがて桃色の頭皮に僅かな肉片がこびりついた状態になったとき、ようやく意識が薄れてきた。

 

 

今回は、そうだね

 

ゲームで言うチュートリアルっていうのかな

 

マミ風に言えば

 

体験コース第一弾って感じだろうか

 

だから脳が破壊されても

 

意識は保ったままにしておいてあげたんだよ

 

もう分かったよね

 

君はもう完全に僕達の支配下だ

 

だからもう、君はお終いなんだ

 

それでも君は

 

一度条理を覆した存在だ

 

だからもしかしたら

 

何かを起こせるかもしれないね

 

そうなるのが

 

僕達としては楽しみだよ

 

でもきっと

 

その何かは起きないだろうね

 

では、鹿目まどか

 

君はもう運命の虜だ

 

避けようのない滅びと

 

尽きる事の無い嘆きを

 

全て味わい続けるといい

 

希望はもうどこにもなく

 

君の存在は完結した

 

だからもう、君はここまでだ

 

さようなら、鹿目まどか

 

宇宙の理を乱した咎を

 

永劫に贖い続けるといい

 

 

 空から届く声が終わるとともに、鹿目まどかの意識は深い闇に沈んでいった。

 そして、彼女の地獄が始まった。

 

 

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