再び読書を始めた鹿目詢子を背に、彼女と同じ顔をした魔神は歩く。
そういえば歩くという行為をここ最近多用しているが、自分にとってそれは珍しい行為だと気付いた。
基本的には宙に浮いており、そもそも足を使う事もあまりない。
戦闘は遠距離戦が基本であるし、接近戦で殴るはしても蹴りを使う事はあまりない。一発殴れば事足りるからだ。
歩いてから足を止めるまで、数秒足らず。
足を止めてから考えている事のあまりのくだらなさを、魔神は小説か何かの文字稼ぎだろうかと思っていた。
薄い紅を塗った唇で息を吐く。
思考ではなく、現実に向かう時が来た。
魔神の前には、体育座りで地面に座す少女がいた。
「二人とも、よく眠ってますね。かみさま」
声を掛ける前に相手の方から声を掛けてきた。
少女の視線の先には、白い帯で全身を覆ったくろがねの魔神が、片膝を着いた状態で聳えている。
魔神の頭部には、触手で座席に拘束された少年がいた。
共に無惨な姿ではあるが、身じろぎ一つせずにただ佇んでいる様はたしかに、安らかな眠りの中にいるようだった。
「そうだな、鹿目まどか」
名を呼ばれた少女は、自分の母と同じ顔をした魔神へと振り返った。
返事をしたZEROに鹿目まどかは微笑み、自らの隣の地面を軽く叩いた。
叩かれた位置より少し後ろではあったが、ZEROは鹿目まどかと並んだ。
座らないのは、椅子ならまだしも地面に座るという事をしたことが無いからだろう。
または、形は変われど屈するという行為を本質的に忌避しているのか。
「かみさま、か」
言葉を舌先で転がし、顎先に左手の先を添える。
単純な動作なのに、賢人が宇宙に想いを馳せるような姿となっていた。
実際に宇宙そのものであるため、魔神が思索する様は妙に似合っている。
その様子を鹿目まどかが見上げている。
思考の最中に、ZEROは視線に気付いた。
「随分と可愛い呼び方だ」
目を合わせながら、言葉の感想を述べる。
不意を突かれて少し驚きつつ、鹿目まどかは気恥ずかし気に微笑む。
そしてそれとは別の驚きを見せて微笑んだ。
感情の機微な変化に、魔神も気が付いた。声を発する前に、ZEROは首を傾げていた。
「かみさまも、私達みたいに笑うんですね」
確かに唇の角が上向いている。
普段の嘲弄の形ではなく、客観的に見ても自然な微笑みの形になっていた。
「初めての経験だ」
形を確かめるように、繊手の先で唇をなぞる。
「形は覚えた」
「おい、なんかちょっと恥ずかしいぞ」
同じ顔の女性から声が飛んできた。
女性には背を向けているのだが、細かい動作が分かるらしい。
形の検証をやめ、ZEROは元の無表情へと戻った。
「ありがとうございます」
鹿目まどかは立ちあがり、ZEROへと向き直る。
サイドツインとリボンを揺らしながら、大きく一礼した。
「ママを、また私に会わせてくれて」
顔を戻した鹿目まどかは、ZEROの背後にいる女性を見ていた。
女性は、鹿目詢子は軽く手を振った。
軽い態度だが、その裏の想いは計り知れない。
もう二度とどころか、関係自体が消え去った仲が修復され、再び母子となれたのだから。
それに対し、ZEROは口を開いた。
「あ、そうだ。『私は何もしていない』ってのは禁止だぞ」
声より早く鹿目詢子の声が飛ぶ。
「私は特に何もしていない」
平然とした様子でZEROは言った。
鹿目詢子は苦笑いをした。呆れながら、笑いを堪えているようだった。
「姑息な事すんな」
「書物にある通り、私は結構姑息でもある」
魔神の指摘に、鹿目詢子はページを捲る。
「ああ、やっぱこのアンチコメントはあんたが書いてたのか」
最終巻にの最終盤に相当する場面。
夢の世界の崩壊の切っ掛けとなった「マジンガーZvs暗黒大将軍」の動画に殺到した、作品を批判する阿鼻叫喚のコメント群を鹿目詢子が指差している。
「アカウントを複数作成し、低評価爆撃も行った。結果はこの通りだ」
「よかったな。また話すネタが増えたぞ。気になるから、あとで酒飲みながら聞かせてくれよ」
笑いながら目を擦る鹿目詢子。
魔神のあまりのみみっちく人間臭い行動がツボに入ったらしく、目じりには涙が浮かんでいる。
「まどか。酒は飲ませねぇけど、あんたも何か食いたいものあるか?」
「ありがとうママ!ええっとね」
距離を隔てつつも母子は語り合う。
ZEROは無表情だが、好まし気に耳を澄ませていた。
微笑んでいた方が自然と思い表情を作ろうとするが、こう思考して自然さを演じようとすること自体が不自然と思い取りやめた。
代わりに別の事を行った。
―――助かった
『こっちこそな。あの子の前で泣きたくねぇ』
思念を送ると、相手からも返事が返ってきた。
原理について双方が深く考えず、呼吸のようだと思っている。
「また微笑んでますね、かみさま」
「そうか」
「よくお似合いです」
「そうか」
ZEROは単なる反応のように返している。
本人は全く変わらない様子で形も変化が無いが、鹿目まどかは楽しそうに笑っている。
照れ隠しのように思えて、可笑しくて楽しいのだろう。
「あなたも笑顔がよく似合う」
ZEROは素直に思った事を口にした。
数秒後、鹿目まどかは顔を紅潮させた。
両手で顔を覆い、しばし悶えた。
悶えたのちに、ゆっくりと手を離した。
幼い顔は、未だに少し赤かった。
「ああ、嬉しいな。とっても嬉しい」
褒められた事の嬉しさと気恥ずかしさ以外の赤が、彼女の顔にはあった。
目尻には、拭われた涙の残滓があった。
彼女の母が、娘に涙を見せられないとしたように、娘もまた母に涙を見せたくなかったようだ。
「ママにまた出逢えただけじゃなくて、もう一人のママにも逢えるだなんて」
涙を払っても、声は少し上擦っている。
「私には、勿体ないくらいのご褒美です」
「そんな事はない」
ZEROが告げる。
「全てではないが、あなたの事を知った。あなたが身を擲ち、生み出した世界と概念を見た」
ZEROは語る。
鹿目まどかを見る金色の眼の中には、彼女の辿った歴史が流れているようだった。
「あなたは優しい。本当に」
魔神は断言した。億が端数以下にほど、世界を無限に繰り返しあらゆる事象を観測した魔神をして、鹿目まどかはそう評されていた。
「だから、勿体ないなどとは言うな」
静かで硬質な、鋼の意思を魔神は伝えた。
僅かに細まった眼つきが、少女からの反論を拒絶している。
鹿目まどかは息を呑んだ。
その感覚は恐怖であったが、それはかつて親達から受けたものと同質の恐れだった。
自分の事を、思い遣ってくれているが故の厳しい態度。
それが分かるからこそ、恐怖の後には幸福感が到来した。
温かな感覚が、心に滲んでいくのを鹿目まどかは感じた。
その温かさを糧に、彼女は口を開いた。
「私を優しいと言うのなら、かみさま。あなたはもっと優しいひとです」
鹿目まどかの言葉にZEROは硬直した。
数秒経ち、痙攣するように瞼が開閉した。
「それは、「優しい」という言葉への冒涜ではないか」
疑問ではなく、魔神は断定で言った。
鹿目まどかは首を振った。
「これは自分の事であるから、はっきりと分かる。私は自我を自覚した時から何も変わってなどいないぞ」
ZEROの言葉に鹿目詢子は口を開いたが、少し迷い、やがて閉じた。
対峙しているのは娘であり、会話の口火を切ったのも彼女である。
彼女に任せようと、母は見守ることを選んだ。
「変わりたいという気持ちはある。一方でこのままでもよいとも、またはかつての自分になりたいと思う私もあるのだ」
ZEROとは無数の集合意識。
表出はあれど、善も悪も、聖も邪も、破壊も創造も兼ねた混沌たる存在。
それが人間に似た人格を持ち、表出しているに過ぎないとZEROは定義している。
ZEROにとってそれが普通であるし、永遠に変わらない精神構造でもある。
だから、認めたくはないのだろう。
それはある意味、人間と異なる精神構造を持つ神であることの意地だった。
「そんな事を思っている私が、優しいはずが」
「あなたにとって、過去は今でもあるんですね」
鹿目まどかが言葉を遮る。少女の顔には罪悪感が滲んでいる。
人の話を最後まで聞かない。
身勝手さを通したことが、彼女の心を苛んだ。
「それはとても辛い事だと思います」
「辛い、か」
発した言葉の意味を探るようにZEROは呟く。
「過去の全てが今の私を作っている。何一つ欠けても私は今の私になれなかった。なのである意味、私は全てに感謝している。それはつまり」
「………」
鹿目まどかは、ZEROの過去を思い出していた。
女神としての自分がZEROと共にいた時、彼女は女神の中にいた。
女神の中で守られながら、彼女はZEROの過去を見た。
鹿目まどかは魔神の眼を見た。
眼の奥には、無限の地獄が垣間見えた。
女神を介して認識したZEROの過去が、ZEROの眼に、そして姿に投影されているように感じた。
「あの絶望と殺戮の歴史を、全て肯定していることになる」
「………」
無言の鹿目まどかは、歯を食い縛っていた。
数多の世界を観測し、魔法少女達の絶望を受け止めてきた彼女でも、過去のZEROは邪悪に過ぎていた。
そして、今のZEROが発する言葉も恐ろしすぎた。
「あの過去の全てが狂おしいほど好きなのも事実だ。星々も銀河も、そして宇宙そのものを滅ぼした時の感覚は今でも私の中にある」
魔神の言葉の一語一語が破滅の記録であり、滅ぼされたものが放つ呪詛でもあった。
「全てを殺し尽くして滅ぼした後のどんなに暗い世界でも、大好きだった」
ZEROは断言した。人と同じ形の舌は滑らかに動き、非人間極まりない感想を吐いた。
「なので悪という言葉は、私にこそ相応しい。どこまでも自分本位で身勝手で邪悪だ」
ZEROは言い切った。
嫌われたいわけでもない、同情が欲しいわけでもない。不幸自慢をしたいわけでもなくそもそも不幸などと思っていない。
ただ、自分は相手の事を観測済みだというのに相手からは自分の事が見えていないのは公平ではないと思っただけだった。
「本当に、そうですか?」
鹿目まどかは尋ねた。
恐怖はあるが、それでも問わねばならなかった。
「時間を繰り返したのは、本当に自分だけの為だったんですか?」
「そうだ」
鹿目まどかの問いを切って捨てるようにZEROは返した。
「それじゃあ、かみさま」
鹿目まどかはZEROに向かって歩み寄った。
拳一つ程度離れた距離まで、彼女は接近した。
ZEROからは鹿目まどかの体温が、鹿目まどかからはZEROの身体から発せられる金属の冷気が感じられた。
鹿目まどかは息を吸った。自分と相手の周囲を取り巻く熱さと冷気が肺を満たした。
「どうしてあなたは、あなた自身が夢の世界の神様にならなかったんですか?」
鹿目まどかは問いかけた。
「兜甲児さんとマジンガーZさんではなく、あなたが神様にならなかったのは何故ですか?」
彼女は更に続けた。
鹿目詢子は娘の問いに言葉を失った。
それはあまりにも盲点だった。
疑問を抱かせないほど、ZEROが創造した世界は平和に満ち、違和感を感じさせないものだった。
「彼らが私の憧れだからだ。だからこそ、彼らには無敵の存在であってほしかったのだ」
魔神は即座に答えた。
「マジンガーZと兜甲児は世界の誰からも愛され、絶える事の無い光の中で未来永劫に輝き続ける唯一無の存在であってほしかった。そうでなくてはならなかった」
淀みなく告げられるのは、恐らく常に思っている事だからなのだろう。
自我を自覚した時から自分は何も変わっていない。
ZEROの自己の定義の全てはこれにあるのであった。
「それは身勝手な夢と欲望の押し付けにすぎない。そのせいで、彼らと世界は」
『ZERO』
ZEROの言葉に、鹿目詢子は思考を被せた。
その瞬間にZEROも察した。
―――ああ、そうか
『ああ、詰みだ』
この先の言葉が、予測出来てしまったのだ。
それは、少し前にあったことと似ていた。
鹿目まどかが、自らの母を否定したその時と。
思念を交錯させた時、それを知らずも鹿目まどかは微笑んだ。
輝く花のような微笑みだった。
「じゃあ、一緒ですね」
散る花のような悲しみも抱いた笑みだった。
「私とかみさまは、おんなじです」
微笑みながら鹿目まどかは言葉を連ねる。
「自分の願いを、身勝手な夢を叶えるために私は何もかもを投げ捨てて、世界に自分の欲望を押し付けました」
言葉が続くに連れ、声は震えを帯び始めていた。
「そんな私は、悪ですか?」
言い切った時、鹿目まどかの両眼からは涙が垂れた。
堪えようとしても、堪えきれなかった涙だった。
「違う」
鹿目まどかの涙が頬を伝うよりも早く、魔神は彼女の言葉を否定した。
「何が身勝手なものか。何が悪だ。それは悪に対する冒涜だ」
悪に対する冒涜。それは自らを悪そのものと定義したZEROにしか使えない言葉であった。
「ねえ、かみさま」
涙を拭いながら、鹿目まどかは言った。
なんだ、とZEROは返した。
「わたしは、人ですか?」
「人だ」
再び魔神は即答した。そして、こう続けた。
「そして、『鹿目まどか』という概念だ」
「………」
創造神からの言葉を、少女は黙って聞いている。
「『鹿目まどか』という可能性の源。数多の世界の原型。無限の宇宙に鹿目まどかが普遍的に存在するという概念そのものだ」
「という、ことは」
鹿目まどかの思考に、暗い影が滲む。
それは彼女の魂の現身。
遍く生命を取り込む巨大な渦の姿を持った、最強最悪の魔女。
「絶望の元凶であり、そして絶望を消し去り滅ぼす希望の福音だ」
ZEROはただ事実を告げた。
それは数多の世界で、悲劇が繰り返されるという断言だった。
「それがあなただ。鹿目まどか」
重ねてZEROは告げた。魔神は自分の声がいくらか変調を来していると感じた。
内心が現れたと結論付けた。
魔神である自分をして、彼女の境遇に同情したのだと。
「それを聞いて、安心しました」
「…なんだと?」
鹿目まどかの言葉は、魔神にとって予想外だった。
安心という言葉の意味を、ZEROは疑った。
「私が概念っていうことは」
鹿目まどかは言葉を重ねる。
震えた弱々しい声で。
しかし強い意志を宿した声で。
「何度でも何度でも、あの選択をするんだって知れて、安心しました」
「な………」
鹿目まどかの言葉に、魔神も鹿目詢子も言葉を失っていた。
「私は弱いから、どんな世界でも、絶望に沈む魔法少女を見捨てることはできません」
自らの非力を肯定しつつ、救済の意思を強く示す。
本人以外には理解出来ない、矛盾した言葉を鹿目まどかは連ねていく。
「それは、私にしかできない事だから。私は弱いから、他の選択を選べません」
選択とは文字通りに自分の命を使い、救済の贄とする事。
それは鹿目まどかにしかできないことだった。
「自分の願いを絶対に叶えたい私は欲張りで、とても我儘でした」
鹿目まどかの声には、刃物で切り刻まれるような苦痛があった。
言葉の矛盾を彼女自身でも感じており、そして願いの結果によって大きく傷付けた相手の事は脳裏に焼き付いて離れない。
選択に後悔は無いとはしつつも、罪悪感の傷は塞がらず、未だに鮮血を噴き出し続けている。恐らくは、いや、確実に永遠に傷は癒えないのだろう。
「そんな私の願いを、あの子は叶えてくれました」
「……」
少女の言葉の意図を、魔神は察した。
彼女が求めているのは、自らの救済ではない。
「私の願いを叶える為に、私の望む私になってくれた、もう一人の私。その子は今、すごく悩んで、とっても苦しんでいます」
再び溢れた涙を、鹿目まどかは拭い去った。
「だからかみさま、お願いです」
少女は哀切な叫びを上げた。
「どうか、あの子を」
哀願の言葉はそこで途切れた。
少女の顔も悲しみの形に固まった彫像となり、娘の言葉に悲哀を感じていた母もまた、哀しみの表情で停止している。
魔神もまた、金色の眼差しだけを残して動きを止めている。
動くものがなくなった空間の中で、床を叩く靴の音が響いた。
彫像と化した者達の間を、真紅の靴を履いた桃色の髪の少女が歩いていく。
桃色の髪に桃色のリボン、そして桃と白を基調として肩を露出させた煌びやかな衣装。
胸の大きなリボンの下で、鎖で繋がれた金色の錠前が揺れている。
靴音と鎖の鳴る音が同時に止まった。少女は足を止めていた。
桃色の少女の隣には、鹿目まどかが哀願の表情のままに停止している。
少女の顔は、鹿目まどかと同じであった。
ただ、瞳の色だけが異なっていた。
少女の瞳の色は、眩い金色の輝きを放っていた。
その色は魔神の眼と同じ色であり、同じ光を放っていた。
少女はその眼をじっと見た。星を眺めるような、安らかな表情で。
表情は安らかな一方で、少女の右手は自身の胸に添えられていた。
そこは錠前が下がる場所だった。錠前を強く握る姿は、何かを堪えているようにも見えた。
少女は魔神から視線を逸らし、傍らの同じ顔の少女を見た。
開いた口が何を言い、悲しみに満ちた表情で何を表していたのか、少女には分かっていた。
「ごめんね」
鹿目まどかへと謝罪し、少女は左手を伸ばした。
鹿目まどかの母の姿となった魔神の右頬へと、白い手袋で覆われた少女の右手が添えられた。
触れた時、少女は愛おしそうに微笑んだ。
それは親愛の形であり、そしてどこか歪さを宿した笑みだった。
湧き上がる自らの感情に、喜びの心に少女は心を乱されていた。
この存在を我が物としたい。そんな想いが少女の中では渦巻いていた。
「つかまえ」
心のままに、少女は呟いた。
言い終える寸前に、それは起こった。
停止していた魔神の金色の眼が、自らと対峙している鹿目まどかから少女の方へと向いたのだった。
「つかまえた」
少女が言えなかった言葉を、ZEROが言った。
「決着を付けようではないか。そなたの半身、鹿目まどかとの約束を果たそう」
少女は両頬に、ひんやりとした鉄の冷気を感じた。それは、ひどく心地よかった。
それが、両手で自分の顔を挟んだ魔神の手である事を知った時、少女は、女神としての鹿目まどかは更に心を掻き乱された。
「では行こう、我が娘よ」
身を屈め、目線を合わせてZEROは言った。
そしてふたりを中心として、眩い光が迸る。
人の形をしたふたりの神は、互いの発した光の中に呑まれていった。
それはまるで、互いを喰らい合うかのようだった。