夏の暑い日、デュエルアカデミアに通う花田啓介は弟の伸介とおやつのアイスを賭けたデュエルをするのだった。アイス(勝利の栄光)を掴むのは果たしてどちらなのか?

初投稿です。とにかくアイスを求める欲の亡者と化したデュエリスト達によるお話です。

お暇な際にご覧いただけると幸いです。

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 ご覧いただきありがとうございます。本作は1話完結の短編となっております。また、オリカはございませんが、オリジナルの召喚口上や攻撃名はあります。苦手な方はブラウザバックをお願いします。

 それでは、お楽しみください。


仁義なき栄光の取り合い

 ある日の休日、その日は夏真っ盛りのゆだるような暑さの日で、外にでも出ようものなら数分とかからない内に全身汗だくの雑巾のようになってしまう事請け負いの快晴の夏日和の事だった。

 某国某市の一軒家にて、花田啓介とその弟である花田伸介は冷蔵庫の前で言い争いをしていた。

 

 「このアイスは俺が先に見つけたんだ。だから食う権利は俺にある。」

 「そんな大人げないこと言わんでくれよ兄貴。たまには弟に優しくしてくれてもいいじゃないか。たかがアイス1つで。」

 「たかがアイス、されどアイスだ。このクソ暑い日にこいつは千金の価値がある。」

 「確かにそうだ。だから前に買い物に行ったときに俺も兄貴のいう事に賛成し、母さんにねだった。」

 

 今彼らの目の前にあるのは何という事のない近所のスーパーに売っているソーダ味のアイスだ。だが、この季節柄だからか彼らが買った時には最後の1つとなっていた。

 

 「どうしても引く気はないんだな?伸介。」

 「ああ。流石にこればかりはな。」

 「いいだろう。なら花田家の家訓に則ってここはデュエルで決めるぞ。」

 「望むところ。」

 

 そう言うと彼らはテーブルに置いてあったディスクを持ち、家の地下室まで下りて行った。花田家は地上3階と地下1階の構成となっていて、普段は地上階で暮らしているが、啓介がデュエルアカデミーに入学した際に地下室を作り、そこをデュエルのトレーニングルームとしたのだ。

 

 

 地下室の扉を開け、室内の明かりをつけた啓介はそのまま奥に歩いていき、伸介と向かい合う。そのままデュエルディスクを構えつつ同時に声を放った。

 

 「「決闘(デュエル)!」」

 

 ディスクのランプが点灯し、先攻後攻が決定される。点灯したのは……啓介のディスクだった。

 

 「おいおいマジかよ。」

 「よしっ!先攻は俺だ。俺は手札から速攻魔法、【烙印開幕】を発動!手札を1枚捨ててデッキから【デスピアの道化アルベル】を特殊召喚!」

 

 先攻を取った啓介はニヤリと笑いながら1枚のカードをディスクに叩きつける。フィールドに赤黒い渦が舞き起こり、そこから仮面を被った道化師のようなモンスターが姿を現した。

 

 「アルベルの効果を発動!さらにチェーンして墓地に送られた【捕食植物ビブリスプ】の効果も発動だ!」

 「うげぇっ!最初からガン回りするつもりかよ兄貴?!」

 「アイスが掛かってんだ。全力でかからせてもらうぜ!特に何かあるわけでもないようだし、効果処理続行だ!アルベルの効果で【烙印融合】を、ビブリスプの効果で【捕食植物トリアンティス】を手札に加える!」

 

 最初に使った【烙印開幕】で手札を3枚まで減らした啓介だったが今は初期枚数に戻っている。さらに手札に加えたカードからの試合運びを予想した伸介は冷や汗をかきながら残り未判明の手札があまり強くないことを神に祈るのだった。

 

 「それじゃあ早速行くぜ!手札から魔法発動!【烙印融合】!」

 「……っ!」

 「その効果によりデッキから【アルバスの落胤】、手札の【ステイセイラ・ロマリン】を融合!白の落胤よ、意思伝える花と1つになりて我らの先駆けとなれ!融合召喚!レベル8、【烙印竜アルビオン】!」

 

 啓介の力強い宣言と共に現れたのは赤い炎を纏いし巨竜。彼のデュエルにおいて展開の要となるモンスターの出現に伸介は腰を落とし、何が起こるのかを警戒しながら見据えている。そんな伸介に対し啓介は盤面を強固にすべく更なる効果の発動を宣言するのだった。

 

 「ロマリンとアルビオンの効果発動!ロマリンは効果で墓地に送られた場合、デッキかEXデッキからレベル5以下の植物族モンスターを墓地に送り、アルビオンは融合召喚成功時、俺の手札、フィールド、墓地から融合素材となるモンスターを除外してレベル8以下の融合モンスターを融合召喚する!」

 「まずはアルビオンの効果で墓地のアルバスとビブリスプを除外して融合!白の落胤よ、惑いの芳香放つ1輪の花と1つになりて新たな脅威を生み出せ!融合召喚!レベル8、【神炎竜ルベリオン】!」

 

 アルビオンの咆哮がフィールドに響き渡り、虚空に穴が開いた。その穴から禍々しい気配を漂わせた白銀色のドラゴン、【神炎竜ルベリオン】が勢いよく飛び出して来てアルビオンの隣に並んだ。

 

 「まだ終わらんぞ、ロマリンの効果でデッキから【捕食植物ドロソフィルム・ヒドラ】を墓地に送り、ルベリオンの効果を発動!手札1枚を墓地に送ることでフィールド、墓地、そして除外されているモンスターを融合素材としてデッキに戻しレベル8以下の融合モンスターを融合召喚する!」

 「俺は手札の【コズミック・サイクロン】を墓地に送り、除外されているアルバスと場のルベリオン自身で融合!白の落胤よ、相反する獣と1つとなりて凍剣携えし魔竜と化せ!融合召喚!レベル8【氷剣竜ミラジェイド】!」

 「来たか、そのデッキのエースモンスターの1体……!」

 「ああ、そしてこいつで締めだ。手札から【捕食植物ブフォリキュラ】をPスケールにセッティングし、効果発動!手札、フィールドのモンスターで融合召喚を行う!俺は場のアルビオンとアルベルで融合!絶望の道化よ、先導の巨竜と1つとなりて獣を戒める華竜となれ!融合召喚!レベル8、【捕食植物ドラゴスタペリア】!」

 

 啓介がPスケールにセットしたカエルを思わせる植物から発する光に包まれたアルベルとアルビオンが1つに重なっていき、神秘の渦に飲み込まれた瞬間、そこから瘴気を放つ禍々しい竜の姿を模した植物が姿を現した。

 

 「俺は残りのPスケールに【捕食植物トリアンティス】をセッティングし、エンドフェイズに移る。ここで墓地に送られたアルビオンの効果を発動だ。こいつは墓地に送られたエンドフェイズにデッキから【烙印】魔法、罠を1枚セットか手札に加えることが出来る。俺は【烙印追放】をセットする!これでターンエンドだ!」

 「やっと終わったか。相変わらず凄まじいデッキ回しだったぜ。だが不幸中の幸いかもう兄貴の手札は0!つまりこの布陣を突破すれば俺の勝利は揺るがないものになるというこった。」

 「そうだな。だがお前のデッキでこの布陣を突破できるか?ドラゴスタペリアはモンスター効果無効とレベル変動効果を、ミラジェイドは対象を取らない除外、そして烙印追放はお互いの場のモンスターを素材に融合し、トリアンティスの効果でいざというときはPスケールのこいつらを融合素材にできる。どこまで足掻くか見ものだな?」

 「言ってな!」

 

 

 啓介 LP 8000

 手札 0枚

 モンスター 【捕食植物ドラゴスタペリア】 攻撃表示

 【氷剣竜ミラジェイド】 攻撃表示 

 

 魔法、罠 【捕食植物ブフォリキュラ】

 【捕食植物トリアンティス】

 【烙印追放】 セット状態

 

 

 啓介の連続融合召喚による長いターンが終わり、ようやく伸介のターンが訪れた。得意げな顔でニヤけている啓介の発言に伸介は自身の手札を見て不敵な笑みを浮かべながら言い返すが……

 

 「(おいおいおいどうすんだよあの布陣?!ドラゴスタペリアはこいつを使えば凌げるがミラジェイドがどうしようもねぇ!それにバックのカードも考え無しに動けば兄貴に融合素材を提供するだけに終わっちまう!畜生!頼むぞ俺のデッキ!あの布陣を崩せるだけのカードを俺に!そしてアイスを俺の手に!)」

 「行くぜ、俺のターン!ドロー!」

 

 内心半ば自棄になりながらも勝利の先にある栄光を求めて伸介は勢いよくデッキからカードを引いた。たらりと冷や汗をかきながら引いたカードを見やると目を見開き勢いよくディスクに叩きつけるのだった。

 

 「来た来た来たぁぁぁ!!俺は手札から魔法発動!【ハーピィの羽箒】!」

 「なんだってぇぇぇぇぇっ?!?!?!?!」

 「言わずと知れたその効果で兄貴の魔法、罠ゾーンのカード全てを破壊する!消しとびなぁ!!」

 

 フィールドに鳥の羽を模した巨大な箒が現れる。それは勢いよく啓介のフィールドにある魔法、罠カードを巻き起こした竜巻で吹き飛ばそうとするが、それを見て慌てた様子で啓介はカードの発動を宣言するのだった。

 

 「うおおおおおおっ!?た、ただではやらせん!罠発動!【烙印追放】!墓地のアルベルを特殊召喚し、Pスケールのブフォリキュラとトリアンティスと共に除外する事で融合!絶望の道化よ、惑いの芳香放つ2輪の花と1つとなりて3つ首持つ華竜と化せ!融合召喚!レベル9!【捕食植物トリフィオベルトゥム】!」

 

 墓地から召喚されたアルベルがPスケールの捕食植物たちと共に虚空に飛び込んでいくとそこから3つの首を持った巨大な華竜が姿を現した。それぞれの顔からは瘴気が漏れ出てる上に今にも伸介に食らいつきそうな凶暴な雰囲気を漂わせている。まさに貪欲の権化かのようなモンスターの出現に伸介は驚くも怯むことなくカードを発動していく。

 

 「出やがったな化け物め!俺はフィールド魔法、【神縛りの塚】を発動!こいつがある限りお互いの場のレベル10以上のモンスターは効果の対象にならないし、破壊もされない。」

 

 2人を囲むようにフィールドに鎖が巻かれた3つの石柱のようなものが出現し、雷を響かせる。その領域の内部では神やそれに類する高位のレベルを持ったモンスターは強固な耐性を得る。伸介のデッキの都合上、この効果はとても心強い味方なのだ。

 

 「これでドラゴスタペリアはほぼ無力化した!さらに手札から【Sin パラドクスギア】を召喚だ!」

 

 伸介の場に現れたのは四角の歯車を組み合わせたような奇妙な姿をしたモンスターだ。だが啓介はその強力な効果を知っているため迷いなく排除しにかかった。

 

 「ミラジェイドの効果発動!1ターンに1度、EXデッキから【アルバスの落胤】を融合素材とするモンスターを墓地に送ることでフィールドのモンスターを1体除外する!俺はルベリオンを墓地に送りパラドクスギアを除外する!」 

 「っ!やっぱそうだよな。」

 

 ミラジェイドの全身から生えた氷の剣がパラドクスギアに殺到し身動きを封じたところに強烈な氷のブレスが炸裂した。一陣の突風が吹き抜けた後にはパラドクスギアは欠片も残さずにフィールドから消え去っていたのだった……。

 

 「だが、まだ終わらんよ!【シンクロ・オーバーテイク】を発動!まずは俺のEXデッキからこの超かっこいい【Sin パラドクス・ドラゴン】を見せびらかして効果発動!その素材である【Sin パラレルギア】をデッキから特殊召喚!そしてそのまま手札の【Sin 青眼の白龍】とチューニング!帝王の剣よ!邪悪を断つためにここに顕現せよ!シンクロ召喚!レベル10!【相剣大公-承影】!」

 

 力強い口上と共に現れたののは1振りの大剣を持った青い鎧を着た竜人だった。その威容、その威厳からは間違いなく強者の雰囲気を漂わせ、相手である啓介に剣を向けようとしたが……

 

 「そうはいかんぞ!トリフィオベルトゥム、効果発動!相手がEXデッキからモンスターを特殊召喚する際、そいつを無効にして破壊する!」

 

 突如として承影の足元から突き出てきたトリフィオベルトゥムの両手である華竜が承影の両手に絡みつき、そのまま勢いよく地の底まで引きづりこんで食らいつくした。その光景に啓介と伸介は引きつった表情を浮かべつつもデュエルを続けていく。

 

 「くっ……!これも流石に通してはもらえんよな。だがこれで残りはドラゴスタペリアのみだが、警戒せずにさっきのパラレルギアにでも使っておけばよかったな!俺の最後の手札はこれだ!魔法カード、【Sin Selector】発動!これで墓地のパラレルギアと青眼を除外する事でデッキから【Sin スターダスト・ドラゴン】と【Sin トゥルース・ドラゴン】を手札に加える!そしてEXデッキから【スターダスト・ドラゴン】を除外する事で手札から【Sin スターダスト・ドラゴン】を特殊召喚!」

 「最後の1枚を警戒しすぎたのが仇になったか……。仕方あるまい、来い!」

 「ああ、俺もただでは済まないが背に腹は代えられん!バトルだ!スターダストでドラゴスタペリアに特攻!『シューティング・ソニック』!」

 「迎え撃て、ドラゴスタペリア!『テンプテーション・リモス』!」

 

 仮面をつけた白い星屑の龍が放つ閃光は毒持つ華竜の瘴気の奔流に飲まれてしまい、発射直後の硬直状態だった龍すら飲み込みつくした。だがその残骸から放たれる黒い靄のようなものがフィールドに渦巻き、そこに伸介が1枚のカードを投げ入れる。すると巨大な黒い魔方陣が現れてそこから黄金に輝く巨竜が姿を現したのだった。

 

 「くっ!スターダストが破壊されたことで手札の【Sin トゥルース・ドラゴン】の効果発動!俺のライフ半分を払って特殊召喚する!矛盾の果ての真実よ、我が身を贄とし栄光への道を切り開け!出でよ【Sin トゥルース・ドラゴン】!」

 

 伸介 LP 8000→7800→3900

 

 現れた黄金の巨竜はその赤い目でフィールドを睥睨する。ただその場にいるだけだというのに、その身から放たれる圧倒的なプレッシャーに啓介の額から一筋の冷や汗が流れ落ちた。

 

 「これは、流石に不味いか?」

 「ああ、こいつが俺の切り札だ!そのままバトル続行だ!行け、トゥルース・ドラゴン!ミラジェイドを粉砕しろ!『エスカトス・アレーティア』!」

 

 黄金の巨竜から放たれた巨大な怪光線はミラジェイドをあっさり消し炭にし、啓介のライフに大きなダメージを与える。その衝撃に啓介は吹き飛ばされたが受け身を取り、何とか持ち直した。

 

啓介 LP 8000→6000

 

 「どわぁぁぁぁっ!!くそっ、ミラジェイドが!」

 「まだ終わらんよ兄貴!トゥルース・ドラゴンの効果発動!相手モンスターを破壊したので、相手の表側表示モンスターをすべて破壊する!『ハマルティア・トラゴーディア』!」

 

 巨竜が咆哮し、その翼から無数の黒い針が勢いよく啓介のモンスターやフィールドに突き刺さり大爆発を引き起こす。伸介はこれでモンスターが全滅し、一気に勝利に近づいたと思ったが、煙が晴れた時、啓介の場には傷だらけになりながらもなんとか立っているモンスター達の姿があった。

 

 「なっ?!」

 「残念だったな。墓地の【烙印開幕】を除外する事で俺の場の融合モンスターの効果破壊を無効にさせて貰った。」

 「成程な。忘れてたぜ。だがこっちも【神縛りの塚】の効果が発動する。レベル10以上のモンスターが相手モンスターを破壊したとき、1000のダメージを与える!」

 「ぬぅっ!」

 

 啓介 LP 6000→5000

 

 「ミラジェイドはフィールドから離れた場合、そのターンのエンドフェイズに相手モンスターを全て破壊する効果があるが……」

 「ああ、神縛りの塚でそれは通用しないな。手札もないし、これでターンエンドだ。」

 

 伸介 LP 3900

    モンスター 【Sin トゥルース・ドラゴン】 攻撃表示

    魔法、罠 【神縛りの塚】

 

 意識の外に追いやられていた布石で凌がれたものの着実にライフ差を縮めていく伸介。先の兄のターンよろしく、全ての手札を使い切ってしまったが場には攻撃力5000を誇る黄金の巨竜、そして巨竜に強固な耐性を与える領域が展開されている。啓介のデッキはトリフィオベルトゥム以外に高打点を叩き出すモンスターはほぼおらず、手札も尽きたこの状況ではそのモンスターも出すことは難しいだろう。それに今回は凌がれたものの次のターンには間違いなく兄の場を全滅できるだろう。今の戦況は、場のモンスターの数でこそ啓介が上回るがその質に関しては圧倒的に伸介がリードしているのだった。

 

 「(うっひょー!羽箒引けたのはマジでラッキーだったぜ!あれが無ければ俺は間違いなく負けていた。ありがとよ俺のデッキ!)さぁ、どうする兄貴?見ごたえある足掻きだっただろう?兄貴もやってみるか?」

 「ええい、引きが良かっただけで思い上がるなよ!俺のターンだ!ドロー!」

 

 得意げに先程のターンに発した発言に対する返しをされて怒りのままにカードをドローした啓介。そのカードを一瞥すると同時にディスクに叩きつけ、全てのモンスターを守備表示にした。

 

 「くそっ、モンスターをセット。さらにトリフィオベルトゥム、ドラゴスタペリアを守備表示にしてターン終了だ。」

 

 先程までの激しい動きが嘘のようにそのターンを終えた啓介。そんな啓介の様子は一見すると燃え尽きてしまったかのように見えてしまい、伸介はこのまま押し切ろうと意を決するのだった。

 

 「俺のターンだ!ドロー!このまま一気に決めてやるぜ!トゥルース・ドラゴンでセットモンスターを攻撃!『エスカトス・アレーティア』!」

 

 巨竜の口から放たれた怪光線が啓介のセットモンスターを焼き尽くす。そして先程のターンと同じように翼から出た無数の黒い針が啓介のモンスター達を今度こそ蹂躙し、全滅させるのだった。

 

 「ぐううううっ!俺のモンスター達が全滅か!だがセットモンスターは【エッジインプ・チェーン】!墓地に送られたことで効果発動だ!デッキから【デストーイ】カード1枚を手札に!俺は【魔玩具補綴】を手札に加える!」

 「いいカードを引いていたな!だが神縛りの塚のダメージは受けてもらうぜ!」

 

 啓介 LP 5000→4000

 

 「俺はカードを1枚伏せてターンエンド!あと少しでアイスは俺のものだ!」

 

伸介 LP 3900

   モンスター 【Sin トゥルース・ドラゴン】 攻撃表示

    魔法、罠 【神縛りの塚】、セットカード1枚

 

 

 これで啓介と伸介のライフ差は僅か100。フィールドも文字通り全滅し、伸介のフィールドには強固な耐性を持つ黄金の巨竜が自分を睥睨している。先程手札に加えたカードは確かに逆転の一手となりうるものだが融合素材となるモンスターが引けなければただの時間稼ぎにしかならない。伸介もまだ後続となるモンスターを引けていないようだが、このままいけば間違いなく後続を召喚されて自分は負けてしまうだろう。折角見つけた最後のアイスをこのまま弟に取られてしまうのか、このうだるような暑さにやられてしまうのか、諦められない。全ては次のドローにかかっているのだ。

 

 「頼む、俺のデッキよ!俺に最後の力を貸してくれええええ!ドロォォォォーーー!!」

 

 持てる気力とアイスを求める執念の全てを込めてカードを引いた啓介。引いたカードは……

 

 「よしっ!最高のカードだ!ありがとよ俺のデッキ!このターンで決着をつける!」

 「面白い!何を引いたか知らんがやってみなよ兄貴!」

 

 ニヤリと笑い高らかに勝利宣言を行った啓介。その啓介の態度を見ても黄金の巨竜を突破できる筈がないと高を括る伸介。啓介は1枚のカードを手札から取り、そのまま発動した。

 

 「魔法カード、【魔玩具補綴】発動!デッキから【融合】と【エッジインプ・チェーン】を手札に加える!そして【融合】を発動だ!手札の【エッジインプ・チェーン】と【悲劇のデスピアン】を融合!狂気の鎖よ、悲劇の仮面と1つとなりて栄光求むる槍と化せ!融合召喚!レベル8!【デスピアン・クエリティス】!」

 

 啓介の場に現れたのは赤黒い鎧を身に纏い、同じ色をした槍を手にした禍々しいオーラを放つ騎士のようなモンスターだ。

 

 「融合素材となったチェーンと悲劇の効果を発動!デッキから【デストーイ】カードである【トイ・パレード】と2体目のアルベルを手札に加える!」

 「ここでクエリティスか!厄介な……!」

 「早速クエリティスの効果を使わせてもらう!その効果によりレベル8以上の融合モンスター以外の攻撃力は0となる!この効果はフィールド全体に及ぶ効果だ。神縛りの塚の耐性もすり抜ける!」

 「くそっ!トゥルース・ドラゴンの攻撃力が!」

 

 クエリティスの槍から放たれる赫黎い奔流がフィールド全域を侵食していき、それを浴びた黄金の巨竜は力なくその身を地に伏せた。

 

 【Sin トゥルース・ドラゴン】 攻撃力 5000→0

 

 「(トゥルースドラゴンの攻撃力が0になったか……!しかもクエリティスは場から離れるとデッキから【デスピア】か【アルバスの落胤】を呼んできやがる!下手な除去は無意味!ならこのカードはまだ温存だ。ライフもまだ残るしな。)やってくれたな、兄貴。」

 「何もないようなら俺は2体目のアルベルを召喚する。効果でデッキから【赫の烙印】を手札に加え、そのまま墓地の【悲劇のデスピアン】を対象に発動だ!」

 「(不味い!これは【ガーディアン・キマイラ】が来る!あいつが出たら俺の場は壊滅した上に新たにカードをドローされる!しかも墓地に融合があるから対象耐性付きだ!なら、ここしかない!)罠発動!【Sin Claw Stream】!アルベルを対象に発動し、そいつを破壊する!」

 

伸介の頭上に黒い渦が出現し、そこから仮面をつけた蝙蝠の大群がアルベルに襲い掛かる。そのままアルベルに取りついた蝙蝠たちは大爆発を引き起こしアルベル諸共消し飛んだ。

 

 「ガーキマを狙っていたようだがそうはいかんよ。しかもこれでクエリティスを融合素材にせざるをえない!こいつは自分の効果での除去には対応してないからなぁ!トゥルース・ドラゴンはやられちまうだろうが、それでもまだ俺のライフは残る!次のターンが来れば俺の「それはどうだかな!」何だって?」

 「確かにガーキマも狙っていたが、悲劇を引いた時点で俺の勝ちは決まっていた!クエリティスと悲劇で融合!栄光求る槍よ、悲劇の仮面と1つとなりて赫き魔竜となれ!融合召喚!レベル8!【赫灼竜マスカレイド】!」

 

 啓介の場に現れたのは赫い髪を伸ばした黎い仮面をつけた魔竜だった。どこか相手を嘲るような胡散臭い雰囲気を漂わせながら黄金の巨竜に相対するのは元が道化師だったからか、それとも何か企んでいるのか……

 

 「マスカレイドか。だが攻撃力は2500!トゥルース・ドラゴンを倒したとしても俺のライフはまだ残っている!」

 「おいおい、さっき俺がサーチしたカードを忘れたのか?」

 「ん?」

 「これで締めだ。マスカレイドを対象に、魔法カード【トイ・パレード】発動!

 こいつの効果を受けたマスカレイドは戦闘で相手モンスターを墓地に送るたびに続けて攻撃できる!」

 「あ、やべ……!」

 

 これで赫い魔竜は連続攻撃が可能となった。その意味するところはつまり……

 

 「バトルだ!マスカレイドでトゥルース・ドラゴンを攻撃!『絶望のトラジェリィ・スート』第1打ァ!」

 「ぐおおおおおおおあああ!!!」

 

 赫い魔竜の口から放たれた赫黎いブレスが黄金の巨竜を貫いた!フィールドに大爆発が起こり、それが収まった後にはもう彼の巨竜は姿を消し、金色の粒子が舞い散っているのみだった。

 

 伸介 LP 3900→1400

 

 「待ってくれ兄貴!せめて一口だけでも分けてくれぇ!」

 「だめだ!勝者は全ての栄光を得るものと相場が決まっている!潔く散れ!マスカレイドでダイレクトアタックだ!『絶望のトラジェディ・スート』第2打ァ!」

 「うおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

 伸介の必死の懇願も空しく、啓介は赫い魔竜に止めを刺すように命じた。その命を受けた魔竜は伸介に向かって赫黎いブレスを吐き、そのライフを刈り取ったのだった。

 

 伸介 LP 1400→0

 

 デュエルが終わり、赫い魔竜が消えていく。がっくりと項垂れる伸介に啓介は背を向け、部屋から出ていこうとする。その足取りはとても軽やかで、その表情は希望と嬉しさに満ち溢れるものだった。

 

 「これでアイスは俺のものだ!」

 

 そう言って入り口の扉に手をかけようとする前に扉が開いた。そこにいたのは一人の女性。彼ら兄弟の母である花田朋子であった。

 

 「おお、母さんか。びっくりした。どうしたんだ?」

 「買い出しを頼みに来たんだよ。地上階にあんたたちの姿が見えないからここにいるとアタリをつけてね。」

 「えぇー……!せめて夕方にしてほしいな。暑いし、それに俺は今からアイスを食べに行かないといけない。」

 「アイス?冷蔵庫にあった奴ならさっき食べてしまったよ。」

 

 

 突如として朋子の口から出たあまりにも無慈悲な発言に啓介の目が点になる。数秒後、再起動した啓介は朋子に抗議の声を上げるのだった。

 

 「な、なんてことをしてくれたんだ母さん!俺の栄光が!暑さに対する希望が!」

 「お黙り!この家では私が法だよ!黙して従うんだね!」

 「お、鬼か……!」

 「いや、この家の女神だよ!」

 

 朋子の神であるという宣言に何も言い返せなくなる啓介。だが朋子はそんな啓介を哀れに思ったのか、こう言うのだった。

 

 「なに、そんなにアイスが欲しければまた買ってきたらいいじゃないか。今度は2人分しっかり買うんだよ。」

 「か、母さん……!」

 「ありがとう……ありがとう……!」

 

 いつの間にか復活してた伸介と共に啓介は涙ぐみながらその手を取ったのであった。そして数時間後、花田家ではアイスを食べながら談笑する兄弟の姿があったのだった。

 




 最後までご覧いただき、ありがとうございました。とにかく書きたくなったので書きました。後悔はありません。もし誤字脱字があれば報告お願いします。

 ついでに高評価も頂けると幸いです。(強欲で貪欲な後書き)

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