朝の空気は、冷たく肌を刺す。
白い霧が地を這って、鳥の鳴き声が木々の隙間から零れてくる。
綿の潰れ切った布団越しに伝わる、硬い畳の感触。
それを一身に感じながら――
「……さて、今日もやりますか」
自分を鼓舞するように呟き、布団を跳ねのける。
冷たい初春の空気に身震いしながら、慣れ親しんだ戦闘服――オレンジと黒を基調としたジャージに手を伸ばした。
ここでは数少ない見慣れた素材は、袖を通す度にここが現実であると教えてくれる。
「よし、着替え完了。今日も神社の家事見習い、菜月昴、参上っと」
ノリだけは爽快に縁側へ出ると、石畳に差し込む朝陽が、彼を迎え入れた。
まだ誰も起きていない、静寂が支配する世界だ。
さっそく物奥から竹ぼうきを取り出し、境内の端からい掃除を開始する。
今やすっかり習慣となった朝一の掃除。それを夢中になって続ける内、落ち葉や小石が片づけられて、境内が徐々に整っていくのを感じた。
自分でも驚くほどにスムーズな手付きと、無駄のない動き。
一か月前までゲーム三昧で、三食コンビニ、三日風呂無しだった奴と、同一人物とは思えない。
スバルは自身の成長に、ふと動きを止め、
「なっちまったな、俺も……真人間に」
空に向かって、渾身のドヤ顔で決めポーズをしてみせた。
「なにその寒い口上。朝っぱらから自己陶酔?」
「え?」
同時に響くのは、思いがけない背後からの返答。
それの意味するところをなんとなく察しながら振り返ると、いつもならあと一時間は布団にくるまっているはずの同居人が、こちらを見つめていた。
紅白色の装束に身を包む少女――
眠たげな瞳の奥に浮かぶのは、いつも通りの呆れと、おまけに今日はほんの少しの温かみ。何か、可哀そうな物を見る感情がこもっている。
――まさか、聞かれていたというのか。
「もしかして、今の聞いてました?」
「聞こえたから言ってんの。掃き掃除しながら、下手くそな鼻歌かましてたところからね」
「俺のモーニングルーティン、フル視聴されてたのかよ!?」
「そんなにうるさくちゃ嫌でも起きちゃうわよ。あと、その変な服本当どうにかして。朝から視界がうるさい。存在そのものが神社の威厳を落とす」
「真人間ルート乗ってきた子にそういうこと言うと、引きニートに逆戻りですがいいんでしょうか!!」
霊夢の口から、思春期の少年に多大なダメージを与えかねない言葉が放たれ、スバルは顔を隠して地面を転げまわる。
羞恥心、怒り、穴があったら入りたい。その他もろもろの感情を朝の石畳にぶつけて、無理やり発散した。
そしてようやく落ち着きを取り戻した頃、スバルは彼女の顔を見上げる。
「……なによ」
「いや、マジに異世界ファンタジーだなって」
「は?」
朝の光を背に受ける彼女の顔は、この世のものとは思えないほどに整っていて、改めて思う。
――菜月昴は今、『
何の取り柄も見どころもない。唯の引きこもりだった少年は何故か、今こうして美少女の巫女さんと二人、異世界スローライフを送っている。
※
それは、ちょうど今より一か月前の出来事。
スバルはいつものように、近所のコンビニで買ったスナックと漫画を片手にぶら下げながら帰路についていた。
夜風の寒さに、早く湯船につかりたいとか、たわいもないことを考えていた時。
視界が突然、ぐにゃりと歪んだ。
眩暈やふらつきの類だろうか。なんにせよ転倒は避けたいと足を止めて目を擦る。
ほんの数秒の仕草だったはずだ。世界から目を離したのは、一瞬だけだったのに。
「――――」
次に目を開けると、そこはもう『異世界』だった。
コンクリートの舗装も、コンビニの明かりも、周囲の雑踏も。なにもかもが消え去っていて。
代わりに視界に広がるのは、現代日本にあるまじき、雄大な大自然。
山、川、森、鳥のさえずり。どれもが、都会の街並みで長らく目にしていなかったものだ。
おまけにスバルの顔は清々しい程の眩しい陽光に照らされている。自分が認識していた範囲では、確かに夜だったはずなのに。
「……ん?」
そして直後、それまでの環境の変化がどうでもよくなるほどの衝撃が、視界を横切る。
「だいちゃん、こっちこっち~!」
「ま、まってよチルノちゃ~ん!」
木々の向こう。遠くの空に浮かぶ二つの影。
その影は両方とも可愛らしい少女の形をしていて、背中からは羽が生え、ふわりと宙を舞っていた。
当然、スバルの思考は停止した。だが、十分な時間で出来事を咀嚼した後なら、妙な納得感を得る。
「つまり、これはアレだな」
誰もいない森の木に手を向けながら、指を鳴らした。
「――異世界召喚もの、ということらしい」
レジ袋の中のホットスナックが、ほんの少しだけ心許なく思えた。
2
菜月昴は平成日本生まれのゆとり教育世代出身である。
彼の人生は十七年、その全てを語り尽くすにはそれこそ十七年の時間を必要とする。
それらを割愛し、彼の現在の立場を簡単に説明するのならば『高校三年生にしてひきこもり』となる。
詳細に説明するなら、『受験を間近に控えた時期なのに、親の期待もなにもかもうっちゃって自分の殻に閉じこもったどうしようもないクズ』といったところだ。
ひきこもった理由は特にない。
普通の平日、たまたま「今日は起きるのが面倒だ」となんとなく思い、サボりを実行に移したことが切っ掛けではあった。
そのままずるずると自主休校が増え、気付けば立派に親を泣かせるひきこもり。
日がな一日怠惰をむさぼり、コミュニケーション皆無のネットに沈み続け――、
「その結果が異世界召喚か……もはや自分で言ってて意味わかんねぇな」
改めて状況を再確認して、スバルはもう何度目になるかわからないため息をついた。
今は、森の中にあった申し訳程度の獣道を歩いている最中だ。
大雑把な作りだが、整備された道である以上、闇雲に進むより人のいる場所にたどり着ける可能性が高い。
「現状を異世界ファンタジーと仮定するなら、さっき見たのは妖精って奴?」
足を動かしながら、これまでに見た光景を整理し、世界観を絞っていく。
羽の生えた少女はあれ以降もチラホラ見かけたので、ここでは珍しくない存在なのだろう。
「妖精は今んとこ全員美少女だし、いかにもなご都合設定が期待できそうだ」
知り合うもの皆美少女、というのは異世界ものにありがちな設定だが、まさか自分が飛び込めるとは思わなかった。
この様子だと、自分をこの世界に召喚し、俺TUEEなチート能力を付与してくれる女神との遭遇も時間の問題か。
「よし、いいぞ俺。伊達に妄想してねぇ……!」
獣道を歩きながら、スバルは親指を立てて自分を褒めたたえた。
日頃から妄想にふける時間はたっぷりあったおかげで『異世界召喚』された際の心構えは上々だ。
「あとは、やっぱし現地民と一回接触しておきたいとこだが」
当面の目標をそう設定し、森の中を歩き続ける。
すると、彼の疑問に答えるかのように、脇の茂みから――それは現れた。
ゆらりと揺れる黒い影、金髪の髪に、真っ赤なリボン。
黒いワンピース姿の少女が、無垢な笑顔を浮かべてふわりと宙に浮かんでいる。
スバルは待ってましたと目を瞬かせ、小さくガッツポーズをした。
「来た、これは絶対そうだろ! ナビゲーター枠! もしくはチート能力をくれる女神ポジ!」
ナチュラルに浮遊してても違和感を感じなくなるのは、異世界フィルターの恐ろしいところだ。
スバルは深呼吸をしてから、なるべく自然体を装い声をかけた。
「おーい、そこのお嬢さん! ちょっとお話しようぜ。俺こっち来たばっかでさー」
「……そーなのかー?」
少女はこちらに気が付くと、浮かんだままゆっくりと距離を詰めてきた。
両手をいっぱいに広げたT字のポーズがひどく愛らしい。よくみると十歳くらいの幼い顔立ちをしているが、合法ロリ枠の可能性もある以上、第一声は手を抜けない。
こほんと咳払いして、スバルはその場で一回転、指を天に向けてポーズを決める。
「俺の名前はナツキ・スバル! 右も左もわからない上に天衣無縫の無一文! ヨロシク!」
「そーなのかー」
「え?」
そーなのか。その合ってるような合ってないような返答に、やらかしたかと冷や汗を書く。
なにせ長年引きこもりだったせいでコミュ力はゼロに等しい。あって早々の自己紹介は馴れ馴れしかっただろうか。
「……えーっと、天気いいですね?」
「そーなのかー」
「……名前は?」
「そーなのかー」
「いや、なんかおかしいぞこれ!?」
イエスノーで答えられない質問にも同様の返事が来たことで、スバルはようやく異変を理解し始める。
先に近づいてきたのは向こうだし、あしらわれてるわけではないと思う。この子の名前が「ソーナノカ」さんの可能性もあるが、
「……言葉が、通じてないのか?」
そもそも、言ってることを理解されていない。そういう印象をスバルは受けた。
妖精達の会話が日本語っぽいと油断していたが、ここは異世界。まだ何か自分には分かっていないことがあるんじゃないだろうか。
どうしたものかと頭を悩ませるスバルをよそに、少女はさらに距離を縮めてくる。そして、手が届きそうなほど近距離になった、その時だ。
「……あなたは」
「ん?」
「あなたは――食べてもいい人間?」
「――ッ!?」
「……そーなのかー」
――ゾクリとした悪寒が、スバルの背中を這い上がる。
物騒な言葉もそうだが、悪寒の原因となったのは周囲の空気だ。
喧嘩の経験など皆無なスバルに、殺気だのは感じ取れない。けれど、そんな弱者だからこそ分かることもある。
蛇に睨まれたカエルが動けなくなるように、今の自分がこの少女にとって『エサ』でしかないことを、理屈じゃなく本能で理解した。
言語が通じなかったのではない。餌とする会話など、なかっただけ。
能力、というものだろうか。少女の周囲1メートルほどに、真っ黒な真球が形成されていく。
「ちょー!? 待って待ってタンマ!!」
腰を抜かして尻餅をつきながら、スバルは必死に後退する。
だが少女の歩みが止まることはなく――差し出された両手の爪が、信じられないほど鋭利に変化した。
「あ、あかんこれ、詰んだ――!」
終わる、のだろうか。何もしていないのにこんなところで。
確かにまともな人生を歩んできたとは言い難いが、それでもこんな終わり方を迎えるのは酷すぎる。俺が何をしたのかと問えば、お前は何もしなかったと返ってきそうな無為な終焉。
痛み、ではない。
それ以外のなにかで涙が溢れそうになる。
終わるのが恐いとか、死ぬのが嫌だとか、そんなレベルの話じゃない。
ただ、何もない空っぽのままで終わってしまうのが耐えられなかった。
「――そこまでよ」
直後、スバルの眼前を横切ったのは、自身を襲う少女の闇と相反する――光。
少女を吹き飛ばしたその一撃は、森のざわめきも、少女の呻き声も、スバルの荒い呼吸さえもねじ伏せて、世界を震わせる。
赤と白の巫女装束。しなやかに舞う黒髪。光弾に数秒遅れて舞い降りた少女の姿は、まさに幻想のようで。
「こら、ルーミア! 勝手に人間食べようとしない!」
「ごめんなさいなのだー!」
スバルの目線は自然と、叱咤を飛ばす少女へくぎ付けになる。
今でこそ互いに好き放題言い合っているが、このときだけは、本当に心の底から思ったのだ。
――カッコいいな、この人。
命を繋いだ安堵と、眩しさと、ほんの少しのときめきがごちゃ混ぜになって、胸の奥がじわりと熱くなるのを感じる。
これが、菜月昴の幻想入り。その始まりにして、博麗霊夢との最初の出会いでもあった。
3
「――ってな感じで、俺の幻想郷デビューは命がけの危機と、霊夢に拾われるところから始まったわけだ」
湯呑みに口をつけながら、スバルはひと息ついて話を締めくくる。これが、スバルがこの世界――「幻想郷」に来てすぐの出来事だ。
それ以来、スバルは博麗神社に住みつき、料理や掃除など家事全般を担当。開幕早々に命を狙われたこの不条理な世界でも、どうにかこうにか生き延びて、生計を立てられているわけだ。
「ぷっ……くくっ……はっははははっ!!」
すると、話を聞いていた金髪の少女が、帽子のつばで顔を隠しながらこらえきれずに爆笑した。
「あ? いま笑う要素あったか?」
「すまんすまん。でも、だってお前……っふふ、無理だ、腹痛ぇ……!」
不満げに眉をひそめるスバルの前で、少女は笑いを止める気配もない。
彼女の名前は
彼女はほぼ毎日のように博麗神社に顔を出してくるため、スバルとは自然と話す機会が多くなった。今ではこうして思い出話を笑い合う程度には、馴染んだ仲と言える。
しばらくしてようやく笑い尽くした魔理沙は、涙目のままスバルを指さし、決定的な一言を放った。
「だって、今のスバルの顔! 思い出語ってるっていうか、完全に「惚れた相手の話する顔」してたぜ!」
「…………は!?」
唐突すぎる一言に、スバルの顔が真っ赤に染まる。
「ち、ちげーし!? 何言ってんだお前!? どこにそんな要素あったよ!」
「いやー、まさか、霊夢を好きになる奴がいるとはねぇ……。あっでも残念だけど、あいつは恋愛感情ってもんが死んでるからさ。変な希望は持たんほうがいいと思うぞ?」
「違うって言ってんのに勝手に話を進めんな! 俺は別に……」
そこまで言い切って、スバルは口をつぐんだ。
確かに助けられたあの瞬間は、胸の奥が一瞬、熱くなったのを覚えている。でも、それはあれっきりだ。霊夢と話をしていて、そんな感情を抱いていると感じたことはない。
だからこれはきっと、女子に免疫のない俺が、突然であった美少女にドキマギしただけの話。
そうやって、自分の中で落としどころを見つけておいた。何故なら、
「仮にそうだったとしても、あれこれ考える意味はねえからな」
「……ん? なんでだ?」
「だってほら。俺、来週あたりには普通に帰れるんだろ?」
「あー、そういうことね」
腑に落ちたように魔理沙が相槌を打つ。
ここまで異世界だなんだと連呼したが、正確には少し事情が違う。
幻想郷という場所は、地理的には日本のどこかに実在するれっきとした現実世界。閉ざされた境界の内側にあって、外の人間の目には決して映らない。けれど、偶然や意図せぬ事故によって、稀に人が入り込んでしまうことがあるらしい。
そして、そうした迷い人を元の世界に返すための方法も、幻想郷にはちゃんと用意されている。
――
その予定日は、今日より七日後。
本来なら、一週間も経たずに帰れるはずだったらしい。
だが、紫の姿が最近全く見えなかったことで、ここまで長居することになってしまった。だが、それもここまで。いくら姿を見せないと言っても、七日後の定期的な結界の更新日には必ず現れるだろうと、霊夢が言っていた。
「まあ、やっとこんな危ない場所からおさらば出来そうで、気が楽だよ」
わざと明るく、声に出してみる。けれどその言葉が、自分の胸に響いてこないのは、たぶん、ごまかしているからだ。
ここでの暮らしは、スバルにとっては悪くなかった。
毎朝決まった時間に起きて、掃除して、霊夢や魔理沙としょうもない会話をして、食事の支度をして。
何より、ただ時間を浪費していた元の生活とは違って、毎日が少しずつ、意味を持っていた。
今なら、ちゃんと母さんと父さんに頭を下げて、「ごめん」と言えるかもしれない。学校にだって行けるような気がする。そのはずなのに、
「――なあ」
ふと、思考を遮るように、魔理沙が口を開いた。空を見上げながら、ひとつ大きく伸びをしてから、にやりと笑う。
「最終日、お前が外の世界に帰る日に、宴会でもしようぜ」
「……は? なんで?」
突拍子のない提案に、スバルは思わず首を傾げる。
まさか、こっちに来てたった一か月の俺のために送別会を? いや、そんな殊勝なことを、この自由人が考えているとは思えない。
「いやさ、ここじゃ宴会なんて日常茶飯事だから、そんなに構える必要ねえんだよ。ただ、酒飲んで、みんなで騒いで、盛り上がってきたところで……「俺、実は――」みたいな?」
「やっぱりそういう話じゃねえか!? 違うって言ってんだろ!!」
顔を真っ赤にして否定するスバルに、魔理沙は「まあまあ」と手をひらひら振って取り合わない。こいつ、外見はわりと可愛い系なのに、言ってることは完全に親戚の悪ノリおじさんだ。
「じゃ、そういうことで。おーい、霊夢ー!来週ここで宴会しようぜー!」
「勝手に話薦めてるし……こいつ、実は酒飲む口実が欲しいだけなんじゃ」
縁側から立ち上がり、家の奥に向かって大声を張り上げる魔理沙。呼ばれた霊夢は「うるさいわね……」と呆れたような顔で、のそのそと姿を現した。
「……ん? あんたもなに?」
「……いや、えっと、その……」
霊夢が前かがみに顔を近づけてきて、反射的に顔をそらす。
ついさっき、魔理沙が変なことを言ったせいで、意識してしまっている自分がいる。
いや違う。これは霊夢の巫女装束が前衛的すぎるせいだ。ちょっとかがんだだけで、見えそうで見えちゃいけない部分があらわになって、思春期の男子としては、刺激が強すぎるというだけ。
――でもちょっとだけ、想像してしまった。
笑って、未成年飲酒をかまして。もしもそれで、あの日の感情の正体が分かるとしたら、少しくらい。
「いや、なんでもない」
「……?」
「気が変わった。やってくれよ宴会、準備とかはこっちでやるからさ」
「……まあ、片付けもやってくれるならいいわよ」
心底面倒くさそうな顔で了承してくれたので、スバルは小指を立てて前に突き出す。何事かと警戒する霊夢を前に、ゆっくりと口を開いた。
「指切りげんまん。外の世界で約束をするときにやるおまじないみたいなもんだよ」
ほら、と強要すると、彼女は渋々こちらを真似て小指を差し出してくれた。そこに自身の小指を重ねて上下に揺らす。
「指切りげんまん嘘ついたら針千本の~ます!」
「物騒すぎるでしょ……」
「外の世界って、案外やべえ場所なのかもな」
日本の文化にドン引きする少女二人を巻き込み、三人の契りは結ばれる。告白がどうとか、今はまだ分からない。でもせめて、これまでの感謝くらいはちゃんと伝えよう。この一か月はスバルにとって――本当に、かけがえのない時間だったのだから。
これは、菜月昴が幻想郷に来て一か月、そして帰る予定だった最後の七日間の話。霊夢も、魔理沙も、そしてスバル自信すらも、この先に待ち受ける「運命」をまだ知らない。
ただひとつだけ、確かなことがあるとすれば、
約束が守られることは、なかった。
この場の三人が顔を合わせて、宴会に興じることはもう二度と、なかった。
もっと早く気づいていたら、もっと早く変われていたら。そんな後悔は全て、過去に囚われるだけの負け犬の遠吠えに過ぎない。七日後、この約束の日こそ、
――菜月昴の、地獄の始まりなのだから。