さぁ!アハウとなった男はキィニチをどう救うのか!乞うご期待ですよ!
(まさか転生して早々にキィニチの虐待に遭遇することになるなんてな……)
アハウに転生した男はキィニチをクズの元から逃がすべく、頭を悩ませていた。
(キィニチをこの場から逃がすためにはまずは逃走ルートを確認しないとな……)
男はキィニチが逃げられるように安全な道を探すべく、上空へ飛び、地面へ見下ろした。
実は男はキィニチが避難させる場所へ決めている集落はとっくに決まっていたのだ。
(ここからの道だと『
そう、男は海沿いに構えている部族の集落――『
理由は、子どものキィニチが一番安全にかつ、キィニチの家から距離が短い集落は『流泉の衆』しかないからだ。
原神をやっている読者なら、不思議に思うだろう。キィニチが生まれた部族は『
だが、男はある情報を思い出して考えていたからだ。それはクズが部族の人たちを言いくるめるかもしれないと。
まず、クズは仕事しているが、何の仕事をしているのかは公式の情報にも載っていないから分かっていない。だが、同僚から金を借りてギャンブルの事実を家族に隠していたとキィニチのキャラストーリーに書かれていたことから、クズは金を借りれるほど他人に信頼されている……つまり、
キィニチの家庭環境を知る人間はごくわずかだ。実際にキャラクターストーリーでも、キィニチの家庭環境を知る人間は部族の族親を含めても少ないと記載されていた。
勘のいい読者は気付いただろう。そうクズは他人に信頼されている……つまり、キィニチが虐待されていると『懸木の民』の人に言っても信じてくれる人はあまりいないだろう。
部族の族親などキィニチの家庭環境を知る人は仕事による不在でいないかもしれない。そうこうしているうちにクズがキィニチを捕まえて連れ戻されて、より暴力を振るわれることになるだろう。
例え、部族の人がキィニチのあざや怪我について聞かれても、クズはキィニチが山の麓で走り回って転げただけ……そんな風に言ってキィニチの行動のせいにするはずだ――
そう思い、男は子どものキィニチでも安全に歩ける且つ、距離が短い部族が住んでる集落は『流泉の衆』しかないと思ったのだ。
一応他の部族の集落に避難させることも考えたが、『こだまの子』は崖が多いため、地形の高低差が激しいからまだ幼いキィニチの体力がもたないのでダメ。
『
『こだまの子』よりも断崖絶壁が多く、地形の高低差が激しいので、キィニチが崖から滑り落ちて落下死する危険があるし、キィニチの体力は途中で尽きて、クズに連れ去られてしまうだろう。
よって、キィニチが避難できる場所は『流泉の衆』と男は確信した。問題はどうやってキィニチを家から『流泉の衆』へ避難させるかだ。
「夜に行かせても子どもがうろついてたら盗賊や悪竜の餌食となるだけ……かといってこのままクズの元へ居させたらキィニチのトラウマが増えてくし……クソ!俺が実体を持てば今すぐクズの顔面の骨が折れる程ぶん殴って、キィニチを連れてけるのに…」
男はクズの所業に憤りを感じたが、深呼吸して落ち着きを取り戻した。
「……ないものねだりをしてもしょうがないか。それに実体が無いとはいえ、この世界に転生して幼いキィニチを救えるチャンスがあるかもしれないんだ。……絶対に諦めてたまるか!」
男は意気込みを入れて、辺りを見回した。そしてある竜に目が映った。
「……そうか!テペトル竜*1に話を聞いてもらってキィニチの護衛をさせれば!」
……馬鹿みたいな作戦かもしれないが、実は男が取った行動は正しい。ナタにいる竜は人の言葉を理解できる賢い生物だ。実際に竜に石材を運ばせたり、救助させるなど人間と共存できている。
そのことを知っている男はテペトル竜に話しかけた。
「テペトル竜!あなたたちに頼みがある!」
「……あぎゃ?」
「きゅう?」
テペトル竜は突如周りに人が見えないのに、聞こえてきた声によって困惑したのか仔竜と共に首をかしげた。
「俺の姿はある事情で姿を現せない!だが、緊急事態なんだ!頼む!俺に力を貸してくれ!」
「……がう!」
テペトル竜は切羽詰まった声を聞き、困惑しながらも男の願いを聞き入れた。
「ありがとう!まずは聞きたいことがある!君たちは『流泉の衆』の場所を知っているか!?これからあなたたちに虐待……親に殴られてる子どもをそこまで送ってもらいたい!」
しかし……
「……が、がう……」
テペトル竜は『流泉の衆』の場所を知らないのか、首を横に振った。
「そうか……なら、俺が道案内をする!そして、盗賊や悪い竜から子どもを守りつつ、子どもを親から逃がしてほしいんだ!できるか!?」
「ぎゃう!」
「きゅい!」
それならできる!とばかりにテペトル竜は腹を右手で叩いて彼の願いを聞きいれた。仔竜も親がとった行動を真似をした。
「ありがとう!じゃあ、今から作戦を伝える……」
そして、男はテペトル竜の親子に作戦を伝えた……
「……というわけだが、できるか?」
「がう!」
「きゅう!」
「助かる!決行は明日の夜で!ここの道にいてくれ!」
「ぎゃう!」
「きゅい!」
了解したと言うばかりにテペトル竜の親子は返事をした。そしてテペトル竜の親子と別れた男はとある仕込みをキィニチの家へ仕込んだ。
「絶対に救ってやるからな!待ってろよキィニチ!」
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~キィニチ side~
窓から差し込んだ光を浴びて僕は目を覚ます。……今日もまた一日が始まるのか。……イヤだな、日が沈んだままでいてほしい。そうすれば
そんなことを思いながら起き上がり、家を見回すと
「……畑にいかなきゃ。」
僕は
母さんがいなくなったのは2ヶ月前くらいかな?母さんがいなくなる前は僕を
そして、母さんは僕に作物の育て方や狩猟、洗濯や料理など教えてくれた。僕は母さんの仕事を手伝ったら褒めてくれた。それがとても嬉しかった。
母さんが褒めてくれるから頑張れる、そう思っていたから
……母さんがいなくなるまでは。
母さんがいなくなっても
「これは俺の金だぁ!触んじゃねぇ!クソキィニチぃ!」
と怒って僕が気絶するまで何度もぶたれたり、蹴られたりする。その日から
それでも
負ける日が多いから勝つ日は少ないけど……
だから、僕はもう二度と
【そこのガキ…!畑で作業しているそこのお前だ!】
「え?だ…誰?」
僕は突然聞こえてきた声に戸惑っていた。声は続けて言った。
【お前はこんな生活のままでいいのか?ここから逃げ出したいんだろ?】
これは……夢?昨日、僕が頭にぶたれた時に見ている夢なの?
「誰…?夢なの?どこにいるの?」
すると、声は違うと言った。
【違う!これは夢じゃねぇ!現実だ!我輩は…まぁ、細けぇことはいい。今日の夜にあのクz…父親が寝始めたらお前はこっそりとこの家から抜け出して、森の方へ走れ。ああ、崖には近づくなよ?滑って落ちたら終わりだからな?】
確かに声の言う通りにしたら、僕は
「抜け出す?でも……もし追いかけられて捕まったら……いつもよりぶたれる……絶対にぶたれる……」
僕が声に向かってそう言うと、声は黙ったが、すぐに僕に言い始めた。
【……ぶたれる?ハッ、そんなヘマ…間違いをお前がするかよ?なぜなら、お前は我輩が認めた相棒だからだ!いいか?夜になったら我輩がお前に合図を出すから、聞こえたらこっそりとお前が寝てる部屋の窓から抜け出せ。ドアからだと軋む音でバレるからな。それと、森に進んだら川が見える。左へ川沿いの道を歩いたら、赤い花が地面に咲いてあるはずだ。そこに走れ。】
「赤い花?わ、分かったよ……」
【赤い花のところに我輩の協力者がいる。この中で一番でかいソイツの背中によじ登って、しっかり掴まれ。そうすれば、後は大丈夫だ。ああ、念のためパン2個と水筒を持ってけ。腹が減ったり、喉が渇くからな。】
「背中……?パン2個に水筒……?何で…?」
【それはお前が腹を減って気を失わないようにするためだ。ソイツは手が短いからな。運ぶことはできねぇからお前が背中にしがみついてもらうしかねぇ。】
「分かった……でも、何で助けてくれるの?」
僕は声がここまでするのにわからなかった。だって、知らない人のはずなのにわざわざ助けてくれるなんて、どうして……?
【ハッ!何でこんなことするかって?お前は今まで出会ってきた中で一番優しい人間だからだよ!だから、気に入って手を貸した……そんだけだ。】
「何だよそれ……?」
(でも、この声を聞くと落ち着くな……それに温かい……)
【いいか?合図が来たら我輩がお前に声をかける。その間にパンと水を入れた水筒を布団に隠して昼寝しな!父親が来たら我輩が起こしてやるからな。】
生まれて初めて母さん以外の人に優しくしてくれたその言葉を聞いて、僕は涙が止まらなくなった。
「うん……うん……本当に……ありがとう……」ポロポロ
【まだ泣くな。泣くのはアイツが来ないと確信してからだ。安心しろ。お前のことは死んでも幸せにしてやる。】
「それはやだな……」
【何!?】
「君も生きてほしいよ……」
【……やっぱお前優しいな。だからこそ絶対に幸せにならなきゃいけねぇ。】
「うん……グスン……あ、そうだ。名前を言ってなかったね。僕はキィニチ。よろしくね。精霊さん。」
【俺は精霊じゃねぇ……我が名はクフルアハウ。聖龍であり、お前の相棒になる男だ。アハウって呼んでもいいぞ!】
「うん!これからよろしくね!アハウ!」
これが後に俺とアハウとのやり取りだったと思い出すのはもう少し先の話だ……
伝説によると、テペトル竜の祖先は山のように巨大な竜で、非常に長い寿命を持っていた。眠っている間に、その背中には山々が形成されており、テペトル竜の祖先が目覚めて泥や岩石を振り落とすと、鱗の間に埋まった宝石や翡翠が輝きを放ったという。また、「こだまの子」部族に伝わる巨大なドリル状の物体は、その竜の角であると言われている。
【アハウ】
キィニチに付きまとう、ドット絵そのものの姿をした「偉大なる聖龍」を自称する謎の存在。
よく喋る上に口も性格も悪く、余計な事を口走ってはたびたびキィニチに封印されている。一日野放しにしておくとキィニチの一年分は喋り続ける勢いであるとか。
今作のアハウは性格が少し悪いだけです。