というわけで、この話はそのアニメを基にした話です。
人は未来を予知することができない。まだ依頼の完了前だというのに、次の依頼がもう道端で待っているとは、キィニチもアハウも思っていなかった。
「オレの弁当……キィニチが愛情をこめて作ってくれた弁当が……」
「弁当はまた後で作ってやるからこの状況を打開する方法を探せ。」
現在、アハウとキィニチは4人の盗賊に落ちたらひとたまりもない高さがある崖に追い詰められている状況になっていた。
なぜこうなったのか……それは今朝の出来事に遡る……
2人……いや1人と1龍は青い宝石をこだまの子の鍛冶師に依頼されて採取しに山の方へ向かった。テペトル竜の縄張りに入ってしまい追いかけられるハプニングがあったものの、どうにか青い宝石を無事に採取することはでき、後は鍛冶師へ渡すだけだから、崖の上で昼食を取ってから渡すことになった。
「おっほ~!キィニチ特製の肉弁当!しかもソーセージや唐揚げとかたくさんだ!気合入ってんな!ありがとよキィニチ!」
「日頃の礼を込めて作ろうと思ってな。好きなんだろ?肉。」
「ああ!大好物だ!いっただっきまー……」
アハウがキィニチが作ってくれた弁当を食べようとしたその時だった。
ガンッ!
突如、男の足がアハウが持っていた弁当を蹴り飛ばされたため、弁当が崖の下へ落ちていったのだ。
「あああああああああああ!!!!!!??キィニチが愛をこめて作ってくれたオレの弁当がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
「アハウ!戦闘態勢を取れ!」
キィニチはすぐに立ち、戦闘態勢に備えた。
「その宝石を俺たちに寄こしな!」
突如、現れた4人の男女の盗賊たちによって事態は急変した。盗賊は「懸木の民」が良く使う伝統の衣装を着ていて、大柄の男はチェーンソー、長身の男は棍棒、マスクを着けていて顔が隠れている女はドリルを持ち、そして片手剣を持っている帽子を被った女が立ちふさがって退路を塞いでいた。アハウが言う。
「おい!オレが食べようとした弁当をよくも!許さないからな貴様らぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!死にたくないのなら今すぐここから去れ!」
「そう言われて大人しく引き下がると思うか?」
「そうそう、ガキと変な小さい龍?が大人に勝てるわけないからなぁ…賢明な判断をした方がいいぜ?」
そう大柄な男の盗賊が持っているチェーンソーを構え、キィニチに近づきながらそう言った。
「テメェら!せっかくオレたちが苦労して取った宝石を奪おうとするなんて……いい年したおっさんとおばさんがはずかしくねぇのか!?」
「「「「誰がおっさんだ!!まだ20代だ!/誰がおばさんよ!?まだ20代よ!」」」」
「ええ……サバ読んでねぇの……?」
アハウが自覚のない振りの煽りを
すると、痺れを切らしたのか大柄の男がキィニチの鼻に当たるかもしれない至近距離までチェーンソーを掲げたのだ。
「おい!さっさとその宝石を寄こせって言ってんだ!」
男はキィニチの腰のポケットにしまってある宝石に指を指しながら言った。
「はぁ……言われなくてもお前たちにあげるつもりだ。受け取れ。」
そう言いながらキィニチは男に向けて宝石を差し出した。男は不敵に笑い、左手で奪おうとした次の瞬間!
「アハウ!」
「言われなくても分かってんだよ!キィニチ!オレを思いっきりぶん投げろ!」
キィニチはすぐに宝石を腰に下げると、アハウを掴み、男に向けてぶん投げた。アハウはそのまま男の顔面にぶつかり、男はたまらずひっくり返った。
「ぐわっ!!」
「おい!大丈夫か!」
盗賊がアハウに当たった男に心配していると……
「じゃあな。お前たち。」
キィニチはそう言い残すと崖から飛び降りたのだ。
「「「「はぁ!?」」」」
すぐさま盗賊たちはキィニチが飛び降りた崖の下の方へ向かい、辺りを見渡した。だが、地面にキィニチの死体はなく疑問に思っていると……
「ん?…ッ!お、おい!上を見ろ!」
「「「上?」」」
長身の男が上を見るように仲間に知らせて、上を見させた。そこにいたのは……
「「「「なぁ!?」」」」
キィニチが空中に浮かび上がっていて緑のネオンサインを全身に輝いている状態――
キィニチは崖から飛び降りた後すぐに元素スキルを発動し、ターザンロープのような草元素でできたロープで空中を移動して盗賊たちの目をかいくぐり、後ろへ回ることができたのだ。
キィニチは空中に浮いたまま敵を見下し、キィニチの愛用の武器――『山の王の長牙』を出現させた。そして――
「じゃあな。」
ドコォォォン!!!
キィニチは崖の地面がひび割れている亀裂に打ち込み、崖の端にいた盗賊たちを地面ごと落として一網打尽にしたのだ。
「きゃあああ!!!」
「うわああああ!!!!」
「落ちる落ちる落ちる!!!!」
「助けてくれぇぇ!!!」
哀れな盗賊たちの4人はこのまま地面に激突し、内臓と骨、筋肉がひしゃげて、見るも無惨な姿に――――
「ったく、面倒なやつらだぜ。」
「あ、あれ?」
「生きてる?」
――――とはならなかった。
「ご苦労だった、アハウ。」
「別にいいけどよ。こいつらの武器を無くして無力化したのはいいとして、反抗するんじゃねぇか?」
アハウは投げられた直後、すぐに崖の下へ飛んで行き、キィニチがアハウの力の一部を解放して、元の姿だった龍に近づいた姿に変身すると落ちていく盗賊たちを捕まえたのだった。
そして、キィニチが持っていたターザンロープで盗賊たちを縛り上げた。
「クソ……こんな青臭いガキと変な龍にしくじるなんて……」
「なら、お前の眼は曇ってたってことだな。後、青臭いガキってキィニチを侮辱したのか?オレの炎で消し炭にするぞクズ。」
「ひぃ!?」
「やめろアハウ。」
「キィニチがそう言うのなら……あ、そうそうキィニチは優しいからこう言っているんだが、もしもオレがいない時にキィニチの悪口を言うのなら……お前らも分かってるよな?」
「「「はい!絶対に口答えしません!」」」
「……はぁ。」
その後、キィニチとアハウは町へ向かい盗賊たちを引き渡すと、報奨金を貰った。
彼らは子どもや老人を脅して金目の物を奪っていたり、民家に強盗をする悪党だったのだ。
思わぬ臨時収入を手に入れたアハウはご満悦。
「にゃははは!!キィニチ!盗賊がのこのことやってきたおかげでしばらくは美味い物たくさん食えるぜ!オレは肉を所望するぞ!」
「いや、今日も貯金をする。オレたちはいつも通り、野菜とフルーツで食べるぞ。」
「キィニチ……お前はいくら貯めれば気が済むんだ……」
「さっき必要以上に盗賊たちを脅した罰だ。安心しろ、俺も肉を食わないから。」
「だってよキィニチ!あいつらはオレたちが食う肉入り弁当を蹴っ飛ばしたんだぞ!?」
「だからといって高圧的に脅すのは違うだろ……」
キィニチはそう呆れたが、しばらくするとアハウに静かにほほ笑んだ。
「また今度、肉弁当作ってやる。」
「!約束だぞ!キィニチ!早く帰ってまた依頼を受けに行くぞ!」
「その前に鍛冶師に宝石を送り届けてからだ。」
「おう!」
今日も、ナタで元気に仕事するキィニチとアハウだった。